君がこっちに手を伸ばしたんだよ。   作:大日陰山

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Outcrop

< カリン
8 7 9_

 2017年11月05日(日) 

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どったん 08:18
      

      
既読

08:18

一つだけ、言いたい事があってLONEしました

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はいほい 08:18
      

      
既読

08:23

昨日の話。あれ、一晩中考えてみたんだけど

      
既読

08:24

私は、最後だ、とか言ってくる奴をぶん殴りたい

      
既読

08:24

寿命とか閉じコンとか言ってくる奴全員ぶっ飛ばして、外に行きたい

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いうねぇ 08:25
      

      
既読

08:25

いつかカリンもぶっ飛ばすから

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んじゃ待ってる待ってる。外側で、ね? 08:28
      

      
既読

08:29

なんでカリンが先に終わってる前提なの

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それはまぁ、こっちのせりふかな 08:29
      

_j k l
       m_n

 

 

 温泉旅行三日目昼。

 既に旅館のチェックアウトは済ませ、お土産類を物色しつつの散歩タイム。

 十二時にはまた小雪さんの車に乗って我々調査隊は帰還するのだ。アマゾンの奥地から。

 

「のみすぎてあたまがいたい。もうおさけのむのやめる」

「そうしなさい。昨日見ていて思ったけれど、貴女自分じゃ歯止めが利かないタイプよ。誰か傍に止めてくれる人がいない限りは飲むのはやめた方が良いわ」

「うぅ……」

 

 ああいう大人にはなりたくないなぁ、と。

 しみじみ思います。

 

「スモモちゃんも足の傷、大丈夫そうで良かったわ」

「あ、はい。ご心配おかけしました」

「まぁただの靴擦れだからね。次からは使い慣れたスニーカーで来させるよ」

「ダルサンは?」

「却下」

 

 一応11月であることを理解しているのだろうか。

 ……あ、いや。

 もし次があるなら、多分デビューした後。それで落ち着いた後なら、半年くらい? としたら確かに、夏だ。

 

「……みんなでグアムとか行きたい」

「いきなり海外か……。というか、みんなそんなに一気に売れるつもりなの?」

「捕らぬ狸の皮算用、とはいうけどね。ま、すぐにって話でなくとも、いつかは行ってみたいよ。別に稼いだお金じゃなくて、私らが出してもいい」

「折角なら頑張った報酬で行った方が心持ちよくない?」

「……お前さん、たまに正論を言うんだな」

 

 うん。こればっかりはカリンに同意する。

 次こそは、出してもらって、じゃなくて。

 自分たちのお金で行きたい。勿論配信環境だとか3Dモデルのクオリティ向上、技術向上につぎ込まれるお金の方が多くなるんだろうけど、そこから更に余るくらいの……あるいは、海外旅行さえも企画に出来るくらいの大きなユニットになったら、絶対行きたい。

 

「じゃあ頑張んなきゃね~。活動もだけど、勉強も」

「ウ」

「スモモちゃん、ガッコのテスト結構やばいんでしょ? サボテンちゃんとか年長組に教えてもらいなよ」

「お前さんも年長組に含まれるんだが」

「わたしは教えるとか無理だもん」

 

 カリンって大学生らしいけど、確かに頭は悪そう(粉蜜柑)。

 

「あー……えと、私も高校の勉強とか、躓いたら……お二人に教えてもらいたいな、って」

「……」

「無言でこっちを見ないでくれるかしら。でも、いいわ。ちゃんと、優しく教えてあげる。そこのポンコツとは違って、丁寧にわかりやすくね」

「わぁ敵意強い」

 

 なんか、ここの関係性も面白いよなぁ、と思う関係性オタク。

 小雪さんのが完璧超人なのに、どうしてそんなにカリンを敵視するんだか。

 やっぱりトクベツにはトクベツな感性があるのかな。

 

「セチアちゃんは、中学入ったら高校の勉強をするの?」

「え? あ、ううん。高校の教科書読んでみたけど、全然理解できないとこいっぱいあったから、流石に授業聞くと思う。途中までは中学のおさらいっぽかったんだけど、後半はちんぷんかんぷん」

「……セチアさんって、頭いいんですね」

「うん。マウント取りたくて頑張った感はある。サボりたくても四割くらいあるけど」

「動機が不純」

 

 優等生である。学校では。

 運動もある程度できて、勉強も凄く出来て、未だ小学六年生の身なれど優等生である。人気者、ではないけれど。ちょっと、性格が、色々と。

 友達は結構いる。ただ、まぁ、所謂"性格キツめの女子達"と揶揄される側の女子なので、まぁ色々お察ししていただけると助かるというか。腹の探り合いタヌキーズというか。女子は怖いぞ。小学生でこれだからな。

 

「ああ、でも」

「セチアちゃんが次に口にする言葉は"そこなポンコツカリンでも大学に行けるワケだから割とテキトーでいいんじゃない?"だ──」

「あ、正解正解。サイコメトリーもたまには役に立つね」

「うるへー」

 

 大学って、ちゃんと勉強しないといけない所、だったはず。

 何を学んでるかは知らないけど。

 

「セチアちゃん、この女はね、特別枠なのよ」

「……トクベツ」

「一芸入試、と言ってわかるかしら。芸大のね……まぁ、私とは違う所だけれど、それなりに良い所へ入ったのだけど、頭は弱いわ」

「うっせー」

 

 一芸入試。あぁ、歌か。

 ケッ。トクベツが。

 

「私達はちゃんと、順当に、勉強をしましょうね。サボテンさんもスモモちゃんもセチアちゃんも」

「ちなみにですけど姉さんはめっちゃいい大学出てます」

「へぇ」

「言わんでいい事を」

 

 これが学歴社会か……。

 

 全員が全員お土産を買い*1、小雪さんの車に乗る。

 

「楽しい旅行だった、と。そう言って良いよな?」

「はい。勿論です」

「じゃ、企画してくれたモミジ……いいや、南雪。ありがとう、というよ」

「そんな、私だけでの実現じゃないですし……遥香さんも、ありがとうございます」

「あんまり外ではV名で呼びあわない方が良いと思うけどね。ねー、アミちゃん」

「まだ有名じゃないから大丈夫でしょ。デビューすらしてないんだし」

「い、今の流れは私の名前を呼ぶ流れでは!?」

「可憐さん、梨寿ちゃん。雪さん、遥香さん、亜美ちゃん。本当にこれから、よろしくお願いします」

「よろしくね、千幸リーダー」

 

 そんな。

 なんか……ちょっと固っ苦しいというか、こっ恥ずかしいような締め括りで、私達の温泉旅行は終了する。

 この日を境に私達のハンドルネームは使われなくなり──私達は、自らの研鑽と設定固めに奔走するようになるのだ。

 

 

 ГГГ

 

 

 一週間のお休みを経て、私は配信活動を再開した。

 割と、この一週間を経る前は、辞めるつもりがあったりなかったりしたのだけど。

 まぁ、まぁまぁ。

 挑発されたし。ちょっと、負けっぱなしは──嫌だし。

 まだまだ追いついてないし。勝手にどっか行ったアイツぶん殴りたいし。

 

 とりあえずトゥイッターで少しだけリプ返して、活動再開のお知らせ書いて、1分程度の活動再開動画を取って……。

 なんてことをやっていると、いつの間にか一時間二時間と経っていて。

 

 Schemeを開いてみれば、サマーセールが開始した、とのこと。ウィッシュリストにある適当なゲームをテキトーにポチりながらテキトーに眺めていると、先日湊元ちゃんのトコでやった『鏡の奥の私』の続編が入っている事に気付いた。

 ……これもポチるか。

 

 中学生にしては。

 その収益の全てが100%還元されているわけじゃないけど、お金は、ある方なので。

 割とポチポチ気軽にしても余りある……いや、そんなことはないんだけど、いや配信に使うゲームだし。ちゃんと月々の制限は自分で決めてるし。

 

 ホラゲねー。

 私自身があんまり怖がりじゃないからやんないんだよね、本気で。

 ゾンビシューティングとかなら逆にシューティングの方に熱中できるからやるんだけど、怖がらせてくる系は「あ、はい」になっちゃって面白くないというか。

 驚かせジャンルでいうなら闇魂系とかはやるかも。ああいうシビアなゲームは好き。ちなみに前に可憐にやらせたことがあったけれど、チュートリアルで三時間使った。ゲーム下手、ってそれだけで燃えるから大変だよね。

 

 そうやって色々なゲームを見ていく内に、時間はさらに経っていて。

 

 あ、やべ。

 

 

 

「で、だ」

「はい」

「何故私の家に来なかったのか小一時間」

「甘やかされそうだったから」

「……成程、否定はできない」

「うちにきたら人をナメクジにするソファに一日中座らせ続けます」

「こわ」

 

 そう、今日は遥香さん、梨寿ちゃんとのコラボの日。の打ち合わせ。

 Withcordの通話で苦言を呈されるけれど、まぁそういう話なので、ご納得いただけたようで。

 ちなみに、ボロを出してしまわないように配信前の何時間かからはお互いをV名で呼び合うようにしている。可憐とかはもうずっとV名だったし。結局本名知らないし。

 

 今日は三人オンラインプレイのFPSバトルロワイアルゲームVELTEXのコラボになる。比較的こういうゲームが得意な三人なので視聴者をいらいらさせる事は無いだろう。どっかの可憐とかいう銃を拾う事すらできない奴がいなければ基本平和だ。

 

 ……いや、アレがいると100%ハプニングが起こるから、それはそれで取れ高なんだけど。

 

「そういえば亜美。例の骸骨仮面から、またゲームが送られてきたぞ」

「何故遥香さんに」

「ちょいとハードがな。ゲームテトラは持ってないだろ?」

「ああ、なんだっけ。128の前のやつ?」

「後の奴だ」

 

 確かに、そんなハードは持っていない。

 ……つかそんなん送り付けんなってば。どこで買ってきたんだよ。

 

「梨寿はホラーだと……な、アレだから」

「なるほど。ホラゲーなんですか」

「いや、スプラッタ気味だな」

「あー」

 

 ゾンビ系ね。

 じゃあ今度お家にお邪魔しましょうか。

 

「それで今日は、普通にレート戦でいいんですか?」

「ああ」

「なんだっけ、もうすぐなんかのカスタムがあるから、フルパ多めの可能性あり、だったはず」

「へえ。どこからそんな情報仕入れてくるんですか?」

「VWEPE仲間」

 

 私はこんななので。

 結構、ネット友達も多い方だ。その、要は小さい子、年下の子とどう絡んだいいかわからない、っていうオジサン達にも積極的に行けるので。

 ちなみにイケメンには行かないようにしてる。燃えるから。そういうの面倒だから。

 狙い目はオジサン。バ美肉とかも良い。そういう層にオジサン用語使っていけば、たいていウケる。たまに地雷が引っ付いてることはあるけれど、それはもうどうしようもない事だろう。

 

 だからこそオフでは会わないし、会えない。が故に、更に水鳥亜美三十六歳説が加速している。同業者の中でさえ加速しているのだから面白い。

 へへ、実はマジモンの15歳なんだぜヘヘ。

 

「亜美はウチじゃ外部コラボ一番多いからな」

「凄い、なぁ、って。私人見知りしちゃうから……」

「いや、梨寿もホントはもっともっと顔を広げた方が良いんだ。お前自身のスキルアップのためにも」

「顔を広げてコケたら本末転倒じゃない? 可憐の方針は結局あってたわけだし」

「ム」

 

 可憐。

 あんまり私達の活動に口を出さなかった彼女だけど、その少ない口出しの中で、"外部では得意な事以外には挑戦しない"というのがあった。

 初見の前で無様を見せたら興味を持たれなくなる。外に見せるのは良い所だけ。下手な所は自分を好いてくれるファンに見せるように。その方針を守った結果、私達のユニットは一年で物凄い躍進を遂げたのだ。無論それ以外にも理由はあるけれど。

 

 そんな可憐が抜けてから、もうすぐ一年半。

 今更方針を変える、というのは、どうなんだろう。

 

「……いや、そろそろ私達の顔も売れてきた頃だ。そろそろ、大丈夫さ」

「一応、私は反対しとく。なんか……まだ危ない気がする」

「保守的だな……」

「保守的っていうか、私達、そんなに売れてるかな、って」

「そんなに人気無い、ってことですか……?」

「あ、いや……あー」

 

 なんか、井の中の蛙大海を知らず、みたいな。

 ()()()()()()()()()()()()()結構大物になってきた自覚はある。

 けれど、外に出てみたら。

 多分私達なんて──認知すら、されていないんだろうな、って。

 

「なら、そこは他のメンバーとも要相談にしておこうか」

「うん。そうした方が良いと思う。なんなら可憐にも聞いていいし。アイツ、カンケーないし、とかいいながらちゃんと考えてくれそう」

「いや」

 

 そこで、遥香さんは。

 きっぱりと言った。

 

「それは、ダメだ。もうアイツには頼らない」

「え」

 

 NOを。

 どうしてだろうか。

 

「あの日でもう、私達は別々の道を歩み始めたんだ。いつまでも縋ってられないよ、亜美」

「……縋ってるわけじゃ」

 

 どうしてそんなことをいうのだろうか。

 ……私はまだ、可憐のこと、仲間だと思ってるんだけど。

 

「さ、話は終わりだ。そろそろ梨寿の配信準備も……」

「あ、配信準備出来ました~」

「ああ、こっちも出来てる」

「……とりあえず、わかった。じゃあ、配信開始するよ」

 

 とりあえず、現状維持になってしまう。

 とりあえず、やる事は変わらないけれど。

 

 少しだけ変わった──野心と、僅かながらの不満だけは、心に潜めて。

 

 

 

 ГГГ

 

 

 

「お疲れ様でした」

「お疲れ様ー」

 

 マイクを切って、配信ソフトを切って、動画サイト側の配信を切る。

 安全第一に。

 

 withcordは繋いだままに。

 それで、それでね?

 

「遥香さん」

「うん?」

「私ね、やりたいことがあるの」

「あ、私ちょっと宿題やらなきゃなので落ちますね。お先に失礼します~」

「はーい、お疲れー」

 

 ……はて。

 やりたいこと、とは。

 なんだったっけな。

 

「で、なんだ?」

「今度のそのスプラッタゲーのコラボ? 3Dでやらない?」

「ん……まぁ、それはいいが。あれか、いつもの白空間で、見えない椅子にでも座るか」

「うん、それでー」

 

 ああ、そうそう、コラボね。コラボの話。

 今の内につめないと忘れちゃうから、そうそう。

 

「企画は、私に決めさせてほしいな、って」

「……ほォー。よし、いいだろう。メンバーのスキルアップは大事だからな。私が体調不良なんかでいない時とかにも頼れる存在がいると助かる。今回は任せるとしよう」

「え」

「ん?」

「あ、いや。うん。任せて」

 

 あれ。そんな事言うつもりなかったんだけどな。

 今まで通り遥香さんの企画で、いつも通り流せたらいいなぁ、って。

 

 あー、でも。

 やってみるのは、アリか。現状維持じゃなくて、ちょっとずつ変わって行かないとね、私も。

 そうじゃなきゃ……アイツをぶっ飛ばすとか、夢のまた夢だし。

 

 常々、遥香さんのその頭の良さもズルいと思っていたわけで。

 この際だ、完全に盗んでやろう。

 

「それじゃ、おやすみねー」

「ああ、おやすみ」

 

 おやすみなさい。

 

*1
カリンは三角テナントとかいうのを買ってた

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