【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート 作:一般紳士君
部内裁判事件から少しして、私は元樹の家に泊まりに来ていた。
「おかえりー」
「ゲーム、持ってきた。それからアニメのとかも」
「おーう」
なんだかんだ言って裁判ごっこは楽しかったけど、元樹とせつ菜さんがキスしたことはやっぱり悔しい。元樹の方からせつ菜さんを求めたということが悲しかった。何年も一緒にいる私のことは全くそんなことしてくれないのに……。それに、元樹が誤魔化そうとしたことにも少し怒ってる。
でも、せつ菜さんに負けたとはまだ思わない。だって私は元樹の幼馴染だから。せつ菜さんよりも長く一緒にいるから。せつ菜さんが知らないような元樹のことを私はいっぱい知っている。元樹だってせつ菜さんのことよりも私のことを理解してくれているはず。
それに元樹とはファーストキスをあげあった仲だから。……もっともっと昔、小学生の時の話だし、あの時はまだ恋愛感情なんて自覚していなかったけど……それでもファーストキスであることには変わりない。だからまだ負けてない。100歩譲って現状僅差だとしても、最後に勝つのは私。せつ菜さんにも、もちろんしずくちゃんにも負けるつもりはない。あとは侑さんと歩夢さんも最近怪しいような……? 侑さんはこの前元樹に膝枕してもらってたし、歩夢さんもなんだか元樹との距離が近い気がする……。かすみちゃんは……うーん……元樹とは仲がいいけど、でもそれは友達みたいな感じだから多分大丈夫。少なくともかすみちゃんは恋愛感情を持ってなさそうだし……。
「すぐ晩飯できるぞ」
「晩ご飯何? 私お腹ペコペコ」
「今日の晩飯はカレーだ。それも2日目のな」
匂いを嗅ぐとほんのりカレーの美味しそうな匂いがした。
「カレー、好き。特に元樹の作ってくれるカレーは美味しいから大好き」
元樹の両親は度々家からいなくなるからよく自分でご飯を作っていたけれど、そのおかげか元樹の作るご飯はなんでも美味しい。その中でも特にカレーが好き。お泊まりをした時にカレーが出てくるとそれだけで嬉しくなってしまう。元樹もそれをわかっているのか、お泊まりの時はカレーが出てくることが多い気がする。
「璃奈は辛ぇカレーは好きかい?」
最近元樹はよくダジャレを言うようになった気がする。愛さんの影響かな?
「中辛は大丈夫だけど、辛口はダメかもしれない……」
「そう言うと思ってちゃんと甘口と中辛の中間にしてるよ。ま、いつもと同じだけどな」
何が嬉しいのか、鼻歌を歌いながらカレーを温めている。もしかしてあのダジャレを言いたかったの? やっぱり元樹はちょっと変わってる……。
「……私も何か手伝う。何すればいい?」
「そうだな……じゃあ冷凍ご飯を温めてもらおうかな。あ、あと皿も用意しといて」
「わかった」
冷凍庫を開け、ご飯を探す。中があまり整理されていないせいで探しにくい……。また今度ちゃんと整理してあげなきゃ。
「ご飯……ご飯……あった。でも1人分しかない……」
ようやく見つけたご飯は1人分だけ。2人で分けるには少なすぎる。折角のカレーなのに……。
「それは璃奈が食べろよ。俺は米なしで食うからさ」
「ううん。半分こしよ? 量は減っちゃうけど……」
元樹が作ってくれたのに、その元樹がご飯を食べられないのはダメ。元樹とは一緒のものを一緒に食べたい。
「……あっ、そうだ。確か冷凍庫にうどんが1袋入ってた気がする」
「うどん? ……あった、1袋だけだけど」
「そのうどんを使ってカレーうどんでも作るか」
「カレーうどん……!」
カレーうどんを作ってもらうのは初めて。あのカレーでカレーうどんを作ったら美味しいに決まってる。
「米の方を半分こして、うどんも半分こすればいい感じになるな。璃奈の好きなカレーが美味しく食べられるぞ」
「うん、元樹と一緒のものが食べられて嬉しい」
「そうだな、俺も嬉しいよ」
元樹も私と同じ気持ちで嬉しい。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
カレーライスもカレーうどんもどっちも美味しかった。
「元樹が作るご飯はいつ食べても美味しい。これからも私にご飯を作ってほしい」
これが今の私にできる最大限のアピール。私もしずくちゃんやせつ菜さんみたいに大胆なアピールができるようになりたい……。
「ん? うちに遊びに来たらいつでも作ってやるぞ」
「うん……」
予想通りではあったけど、やっぱり伝わらなかった。私の伝え方にも問題はあったけど、でも全く気づいてくれない元樹にも多少の問題はあると思う。しずくちゃんが抱きついても気づいてなかったし……もしかして元樹、恋愛に全く興味ないのかな……? いやでもせつ菜さんとはキスしたし……。
「……片付けしなきゃ」
これ以上考えるのはやめよう。考えれば考えるほど辛くなってしまう。
「片付けるか」
「お皿洗いは私がやるから、元樹はお風呂を入れてきてほしい」
「りょーかい」
「風呂入れてきたぞー」
「こっちも皿洗い終わった。お風呂が入るまで一緒にゲームしよ?」
持ってきたゲームを見せる。一緒にゲームをするのはなんだか久し振りな気がする。
「いいぞ。何やる?」
「これ。久し振りに勝負したい」
「これか、確かに久し振りだな」
結構昔のゲームだけど、元樹がこのゲーム好きだったからいっぱい勝負した。他の格ゲーもやったけど最後はいつもこれに帰ってきていた。
「懐かしいなぁ。俺もこれやりたくなってきた」
「うん。準備するから待ってて」
「昔滅茶苦茶やりまくったよな。勝率どんなもんだっけ?」
「うーん……元樹の方が勝ってたような……」
「そうだっけ……全然覚えてねぇや」
私も詳しく覚えてないけど、私が負け越してた気がする。
「準備できた。これ、コントローラー」
「さんきゅ」
久し振りに勝負できるのが楽しみ。でも元樹の様子が少し気になった。
「……手、抜こうとしてる」
「え?」
「コントローラーの持ち方、いつもと違う。本気じゃない」
格ゲーをやる時の元樹の持ち方はちょっと変な持ち方だったけど、何故かいつも強かった。だけど今は普通の持ち方をしている。明らかに手を抜く気満々だ。
「……元樹は、私とゲームするのイヤ……?」
「いや、そうじゃないんだけどさ……」
「うん、じゃあ本気で勝負。恨みっこなし」
「本気でやりたいんだけどさ……どんな風にやってたか忘れちゃった」
「忘れた……?」
「このゲームマジで久々だから全然覚えてないんだよ」
確かに最後に一緒にしたのは結構前だし、元樹は1人で格ゲーをするタイプでもないし、元樹は結構忘れっぽいから忘れててもしょうがない……のかも? 私も当時のことは詳しくは覚えてないし。
「俺どんな持ち方してたっけ?」
「こんなの」
「……マジで?」
「マジ」
「こんな気持ち悪い持ち方してたっけなぁ……。よくこれで璃奈に勝ててたな俺……」
なんであれで強かったのか今でもわからない。本人も覚えてないなら真実は闇の中。
「当時のことはなーんにも覚えてないけど、できる限り頑張るからそれで許して。もしかしたらやってるうちに思い出すかもしれないし」
「うん。元樹が思い出せるように私も手伝う」
「手伝うって……まさかボコボコにするつもりじゃ……」
「……さぁ」
「ひょぇ~」
私が本気でやったら元樹も思い出してくれると思っただけだから。別に昔負けてたからとかではないから。私の気持ちに気づかずに他の人とイチャイチャイチャイチャしてる元樹への八つ当たりとかではないから。
「また私の勝ち」
「もう1回、もう1回勝負。次は負けない」
「それはさっきも聞いた」
「うっ……3度目の正直って言うから……3度目じゃないけど」
「2度あることは3度あるとも言う。3度目じゃないけど」
「……次だ、次」
「もちろん。次も負けない」
何回も勝負したけど全部私の勝ち。でも圧勝というわけでもなくて、どれもいい勝負だった。昔のことは覚えてなくても元樹は強いみたい。
「うーん……」
次の勝負中、急に元樹の集中が途切れた。テレビじゃなく周りに意識がいってる。
「うぎゃああああ!」
「!」
どうしたのかと考えていると、突然元樹が叫びながら顔をブンブン振り始めた。あまりに突然のことで私もビックリしてしまった。
「ふぅ……」
「……どうしたの?」
「顔に蚊の野郎が来やがった」
「蚊……? そっか、元樹虫嫌いだもんね」
元樹は昔から大がつくほどの虫嫌いだ。今でもそれは変わらないみたい。蚊が顔にとまっただけであんなに騒ぐのはちょっとだけかっこ悪いとは思うけど……。
「電子蚊取りある?」
「ない」
「わかった。じゃあ私の家から持ってくる」
「なるはやで頼む」
「うん」
虫嫌いなのになんで持ってないんだろう……。
「ただいま」
「おかえり」
「これ、ここに置いてくからいつ使ってもいい。もう1つうちにあるから」
「さんきゅ」
電子蚊取りを手渡すとすぐにコンセントに繋ぎだした。
「璃奈が取りに行ってくれてる間に風呂沸いたぞ。先に入ってもいいぞ。こっちで入るだろ?」
「うん。でも、私が先に入っていいの?」
「もちのろん。電子蚊取りも持ってきてくれたし、小さいけどそのお礼」
「……覗かない?」
「覗かないに決まってるだろ」
「わかった。じゃあ入る。パジャマどこに置いてある?」
「ん? そこのタンスに入ってない?」
「……あった」
元樹の家に置いていた私のパジャマを見つけた。それと下着もパジャマの下に置いてあった。そういえば前に泊まった時に間違って下着を置いていってしまったんだった。元樹に見られたと考えると恥ずかしい。変なことされてないといいけど……。
「……覗かないでね?」
「覗かないってば。興味ないよ」
興味ない……。覗かれるのはさすがに恥ずかしいけど、でも興味ないと断言されるのもそれはそれで悲しい……。
「ん~……」
……覗きに来てくれない。さっきから声と足音は聞こえる。脱衣所の前をうろうろしてるみたい。でも決して脱衣所には入ってこない。何してるのかな?
「……消えた」
しばらくすると声も足音も聞こえなくなった。何がしたかったのだろう……。
お風呂からあがって部屋に戻ると、元樹はベッドに腰かけてテレビでアニメを見ていた。机の上には勉強道具が置かれていた。さっきまで勉強してたのかな?
「出た」
「じゃあ俺も風呂に入ろっかな。飲み物とか自由に飲んでいいからな」
「うん。わかった」
そう言うと、元樹はパジャマなどを取り出してお風呂に入りに行った。
机の上に置きっぱの勉強道具を眺める。英語の勉強をしてるみたいだった。あの元樹が自分から勉強をしていることがたまらなく嬉しかった。ノート代わりのコピー用紙を見ると、大きな文字で『勉強ヤダ』とだけ書かれていた。うん……やっぱり勉強はしてなかったみたい。
飲み物を取りにリビングへ行く途中、脱衣所のドアが開けっぱなしなのに気がついた。元樹はお風呂に入ってるはず。ドアを閉め忘れたのかな? 閉めてあげないと。
ドアを閉めようとした時、元樹の脱いだシャツが目に入ってしまった。ただのシャツのはずなのに、私にはそれがキラキラ光る宝物のように見えていた。
「……」
元樹はお風呂の時間がすごく長いから、出てくる前に戻せば大丈夫。戻すのが遅れても元樹なら部屋に脱ぎ捨てたと勘違いしてくれる……はず。
「やってしまった……」
シャツを部屋まで持ってきてしまった。バレたら困るし、やることをやって早く戻そう。
「スンスン……」
いい匂い……。直接元樹から嗅ぐ匂いが一番好きだけど、こうやってこっそりシャツから嗅ぐ匂いも背徳感があって好き。……でも、今日の匂いはなんだかいつもと違う。いつもの匂いの他にほんのりと甘い匂いが……。
「……しずくちゃん」
そういえば、今日しずくちゃんが元樹に抱きついていた。その時にしずくちゃんの匂いが移ってしまったのだろう。
それからせつ菜さんの匂いも多分移ってる。キスをしたということは多分抱きついてもいるはずだから。
「むぅ……」
しずくちゃんとせつ菜さんに負けたような気がするので、シャツをギュっと抱きしめて私の匂いも移すことにした。結局洗ってしまうから意味はないとは思うけど……。
「…………はっ」
しまった、完全に寝てしまっていた。部屋の電気は消えている。元樹は……いた。床に布団を敷いて寝ている。寝ている私に毛布をかけてくれたのもきっと元樹だ。……見られた。私がシャツを抱きしめているのを元樹に見られた。
「どうしよう……」
とりあえずこのシャツは脱衣所に戻そう。元樹は夜に洗濯機を回さないから多分大丈夫。頑張って誤魔化せば大丈夫。元樹のことだし、もしかしたら朝にはこのことを覚えてないかもしれない。
「ごめんなさい」
聞こえるはずないけど、寝ている元樹に対して謝罪の言葉を述べる。
「うぅん……りなぁ……」
「あっ……」
元樹が寝言で私の名前を呼んだ。どんな夢を見ているのだろう。それは本人にしかわからないけど、でも元樹の中にちゃんと私が存在しているという事実が嬉しかった。
「りなぁ……ヨガはやめろぉ……もえる……」
どうやら今日やったゲームの夢を見てるみたい。ヨガで燃やされてるみたいだけど、夢の中でも私に負けてるのかな? 私はそのキャラは使わないのだけど……。
「すぅ……」
「元樹……」
元樹のことが愛おしくなり、布団の中に潜り込んだ。起きなかったからそっと抱きつく。
「元樹、大好き」
そう告げると、元樹がギュっと抱きしめてきた。
「りな……」
起きてはいないみたい。さっきの言葉は聞こえていないだろう。抱きしめられたのもきっとたまたまだ。でも今はそのたまたまを堪能しよう。
感想とか評価とかいっぱいほしいな。
りなりーお泊まり回のサイドストーリーを書いてなかったので書きました。
諸事情で次の投稿も遅くなりそうです。