【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート   作:一般紳士君

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新年初投稿です。


読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。本年もクソザコ投稿頻度と進行速度で頑張っていきますので、本作をよろしくお願いいたします。


サイドストーリー Part11/m

 部室に戻ると、楽しそうに談笑するかすみさんの姿があった。間に合ってよかったぁ。

 

「あ、しず子」

「おかえりしずく」

「ただいま戻りました」

「カナちゃんとカリンは一緒じゃないの?」

「はい、もう少し屋上でのんびりしてから戻ってくるそうです」

「3人で何の話をしてたの~?」

「大したことじゃないですよ。ちょっとスクールアイドルのことで……」

 

 話のメンバーは元樹君、かすみさん、愛さんの3人に加え、エマさんも増えていた。

 

「ところで、皆さんは何を話してたんですか? まだ一番強いもんじゃの話を?」

「いや、さすがにその話は終わったよ」

 

 よかった、まだそんな変な話をしてたのならかすみさんと話すどころではない。

 

「そうだ、折角だからしずくに決着をつけてもらおう」

「決着……?」

「最強の食べ物は何か話してたんだけど、なかなか決まらなくってさー」

「……最強って、一番強いってことですか? 美味しさではなく……」

「そうそう」

 

 なんか悪化してる気がする……。どうしてもんじゃから食べ物全部にまで範囲を広げてしまったのか。そもそもどういう経緯で一番強いもんじゃの話になってしまったのか。その経緯だけは気になる。

 

「かすみんはコッペパン、もと男はハンバーグ、愛先輩はぬか漬けで、エマ先輩は決められないって。しず子はどれが最強だと思う?」

 

 心底どうでもいい……。早く場所を変えてかすみさんと話がしたいけど、答えないと行かせてくれなさそうだ。期待の眼差しで私のことを見ている。

 

「えっと……ハンバーグ、かな」

 

 適当に元樹君に合わせて答えておく。

 

「よしっ、俺の勝ち!」

「くっ……コッペパンだって負けてないのにぃ……」

「うーん、ぬか漬けダメかぁ……」

「ハンバーグ食べたくなってきちゃったなぁ……」

 

 そもそも、なんでこの4人はあんな話題でこんなに真剣になれるのだろうか。仲がいい、平和な日常と捉えることもできるけど……はぁ、なんでこんな変わった人を好きになっちゃったんだろう。まぁそれが元樹君の魅力の1つなのだけれど。後々付き合った時のことを考えると、元樹君についていけるよう訓練した方がいいのかな……?

 

「そんなことより、かすみさん」

「なぁにしず子?」

「少しだけ話したいんだけど、いいかな?」

「いいけど、何の話?」

「ここでは言えない話というか……」

 

 『かすみさんも元樹君のことが好きなんでしょ?』なんて元樹君の前では絶対に聞けない。

 

「ふーん……」

 

 かすみさんは怪訝な顔で私のことを見ている。その気持ちはわからなくもないけど、全部かすみさんのためだ。

 

「ま、いいけど。それじゃ行こ!」

 

 かすみさんに手を引っ張られる。

 

「元樹君、戻るのが遅くなったらごめんね」

「気にするな。待ってるから好きなだけ話してきていいぞ」

「愛さんも残ってようかなー。元樹も話し相手がいないと寂しいでしょ?」

「じゃあ私も!」

 

 愛さんとエマさんは部室に残って元樹君とまだお話しするみたい。羨ましさよりもどんな話題なのかが気になる。まだ最強の食べ物の話を続けるのだろうか……。

 

 

 

 かすみさんに連れられるがまま中庭に移動する。

 

「話って何なのさ。わざわざ場所を変えたってことは聞かれたくない話なんでしょ? もしかしてもと男の話?」

「そうといえばそう、かな」

「やっぱり……しず子ってばもと男のこと大好きだもんね」

「それは否定しないけど……」

「それでぇ? しず子はもと男に告白でもするの?」

「そ、それはいつかはしたいと思ってるけど……夜景の綺麗な場所とか、大きな木の下とか、お互いの家で2人きりの時とか、ここしかない!って思った時にできたらいいなぁ」

 

 その時になったら詰まらずにちゃんと『大好きです。私と付き合ってください』って言えるかなぁ? このセリフだけはいっぱい練習しておかないと。たった一度の本番で、この短いセリフに私の想いを余すことなく全て込められるようにしなきゃ。

 

「ほんとは元樹君の方からしてほしいんだけどね? 私の手を取ってお互い見つめ合いながら、『しずくのことが好きだ。愛してる。結婚を前提にお付き合いしてください』なんて言われたら……えへへ、結婚だなんてまだ気が早いよぉ」

「もと男のことがどれくらい好きなのかは十分伝わったからぁ! ていうかしず子は告白が家でもいいの? もっとこう、ロマンチックな場所の方がよくない?」

「え~いいじゃん。告白して付き合った後、最初は恐る恐る手を重ねたりするんだけど、段々とお互い大胆になってきてキスしたり抱きしめ合ったりして、元樹君が私のことをそっと押し倒して私の服に手をかけるの。恥ずかしいけど私もそれを受け入れて、そのまま初めてのセッ」

「わーわーわー! いきなりなんてこと言い始めるのさ!」

「あれ? 何か変なこと言った? 展開がいきなりすぎたかな?」

「そうじゃないから! いや、展開もいきなりだったけど、言葉があまりにも直接的すぎるって言ってるの! かすみん達スクールアイドルなんだから、もっとオブラートに包んで表現してよ!」

「体を重ねるとか、一晩中愛し合うとか?」

「うーん、さっきよりかはマシだけど……。そもそも、そんなにもと男としたいの?」

「したいに決まってるよ。好きな人と繋がって、いっぱい気持ちよくしてもらいたいもん。いっぱい愛したいもん。いっぱい愛してもらいたいもん」

「うぅ、まさかしず子とこんな話することになるとは思わなかったよ……」

「……まぁ、かすみさんにはえっちなことはまだ早いかもね」

「そ、そんなことないもん! しず子と同じ年なんだから差なんてないもん! 好きな人がいないから気持ちがわからないだけだもん! かすみんだって週1でオナむぐぐっ!」

「ちょ、かすみさん!」

 

 かすみさんが大声でとんでもない言葉を口走りそうになったので、慌てて手で口を塞ぐ。あのかすみさんがあんなことを叫んでいるところを誰かに見られでもしたら、明日から学校でかすみさんが変な目で見られてしまう。もしかしたら先生に呼び出されて怒られちゃうかも。それだけは避けなければならない。

 話を思いっきり逸らした自分のせいとはいえ、知りたくないことまで知ってしまった。……かすみさん、週1でするんだ……。さすがに私よりは少ないけど、そもそもかすみさんがしていること自体に驚いた。あんまりそういうイメージが湧かないというか、とにかく意外でしかない。……私と同じように元樹君のこと考えてしてるのかな? ……これ以上考えるのはやめておこう。これからかすみさんを見る目が変わってしまうかもしれない。

 

「むぐぅ……ぷはっ! もうっ! いきなり何するのさ!」

「だってかすみさんがとんでもないこと言いそうになるから……」

「止めてくれたことには感謝するけどぉ……でもずっと口塞ぐ必要ないじゃん! うっかり教えたくなかったことも教えちゃったし……」

「ごめんなさい……」

「もと男には絶対に秘密だからね?」

「もちろん」

 

 元樹君どころか、他の人にも教えられない内容だよ……。

 

「はぁ、結局しず子がしたい話って何だったの? かすみんとえっちな話がしたかったの? まあこんな話もと男の前ではできないもんね。場所を変えたのにも納得だよ」

「そうじゃなくて……こほんっ。単刀直入に聞きます。かすみさんにとって元樹君ってどういう存在?」

「もと男は……かすみんの大切なファン第1号かな。初めて会った時、『可愛い。好き。かすみんのファンになります』って言ってくれたもんね~。いつかかすみんのファンクラブができたら、もと男に会員番号1番をもらってもらうの! えへへ、喜んでくれるかな~? あっ、これはサプライズにするつもりだから、しず子も内緒にしててね!」

 

 ちょっと待って。かすみさん、元樹君に好きって言われたことあるの? 私はお願いしないと言ってくれなかったのに……。いいなぁ、かすみさんが羨ましい。私のファンクラブでも1番になってくれないかなぁ……っと、この話はまた今度にしよう。

 

「少し質問を変えるね。かすみさんは元樹君のことどう思ってるの?」

「どう思ってるって言われても……もと男は仲のいい友達だよ。一緒にいて楽しいし、話も弾むし、気も合うし……。あともと男は人としてすごいと思う。誰にも優しいし、いっつも周りのこと気にかけてて、険悪な雰囲気になりそうな時はもと男がうまくまとめてくれて、そういうところはほんとにすごいと思う。苦手な勉強とか運動も克服しようとしてて、そういうところはかすみんも見習わなくちゃって」

「かすみさんもまた勉強会する?」

「うっ……遠慮しとく」

「じゃあ異性として元樹君のことどう思う?」

「異性として……それって恋愛相手としてってこと?」

「それでもいいよ」

「うーん……恋愛相手……まぁもと男はかっこいいし、かすみんのこと大切にしてくれるし、可愛がってくれるし、優しくしてくれるし、褒めてくれるし、頭撫でてくれるし、ギュってしたら優しく抱きしめ返してくれるし……なんていうか、もと男はすごくあったかい。嬉しい時は一緒に喜んでくれるし、楽しい時は一緒に楽しんでくれるし、悲しい時は慰めてくれて……一緒にいるとかすみんの心までぽかぽかしてくるの。しず子が好きになるのもわかる気がする」

 

 それは痛いほどわかる。私も元樹君のそういうところが大好きだから。やっぱりかすみさんも元樹君のことが好きなんだ。友達としてではなく異性として。

 

「でもちょっと頼りないところは嫌かも。力仕事ももと男には任せられないし、かすみんが怖い人達に襲われちゃって助けに来てくれても返り討ちにされそうな気がする」

「あー……ちょっとわかるかも。私もデートには白馬に乗って迎えに来てほしいんだけど、元樹君だとお馬さんに振り落とされちゃいそう」

「それはもと男じゃなくても……しず子はもと男と一緒に出かけたことあるの?」

「ないけど……何、かすみさん」

 

 何故かニヤニヤした表情でこちらを見てくる。

 

「ふっふ~ん、かすみんはもと男と出かけたことあるもんね~。しかも2人きりで!」

「えっ!? い、いつ? どこに行ったの?」

「確か1ヶ月くらい前かなぁ。ショッピングモールで2人で服を買ったり、カフェでパンケーキ食べたり、クレープ食べたりしたよ。ほらっ、その時の写真! 可愛いでしょ!」

 

 かすみさんに見せてもらった写真には元樹君とかすみさんが写っていた。2人でベンチのようなものに座り、かすみさんが元樹君にクレープを食べさせてあげている。写真の中のかすみさんはいたずらが成功した時のようにニヤニヤしていて、多分写真を撮る時に急にクレープを食べさせたのだろう。その証拠に元樹君が驚いたような顔をしている。

 でも問題はそこじゃない。一番の問題は2人が腕を組んでいることだ。かすみさんに至っては元樹君の肩に頭を乗せていて、まるで恋人のように体を密着させている。

 

「この写真……」

「気づいちゃった? もと男と腕組みながら写真撮っちゃったの! 羨ましいでしょ?」

「……」

「ご、ごめん。写真を撮る時だけだったから、そんな怖い顔で見ないでよ……」

「どっちから腕を組もうって言いだしたの?」

「えっと……確かかすみんから」

 

 元樹君から誘ったのならともかく、かすみさんの方から誘ったとなればもう決定的だ。

 

「ねぇかすみさん。かすみさんって……元樹君のこと好き、だよね? もちろん異性として」

「え……ええぇぇぇぇぇっ!?」

 

 かすみさんの絶叫が響く。あまりの声量に思わず耳を塞ぐ。

 

「か、かすみんがもと男のこと好きだなんて……そんなことあるはずないじゃん!」

「じゃあなんで元樹君と腕を組んだりしたの?」

「なんだかもと男とくっつきたかったから……」

「かすみさんはよく元樹君に抱きついたりしてるよね。それはどうして?」

「もと男に抱きついてると安心できて、でもドキドキもして、それがすごく心地いいから……」

「逆に元樹君に抱きしめられた時は?」

「嬉しいんだけど恥ずかしくて、いつも顔が熱くなっちゃう……。でもやっぱりそれが心地よくてもっとしてほしいんだけど、さすがにお願いするのが恥ずかしいからいっつもかすみんからギュってするの。そしたらもと男も抱きしめ返してくれるから」

「頭を撫でられた時は?」

「もと男は優しく撫でてくれるし、撫で方も気持ちいいからもっといっぱいしてほしい。でもたまに子ども扱いして撫でてくるから、それだけはやめてほしい」

「もう一度聞くよ。元樹君のこと好き?」

「わかんない……。仲のいい男の子なんてもと男くらいだから、この気持ちがそうなのかわかんないよぉ……」

「そっか、そうだよね」

 

 私もそうだった。男の子の友達なんて他にいなかったから、元樹君に抱いている気持ちが何なのか最初は全くわからなかった。食堂で誰かの恋バナがたまたま耳に入って、それが私が彼に持っている気持ちに似ていたから、あぁこれが恋なんだって気がついた。つまりはたまたまだ。運がよかっただけ。あの時恋バナが耳に入っていなければ、今も私は気持ちの正体がわからずモヤモヤしたまま過ごしていただろう。

 

「しず子も……もと男に撫でられたりしたら、かすみんと同じ気持ちになるの?」

「うん。頭を撫でてもらえると恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。抱きしめられるとすごく幸せな気持ちになる。かすみさんも同じなんじゃない?」

「幸せ……あの心地よさは幸せってことだったのかなぁ……」

「きっとそうだと思うよ」

「そっか、かすみん幸せだったんだ……」

 

 少しずつ気持ちを自覚し始めたのか、かすみさんの頬がやや赤く染まっている。きっとかすみさんはそのことに気がついていないだろう。私もあの時一緒にいた友達に教えてもらって顔が赤くなっていたことを知ったから。

 

「元樹君とデートしたい?」

「デートなのかはわからないけど、一緒に出かけたいとは思う……」

「元樹君と手繋いでみたい?」

「……繋いでみたい、かも」

「撫でてほしい?」

「うん、いっぱい」

「抱きしめてほしい?」

「ギュっていっぱいしてほしい」

「皆が見てる前でも?」

「うん。かすみんがもと男のものだって、皆に見せつけてほしい」

「キス、してみたい?」

「……してほしい。抱きしめながら優しくチュッて、もと男の味をかすみんにいっぱい刻んでほしい」

「えっちなことは?」

「それは別に……」

「あれぇ……?」

 

 もしかして私がおかしいのかな……?

 

「かすみんだっていつかはしてみたいと思うよ。でも今すぐはいいかな。せめてお互い18歳になってから」

「うん、かすみさんらしくていいと思うよ」

「でももと男がどうしてもって言うなら……ちょっとだけならしてあげてもいいかも」

「かすみさん……」

 

 多分ちょっとだけじゃ終わらなくて、結局最後までしちゃうと思うよ?

 

「はぁ、なんで今まで気づかなかったのかなぁ……」

 

 ようやく自覚したのか、顔を真っ赤にしながらもどこか晴れやかな顔をしている。

 

「私、元樹のことが好き……大好き。友達としてじゃなく異性として、しず子にもりな子にもせつ菜先輩にも負けないくらい、元樹のことがだーいすき!」

 

 空に向かって元樹君への愛を叫んでいる。やっぱりかすみさんはすごい。周りに誰もいないとはいえ、こんなに大胆なことができるだなんて。私には到底無理だ。

 

「部室まで聞こえてるかもしれないよ?」

「いいの! 聞こえてたってもと男のことだからどうせ聞き間違いだって流すんだから。それにもし聞こえてたならそのまま告白しちゃうもんね~」

 

 告白……かすみさんなら本当にしてしまいそうだ。

 

「しず子、ありがと。かすみんに気づかせてくれて」

「どういたしまして」

「でも、しず子はよかったの? ライバルを増やすようなことして」

「もちろん。気づいた時にはもう全部終わってた、って悲しむかすみさんは見たくないもん」

「そっか。しず子のおかげでそんな辛い思いはしなくてすんじゃうよ、ありがと!」

「わっ!」

 

 かすみさんが思いっきり抱きついてくる。倒れないよう踏ん張りながら、こちらも抱きしめ返す。

 

「かすみさん、顔真っ赤だよ」

「し、仕方ないじゃん! 自覚した途端、抱きついたり腕組んだりしてたのが恥ずかしくなってきて……。はぁ、さすがに大胆なことしすぎだよ……」

「心の中ではとっくに気がついてたんじゃない?」

「無意識にアピールしようとしてたってこと?」

「そういうこと」

「そんなことあるわけ……あっそういえば、もと男と同好会で再開した時、どういうわけか侑先輩に嫉妬しちゃったんだよね。なんだか先輩ともと男が仲良くしてるところを何度も見た気がして……」

 

 確かに侑先輩と元樹君が仲がいい。恋愛感情があるって感じではないけど、どこか距離が近い。オカルトだけど、未来視に近いことがかすみさんに起きたってこと? ……あ、そういえば。

 

「私もそれに近いことがあった気がする」

「え、しず子も?」

「うん。元樹君から歩夢さんの話を聞いた時、会ったこともないのに元樹君が取られちゃうって断言できたの」

「確かに、かすみんのと似てるかも……」

 

 今の今まで忘れてたけど、結局あれは何だったのだろうか。

 

「2人とももと男のことが好きすぎて未来に干渉しちゃったとか?」

「ない……こともないかも」

 

 確かにかすみさんのも私のも未来のことだ。

 

「それか別世界線ではかすみん達は負けちゃってて、その世界線のかすみん達が警告してくれたとか!」

「うーん……」

 

 パラレルワールド……あるとは言い切れないし、でも絶対にないとも言い切れない。仮にあったとして、別世界から干渉できたりするものなのだろうか。できたとして、どうして歩夢さんだけだったの? 璃奈さんとかせつ菜さんとか、ライバルはいっぱいいるのに。その2人よりも歩夢さんの方が強大ということなのだろうか。

 確かに歩夢さんは同性の私から見てもとても魅力的だ。優しくて可愛くて落ち着いてて頑張り屋さん、それから胸も大きくて母性もある。十分脅威となりうる。元樹君とも妙に仲がいい気がするし……いや、仲がいいというよりは、お互いがお互いを特別視しているような……。うまく言えないけどそんな感じがする。

 

「……はぁ、かすみん達じゃいくら考えたところでわかんないよね」

「うん……」

「オカルト研究部とか、そんなところに聞いた方がいいのかなぁ」

「そこまでしなくてもいいんじゃないかな……。それに、知らない人に好きな人がいるって言える?」

「……うん、恥ずかしいからやめとく!」

「それがいいと思うよ」

 

 私達は一応スクールアイドルなんだから、好きな人がいるって知られるのはあまりよくない気もするし……。まぁ、今の時代はスクールアイドルの恋愛を批判する人なんてあまりいないから大丈夫だとは思うけど。

 

「しず子、今日お泊まりなんだよね?」

「そうだけど……かすみさんも泊まりたいの?」

「そうじゃなくて、かすみんに遠慮とかしなくてもいいからね」

「え、いいの?」

「もちろん。キスでも告白でもえっちなことでも、なんでもしちゃってもいいよ」

「それだとかすみさんが不利じゃない? 今自覚したばかりでアピールなんてほとんどできないし……」

「無意識だったとはいえ、今までのアピールがしず子に負けてるなんてぜ~んぜん思わないもん! それに、しず子に告白なんて無理だと思うし」

「むっ……そんなことないもん。私だって告白くらいできるもん。一度告白しようとしたのにかすみさんが邪魔してきたんだもん」

「あ、あれは……もと男としず子がくっつくのがなんか嫌だったから……」

 

 あの時にはすでに元樹君に好意を持っていたみたい。

 

「あの時は邪魔してごめんなさい……」

「気にしなくていいよ。今日告白してかすみさんに勝ってみせるから」

「あ、言ったな~。そこまで言うんだったら勝負しようよ!」

「勝負?」

「しず子が告白できたらしず子の勝ち。できなかったらかすみんの勝ち。負けた方が勝った方にアイス奢りね!」

「そんな私に有利な条件でいいの? 私が普通に勝っちゃうよ?」

「いいもーん」

「じゃあその勝負受けるね。ちゃんと明日報告するから」

「振られた時はかすみんが慰めてあげるから」

「い、今からそんな話しないでよ。不安になっちゃうじゃん……」

「ご、ごめん……」

 

 かすみさんとガールズトークを楽しみながら部室に戻った。その間かすみさんはずっと笑顔だった。

 気持ちを自覚してからのかすみさんは前よりも可愛くなった気がする。恋する女の子は可愛いって言ったりするし、これからもかすみさんはどんどん可愛くなっていくだろう。私はとんでもない怪物を目覚めさせてしまったのかもしれない。けどこれでいいのだ。私は負けない。かすみさんがどんなに可愛くても、私は絶対に元樹君を諦めない。大好きな気持ちなら誰にも負けない。

 

「かすみさん」

「ん、どうしたの?」

「私、絶対に負けないから」

「……うん。かすみんも絶対に勝つよ。スタートは遅れちゃったかもしれないけど、これからはどんどん巻き返していくから」

「ふふっ、じゃあ私ももっと頑張らないと」

 

 見ててね元樹君。私ももっと頑張ってみせるから、私のこともっと好きになってね? 他の子に目移りなんてさせてあげないんだから。

 

 

 

 

 

 ……そういえば、璃奈さんになんて報告すればいいんだろう。怒られないかなぁ……。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


まだお泊まり回を書いてないけど、もしかしたら一旦サイドストーリーは区切りになるかもしれない。

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