【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート   作:一般紳士君

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やがて初投稿になる物語です。


サイドストーリー Part13/m

「ただいまー!」

「おう、おかえり」

「うん、ただいま。……あれ、彼方さんは?」

 

 部室には元樹君、愛さん、エマさん、果林さんがいたけど、彼方さんの姿が見えなかった。

 

「彼方先輩なら遥ちゃんが待ってるって言って帰ったよ」

 

 もう帰っちゃったのか、もう1回ちゃんとお礼がしたかったのになぁ……。明日またちゃんとお礼を言うことにしよう。

 果林さんはまだ残ってくれてるから、帰っちゃう前にちゃんとお礼を言っておこう。

 

「果林さん、少しいいですか?」

「もちろんいいわよ。かすみちゃんとの話は終わったみたいね」

「はい。果林さんと彼方さんのおかげですごくいい結果になりました」

「それはよかったわ」

「本当にありがとうございました」

「どういたしまして」

「しずくちゃん、果林ちゃん、さっきから何の話をしてるの?」

「そうねぇ……」

 

 エマさんに教えていいかと果林さんが目で聞いてくる。もちろんいいわけがないので、小さく首を振ってダメだと伝える。

 

「かすみちゃんが悩んでいるみたいだったから、どうにかしてあげたいってしずくちゃんが相談してきたのよ」

 

 近くも遠くもないといったところか。かすみさんは悩んでいたわけではないけれど、かすみさんをどうにかしてあげたいと思ったのは事実だ。人を騙すコツは適度に真実を混ぜることだと元樹君も言ってたし、果林さんの機転の利いた答えだろう。まぁエマさんを騙したいわけではないのだけれど。

 

「むぅ、そういうことならわたしにも相談してほしかったなぁ」

「すみません。でもその時ちょうどエマさんがいなかったので……」

「そっかぁ……それなら仕方ないね。わたしの代わりにしずくちゃんとかすみちゃんの力になってくれてありがとう、果林ちゃん」

「私はただ思ったことを言っただけよ」

「それでも私にとってはすごくいいアドバイスになりました」

「そう、ならよかったわ」

「……あれ? 果林ちゃん照れてる?」

「べっ、別に照れてなんてないわよ」

「ほんとにぃ?」

「ほんとよ。ところでしずくちゃん、あれからかすみちゃんはどうなのかしら?」

「最初は困惑してましたけど、自覚してからは気持ちを溢れさせてましたね。部室に戻る間も好き好きってずっと言ってて……」

「好きっていうのはスクールアイドルのこと?」

「そ、そうです」

 

 しまった、事情を知らないエマさんの前で好きなんて言うのは間違っていた。スクールアイドルのことと勘違いしてくれたから助かったけど……以後気をつけなければ。

 

「かすみちゃんらしくて可愛いわね」

「はい。今は……」

 

 かすみさんの方に視線を送ると、どういう流れかはわからないが元樹君に頭を撫でてもらっていた。今までと違い恥ずかしさからか顔を真っ赤にしているが、溢れ出る嬉しさが隠し切れずに口角が上がっている。その気持ち、すっごくわかるよかすみさん。

 

「……といった感じです」

「なるほど……可愛いわね」

「ねー、かすみちゃん可愛いよね」

「そうですね。本当に、かすみさんは可愛いと思います」

 

 顔が赤くなっていてもかすみさんは可愛い。むしろその赤みが可愛さを何倍にも引き上げている。恋する乙女は可愛さが増すんだなぁって改めて思う。……私も可愛くなれてるかなぁ。元樹君に可愛いって思ってもらえてるかなぁ。

 

「しずく、そろそろ帰るか?」

「うん、私は大丈夫だよ」

「おっけー、じゃあ帰るか」

「えー、もう帰っちゃうのぉ~?」

「ああ。飯の準備とかしないといけないからな」

「そっかぁ……じゃあね、最後にギュってしてもいい?」

「っ!」

 

 間違いない……ここで勝負するつもりだ! いくら何でも速すぎるよぉ……。できることなら阻止したい。でもそれは卑怯なことだと思うし、何よりかすみさんの覚悟を踏みにじることになる。私が焚きつけておいてそんなことは絶対にしたくない。

 ここは事の行く末を黙って見守るしかない。どんな結末になるかはわからないけど、どんな結末でもちゃんと受け入れる。それが私の責任だから。

 

「いいけどさ、さっき今日は抱きついてあげないって言ってなかったっけ?」

「うっ……確かに言ったけどぉ……」

 

 かすみさんがそんなこと言うなんて、2人の間に一体何が……。

 

「でももういいの! 今は抱きつきたい気分なの!」

「ふーん……。まぁ何でもいいや。ほら、いつでもおいで」

「わーい!」

 

 かすみさんが元樹君に抱きつく。というより飛びつく。それを受け止めた元樹君は少しよろけて顔をしかめていた。そっか、かすみさんは元樹君が足を痛めてること知らないんだ。

 

「かす……」

「しずく」

 

 そのことを教えようとしたが元樹君に止められた。

 

「大丈夫だから」

 

 ああ、そうか。元樹君はかすみさんに心配かけたくないんだ。知らなかったとはいえ、足を怪我をしてる元樹君に飛びついてたなんて知ったら……かすみさんはきっと罪悪感に苦しめられるだろう。だから教えられないんだ。私もその気持ちを汲んでかすみさんには内緒にしよう。その方がどちらも幸せになれる。

 

「大丈夫って何がー?」

「別に何でもないよ」

「ふーん」

 

 かすみさんは元樹君を全身で感じるかのように密着して抱きついている。顔を首の辺りにうずめ、腕は限界まで背中に回されている。片足は元樹君の股の下に入り込み、両足で元樹君の片足を抱きしめるような形になっている。これ以上はないとも思えるほどの密着度だ。こんなに密着すれば胸を元樹君に押しつけることになる。かすみさんの胸はただでさえ慎ましいのに、押し潰されてさらにぺったんこに見える。

 

「そういえばさ、さっきかすみの声が聞こえた気がするんだけど……どこかで叫んでた?」

 

 あっ、きっと大好きって叫んだ時のことだ。ここまで届いてたんだ……。

 

「うん。なんて言ったか聞こえた?」

「いいや、そこまでは」

「知りたい?」

「別に」

「そこは知りたいって言ってよ!」

 

 あはは……なんというか、元樹君らしい答えだ。でもその話をするってことは、かすみさんは本気で告白するつもりなのだろうか。恐ろしいほど積極的だ。でも言い方を変えれば我慢できないくらい元樹君のことが好きってことなのだろう。

 

「はいはい。じゃあ教えてくださいかすかすみん様」

「かすかすみんって何!? かすが1個余分!」

「すまんすまん。改めて、教えてくださいかすみ様」

「いいよ、教えてあげる! 一度しか言わないから絶対に聞き逃したりしないでね? かすみんはー、もと男のことー、す……」

「す?」

 

 おや? かすみさんの様子が……。

 

「す……す……すすす、すすすすす」

 

 『す』から先が口から出てこないようだ。あとたった1文字なのに、『き』って言えればいいのに、その最後の1文字が喉から出てこないのだろう。

 

「す……酢の物をパンに挟んで食べる人だと思うんだよねー」

「ぷっ!」

 

 思わず吹き出してしまった。鋭い目で睨まれたけど、さすがにこれは仕方ないと思う。咄嗟に出てきた誤魔化しの言葉があれなんて……やっぱりかすみさんは面白い。

 

「そんなことしないけど?」

「あははー、間違っちゃったー。……はぁ」

 

 明らかに落ち込むかすみさんに近づき、肩にそっと手を置く。そしてニッコリと笑って一言。

 

「今度作ってみたら?」

「むっきーっ!!」

「私は美味しいと思うよ?」

「じゃあ今度ほんとに作って持ってくるからね! 無理やりにでもしず子に食べさせるから!」

 

 でもかすみさんの気持ちもすごいわかる。想いを伝えて、でも結ばれなくて、その結果関係が壊れてしまうのが怖い。壊れてすべてを失ってしまうくらいならいっそこのままでいい、恋人じゃなくても友達でいられるだけで十分って考えてしまう人もいるだろう。怖くて一歩が踏み出せない。好きっていう一言すら言えない。そんな人だっているだろう。でも報われたいのならその恐怖心を乗り越えなければならない。乗り越えて初めて報われるチャンスが手に入るから。でもそれはあくまでチャンスでしかなくて、絶対に報われるとは限らない。自分のすべてを捧げても報われないかもしれない。報われるのはいつも1人だけで、その選択権も相手が握っている。恋愛ってなんて残酷なんだろう。大好きな人からとどめを刺されなければならないなんて残酷としか言いようがない。これ以上に残酷なことなんてこの世にあるのだろうか。

 それに相手だって辛いだろう。誰か1人を選ぶということはそれ以外の皆を切り捨てるということ。優しい人ほど辛く感じるだろう。誰も選ばないという選択肢もあるけど、その答えではきっと皆満足できない。負けはしてないけど勝ててもいない。少なくとも私はそんな中途半端なのは嫌だ。それならばいっそのこと一思いに切り捨ててほしい。私に魅力がなかったって教えてほしい。それならばちゃんと諦めることができるから。次に踏み出すことができるから。

 それを考えるとハーレムというのはやはり素晴らしいのかもしれない。皆が幸せになれる。誰か1人じゃなくて皆を選んでもらえる。私達は大好きな人と結ばれて、彼はいろんな女の子を堪能できる。win-winな関係だと思う。

 もし私が元樹君と結ばれて、その後に彼が同好会の誰かから告白されるようなことがあれば一度だけ提案してみようか。世間一般では許されるような関係ではないのかもしれないけど、本人達がそれで幸せなのであればいいと思うんだ。

 

「しずく? どうした?」

「ううん、何でもないよ。それよりも早く帰ろ?」

 

 元樹君の手を握る……なんて大胆なことはできないので、裾をちょこんと摘まみ、軽く引っ張って急かす。

 

「だってかすみが放してくれないんだもん」

「うぅ~……」

「もう……」

 

 がっしりとしがみついていて離れようとしない。元樹君も頑張って引きはがそうとしてるけど、元樹君のパワーではさすがに無理だろう。手助けしてあげようとかすみさんの耳元で囁く。

 

「嫌われちゃうよ?」

「だってだってぇ……今日は特別な日だからぁ……もっといっぱい一緒にいたいんだもん……」

 

 特別な日……確かにかすみさんにとってはそうかもしれない。元樹君のことが大好きってようやく気づけた日なんだ。もっとこの時間を大切にしたいって思ってしまうのは仕方ないことなのかもしれない。

 でも私にとっても今日は特別な日だもん。このままだと元樹君と2人きりでいられる時間が減ってしまう。私だって元樹君を抱きしめたい。抱きしめてもらいたい。もっと独占したい。それができる貴重な機会なんだ。たとえかすみさんであろうと譲ることはできない。

 

「特別な日……? 今日ってかすみんの誕生日なの?」

「そういうわけじゃないですけどぉ……でも特別な日なんです!」

「へー、よくわかんないけどすっごく大切な日なんだね」

「それならそうと言ってくれればよかったのに」

そんなの言えるわけないじゃん……」

「何か言った?」

「何でもない! ……ねぇもと男、かすみんのこと好き?」

「もちろん。かすみもしずくも、みーんな大好きだぞ」

 

 きっとかすみさんが求めてた答えはそれじゃないだろうなぁ。でもそれで満足したのかニコリと笑いながら、でも名残惜しそうに元樹君から離れた。

 

「えへへっ、かすみんももと男としず子のことだーいすき! ね、しず子?」

「うん。私も元樹君のこと大好き。もちろんかすみさんのことも」

 

 かすみさんに便乗した形になるけど、今はこれで十分。きっと友達として好きって受け取られてるだろうけど、私の好きって気持ちが1ミリでも伝わっていればそれでいい。

 

「なんか三角関係みたいだな」

「そうだね、三角関係……ですむといいのにね

ほんとだよ

「ん? 何か言った?」

「ううん、何も。ね、かすみさん」

「うんうん」

「そう?」

 

 本当は三角どころか五角関係なんだけどね……。幼馴染で誰よりも長く元樹君と一緒にいる璃奈さん。いろいろと大胆で普通のキスどころか大人なキスまですませているらしいせつ菜さん。そして誰よりも可愛くて所かまわず抱きついたりできるかすみさん。ライバルは皆強力で、私1人が遅れてるような気がするけど絶対に負けない。負けられない。元樹君の一番だけは誰にも譲れない。

 

「ねぇねぇ愛さんは?」

「もちろん愛先輩のことも大好きですよ」

「おー……実際に言われると結構ハズいね……」

 

 その気持ち、すごーくわかります。

 

「それにエマ先輩と果林先輩のことも。俺はこの同好会が、皆が大好きです」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

「わたしも皆のこと大好きだよ」

「2人も聞いてたんですね」

「うん。皆が楽しそうな話をしてたからつい……それに元樹君も気づいてて言ったんじゃないの?」

「さぁ、どうでしょうか」

 

 もう、素直じゃないなぁ。わざわざそんな言い方しなくてもいいのに。普通に気づいてなかったんでしょ? 少しビクッてしてたもんね。聞かれたのが恥ずかしいからって誤魔化そうとして……まったく、元樹君は可愛いなぁ。

 

「そんなことより、俺としずくはもう帰るつもりですけど皆はどうしますか? もう全員帰るなら鍵は俺が返してきますけど」

「元樹が帰るならアタシも帰ろっかなー」

「かすみんも」

「わたし達も帰ろっか」

「そうね。鍵をお願いするわね」

「かしこまり!」

 

 皆それぞれ自分の帰り支度をする。私もパジャマとか替えの下着をうっかり忘れたりしないように気をつけながら荷物をまとめる。今日はお気に入りのパジャマを持ってきたから元樹君にしっかり見てもらうんだ。谷間が少し見えるものだから少し恥ずかしいけど……でもそれで元樹君に見てもらえるのならいい。あわよくばそのまま……なんてね。そんなことあるはずないか。元樹君は女の子を襲うようなことするはずないもんね。優しいから人が悲しむようなことするはずないもん。ほんとは襲ってくれた方が嬉しいんだけど……。

 

「よしっと。しずく、俺は鍵返しに行くけど一緒に行く?」

「うん、行く」

「おっけー」

 

 皆で戸締りを確認してから部室を出る。

 

「それじゃあまた明日」

「皆さんさようなら」

「ばいばーい」

「またねー!」

「うん、また明日ね」

「明日もよろしくね」

 

 部室の前で皆と別れ、2人で鍵を返しに行く。道中何となく手持ち無沙汰だったのでさっきと同じように元樹君の服の裾を摘まむ。

 

「どうかしたか?」

「何でもないよ。ただこうしたくなって……」

「なんだなんだ、可愛い奴だな」

 

 可愛い……か。元樹君の中で一番可愛い女の子って誰なんだろう。かすみさん? せつ菜さん? ずっと一緒にいる璃奈さん? それとも私? もしかしたらテレビの向こうの女優さんだったりアイドルの人かもしれない。むしろそちらの方が確率的には高いだろう。少なくとも私ではないだろうなぁ……はぁ、考えてたら悲しくなってきちゃった。こんなこと考えてちゃダメ! もっと自信を持っていかないと。

 

 

 

 学校から出て、2人並んで同じ道を歩く。元樹君が私を迎えに来てくれた日と同じシチュエーション。でも違う所があるとすれば帰る場所。あの日はお互いの家に帰るために途中で別れたけど、今日は元樹君の家までずっと一緒。それから2人の距離も。あの日は拳1個分も離れていたけど、今は違う。私が裾を摘まんでいるからほとんど密着している。元樹君はそれに何の反応も示さない。私はこんなにもドキドキしてるのに……。

 

「どうした?」

「別にぃ~何もないけどぉ?」

「……もしかして怒ってる?」

「なんで私が怒る必要があるの?」

「ごめん……」

「……ぷっ! ごめんね、元樹君の反応が面白くてからかっちゃった」

「……怒ってない?」

「怒ってないよ」

 

 怒れるはずがない。私が勝手に八つ当たりしただけ。

 

「ふぅ、よかった……。しずくは怒ると怖いからな」

「ほんとに怒ってあげようか?」

「それはご勘弁を……」

 

 まったく元樹君は……。怒ってあげるのも全部元樹君のためなんだよ? ……って、なんだかDV彼氏みたいなこと考えちゃった。そんなことほんとに考えてるわけじゃないからね?

 

「あ、そうだ。璃奈さんとのお泊まりはどんな感じだったの?」

「別に普通だったよ。一緒に飯作って、一緒にゲームして……特に特別なことはなかったな。今まで通りって感じ。あっ、でもこの日は先に璃奈が寝ちゃってたんだよね。だから璃奈をそのままベッドで寝かせて俺は布団で寝たはずなんだけど、朝起きたら何故か璃奈も一緒に布団で寝てたんだよ」

「へ、へぇー……」

 

 それって添い寝したってことだよね……。そのまま一晩明かしたってこと? いいなぁ、璃奈さんが羨ましい。私とも添い寝してくれるかなぁ? こっそり潜り込めばいけるだろうけど、でも少し恥ずかしいかも……。

 

「あっ、今更だけど足は大丈夫なの? こんなに歩いて痛くない?」

「大丈夫。特に異常はないよ」

「ならよかった。辛くなったらいつでも言ってね? 荷物も持ってあげるし、肩も貸してあげるから」

「ああ、その時は頼むな」

「任せて」

 

 少しして大きなマンションの目の前に辿り着いた。

 

「ここが?」

「そう、うちのあるマンション」

 

 ついに……ついに来ちゃった。どうしよう、胸のドキドキが止まらないよぉ……。

 元樹君に先導されながらマンションの中を進む。途中璃奈さんの部屋がどこだとか教えてもらったけど、正直それどころじゃなかった。だって進むにつれてドキドキが激しくなっていくんだもん。エレベーターの中で2人きりになった時なんて大変だった。落ち着こうと何度も深呼吸をしたけど効果はなし。こんなに緊張したのはいつぶりだろう。受験の時以来かもしれない。

 

「着いたぞ。入ってどうぞ」

 

 とうとう元樹君の部屋の前に着いてしまった。すでにドアは開けられているので後は中に入るだけだ。

 

「お、お邪魔します……」

「別にそんな硬くならなくていいぞ。どうせ今日も親はいないから2人きりだしさ」

 

 2人きりだなんて……改めてそんなこと言われたらもっと緊張しちゃうよ。

 

「自分の家だと思ってくつろいでくれよ」

 

 自分の家だと思って……それって同棲ってこと!? それは気が早すぎるよぉ~、えへへ~。同棲は今まで何度も想像してきたシチュエーションでもあるし、なんだか気も楽になってきたかも。

 

「すぅ……はぁ……うん、もう大丈夫。お邪魔するね」

「上がって上がって」

 

 元樹君に急かされながら中に入って靴を脱ぐ。途中靴箱の上の写真が目に入ってついつい眺めてしまった。

 この写真は小さな男の子を挟むようにに男の人と女の人が立っている。多分家族写真だろう。男の子が元樹君で、隣の2人がお父さんとお母さん。お父さんはすごく真面目そうな人で、お母さんもすごく綺麗な人だ。3人とも笑顔で仲のよさがうかがえる。でも元樹君の笑顔だけ少しぎこちない。きっと緊張していたのだろう。

 こっちは幼稚園の入学式の時の写真。元樹君が小さくピースをしながら立っている。でもやはり笑顔はぎこちない。隣の写真は卒業式の時かな。元樹君の隣にいるのは……もしかして璃奈さん? 入学式の時はいなかったってことは幼稚園で初めて会ったのかな?

 これは小学校の時。入学式も卒業式も璃奈さんとのツーショットだけど……なんていうか、入学と卒業の時とで元樹君の雰囲気が少し変わってる気がする。入学の時は大人しそうな感じだけど、卒業の時には今のようなやんちゃな感じがする。きっと小学校の6年間で成長したのだろう。璃奈さんは今と雰囲気はさほど変わらないなぁ。でもすごく嬉しそう。きっと元樹君と一緒に写真を撮れて嬉しいのだろう。この時から好意を持っていたかまではさすがにわからないけど。

 こっちは中学の。相変わらず元樹君と璃奈さんの2人しか写ってない。校門も見慣れた虹ヶ咲のもの。そういえば元樹君は内部進学したって言ってたし、璃奈さんもきっと同じだろう。卒業式の写真では2人とも少し大人っぽくなってる気がする。

 それから高校の入学式。もう見慣れた制服姿の2人だ。でも少し初々しさがあって可愛い。

 

「あれ……?」

 

 なんだか家族との写真が少ない……? 最初の家族3人だけの写真しかない。それ以降はほぼ璃奈さんとの2ショットだ。どうしてこんなに少ないの?

 さっき言ってたことも少し引っかかった。今日()親がいない? 今日()じゃなくて? 元樹君にとって親がいないことが当たり前のように聞こえた。

 そういえば元樹君の口から家族の話を聞いたことないような気もする。璃奈さんとの思い出話は何度か聞いたけど、家族との話は記憶にない。少なくとも直近では。

 

「しずく? 何か変なものでも置いてたか?」

「……あっ……ご、ごめんね。何でもないよ……」

 

 もしかして元樹君と家族って仲悪いのかな……? でもこんなこと直接聞くなんてできるわけないし……。かと言って璃奈さんに聞くのも難しい。もし本当にそうならそれを璃奈さんが気にしてないわけがない。だってあんなにも元樹君のことを大切に思ってるんだから。そんな璃奈さんに聞くなんてできっこない。

 

「こらしずく」

 

 考えごとをしていると元樹君に頬を引っ張られた。配慮してくれてるのか痛くはない。

 

「……にゃにしゅるの」

「……しずくのほっぺって柔らかいな」

 

 そう言いながら私の頬を揉んだり引っ張ったりムニムニしたりして感触を楽しんでいる。こんなことしてくれるのは嬉しいけど、さすがに少し……

 

「いひゃい……」

「あっ、めんご」

 

 しっかりと堪能された後解放してもらえた。少し頬がヒリヒリする……。

 

「なんで急にこんなことしたの?」

「しずくが暗い顔してたから。今ので多少は気分リセットできただろ?」

「確かに……元樹君に触ってもらえて、少し気分は紛れたかも」

「それはよかった」

 

 気分は紛れたけど、でもやっぱり胸の奥に引っかかったままだ。簡単に除けそうにない。

 もちろん確証があるわけじゃない。私の思い過ごしかもしれない。それに写真だって全部出しておくわけじゃないし、アルバムにもっと家族との写真があるかもしれない。……でも、もしも本当なのだとしたら……あまりにも悲しすぎる。あの写真から推察するに小学生か中学生の頃から仲が悪かったのだろう。

 どうして元樹君がこんな辛い目にあわないといけないの? 神様はなんて意地悪なんだろう。あんなに人に優しくて、他の人を第一に考えられる人がこんな……あまりにも酷すぎる。1つ救いがあったとすればそれは璃奈さんの存在だろう。璃奈さんがそばに居てくれたおかげで元樹君は1人にならずにすんだ。

 気づいてあげられなくてごめんね。これからは私も一緒にいてあげるから。何があっても元樹君のそばにいるから。たとえ元樹君から拒絶されようとずっと味方でいてあげるから。絶対に寂しい思いはさせないから。だから……家族に、なろ?




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


皆さんはLoveLiveDaysはお買いになられましたか? 私は買いました(隙自語)
桜坂座長ぇ……。
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