【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート   作:一般紳士君

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もうすぐ新年なので初投稿です。


サイドストーリー Part10/m

「ふぅ……今日も練習疲れたね」

「つかれた……。璃奈ちゃんボード『へろへろ~』」

「わっ! りな子大丈夫!?」

 

 今日の練習も終わり、部活で帰り支度をしながら談笑をしていると、疲れてへろへろになった璃奈さんがイスに座り込んだ。

 

「大丈夫? スポーツドリンク飲む?」

「飲みたい……」

 

 余っていたスポーツドリンクを璃奈さんに渡す。

 

「ごくっ……ごくっ……ぷはぁ、ありがとうしずくちゃん」

「どういたしまして。でも、本当に大丈夫なの?」

「うん、これのおかげで元気になれた。しずくちゃんもかすみちゃんも練習の後も元気なのすごいと思う。私も早くこうなりたい……」

「ふっふっふっ……かすみんは毎日トレーニング頑張ってるからね~。やっぱりスクールアイドルたるもの、スタミナは大事だもん!」

 

 元樹君から聞いた話だけど、私達が同好会を離れている間、かすみさんが部室を守ってくれていて、そんな状況でも練習を続けていたみたい。ほんと、かすみさんはすごいなぁ。

 

「しず子は?」

「私? 私は演劇部にいた時にいっぱい走り込みしてたから、そのおかげで前よりはスタミナはついてるかも。それに今日のメニューは筋トレだったし……」

「それでもすごい。私ももっと頑張らないと。璃奈ちゃんボード『やったるでー』」

 

 璃奈さんもイベントに向けてやる気満々みたい。私も、かすみさんや璃奈さんに負けないように頑張らないと。

 

「ところでしずくちゃん」

「何かな?」

「元樹とのお泊まりはいつするの?」

「え、えっとぉ……なんでそんなこと聞くの……?」

「なんとなく気になったから」

 

 どうしよう……。璃奈さんはきっと邪魔するようなことはしないだろうけど、今日この後お泊まりだって知られるのは恥ずかしいし……。

 

「……もしかして、今日?」

「……うん」

「ふーん……かすみんの前に、しず子とお泊まりするんだ……」

 

 かすみさんは複雑そうな顔で、愛さんと談笑する元樹君の方を見ていた。

 

「……もと男のばか

 

 なんて呟いたのかは聞き取れなかったけど、かすみさんの表情にはいろいろな感情が浮かんでいた。元樹君を非難しているようで、それでいて私に嫉妬するような、何かに期待しているような……そんな顔だった。でも、そのどれよりも顕著に表れている感情があった。顔をほんのり赤らめ、元樹君のことをジッと見つめている。他でもない私がよーく知っているその感情が、元樹君への恋慕が、かすみさんの顔に浮かんでしまっていた。

 

「かすみさんも……」

「……え? しず子、何か言った?」

「……ううん、何でもないよ」

 

 かすみさんも、元樹君のことが好きなの? 喉まで出かかった言葉を何とか飲み込む。かすみさんはすぐ顔に出るから、元樹君のことが好きなのも間違いないだろう。元樹君を見かけたらすぐに駆け寄るし、自分から抱きついたり、頭を撫でてもらって嬉しそうにしたり……今までの行動からもなんとなく察しはついていたけど……。でも、多分かすみさんは自分の想いに気がついていない。何か根拠があるわけではないけど……でも間違ってはないと思う。乙女の勘というものだ。そんなかすみさんにこの言葉を投げかけるのは悪手な気がした。気づくきっかけを与えてしまうかもしれないから。

 もしもかすみさんがそれに気づいてしまったら、きっと私なんかでは相手にならない。誰よりも可愛くて、璃奈さんと同じくらい元樹君と仲がよくて、お互いなにかと距離感が近いから、かすみさんがその気になれば元樹君もコロッと落ちちゃうかも……。だからかすみさんには気づいてほしくない。

 でも、かすみさんには気づいてほしいと思う自分がいる。自分の気持ちを知らず、気づいた時には元樹君は誰かと付き合っていて、全てが終わっていたなんて……私だったらきっと耐えられない。親友のかすみさんにはそんな思いなんて絶対にしてほしくない。

 

「……ず子」 

 

 はぁ……私はどっちを選べばいいんだろう。自分の気持ちを優先するべきか、それとも親友を優先するべきか。元樹君なら……うん、きっと何のためらいもなく後者を選ぶだろう。彼は自分の利益より他人の利益を優先できる、とっても優しい人だ。下心なんて一切感じさせないその優しさに触れて、気づいたら私は彼のことが好きになっていた。心の底から愛してしまった。初めて誰かと添い遂げたいと思ったんだ。

 私も元樹君みたいに優しい人になりたい。いつだって人に優しくありたい。ずっとそう思ってた。元樹君は私の好きな人であり、理想の人でもあるから。

 かすみさんには幸せになってほしい。璃奈さんやせつ菜さんも私にとって大切な人達だけど、私以外の人と彼が結ばれるのであれば、願わくばそれはかすみさんであってほしい。かすみさんなら、私も心から祝福できる気がする。だってかすみさんは、私なんか遠く及ばない、誰よりも可愛いスクールアイドルだから。ああ、やっぱり私なんか敵わなかったと素直に思えるだろうから。でも……でも、元樹君を諦めることなんてできないよぉ……。

 

「もうっ、しず子ってば!」

「ひゃっ! か、かふみひゃん!?」

 

 かすみさんが急に私の頬をつまんで引っ張ってきた。

 

「いひゃいよ……」

「あ、ごめん」

 

 ちょっぴり力が強くて痛かったけど、すぐに放してくれた。

 

「……あれ、璃奈さんは?」

 

 気がついたら璃奈さんがいなくなっていた。さっきまで一緒にいたはずなんだけど……。

 

「なんか用事があるって先に帰っちゃったよ」

「いつの間に……」

「しず子がうんうん唸ってる間にだよ。ちゃんとしず子にも挨拶してたのに、聞いてなかったの?」

「うそ、全然気づかなかった……」

「もぉ、人の話はちゃんと聞かないと」

 

 私はかすみさんのことで悩んでたというのに……。ちょっとだけムカッとしちゃったから、かすみさんの頬をつねって八つ当たりする。

 

「……急に何するのさ」

「別にぃ」

「変なしず子ー。……でも、さっきよりはいい顔になった気がする!」

「そうかな?」

「そうだよ。さっきまでずっと悲しそうな顔してたもん」

 

 悲しそうな……確かにそんな顔してしまったかもしれない。

 

「もと男と愛先輩が楽しそ―に話してるからってさ、そんなに重たく考えなくてもいいのに」

「……え?」

「愛先輩に嫉妬してたんでしょ? 私の大事なもと男が取られちゃう~って」

「そ、そんなこと考えてないもん!」

「ほんとかなぁ?」

「ほんとだもん」

 

 さっきはかすみさんのことで頭がいっぱいで、愛さんのことを考えられなかったから嫉妬なんてしてない。でも今は少しだけ余裕ができちゃったから……愛さんのことがちょっぴり羨ましい。

 

「……なんか、もと男と愛先輩……いつもより近くない?」

「言われてみればそうかも……」

 

 2人の距離はいつもと比べて、ほんの少しだけ近いかもしれない。そもそも元樹君と愛さんが2人でいるということ自体が珍しい。今日は一緒に練習してたみたいだし、その時に何か関係が進んでしまうような出来事があったのだろうか。天然たらしの彼のことだから、その可能性も十分ある。

 

「むぅ……かすみんも混ざっちゃお!」

 

 かすみさんは少しむくれて考え込み、2人の会話に混ざることにしたみたいだ。

 

「しず子も混ざるでしょ?」

「私は……私は遠慮しようかな」

 

 考えがまとまらず頭の中がぐちゃぐちゃの状態だから、今は元樹君とちゃんとした受け答えができる気がしない。支離滅裂なことばかり言ってしまうかも。彼を困らせるようなことはしたくない。

 

「じゃあかすみんだけで行ってくるね。……しず子も、あんまり考えすぎちゃダメだよ」

「うん、楽しんできてね」

 

 今の私は笑顔を作れているだろうか。作れていたとしても、きっとぎこちない笑顔だ。だってかすみさんに見抜かれちゃってるもん。

 

愛せんぱーい! かすみんも混ぜてくださいよ~

かすかすも? もちろんいいよー

かすかすじゃなくてかすみんですぅ!

さっきまで愛先輩と一番強いもんじゃは何か議論してたんだけど、かすみはどのもんじゃが最強だと思う?

最強のもんじゃぁ? 一番美味しいもんじゃってこと?

いや、戦闘力の話

もんじゃの戦闘力って何!?

 

 元樹君とかすみさんが楽しそうに……楽しそう、なのかなぁ? 変な話題だし、一番強いもんじゃはどれかなんて急に聞かれたらかすみさんでなくても困惑する。私もついていける気がしない。

 こんな話題でも2人が話しているのを見るだけで胸がモヤモヤしてしまう。璃奈さんやせつ菜さんではこんな風にはならないのに、どうしてかすみさんの時だけ……。

 

「はぁ……」

「しーずくちゃん、ため息なんてついてどうしちゃったのかな~?」

「彼方さん……」

 

 私のことを気にかけてくれたのか、彼方さんが後ろから優しく抱きしめてくれた。

 

「何でもないですよ。ただ練習で疲れちゃってて……」

「ほんとにぃ? 何か悩みがあったんじゃないの? もと君関連のことで」

「やっぱり、彼方さんにはバレてしまいますか……」

 

 彼方さんは本当に鋭い。誰かが悩んでいる時、いつもいち早く気づくのが彼方さんだ。膝枕を求めてきたり普段は甘えん坊のお姉さんなのに、辛い時は逆に甘えさせてくれる頼りになる優しいお姉さんだ。遥さんという妹さんがいるみたいだし、家でもきっと優しいお姉さんなのだろう。私は一人っ子だから、遥さんのことが少しだけ羨ましい。

 

「ふっふっふっ、彼方ちゃんには皆のことなら何でもお見通しなんだぜ~。それで、何があったのかなぁ? 彼方ちゃんに話してごらん」

「……場所を変えてもらってもいいですか?」

 

 元樹君はもちろん、かすみさんにも話の内容を聞かれたくない。

 

「もちろんいいよぉ。屋上とかどう? 今日は風が気持ちいいんだぁ」

「屋上でお願いします」

「じゃあ行こっか」

 

 彼方さんに手を引かれて部室から出ようとすると、ちょうどお手洗いから戻ってきた果林さんと遭遇した。

 

「あら、2人してどこか行くのかしら?」

「うん、ちょっとしずくちゃんと散歩してこようかなぁって」

「そうなのね。なら部室が閉められないように戻ってくるまで私が残っておくわね」

「ありがとね~」

「あの……」

 

 手をひらひら振って中に入っていく果林さんを呼び止める。

 

「果林さんもついてきてくれませんか……?」

「私も散歩に?」

「いえ、散歩ではなく……」

「……わかった、私もついてくことにするわ」

 

 言いよどむ私を見て何か察してくれたのか、果林さんもついてきてくれることになった。

 

「戻るまで残ってくれるよう誰かにお願いしてくるわね」

 

 伝言しに行った果林さんが戻ってくるのを待つ。

 

「果林ちゃんにも悩みを聞いてもらうんだね」

「はい。果林さんは経験豊富そうですから」

「そうだねぇ。果林ちゃんならしずくちゃんの悩みも解決してくれるかも」

「そうだといいんですが……」

「お待たせ。元樹君が残ってくれるみたい。下校時刻までならどれだけ散歩しててもいいって言ってたわ」

「さすがもと君、優しいねぇ。その優しさにいっぱい甘えようかな」

 

 

 

 3人で屋上まで来た。彼方さんの言っていた通り気持ちいい風が吹いている。風を感じながら並んでベンチに座る。

 

「うーん、やっぱり風が気持ちいいな~」

「そうですね。ここでお昼寝したくなる彼方さんの気持ちもわかります」

「それで、ここで何の話をするのかしら。しずくちゃんは悩みがあるんでしょ。スクールアイドルのこと? それとも……元樹君のこと?」

 

 彼の名前が出てきて、思わずビクッとしてしまった。

 

「果林ちゃんも気づいてたんだねぇ」

「そりゃ気づいてるわよ。あんな大胆にアピールしてたら誰だってわかるわ」

 

 果林さん、当の本人はまったく気づいてくれないんです……。

 

「そっちじゃなくて、しずくちゃんが悩んでるってこと」

「ああ、そっちね。しずくちゃんが何か思いつめた顔をしてたから、もしかしたらって思っただけよ。でも当たってたみたいね」

「さすが果林さん、鋭いですね」

 

 元樹君も、人の恋心にこれくらい鋭かったらよかったのに……。

 

「さっきの反応を見るに、悩んでるのは元樹君関連のことよね?」

「……はい」

「いいわね、恋って。青春って感じがするわ」

「青春……果林さんが思ってるほど、恋っていいものじゃないかもしれませんよ」

「あら、そうなの?」

「もちろん好きな人といっしょにいると楽しいですし、名前を呼ばれたり褒められたりすると無性に嬉しくなって、ああ、幸せな時間を過ごしてるなぁと思ったりもします。でも、想いが伝わらないと辛いですし、好きな人が他の女の子と一緒にいるのを見るとモヤモヤしてしまいますし、、ほんとはいやいや付き合ってくれてるだけなんじゃないかと邪推してしまうこともあります。ライバルが多いと、今彼は誰か他の人と出かけてるのかな、もしかしたらもう誰かと付き合ってるかも……とどうしても考えてしまうんです」

「確かにもと君はライバルが多いからねぇ。璃奈ちゃんは幼馴染だし、せつ菜ちゃんは積極的だし」

「そうなんですよ。璃奈さんみたいに元樹君と一緒に帰ったりできないし、せつ菜さんみたいに元樹君とキスしたこともないし……ただでさえ強力な2人なのに、私だけまだ何もなくて……。それに、ライバルが友達だったり仲のいい先輩だったりすると、決着がついた時に関係が壊れてしまうのが怖いんです」

「確かにそういうのはドラマとか小説ではありがちね。でも、璃奈ちゃんとせつ菜は大丈夫じゃないかしら」

「はい。もし私が元樹君と付き合うことができたら、きっと2人は祝福してくれると思います。逆にその2人と元樹君と付き合うことなったとしても、私は祝福できると思います。……でも、心の奥ではきっとその人に嫉妬してしまいます。どうして私じゃないんだろうって。いつも通りを装っても、そういうのって隠しきれるものではないと思うんです。それが重なって、いつかその人との関係が壊れてしまうんじゃないかって……」

「う~ん……何か得るためには何か失う必要がある、って言ったりもするしねぇ」

「やっぱり難しいんでしょうか……」

「いっそのこと、皆で元樹君と付き合ってみるとか?」

「それって……」

 

 もしかしなくても元樹君ハーレムなのでは……?

 

「これなら友情も愛情も両立できると思うの」

 

 だからってハーレムだなんて……。元樹君を独り占めしたくなっても、ハーレムだとなかなか独り占めできない。

 

 

 

『元樹君、今夜は一緒に過ごしたいなぁ……なんて』

『ごめん、今日はかすみとも約束してたんだ。3人でもいい?』

『そんな……』

『ごめんねぇしず子ぉ。かすみんが先約なんだもん!』

『むぅ~!』

『いひゃい!』

 

 

 

 独り占めするどころか、2人きりで遊ぶのも難しいかも……。

 

 

 

『元樹君が欲しがってたあれ……えっと、何だっけ……』

『あれ? ……ああ、プレイエアポート5か』

『そうそれ。私それの抽選に当たってたよ』

『マジで? 俺外れてたんだよなぁ……』

『買ったらうちに遊びに来る?』

『行く行く!』

『次の日が休みの時とかにしようね。それなら夜通し遊べるから……ね?』

『そうだな。……あっ、そうだ。かすみと侑先輩も欲しがってたよな。2人も呼んじゃうか』

『……』

『4人でオール確定だな。……どうした? 何むくれてるんだよ』

『なんでもなーい』

 

 

 

 いつになっても元樹君は鈍感なままな気がする……。100歩譲ってかすみさんは許せるけど、侑先輩まで呼んだらもう戦争だ。ハーレムに新しく人を増やさないでほしい。侑先輩に限って元樹君とそういう関係になることはないだろうけど、元樹君のことだからあり得ない話ではない。

 元樹君と電話ですら話せなくて、寂しい夜を過ごす日もあるんだろうなぁ。

 

 

 

 はぁ……今日は元樹君から何も連絡こなかったなぁ。いつもならこっちから連絡したら、寝るまでには絶対に返ってくるのに……。同僚と飲み会してるのかなぁ。……そういえば昨日、元樹君からいい居酒屋知らないかって聞かれたな。きっとどのお店で飲み会するか決めようとしてたのだろう。

 今日は来てくれると思ってお酒いっぱい買っておいたけど、しばらくは冷蔵庫の中で寝てもらうことになりそう。……どうしよう、私が飲んじゃおうかな? でも、いざ元樹君と宅飲みになった時に足りないと嫌だし……うん、やっぱり我慢しよう。最近少しだけ……本当に少しだけ丸くなってきた気もするし、そういう意味でも我慢した方がいい。

 なくなりかけてたゴムも補充したけど、こっちもしばらく使うことはなさそうかな。ほんとは生がいいんだけど、私の女優業が大切だからって絶対にしてくれないし……。璃奈さんはお願いして一度だけ生で中に出してもらったみたいだけど……いいなぁ。璃奈さんが羨ましい。私も一度でいいからしてもらいたい。

 そもそも元樹君には性欲がなさすぎる。たまには元樹君から誘ってほしい。いつも私から誘わないとその気になってくれないんだもん。そのくせに一度始めたら何度も何度も出すんだから……。しかも毎回激しいし。終わった時には私はいつもくたくただ。昔は私の方が体力があったのに、今では元樹君の方が元気だもんなぁ。でも、いつも終わった後に優しく触ってくれるのは嬉しい。愛してくれてるって実感できる。

 

『……会いたいな』

 

 元樹君のことを考えてたら会いたくなってしまった。ほんとは同棲したい。そうすれば家に帰ればいつだって大好きな人と会えるのに……。でも、平等にって皆と約束してるから我慢するしかない。

 好きな人と結ばれたのに、どうして会いたい時に会えないんだろう。会いたいよ、元樹君……。

 

 

 

 ……すごく悲しい未来だ。やっぱりハーレムなんて……いや待って。こんなシチュエーションも……

 

 

 

『もう帰るの?』

『ああ、璃奈と一緒にゲームする約束があるから』

『……もっと、一緒にいたいよ』

『じゃあしずくも一緒に来る?』

『やだ……今日は2人っきりがいい』

『……仕事で何かあったのか?』

『……』

『……よし、今日は一緒にいよう。璃奈との約束は断ることにするよ。後で怒られるだろうけど

『いいの?』

『もちろん。しずくが悩んでるのにほっとくわけないだろ?』

『嬉しい……ありがとう、元樹君。大好き』

『俺もしずくのこと大好きだぞ。明日は休みだし、どこか一緒に出かけようか』

『行きたい。オシャレなレストランとか、ワンちゃんカフェとか』

『いいよ。しずくの行きたいところに行こう』

『あとは夜も……今日は生でしたい』

『え、それは……』

『いいの。今日は元樹君をいっぱい感じたいの』

『……わかった。責任はとるから』

 

 

 

 ―――みたいな展開は意外といいかもしれない。いつもは先約の人を優先して、なかなか独り占めできない元樹君だけど、この日だけは特別に先約を蹴って私を優先してくれて……私の悩みを真摯に聞いてくれて、その後一晩中愛を囁き合うんだ。きっと悩みなんて吹っ飛んでしまう。えへへ、きっと翌日のデートもすごく幸せなんだろうなぁ。

 

「……冗談で言ったつもりだったんだけど、なんだか幸せそうね……」

「……はっ!」

「おかえり~」

 

 そうだ、彼方さんと果林さんにかすみさんのことを相談してたんだった。

 

「すみません、少しぼぉーっとしてしまいました」

「しずくちゃんが幸せそうだったからいいけどね~」

「それで、しずくちゃんの悩みって何だったのかしら?」

「それは―――」

 

 さっきのかすみさんことを話す。もちろん私が今日お泊りすることは伏せて。

 

「ふぅん、かすみちゃんがねぇ……」

「薄々察してはいたけど、かすみちゃんまでもと君のことが好きなのかぁ。ほんと、罪な子だねぇ」

「私はどうすればいいんでしょう……」

「しずくちゃんはどうしたいの?」

「私はかすみさんに辛い思いをしてほしくないです。恋心を自覚した時には全てが終わっていたなんて誰でも辛いじゃないですか。でもそれは同時に私が元樹君を諦めることになって……」

「どうして諦めることになるの?」

「だってかすみさんは私の何倍も魅力的ですから。私より可愛いし愛嬌もあって、元樹君とも仲がいいし、かすみさんと話してる時の元樹君はすごく楽しそうで……私なんかじゃどう頑張っても勝てないですよ……」

「そんなことないと思うけどなぁ。しずくちゃんもかすみちゃんに負けず劣らず可愛いし、元樹君もしずくちゃんと話してる時は楽しそうだよ」

「本当ですか?」

「そうだよ。そもそも魅力が可愛さだけとは限らないでしょ? かすみちゃんにはかすみちゃんの、しずくちゃんにはしずくちゃんの魅力がちゃんとあるんだよ。それにまだ自分で気づいてないだけだと思うなぁ」

「それに元樹君の好きなタイプがかすみちゃんみたいな子とは限らないでしょ? かすみちゃんみたいに賑やかな子より、しずくちゃんみたいな落ち着いた子が好みかもしれないじゃない。こればっかりは本人に聞かないとわからないけどね」

「落ち着いているのは璃奈さんも……」

「うーん……言おうか迷ったけど、しずくちゃんのために教えてあげよ~。しずくちゃん、耳貸して」

「何ですか?」

 

 彼方さんが耳打ちで何かを伝えようとしているので、言われた通りに耳を貸す。

 

もと君はね、多分大きい胸が好きだよ

「え!?」

 

 それはかなり大きな情報かもしれない。せつ菜さんには多分劣るけど、かすみさんや璃奈さんよりは確実に大きい。これが本当ならば、私にも勝機があるかもしれない。

 

「ソ、ソースは……」

「ソースはぁ……もと君の名誉のためにひ・み・つ」

 

 元樹君の名誉のためって、一体どんなソースなんだろう。それにどうして彼方さんがそんなことを知っているのか。……もしかして

 

「もしかして彼方さん、元樹君と……」

「違う違う、もと君と付き合ってるとかじゃないよ」

「でも、彼方さんよく元樹君を抱き枕にして寝たりしてましたし……」

「彼方、そんなことしてたの?」

「もと君と一緒だと何故だかよく眠れるんだよ~」

「元樹君も男の子なのよ? 彼方に抱き枕にされるのはちょっと刺激が強すぎるんじゃない?」

「でももと君に変なことされたことないし、変なことしないって安心感もあるからだいじょ~ぶ。……しずくちゃんもそんなにむくれないで。別にとったりはしないから」

「彼方さんにその気はなくても、元樹君は本気にしちゃうかもしれないじゃないですか」

「じゃあしずくちゃんも一緒にお昼寝する? 合法的にもと君に抱きつけちゃうよぉ?」

「……遠慮しておきます」

 

 さすがに元樹君を抱き枕にするのもされるのも恥ずかしい。せめて付き合った後に。それか家の中だったり他の人に見られない場所でだったら……。

 

「話を元に戻すけど、絶対に勝てないと決めつけるには早いってこと。しずくちゃんにはかすみちゃんとは違った魅力があるんだから、そこを使ってアピールすればいいの」

「胸、ですか?」

「ま、まあ色仕掛けも1つの手ではあるわね。実際かすみちゃんには難しいわけだし……。と、とにかく! かすみちゃんと元樹君のどっちかじゃなくて、どっちも選べばいいのよ。かすみちゃんに自分の気持ちに気づかせてあげて、その上で元樹君を手に入れる。私は無理じゃないと思うわよ」

「彼方ちゃんもそう思う~」

「2人がそう言うのであれば……私ももっと頑張ってみます。相談に乗ってくれてありがとうございました」

「どういたしまして~」

「私でよければいつでも聞いてあげるわよ」

 

 彼方さんと果林さんに相談してよかった。私1人だったらきっと元樹君を諦める道を選んでた。私はかすみさんのことも、元樹君のことも諦めない。かすみさんに気づいてもらった上で璃奈さん達に勝つ。……ハーレムも少しだけいいかなって思ったけど、ハーレムならハーレムで一番は私がいい。

 まずはかすみさんと話さなくちゃ。まだ部室に残ってくれてるかなぁ?

 

「あーあ、やっぱり恋っていいわねぇ。私もしてみたいわ」

「果林ちゃんは恋したことないの?」

「そうねぇ。周りの男の子からそういう目で見られることは多々あるけど、高嶺の花と思われてるのかなかなか声をかけてくれないのよね。自分から声をかけてくれるなら少しは考えてあげても……いえ、やっぱりダメだわ。下心が見え見えだもの」

 

 確かに果林さんはスタイルがいいから、男の子はどうしてもそういう目で見ちゃうのかも。同性の私でもついつい見ちゃう時があるし……。

 

「その点元樹君はすごいわよね。私と話していてもほとんど下心を感じないんだもの。いっそのこと元樹君と付き合おうかしら。……冗談よ。冗談だからそんな目で見ないで」

 

 はぁ、心臓に悪い冗談だ。果林さんみたいな人が元樹君を堕としにかかったら一瞬で決着がついてしまう。

 

「そろそろ戻ろっか。しずくちゃんもかすみちゃんと話さないとでしょ?」

「はい。本当にありがとうございました」

「どういたしまして。ほら、早くしないとかすみちゃん帰っちゃうわよ」

「そうですね、先に戻ってます」

「いってらっしゃーい」

 

 果林さんに急かされ、2人よりも先に部室に戻る。かすみさん、残ってるといいなぁ。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


このまま続きを書いてたら投稿がもっと遅くなりそうなので、ここで一旦区切って投稿しました。しずくちゃんのサイドストーリーはもうちっとだけ続くんじゃ。
活動報告を使えないのが不便だと思いました(小並感)
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