君がこっちに手を伸ばしたんだよ。   作:大日陰山

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Proviso

「うん、そう。辞める。Vも、配信活動も。今年で大学生おわりだからさ。就職をするので、VTuberをやめます。今までありがとう」

 

 その言葉を告げられたのは、もうすぐ一周年を迎えるために企画会議をしよう、としていた時。二月の頭。2019年02月10日。まだ肌寒さの抜けていない、けれど暖房のよく利いたぬくぬくした会議室での事。

 沙月さんがあんまりにも神妙な顔つきで、「これだけは最初に聞いておいて欲しい」と。「とても大切な事だから」と切り出した言葉は──VTuber皆凪可憐の卒業、についてだった。

 

 卒業。

 あるいは、引退。配信活動を止め、一般人に戻る、ということ。

 私達のユニットは中規模程度のファンを集める事が出来ていて、その中でも可憐は結構人気な方だった。だったのに、こんなにもあっさりと、辞める、と。大人になったから。社会人になるから。働くから。自分は器用じゃないから、両立は出来ないから、いつか絶対、どこかでボロを出してしまうから。

 湊元ちゃんから怒涛の如く繰り出される質問疑問尋問に、可憐はちゃんと、しっかりとした理由を返していく。納得の出来ないものがない。ずっとバカにしていた可憐だけど、やっぱり彼女は年長組で。やっぱり私達には届かない何かがあって。

 

 心さんが悲しそうな顔で、けれど唇をキツく結んだまま静観していたのを覚えている。

 小雪さんが真剣な表情で、何か思いつめたようにぼそぼそと言葉を吐いていたのを覚えている。

 

 沙月さんが自分で切り出しておきながら、泣いていたのを覚えている。

 

「3月1日に、卒業配信をする。歌も歌う。今日にはリスナーさん達に告知も出す」

「……既に……一周年記念イベントで歌う、そして踊る用の曲は、五人用に調整されている。……すまん、みんな。私は……もっと前から聞いていた。聞かされていた。……すまん」

 

 苦しそうに、身を切るような思い、に表情があるとしたらこんな風だろう、と想像できる顔で、遥香さんは言うのだ。自分は知っていて、黙っていたと。

 それはまぁ、正解だと思う。無論言ってくれてもよかったけど、一年目の、初めての冬シーズン、なんて時期では相応にテンションが下がっていたはずだ。それを乗り越えたのは大きい。果たして、クリスマスにはプレゼント交換会なんてものをやっていることや、その際可憐の手元に非売品のユニットグッズが渡ってしまった事は、運命か何かなのだろうかと勘繰ってしまうけれど。

 大きいのだ。

 ここまで来ることが出来たのは、ちゃんと。

 

「あのさ」

 

 可憐はいつもの調子で言う。泣くでも心配するでもなく、軽く笑ったような口調で、言う。

 

「私、自分でも性格悪いというか、結構ひん曲がってる自覚あるんだよね。それはこの一年で更に純化されたし、みんなと出会った時から、ケッコー嫌な奴だったと思う。でさ、聞きたいんだけど」

 

 

 ――"私といるの、嫌じゃなかった?"

 

 

 その、問いに。

 その──ふざけた問いに。

 

 一番に反応したのは、湊元ちゃんでも、心さんでも、沙月さんでも──小雪さんでもなく。

 なんと。

 

「はぁ? ふざけてんの、お前」

 

 私、だった。

 

 一番、可憐とは距離を置いていた。

 一番、Vという文化にそこまで心を入れていなかった。リスナーへの強い思いも、配信活動に対しての真摯な姿勢も持っていなかった私が、けれど、その言葉にだけはカチンと来た。

 

「楽しかったに決まってんじゃん。うっざ。楽しかったんだよ。だから返してよ。返してよ、私のトクベツ。可憐も揃って六人の、クリエイターさん達も揃っての十人の私達じゃん。楽しかった。楽しかったよ。ずーっと文化祭やってるみたいでさ。配信して、企画して、イベントして、意味わかんない企画して、歌ってさ。馬鹿。うざいよ今、本当にウザイ。楽しかったー。あーあ。楽しかったよ。私こんなに楽しくなると思ってなかった。そうだよ、最初ホントに嫌な奴だって思ってた。こういう大人にはなりたくないと思ってたし、コイツとだけは絶対に仲良くなれねーって思ってた。思ってたんだよ」

 

 どろどろ、とかじゃない。

 もう火山の噴火だ。どろどろだったものが、爆ぜて、バーァンッ! って。

 擬音語でしか表現できないくらいの勢いで、感情が破裂する。

 

「楽しかったよ。可憐が馬鹿やらかしてトラブって、遥香さんが慌てて雪さんが怒って。リーダーがちゃんと説明して私と梨寿は一緒に笑ってさ。楽しかったに決まってんじゃん。馬鹿じゃないの? ていうか馬鹿でしょ。それ聞くこと自体が馬鹿。こういう反応返ってくるってアンタは絶対わかってんの。サイコメトラーじゃん。私達の心情なんてわかりきってるくせに、聞いて、──嬉しがってる」

 

 ああ、本当にうざったるい。

 なんて、なんて──幸せそうな顔をしているのか。

 まるで満足して死ぬ、みたいな。まるでもう思い残す事は無い、みたいな。

 

 さいてーな奴。最悪な奴。

 劣悪な、トクベツ。

 

「亜美……もう」

「いーや、言うよ。つかみんなも言えばいい。ここで全部吐き出してよ。どうせ決定事項なんでしょ? 辞めないで、って言っても絶対止まらない。曲が五人用になってる時点で、遥香さんがどれだけ必死に説得して止めたのかくらいはわかるもん。止めて、止て、引き留めて、懇願して──それでも可憐は頷かなかった。コイツ、変に意思固いからね。知ってる」

「……ああ。止めたさ。何度も何度もね。でも……私達は企業じゃない。契約じゃない。一緒に頑張っていこう、と手を取り合っただけの仲で、」

「は? 遥香さんまでそういうこというワケ? なに感化されてソッチに行ってんの?」

 

 全方位に噛みつく、とはこういう奴の事を言うのだろう。

 私なんだけど。

 いつもなら、普段なら、小雪さんのポジション……というか、VTuber南雪のポジションだ。

 けれど、ごめん。無理。

 

「手を取り合っただけの仲? マジで言ってんの? こんだけ一緒に頑張ってきて、こんだけ一緒に色々やってきて。ああ、そうだよ。Nixiの募集みてふらふらやってきただけの奴が言わせてもらうけどさ。馬鹿じゃないの? あんだけ仲間意識高めよう! って色々やってきた遥香さんが、今更そんな……私達実は烏合の衆でした、みたいなコト言うの? そんな気持ちだったの?」

「……すまない。失言だった」

「……あのさ、可憐。さっきからニヤニヤしてる顔ぶん殴りたいって気持ちは抑えておくとして。アンタさ、今は誰なの? 今現在。今、この場にいるアンタ。皆凪可憐なの? それともカリンなの? あるいは、名前も知らない誰かなの?」

 

 いらいらする。いらいらする。

 折角手に入れたトクベツなのに。折角、折角、折角──友達になれた、トクベツなのに。

 それを勝手に奪う、って? ふざけんな!

 奪うなら、持っていくなら。

 

 何か、対価を寄越せ。

 

「──いいね。凄く良い。その質問は──亜美ちゃんと過ごしてきた今までで、一番いい」

「答えて」

「皆凪可憐よ。わたしは。もう、決めたわ。あと少しの間──わたしは、消えない。ここにいる。眠らない。起こしてくれてありがとう。身を引いてくれてありがとう。わたしはもう、消えるまでの間、消えない事にした。ごめんなさい。そして、ありがとう。本当に──本当に、わたしも、心からの仲間だと思っているわ」

 

 雰囲気が変わる、というのはこういう事を言うのだろう。

 カリンは歌だけが得意だと言っていた。それが自らのトクベツであると。

 けれどもう一つ、あった。クリエイター陣が──あるいは誰もが心配するくらいのトクベツ。

 

 演技力。

 やり方としては自己催眠に近いソレは、趣味嗜好までをも変化させる。

 さっきまでのは、カリンとしての言葉だったのだろう。演者として、VTuberを演じる誰かとしての言葉だったから、あんなのが出たのだ。

 でも、違う。今は違う。

 ようやく肩の力が抜ける。

 

「さっきの質問、取り消すわ。──みんな、この一年間。わたしと一緒にいてくれて、本当にありがとう。歌しか取り柄の無いわたしと共に歩いてくれて、ありがとう。あと少しの間だけど、どうか、楽しく。そして最後には──笑って送り出してほしいわ」

「初めからそう言え、バーカ」

「……けれどそうなると、困るわね。貴女の口調は普段の私の口調なのだから、被るわ」

「は、はは。別に被っても問題ないだろ、リスナーに見せるわけじゃないんだ。それともなんだ、雪も口調をですますにするか?」

「それはアリですね。アリ寄りのアリ。私、これでも皆凪可憐のライバルだと自負しているので、対抗してこっちにします。よろしく」

「……なんですか、それ。人が悲しいと悔しいと諦めでぐちゃぐちゃになってる時に。なんでそんな面白い事出来るんですか」

「ホントにね。可憐ちゃんが決めた事だから、リアルの事だから、口は出さないでおこう、って思ってたのに……もう。あ、だめ。喋ると涙出てきちゃうから……でも」

 

 あーあ。

 結局最後まで、コイツはトクベツだったってわけだ。

 歌。演技力。性格。そのどれもを失う事無く、トクベツのままいなくなる、って。

 

 ばーか。

 

「最後、歌ね。新曲だから」

「……待て、それは聞いていないぞ。参賀さんに依頼したのか?」

「ううん。HANABiさん」

「あの人か……」

 

 まるで、対価はこれで、とでも言われているような気がした。

 

 

 

 ГГГ

 

 

 

 『隔理世』、『空が零した夢』など、可憐+メンバーの誰か、あるいは可憐のソロ曲が歌われては終わっていく。散っていく。

 今日は2018年03月01日。

 そう、皆凪可憐の卒業の日だ。

 

 今までありがとうございました。と、とても簡素に彩られた配信タイトルだけど、視聴者数は8000近くと、企業でないVTuberでの引退配信として考えれば十分な同接だ。

 そもそも見たくない、という人いるのだろう。最後は見たくない、最後を見てしまっては、終わってしまうからと──見ない事を選ぶ層も。そして、リアルタイムで見ると感情が溢れてしまうからと、後からアーカイブで見んとする層も。

 

 ちゃんと。

 ちゃんと、皆凪可憐は愛されているのだろう。

 

 それを横で見て。

 横合いで見て。

 

 ばれないように、溜息を吐く。

 

「あぁ、アーカイブは残すわ。安心してね」

「ありがとう」
「行かないで」

「ありがとうございます!」
vお元気で!/_6000¥ _
「ばいばい」
「可憐ちゃん……」

「ナギさん…」
「お歌、本当に大好きでした」

 コメント。投げ銭機能。このサイトに実装された様々な言葉を伝えるモノ達が流れて行く。

 別れを惜しむ者。去る事を悲しむ者。苦しいと嘆く者。行かないでと懇願する者。

 無理なことくらい、誰もが分かっている。自分のコメント一つで何かが変わるなんて事は無いと、誰もが知っている。でも、抑えられないのだ。抑えられないから、本当は言葉で伝えたいコトを、文字に起こす。

 凄いな、と。

 本気で思う。

 

 私には推し、というものがいない。同業者にも、他業界にも。

 だからこれほどまでの熱量はわからない。

 わからないけれど、VTuber水鳥亜美を"推し"てくれているファンもいるから、理解は出来る。

 その上で、想う。

 凄い。凄いのだ。

 

 あの子は、カリンは、可憐は。

 ちゃんと、これだけの人数の心を動かしていたのだと。

 

「わたしはみんなに出会えて。皆さんに出会えて。本当に、幸せでした。この一年間、本当に。この喜びは、この思い出は、一生忘れません」

「初めての推しでした」
「ナギさん社会でやってけるわけないんだからずっといて」

「一生忘れないのはこっち」
_200¥ _
「悲しい」
「いつでも戻ってきていいのよ」

「愛してる」
「アーカイブ残してくれるのほんとありがたい」

 すべての曲が、パフォーマンスが、やるべきことが終わって、締めの言葉に入る。

 私達は沈黙。ただ、可憐の言葉を待つ。

 

「今日でわたし、皆凪可憐はMINA学園projectを卒業します。いなくなります。それを、悲しんでください。存分に泣いてください。祝福してください。応援してください」

 

 酷い話だ。

 泣かないで、くらい言えないのか。

 存分に泣けと。悲しめと。それすらも、皆凪可憐のためのエンターテイメントなのだから、と。

 

「もうわたしは帰りません。それがわたしのけじめです。皆凪可憐の最後は──みんなに囲まれて、幸せで、それで、それで」

「悲しい」
「じゃあね」

「スパチャできなくてごめん」
「信じられない」
「けじめかぁ」

「幸せならそれで」
「ありがとう」

 可憐は一度だけこちらに振り返って──満面の笑みを浮かべた。

 花が咲くような、世界が広がるような笑み。それはVの身体ではなく、カリンの表情として私達に伝わるけれど──しかし、しっかりと私達にも、可憐の笑みは伝わった。見えた。幻視したのだ。

 

「ありがとう、と。この言葉で締めくくらせていただきます」

 

 そして最後、カメラの方。リスナーの方へ戻って。

 

「ありがとう。みんな、ありがとう!」

「ありがとう」
「さようなら」

「また、どこかで」
f餞別だよ達者でな/_50000¥ _
「元気でね」
「ありがとう」

「泣いちゃう」
「あなたの歌は、本当に、命を救いました」

 

 そこで、配信は終了。

 同時に予約されていた投稿時間となり──とあるオリジナル曲が公開される。

 

 曲名を、『誕情』。感情の生まれる歌。翼の生えた皆凪可憐が、宙に登っていくMVと共に。

 綺麗な曲だった。苦しい曲だった。歌詞の中には"ありがとう"や"さようなら"はあれど、"またね"や"いつかどこかで"などといったフレーズは存在しない。

 もう、帰ってくる気はないと。

 いつか彼女を仙人のようだと称したリスナーがいた。そのリスナーはさっき6000円を投げていたけれど、まさにそうだ。あの子はやっぱり、どこか価値観が違って。

 それで──それが、宙に還っていく。かぐや姫みたいだ。お迎えは来なかったけれど、月に還ってしまって、もう。もう。彼女は戻っては来ないのだろう。

 

 リスナーの元にも、私達の元にも。

 

 ずるい。ずるい。ずるいよ。

 こんなにもトクベツなものを見せられたら。

 こんなにもトクベツな感傷を受けたら。

 

 欲しく、なってしまう。

 ああ──余りにも美しい、オワリが。

 

 

 

 ГГГ

 

 

 

 最後に。

 配信を終えて、万感の思いでいる私達は、最後の最後の最後に、全員で通話をした。

 スタジオから帰って、リスナーの反応を一通り見て、その、最後の夜に。各自の自宅で。

 

「じゃ、そゆことで~」

「おおい!? 軽すぎるだろ、私達は今死ぬほどしんみりしてるんだぞ!?」

「えぇ……。だって、めっちゃ綺麗に終われたじゃん。私の配信だったのにトラブル無し、全部筋書き通りなんて今後あるかどうか。いや今後は無いんだけどさ」

「そ……そういう事言うと、また悲しくなるだろう、馬鹿……」

「遥香さんってそんな涙もろかったっけ」

 

 深いため息を吐く。

 返してよ私の、私達の、あの可愛い可愛い皆凪可憐を。なんだって最後にコイツと話さにゃならんのだ。

 

「カリン」

「お、そっちで呼ぶんだ。いいけど、何?」

「最後の曲。めっちゃ良かったよ。悔しいくらい良かった。死んでほしい」

「何故に罵倒」

「間違えた、死ぬほど良かった。うざいくらい良かった。歌に関してはマジで尊敬してる。ちょっとうるっと来たもん」

「ん。ありがと」

「……私も、よかった、と、思います……」

「あちゃ、梨寿ちゃんもしかしボロ泣き? ま、それなら嬉しいんだけどね。それだけ私が思い出に残ったって事でしょ。一生梨寿ちゃんの心に住みついてやるから、覚悟しといてね」

「最後までその調子なんですね、可憐ちゃん。……私はリーダーとして、色々考えちゃいます……考えちゃうけど、ううん、本当は、本当に悲しいんだけど、でも、本当に良かったから。亜美ちゃんも言ったけど……涙が出るくらい、良い曲だった」

「ありがとね、千幸ちゃん」

 

 こんだけしんみりしてんのに、コイツはホント、ずっとヘラヘラと。

 ……助かるけどさ。これでカリンまで泣いてたら、多分朝まで泣いてたし。明日からも引き摺るだろうし。

 こんなヤツで助かったよ、ほんと。

 

「んじゃさ。もうそろそろ行くよ」

「え? ど、どこにですか?」

「え? いやだから、空に、かな? もう私は卒業した身。もう辞めた身。この場にいるのは場違いでしょ。ここの通話は、MINA学園projectのグループ通話なんだから」

「アンタはまたそういう言い方を……」

 

 その時、ちょっと寒気に似たものを覚えた。

 ずっとずっと黙っていた人が口を開いたからなのだと、その声を聴いてから理解した。

 

「──私は辞めないけどね」

「ん。そりゃ、もちでしょ。雪ちゃんは理想のためにがんばり~。雪ちゃんだけじゃないか。みんなだよ。遥香さんも梨寿ちゃんも亜美ちゃんも千幸ちゃんも、自分の欲しいもののために頑張りなよ。死ぬ気でさ。そいじゃま、八尋さんと参賀さんと砂川さんとオリベーによろしく~」

「その言い方だとまた"なんで俺だけ仇名なんだよ"って言われる……もういないし!」

「……グループからも、というかサーバーからも抜けてるね。はぁ、最悪だ。アイツ、さっぱりしすぎだろ」

「こっちの気持ちも考えないで……ってわけじゃないんだろうなぁ」

「うん。私達の気持ちもわかった上で、ああいう態度なんだと思う。ホント、凄いよね、可憐ちゃんって」

 

 今はあんまり触れんとこ。

 コレが心境である。

 

 あの。あの。

 ゾッとするくらい冷たかった──「私は辞めないけどね」という言葉。恨みの籠ったような、殺意さえ覚える言葉。いつもの丁寧なそれすらも忘れた本質の本質を垣間見てしまった気がする。

 北向小雪さん。VTuber南雪。

 彼女は多分、今の今まで私の想像していたような完璧超人では、ない、のだろう。多分。

 多分もっともっともっと──深く、暗くて、熱い何かを持ってる人だ。

 

 わかる。

 だって私がそうだから。

 

「……解散するか。明日からは五人だけど、ま、各自散々泣くと良い。配信で文句を口にするのも別にいいさ。アイツはそれ込みであんな態度だろうからな。だが、一周年記念イベントの練習は欠かさないように」

「うん。遥香さんもあんまり抱え込まないでね。一番心配なのは梨寿ちゃんだけど、その次に遥香さんも心配してるから」

「えぇ? 千幸お前、言うようになったなぁ」

「あはは。でも本気で心配してるから」

「……わかった、わかった。今日はゆっくり風呂にでも入って、早めに寝るよ。気持ちの整理はちゃんとつけておく。それじゃあな」

「私も……今日、泣くと思いますけど、頑張って整理します。お疲れ様でした」

 

 ぷつん、と。

 遥香さんと、そして梨寿ちゃんが落ちる。まぁ姉妹だからね。一緒に住んでて、片方が通話をし続ける、なんてことはないだろう。部屋も近いらしいからなんなら同じマイクで喋ってもいいと思うけど、とか思ったりしなくも無かったり。

 

「私も落ちるね。お疲れ様」

「あ、うん」

 

 千幸リーダーも離脱。

 気丈に振舞っていたけれど、やっぱりクるものはあるんだろうなぁ、と。

 

 それで。

 

「……」

「……」

「……」

「……はぁ」

 

 さぁ耐久の始まりです。

 どっちが先に落ちるか……ではなく。

 

 どっちが先に、切り出すか。

 

「失言、だったわ。最低な……最悪な事を言ってしまった」

「だろうね。雪さんにしては大分悪寄りな発言だったと思うよ」

「……そうね。劣悪だったわ、さっきの私」

 

 まぁ、その。

 光じゃない同士といいますか。

 私と小雪さんは、結構話が合うのだ。対外に向けた見せかけを作っている点と、実は結構暗い炎を宿している点で、ウマが合うというか。

 

「嫌われた、でしょうね」

「どうかな。カリンは人を嫌う程他人を愛してないと思うけど」

「それはまぁ……そうでしょうけれど」

「あんまり気負い過ぎないでもいいんじゃない、って言いたいけど、無理だよね小雪さんは」

「ええ、無理。私自身が許せないもの」

 

 だから、まぁ。

 

「じゃあまあ、ついでに私も許さないでいてあげる。自分で自分を責めるの辛いでしょ。事あるごとに私が責めてあげる」

「……ソレ、結構助かるけれど、貴女もつらいわよ?」

「ダイジョブダイジョブ。私も最近ストレス溜まってるから」

「なるほど、サンドバッグになれと。ならwin-winね」

「本気で言ってるから怖いんだなぁコレが」

 

 このように。

 実は私と小雪さんは、密接な関係なのです。

 そう──相互監視、という。くらーいこわーい、関係だったりするのです。

 

 

 あと単純にカリン苦手仲間ね。

 

 

 

 ГГГ

 

 

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