【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート   作:一般紳士君

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初投稿ネタが思いつかなかったので初投稿です。


Part32と33を1話に詰め込んで加筆したらすっげぇボリューミーになったゾ~。
これを書くためにPart33を見返してたら誤字をいっぱい見つけてしまいました。悲しいなぁ……。


サイドストーリー Part14/m

「うーん、まだかなぁ……」

「エマ?」

 

 いつも楽しそうなエマだけど、今日はどこかそわそわしている。キョロキョロと辺りを見渡していて、まるで誰かを待っているようだ。

 

「エマちゃん、誰か待ってるの?」

「実は元樹君も一緒に食べるって約束してるの!」

「今日は元樹君もここに来るの?」

「うん、そうだよ」

「それは楽しみだな~。さすがの彼方ちゃんも期待でおめめパッチリ……」

「すでに寝かけてるじゃない」

 

 彼方がウトウトし始める。元樹君が来るまでに寝ちゃうんじゃないかしら。

 

「まだかなぁ……何かあったのかな」

「もしかしたらあれのせいかも」

「あれ……? あぁ、もしかして足のこと?」

「足? もしかして元樹君足が悪いの?」

「昨日練習中に捻っちゃったんだって」

「それは大変ね……大丈夫そうなの?」

「うん、昨日は普通に歩いてたから多分大丈夫だとは思うけど……もしかしたら今日になって痛くなってきたのかも」

「もと君って多分痛いのとか苦しいのとか隠しちゃう子だと思うから、昨日の時点で痛かった可能性も……」

「あるかも……。はぁ、昨日もっとちゃんと言っておけばよかったかなぁ」

 

 たとえ言ったとしてちゃんと教えてくれたかしら……。そういう子は周りに心配をかけさせたくなくて本心を隠しちゃうのよねぇ。

 

「まぁ元樹君が来た時に歩き方を見ればいいんじゃない? 変な歩き方をしてればすぐにわかるわよ」

「そっか」

「それに、ほら。噂をすれば来たみたいよ」

「あっ」

 

 食堂の入り口に元樹君の姿が見える。私達を探しているのかその場で食堂全体を見回している。でも私達が座っている席は入り口からだと他の人達で隠れちゃうから、あそこからだと見つけられないかもね。

 

「元樹君! こっちこっちー!」

 

 それを知ってか知らずかエマがその場で立ち上がって元樹君に手を振った。元樹君もエマに気づいたみたいで手を振り返してからこちらに歩いてくる。

 

「……歩き方を見る限り大丈夫そうね」

 

 元樹君の歩き方を観察してみたけど、片足をかばったり、引きずったりするような歩き方はしていない。

 

「そうだね。よかったぁ……」

「そうね。彼方も……彼方?」

 

 彼方はいつの間にか眠ってしまっていた。ほんといつどこでも寝ちゃうんだから……。

 

「彼方起きて。元樹君が来たわよ」

「……ふぇ、もと君が~……?」

「あんなに楽しみにしてたのに、その時間を寝て過ごすなんて嫌でしょ?」

「うん、彼方ちゃん起きる~」

 

 エマも彼方も元樹君のことをほんと大切に思ってるのね。2人を見ていると伝わってくるわ。

 

「果林ちゃん、どうして笑ってるの?」

「何でもないわ」

「? 変な果林ちゃん」

「エマ先輩、彼方先輩、果林先輩、こんにちは」

 

 そうこうしているうちに元樹君が私達の席までやってきた。

 

「あ~もと君だ~」

「こんにちは、元樹君」

「待ってたよ。さぁさぁ、座って座って」

「隣失礼しますね果林先輩」

「どうぞ」

 

 元樹君が隣に座ったので、食器を少し右に寄せて元樹君のスペースを広げる。その時、元樹君のスマホの画面が目に入った。

 

「あら、パンダ……」

 

 壁紙が美味しそうに笹を食べるパンダだった。

 

「可愛いわね」

「ん? これですか? 可愛いですよね」

「元樹君もパンダ好きなのかしら?」

()? 果林ちゃんも好きなの?」

「わ、私は別に……ただの言い間違いよ」

 

 思わず自分がパンダ好きであることがバレてしまうところだった。意外な同士を見つけてついつい興奮してしまった。

 

「ほんとですかぁ?」

「ほんとよ」

「あれぇ? 昨日果林ちゃんの部屋に行った時パンダのぬいぐるみがあったような……」

「ちょっとエマ!」

 

 そういえば昨日エマに見られたんだった。やっぱり隠しておくべきだったかしら……。でもその時に部屋の片付けも手伝ってもらったから、隠しても結局見つかってたかもしれないわね。

 

「ふぅん……」

 

 元樹君が目で訴えかけてくる。パンダ好きなんですよね、と。もう誤魔化せそうにない。

 

「……えぇそうよ。パンダは可愛くて大好きよ」

 

 やっぱりねといった目で皆見てくる。それが恥ずかしくて話題の中心を元樹君にずらす。

 

「私のことはおいといて元樹君はどうなの?」

「俺もパンダ大好きですよ。仲間ですね。もしよかったら今度一緒に動物園に行きませんか?」

 

 これはデートのお誘いかしら? ……恥ずかしがるような様子はないし、私の考えすぎかもね。そもそも断る理由なんてないのだけれど。

 

「いいわよ。そうねぇ……イベントが終わったくらいなんてどうかしら」

「それくらいがいいかもですね。ライブを頑張ったご褒美みたいな感じで」

「元樹君と果林ちゃん、もうこんなに仲良しなんだね~」

「そうね。どうしてかはわからないけど、元樹君には気を許せちゃうのよ」

 

 元樹君相手なら何でも話せちゃう気がする。それだけ信頼してるってことかしらね。

 

「それ彼方ちゃんもわかるかも。もと君と一緒だとついつい隣で寝たくなるんだよねぇ」

「彼方先輩が眠たくなるのはいつもでは?」

「そうかも~。でももと君のこと信頼してるのは本当だからね」

「わたしも元樹君に初めて会った時から、この子は何かやってくれる! って思ってたんだよ~。実際元樹君とかすみちゃんの頑張りで同好会を復活させてくれたもんね」

「そんな、照れますよ……」

 

 恥ずかしそうに頬をかく元樹君を横目で見る。

 

「そういえばエマから聞いたのだけれど、昨日足を捻ったんでしょう?」

「まぁ……そうですね。やっちゃいました」

「ちゃんと歩けてたってことは大丈夫なのだろうけど、無理はしちゃダメよ。治るのが余計に遅くなっちゃうわ」

「はーい」

 

 ほんとにわかってるのかしら……。

 

「……あら、電話だわ」

 

 ちょうどお茶を飲もうとしたタイミングで私のスマホが震えた。雑誌の担当者さんから……? 今日の撮影についてかしら。

 

「ごめんなさい、少し席を外すわね」

「いってらっしゃい」

「ごゆっくりどうぞ」

 

 食堂の外に出て、邪魔にならない場所で電話に出る。

 

「はい、朝香です」

『もしもし、雑誌担当の木下ですけど。急に電話してしまいましたが、今時間大丈夫でしたか?』

「大丈夫です。今日の撮影のことで何かあったんですか?」

『そうなんです。実は今日来てくれるはずだったモデルの人が急病で来れなくなってしまって……』

「その人の体調は大丈夫なんですか?」

『ただの風邪のようで、ちょっと熱があるだけみたいなので大丈夫ではあるのですが……ただ急なことだったので代わりのモデルが見つからなくて……』

 

 それはかなり大変な事態ね。その人だけ別日に撮影するとしてもコストがかかるし、ましてや撮影自体を延期するなんてありえない。だから別のモデルに代役を依頼するのだけれど、どうやらそれが見つからないらしい。当日急に来れなくなるのはたまにあることだけれど、代役が1人も見つからないというのはかなり珍しい。

 

『朝香さん、誰か引き受けられそうな人に心当たりありませんか? 男性のモデルさんなのですが……』

「そうですね……」

 

 心当たりのある人をとにかく挙げていく。といっても両手で数えられるほどしかいない。それにどの人もすでに確認済みで今日は参加不可能とのことだった。

 

『うーん……こうなったら素人の方にお願いすることにしましょうか。ちょっとしたバイトみたいな感じで。朝香さん誰かよさそうな知り合いの方はいませんか?』

 

 男性の知り合い……生憎そんな人は元樹君しかいない。

 

「1人いますけど、身長が少し低めで……」

『大丈夫ですよ。むしろこの雑誌にもそういったモデルの人も今後取り込んでいきたいと考えていたので。ただやっぱりある程度顔の整った人がいいですね』

「顔……」

 

 そう言われて元樹君の顔を思い浮かべる。……うん、全く問題ないはず。それどころか私から見れば他のどのモデルよりもかっこいいと思う。これがいわゆるタイプということなのでしょうね。

 

「大丈夫です。雑誌で他のモデルと並んでも全く見劣りしないと思います。少なくとも木下さんには満足していただけるかと」

『朝香さんがそこまで言うのなら安心できますね』

「ただ、引き受けてもらえるかは少し微妙で……」

『なるほど、わかりました。ではその方と今からお話しすることはできますでしょうか。私の方からきちんと事情を説明してからオファーしておきたいので』

「えっと、私からではダメでしょうか。知らない人から話をされるより、気の知れた私から話した方が彼も緊張しないですむと思いますし……」

 

 それに木下さんが相手だと元樹君も断りずらいかもしれない。元樹君が衣装を着て撮影するところは見てみたいけれど、やりたくない気持ちを押し殺してほしくない。元樹君がやりたくないのであれば無理してやってほしくない。その時は木下さんに別の人を探してもらう。

 

『……わかりました。ではその方へのオファーは朝香さんにお願いしますね。OKが貰えなかった場合に備えて私も別の人を探しておきますので、返事を貰え次第メールで私に送ってください』

「わかりました」

『では失礼します』

 

 食堂に戻りながら考える。どうすれば元樹君に気を遣わせないような説明ができるだろうか。……まぁシンプルに嫌なら断ってくれていいと言うのが一番ね。変に言葉を選んだりしたら余計に気を遣わせてしまうだろう。

 

「おまたせ」

 

 席に戻ると3人が仲良く話しながら食事を楽しんでいた。さっきまで眠たそうにしていた彼方もしっかり起きている。

 

「おかえり。お仕事の電話?」

「そう、今日の撮影で少し問題があったみたいで……」

「どうかしたの?」

「来るはずだった男性モデルの人が急病で来れなくなったみたいで……」

「大変! その人は大丈夫なの?」

「ただの風邪らしいからそれは大丈夫。でも急のことだったから代わりに入れる人が見つからないみたいで、代役になりそうな人がいないか私に聞いてきたのよ」

「そっかぁ……代役って言われてもなかなか見つけられないよね」

「そうなのよ。何人か当たってみるとは言ったけど、そもそも男の人の知り合いなんてほとんどいないし……そこで元樹君に1つお願いがあるの」

「ん? 俺にですか?」

「今日私と一緒に撮影に参加してくれないかしら」

「……え?」

 

 きょとんとして私の方を見ている。それも無理ないだろう。逆の立場だったら私もそうなる。逆にエマと彼方は目を輝かせている。やっぱり元樹君がモデルの仕事をするというのに興味が湧くのかしら。

 

「もちろん無理にとは言わないわ。予定が入ってるかもしれないし、足のこともあるしね。それにモデルの代役だから当然雑誌に掲載されて世に出るわ。それが嫌なのであればもちろん断ってもらっても構わないわよ」

「……いいですよ。やります、モデル」

「受けてくれるの?」

「はい。滅多にない機会ですからね。こんな機会を逃すなんてもったいないじゃないですか」

 

 気を遣っているようには見えない。きっと本心からそう思ってくれているのだろう。

 

「ありがとう、助かるわ」

「気にしないでください。……でも俺なんかで大丈夫なんですか? 背は果林先輩より低いし、顔にも自信ないですよ?」

「それは心配しなくても大丈夫よ。元樹君の顔は十分整ってると思うし、背が低いならそれを活かしたコーディネートをすればいいのよ」

「わたしも元樹君はすごくかっこいいと思うよ」

「彼方ちゃんも~」

「……そんなに褒められたら照れちゃいますね」

 

 そう言う元樹君の頬はほんのり赤く染まっていた。可愛い反応が見られそうだけど、仕事を手伝ってくれる恩もあるしからかうのはやめてあげようかしら。

 

「そういうわけだからよろしくね。授業が終わったら教室まで迎えに行くわ」

「いや、普通にエントランス集合でいいんじゃないですかね。そっちの方がお互いの教室からも近いですし」

「いいわよ、そうしましょうか」

 

 先輩っぽいことをしてみたくなってつい迎えに行くと行ってしまったけれど、元樹君がエントランス集合にしてくれて助かった。多分私1人では教室に向かう時に迷子になっていただろう。

 そうだ、木下さんにメールを送らないといけないわね。OKもらいました……っと。

 

「今日は元樹君も果林ちゃんもいないのかぁ……少し寂しいね」

「撮影場所はここの近くだし、そんなに時間もかからないから最後にちょっとだけ顔を出せると思うわ」

「らしいです。撮影が終わったら皆の練習姿を見に戻ってきますね」

「じゃあ情けないところ見せないように頑張って練習しないとねぇ」

「うん、そうだね」

「頑張ってください。皆のことなのでないとは思いますが、サボったりしたらダメですからね」

「大丈夫、そんなことしないよ」

「あと彼方さん、練習中にお昼寝するのもダメですからね。侑先輩にお願いしてチェックしてもらいますので」

「まあ最善は尽くしてみるよ~」

「ははっ、頑張ってください」

 

 ……なんだかこの3人が羨ましいわ。初期メンバーの皆には特別な繋がりがあるように思える。何があっても切れない、そんな繋がりが。やっぱり自分達で同好会を設立し、その同好会解散の危機を自分達の力で乗り越えたからかしら。

 

『キーンコーンカーンコーン』

「あら、もうこんな時間なのね」

 

 予鈴が鳴った。楽しかった時間ももう終わり、そろそろ教室に戻らないといけない。

 

「じゃあ俺は先に失礼しますね。次の授業、先生が遅刻にうるさいので……」

「ええ、また放課後にね」

「はい、お願いします。エマ先輩も彼方先輩も練習頑張ってくださいね」

「もちろん、彼方ちゃん頑張っちゃうよ~」

「元樹君もモデルのお仕事頑張ってね」

「頑張ります」

 

 元樹君を見送ってから私も立ち上がる。

 

「私達も戻りましょうか」

「そうだね。ん~! やっぱり楽しい時間が終わるのは寂しいなぁ」

「彼方ちゃんも寂しくて眠たくなっちゃう……」

「授業中に寝ないようにね」

「わかってるよぉ」

 

 この3人での昼食ももちろん楽しいけれど、そこに元樹君が加わるだけでもっと楽しくなるわね。また来てくれるかしら。週1くらいでいいからまた来てほしいわ。

 

 

 

 お手洗いが混んでたから少し遅れてしまった。元樹君はどこ……人が多くてどこにいるか全くわからないわ……。

 

「果林先輩! こっちこっち!」

 

 人混みの中から元樹君の声が聞こえる。耳を澄ませて声の発生源を辿ると右手を上げてピョンピョンと跳ねる元樹君を見つけた。ようやく見つけたと安堵しながら目の前まで近寄る。

 

「ごめんなさい、遅くなっちゃったわ」

「いえ、俺も今来たところですから」

 

 デートではお決まりのセリフね。まさかこんなところで言ってもらえるなんて思わなかったわ。

 

「それじゃあ行きましょうか」

「今更なんですけど、どこで撮影するんですか? 俺まだ場所教えてもらってないんですけど……」

「大丈夫、私が案内するわ。何度か撮影で行ったこともあるし、ここから遠くないからそんなに時間はかからないと思うわ」

 

 何度も行ってるから大丈夫、絶対に迷わない。前に行った時は迷わず行けたじゃない。だから大丈夫。可愛い後輩の前で迷子だなんて情けない姿見せたくない。

 

 

 

 

「ここで間違いないはずなんだけど……」

 

 結局迷ってしまった。おかしいわねぇ、マップの目的地も今いる場所を指しているのだけれど……。

 

「とりあえずマップ見させてもらっていいですか?」

「はい」

 

 元樹君にスマホを渡して確認してもらう。

 

「ほんとだ、ここで間違いなさそうですね」

「やっぱりそうよね」

「もしかしたら果林先輩のスマホがバグってるのかもしれませんし、自分のでも念のため確認してみます」

 

 元樹君が自分のスマホでもマップを開いて確認する。

 

「……ダメですね、俺のでもここが目的地になってます。ということはここが目的地に違いないですね」

「そうなるわね」

 

 じゃあなんで見つからないの……。

 

「私の知らない間に移転したのかしら……」

「さすがにそれはないかと……。建物の外観は覚えてますか?」

「確か白塗りだったと思うんだけど……電話して聞いてみるわ」

 

 木下さんに電話をかける。

 

『……はい、木下ですけど』

「もしもし、朝香です」

『まだ来られていないみたいですが何かありましたか? まだ時間かかりそうですかね?』

「少し迷ってしまって……もしかして移転しましたか?」

『いえ、してないですけど……』

 

 じゃあどうして見つからないのかしら……。このままだと一生辿り着けないわ。

 

『……そういえば少し前に外壁を塗装し直しましたね』

「えっと、何色にですか?」

『赤色です』

 

 赤色……周りに赤い建物は1つしかない。もしかしてこれかしら。色以外の外観は記憶の中のものと似ているし……きっとこれね。

 

「ありがとうございます、見つけました」

『わかりました。ではスタジオでお待ちしてます』

 

 電話が切れる。元樹君の方に向き直るとぼやーっと空を見上げていた。

 

「はぁ、わかったわよ、私達が迷子になっていた原因が」

「何だったんですか?」

「外壁を塗装し直したみたいよ、白から赤に。つまりちょうど私達の目の前にあるこの建物が探してた建物よ」

「へぇ、これが……」

「こういうのは事前に伝えておいてもらわないと困るわよね」

 

 おかげで元樹君の前で情けないところを見せちゃったわ。ほんとはちゃんと辿り着いてたのにね。

 

「とりあえず中に入りましょうか」

「はい」

 

 元樹君を引き連れて建物に入る。よかった、内装は同じね。やっぱりここで間違いないわ。

 

「撮影スタジオと衣装室はここの2階よ。受付をしてくるから少し待っててね」

「わかりました」

 

 軽く受付を済ませる。木下さんが話を通しておいてくれたのか、元樹君のことも簡単に通してくれた。

 

「終わったわよ。行きましょうか」

「はい」

 

 緊張か、それとも単純に興味なのか先程からキョロキョロと周りを見回している。

 

「緊張してるの?」

「いえ、そういうわけではなくて、どんなものがあるか眺めてただけです」

「でもただのロビーや廊下だし、別に変ったものは置いてないでしょ?」

「そうですね」

「でも撮影スタジオには見慣れない機材がいっぱいあるわよ。きっと面白いと思うわ」

「それは楽しみですね」

 

 そんなことを話しているうちにスタジオの前に着いた。

 

「ここがスタジオよ。入るわね」

 

 扉を開けて中に入る。中では別のモデルがすでに撮影を行っていた。元樹君も恐る恐る入ってきた。

 

「少し暗いですね……」

「撮影してるからね。部屋が明るかったら照明の意味がなくなっちゃうでしょ?」

「ああ、なるほど。確かにそうですね」

 

 私はこの環境に慣れてるけど、元樹君は初めてだから不思議に思うのかもしれない。そういえば私も初めての撮影の時同じことを考えてたわね。ふと思い出しちゃったわ。

 

「あの人がカメラマンの鶴野さん。今日元樹君を撮影してくれる人よ。腕は確かだからきっといい写真を撮ってくれるわ」

「へぇ……」

 

 あまり興味なさそうね。まぁ一度しか会わないカメラマンを紹介されてもって感じよね。

 

「朝香さん、こんにちは」

 

 中をいろいろ説明していると、木下さんが私達の下にやってきた。

 

「お疲れ様です。遅くなりました」

「いえ、構いませんよ。それでこちらの方がモデルの代役をやってくれる方ですか?」

「堀口元樹です。よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。私は雑誌担当の木下です。本日はよろしくお願いします」

 

 2人の名刺交換を見守る。といっても元樹君は名刺なんて持ってないのだけれど。

 

「早速ですが衣装に着替えてもらえますか。まずは朝香さんが撮影して、その後に堀口さんが撮影という形になります。あと撮影が終わったらこの建物内を見学することも可能ですので。もし見学したい場合は私か新田にそのことをお伝えください」

「わかりました」

「では私はこれで……」

 

 忙しそうに木下さんが去っていく。

 

「えっと、俺はこれからどうすれば……」

 

 何をすればいいか困惑する元樹君の手を引いて衣装室に向かう。

 

「服を選びに行きましょう。私が元樹君に似合うのを選んでもいいのだけれど……どうする? 最初は自分でやってみる?」

「そうですね……せっかくの機会ですし最初は自分でやってみます」

「わかったわ。私は自分のを選んでるから、何か困ったことがあればいつでも呼んでちょうだい」

「はい」

 

 元樹君と別れて自分の衣装を選びに行く。どうしようかしら……折角だから元樹君が見て顔を赤らめちゃうような衣装がいいわね。でもどんな服が元樹君の好みなのかわからないわ……。まぁ悩んでてもしょうがないわね。自分が一番いいと思うものを選びましょう。

 

「……よし、これにするわ」

 

 衣装を選び終えたので更衣室に入って着替える。結構自信のあるコーディネートだけれど、元樹君は褒めてくれるかしら。元樹君がどんな服を選んだのかも気になるわね。とにかく元樹君のところに行ってみましょう。

 

「どう? 決まった?」

「あっ、果林先輩」

 

 服を両手に持って見比べる元樹君を見つけた。

 

「衣装似合ってますね。素敵ですよ」

「ありがとう」

 

 顔を赤らめるまではいかなかったけど、褒めてくれたからまあよしとしましょう。

 

「元樹君は……」

 

 見る限りだとまだ何も決まっていないように見える。まぁ雑誌に掲載する衣装を1から自分で選べと言われても難しいわよね。

 

「まだ選べてないみたいね。やっぱり私が選んであげましょうか?」

「お願いします……」

「任せて。元樹君に似合う最高のコーディネートをしてみせるわ。こっちに来てちょうだい」

 

 鏡の前に元樹君を呼ぶ。

 

「普段はどんな服を着るの? 何か好みとかはあるかしら?」

「家にいる時とかはパーカーとか脱ぎ着しやすいものを選んでますね。誰かと出かける時は璃奈に選んでもらったセットの中から選んで着てます。服の好みとかは特にないですね。強いて言えば脱ぎ着しやすいのがいいです」

「なるほど、わかったわ。割と自由に選んでもいい感じなのね?」

「はい」

「脱ぎ着のしにくさには多少目をつむってもらうことになるけど……」

「まぁ……我慢します」

「ふふっ、いい子ね。じゃあ早速選んでいくわね」

「お願いします」

 

 ひとまず元樹君に似合いそうな服を何着か選んでみる。一度合わせてみて一番気に入ったものをベースにコーディネートしていくことにする。

 

「これはどうかしら?」

「いいですね」

「じゃあこれは?」

「あーいいですね」

「これなんてどうかしら」

「あーいいっすね~」

「ちょっと、全部いいとしか言わないじゃない。もっとちゃんと言ってくれないと」

「だって果林先輩のセンスがいいから……すみません」

「もう、そんなこと言われたら怒れないじゃない……」

「すみません……」

「謝る必要なんてないわよ」

 

 元樹君の頭を軽く撫でる。

 

「さっきは怒ってしまってごめんなさいね」

「いえ、気にしないでください」

「そうよね、いいものにはいいって言うしかないわよね。さっき言ったことは気にしなくていいわ。元樹君は思ったことを素直に言ってちょうだい。いいものにはいい、嫌なものには嫌、それだけでも十分」

「はい、わかりました」

 

 選んだものを次々合わせていく。

 

「どれが一番気に入った?」

「えっと……これですかね。この服が一番好きです」

「わかった。じゃあこの服をベースに他を選んでくるからちょっと待っててね」

「はい」

 

 この服に合うのは……これとかどうかしら。サイズも……うん、多分ピッタリなはず。あとは上着と小物も欲しいわね。ある程度流行を抑えつつ、元樹君に似合うものを……

 

「……よし、これなんてどうかしら。流行を取り入れつつ、元樹君の身長を活かせるファッションにしたつもりよ。きっと似合うと思うわ。気に入ってくれるかしら?」

 

 元樹君は渡した服を合わせて、鏡の前でポーズをとったりしながら確認をしている。

 

「いいですね、これ。すごく気に入りました。さすが果林先輩ですね。早速着替えてきます」

「それはよかった。着替えはあそこを使ってね。服は脱ぎっぱなしで置いといてもいいから。私は先にスタジオに行って撮影してるから、元樹君も着替えたら来て。場所はわかるわよね?」

「大丈夫です」

「ならいいわ。じゃあ私は行くわね。部屋の外にスタッフさんが待機してるから何かあったら遠慮なく言うのよ」

「わかりました」

「多分大丈夫だとは思うけどサイズが合わなかったりしたら自由に合うサイズに変えてもいいから」

「了解です」

「じゃあ行ってくるわね」

「はい、頑張ってください」

「ええ」

 

 元樹君の見送りを受けながらスタジオに移動する。ちょうど前のモデルの撮影が終わったタイミングだったようだ。

 

「次は朝香ちゃんの撮影ね」

「はい、お願いします」

 

 鶴野さんに呼ばれてスタンバイする。

 

「好きなようにポーズとってくれていいから」

「わかりました」

「はい、じゃあ撮っていくよー」

 

 私の撮影が始まった。どうすれば衣装の魅力が伝わるのか、それを考えながらポーズをとっていく。鶴野さんの撮影はテンポが速く、次のポーズについて常に考えておく必要がある。なかなかしんどいけれど、でもそれが楽しい。

 

「いいよいいよー」

 

 鶴野さんはそんな私を照明を調節したりしながらいろんな角度で次々と撮っていく。

 

「もうちょっと腕上げて」

 

 時折修正が入る。きっとそれが鶴野さんの考える一番魅力を引き出せるポーズなのだろう。

 

「よしっ、朝香ちゃんお疲れちゃ~ん」

「ありがとうございました」

 

 10分も経たないくらいで撮影が終わった。

 

「あの、次の撮影の堀口元樹君のことなんですけど……」

「ああ、木下さんから聞いてるよ。代役できた素人の子なんだってね。ポーズはこっちから指定するから大丈夫」

「それもなんですけど、実は元樹君足を怪我してて……」

「ああ、つまり足に負担のかからないポーズにしてほしいってことね」

「その通りです」

「わかった、ちゃんと頭に残しておくよ」

「お願いします」

 

 話が終わって鶴野さんは次の撮影の準備を始める。私もスタジオの端へ移動する。

 

「ふぅ……」

 

 元樹君は私の撮影ちゃんと見てくれたかしら。そもそもちゃんと着替えられたのかしら。少し着にくいものを選んでしまったし心配だわ……。

 

「果林先輩、お疲れ様です」

 

 そんなことを考えていると、渡した衣装に着替えた元樹君が近寄ってきてペットボトルのお茶を渡してくれた。思った通りよく似合ってるじゃない。飲み物を受け取るとキンキンに冷えていた。

 

「あら、ありがとう。ごくっ……ごくっ……」

 

 受け取ったお茶を飲む。撮影ってなんだか喉が渇くのよねぇ。

 

「次はいよいよ元樹君の番ね。緊張してる? 表情が固いわよ」

「まぁ少しは……」

 

 心なしか動きも固い。少しとは言うけど、きっとすっごく緊張してるのね。顔にそう書いてあるわ。

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。別に取って食われるわけじゃないんだから」

 

 緊張をほぐすように肩や腕を撫でてあげる。

 

「ポーズも向こうから指定してくれるし、足に負担がかからないようにしてとも伝えてあるから。ほら、もっと力抜いて」

「すぅ……はぁ……」

 

 元樹君は撫でられながら大きく深呼吸をする。すると先程まで入っていた肩の力がすぅーっと抜けた。

 

「ありがとうございます。おかげで緊張がほぐれました」

「もう大丈夫ね? じゃあ行ってきなさいな」

「はい!」

 

 背中を軽く押してあげる。

 

「……あ、そうだ。1つ言い忘れてたわ。その衣装すごく似合ってるわよ。だから自信持って」

 

 それだけ伝え、元樹君に背を向けて壁の方へ歩く。

 

「え、あ……」

 

 背後から気の抜けた声が聞こえる。ちらりと振り返ると、顔を真っ赤に染めた元樹君が見えた。からかうつもりで言ったわけじゃないけど、意外と可愛い反応してくれるわね。でも変に集中を乱しちゃったかもしれない。自信を持ってもらうために言ったけど、やっぱり言わない方がよかったかしら……。

 当の元樹君は何か言いたげに何度か口をパクパクさせた後、もう一度深呼吸をして心を落ち着かせた後鶴野さんのところへ向かった。

 

堀口元樹です、よろしくお願いします!

はい、よろしく。元気がいいねぇ。野球か何かやってるの?

いえ、スポーツはやってません

そう……」

 

 2人の会話を見る限りは大丈夫そうね。緊張はもうなさそうだし、むしろ自信に満ち溢れている……ように見える。私の言葉が効いたのかしら。

 

じゃあ撮影始めますね。まずはこういうポーズをとってください

こうですか?

そうそう、そんな感じ。表情はキリッと

キリッ

いいよいいよー。で、あと視線はカメラじゃなくてあっちに向けようか。……よしっ、じゃあまずは1枚撮るよー

 

 記念すべき最初の1枚、そのシャッターが切られる。その瞬間の元樹君はすごくいい表情をしていた。指示された通りキリッとした表情なのだけれど、ワクワクしてることも伝わってきて、でも初々しさも残ってる……そんな表情だ。悔しいけど少しドキッとしちゃった。

 できることならもっと近くで見たい。けれどそうすると撮影を邪魔してしまう。だから離れた壁際で見守るしかない。

 

いいねー君

ありがとうございます

じゃあ次のポーズいってみようか

はい

 

 そんな私の気持ちなんて関係なしに撮影は着々と進んでいく。10分ほどして撮影は終わった。

 

「はぁ、喉渇いた……」

 

 撮影を終えた元樹君がこちらに向かって歩いてくる。

 

「お疲れ様、元樹君」

 

 手に持っていたお茶を元樹君に渡す。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 私の飲みさしだけど別にいいわよね。元樹君も気にしてなさそうだし。

 

「初めての撮影はどうだったかしら。楽しかった?」

「はい、すごく楽しかったです」

「そう、それはよかった。いい表情をしてたから楽しんでるっていうのが伝わってきたわ。ポーズも決まってたしいい写真が撮れたんじゃないかしら」

「そう……なんですかね」

 

 私的なベストショットは……そうね、1枚目かしら。他のもよかったけど、やっぱりあの初々しさがいいわね。撮影に慣れたモデルでは撮れない、素人の元樹君だからこそ撮れた写真ね。

 

「発売が楽しみね」

「璃奈とかかすみに宣伝しておこうかなぁ」

 

 多分宣伝しなくても買ってくれると思うわよ。その2人だけじゃなくしずくちゃんとせつ菜も。

 でももう終わりっていうのは少し寂しいわね……。もうないかもしれない元樹君と一緒の撮影なんだから、何か記念が欲しいわ。……あ、そうだ。

 

「折角だから記念に1枚撮っておく?」

「いいですね。並んで撮りましょうよ」

「そうね。じゃあこっちに来て」

 

 2人で並ぶ。でも少し距離が遠い。スマホのカメラだと元樹君が少し見切れてしまう。スマホを遠ざければちゃんと写るけど……それじゃあ面白くないわね。

 

「ダメよ。もっとこっちに来ないとちゃんと映らないじゃない。ほら、こっちに……ね?」

 

 元樹君の腰に手を回して引き寄せる。私もさすがにちょっと恥ずかしいけど、それよりも恥ずかしがる元樹君の反応が見たい。さっきあんな風に顔を赤らめる元樹君を見ちゃうと……ね。

 

「そうですね。これくらいくっついてた方が記念にもなりますしね」

「……もっと恥ずかしそうにしてくれるかと思ったのだけれど……普通ね」

「そうですか?」

「もしかして慣れてる?」

「まぁ慣れてるっちゃ慣れてるかもしれません。かすみとかがよく抱きついてくるので」

 

 なるほど、確かにね。かすみちゃんやせつ菜がよく抱きついているのを見るし、初めて会った時もしずくちゃんが抱きついてたしね。元樹君にこの程度の色仕掛けは効果がない、覚えておきましょう。

 

「まぁいいわ。このまま撮っちゃいましょう。はいチーズ」

「いえーい」

 

 1枚パシャリと撮る。私も元樹君もいい笑顔だ。

 

「撮れたわ。後で送っておくわね」

「お願いします」

「さてと、私達の分の撮影は終わったし着替えに行きましょう」

「そうですね」

 

 スタジオから出て衣装室へ移動する。

 

「この後この建物の中を見学させてもらえるみたいだけど……」

「はぁ、そうなんですね」

「興味なさそうね。じゃあ少し早いけど帰りましょうか」

「はい。……あ、でも今から帰っても中途半端な練習しかできなさそうですね。もっと時間がかかると思ってたから、侑先輩には終わり際にしか戻れないって伝えちゃいましたし……そうだ、折角の機会ですしどこか一緒に寄り道してから帰りますか?」

「そうしましょうか。お互いのことをよく知るいい機会になるしね」

 

 私が元樹君と出会ってまだ数日。優しいとか鈍感とかたらしとか、そういう表面的なことはある程度わかってきた。けど何が好きなのか、趣味は何なのか、普段はどんなことをしてるのか、そういったことについてはまだまだ何も知らない。そしてそれは元樹君からしても同じはず。練習することももちろん大事だけど、部員同士がお互いのことをちゃんと知っておくことも大事だと思う。

 

「果林先輩と寄り道かぁ……どこ行こっかなー」

 

 ふふっ、楽しそうね。私も誰かと出かけるなんて久し振りだから楽しみだわ。どこに行こうかしら。お互い楽しめる場所がいいわね。

 そんなことを考えながら自分の使った更衣室の扉を開けると、とてつもない違和感に襲われた。

 

「なんで制服がハンガーにかけられてるのかしら……」

 

 制服は脱いで床に放置しておいたはず。なのに今はハンガーを使って壁にかけられている。

 

「それにこれ……」

 

 そして綺麗に畳まれて床に置かれた制服。虹ヶ咲の制服だけど、男物の制服で明らかに私のものじゃない。そしてネクタイの色は黄色、つまりこの制服は虹ヶ咲学園1年生の男の子のもの。今この場に来ているその条件に当てはまる子なんて1人しか思いつかない。

 

「元樹君の制服よね……?」

「えっと……はい、そうです……。俺がさっき使っちゃいました……」

「使ったぁ!? この更衣室を!?」

「他に空いてるところがなかったので……」

 

 そう言われて他の更衣室を見る。元樹君の言う通り、他の更衣室の扉には使用中、あるいは清掃中の掛札がされている。

 

「た、確かに空いてないわね……。私が着替え終えた時には空いてたのに……」

 

 元樹君の衣装を選んでいる間に使われちゃったのかしら……。

 

「すみません……」

 

 申し訳なさそうな顔で謝る元樹君を見て、この程度のことでいちいち騒いでいた自分が恥ずかしくなった。

 

「まぁいいわ。見られて困るようなものがあったわけじゃないし……」

 

 私の更衣室を使ったのだって元樹君なりに考えた結果なのだろう。まぁ外で待機しているスタッフに相談すれば何とかなったのではとは思うけど……元樹君も焦ってそこまで頭が回らなかったのだろう。仕方ない。それに鍵をかけ忘れた私も悪いからね。さっきは何も気にしてなかったけど鍵を使わずに更衣室の扉を開けたし、最初に鍵をかけた記憶もない。元樹君だったからよかったけど、他の人が入ってきていたらと考えると……怖いわね。

 

「先に私が着替えてもいいかしら?」

「もちろんいいですよ。むしろ先に着替えてください」

「ありがとう。……覗いたりしちゃダメよ?」

 

 更衣室の扉を閉める直前にちらりと顔だけ出してそう挑発する。

 

「そんなことしませんよ……」

 

 けれど元樹君は顔色一つ変えず答えた。この子は性欲というものがないのかしら……。でもまぁそういう子だから皆から好かれるのかもね。もし元樹君が性欲魔人だったら今頃しずくちゃんや璃奈ちゃんは何度も元樹君の毒牙にかかっていただろう。

 壁にかけられえた自分の制服を見る。改めて見るとしわができないよう丁寧にかけられている。元樹君がちゃんと考えてしてくれたのだろう。普通の男の子だったら私の制服の匂いを嗅いだりして()()()()()()をしちゃうのかもしれないけど、元樹君だからそんなことはしていないと断言できる。私にそういう魅力がないのかと少しプライドが傷ついちゃうけどね。

 

「……」

 

 扉の向こうから元樹君の話し声が聞こえる。相手は木下さん? ……いえ、元樹君以外の声は聞こえないから電話かしら?

 元樹君の声をBGMにしながら制服に着替える。扉の1枚向こうに年頃の男の子がいると考えると少し恥ずかしいわね……。私だけ恥ずかしい思いをするのは癪なので、わざとらしく服を脱ぐ音を立てながら着替える。これで少しは意識……しないでしょうねぇ。だって相手はあの元樹君だもの。

 

「着替えたわ」

 

 制服に着替え終えて更衣室から出る。元樹君の電話もちょうど終わったようだ。

 

「誰かと電話してたみたいね。相手は誰だったの?」

「侑先輩です。なんかスポドリの素が見つからなかったみたいで……」

「ああ、なるほど。いつも元樹君が用意してくれるものね」

「ちゃんとそういう情報も侑先輩と共有しないとなぁ。片方しか知らないと休んだ時に困るし……」

 

 元樹君も侑もマネージャーとして一生懸命サポートしてくれるから、私達は練習に集中できて助かるわ。このお礼は単に言葉で伝えるだけじゃなくて、イベントでいい成績を残してから伝えたい。狙うのはもちろん優勝よ。

 

「じゃあ俺着替えてきますね。……覗かないでくださいよ?」

「ふふっ、そんなことしないわよ」

 

 さっきの仕返しのつもりかしら。可愛いわね。

 

「あれ……?」

 

 元樹君の着替えを待っていると、雑誌ライターの新田さんが衣装室に入ってきた。

 

「朝香さん、堀口君はいないのかい?」

「今着替え中です。何か用事ですか?」

「今日のバイト代とかを渡しに来たんだけど、朝香さんに渡してもいいかな?」

「いいですよ」

 

 新田さんから封筒を2つ受け取る。

 

「えっとこっちがバイト代。代役とは思えないほどいい写真が撮れたから、普通より多く入れといたよって伝えてくれるかな」

「わかりました。こっちの封筒は?」

「ああ、こっちは写真だよ」

「写真……?」

「折角撮影に参加したんだから記念にって鶴野さんがオフショットを何枚か撮っててくれたんだ。だからその写真と普通に撮ったものを何枚か入れておいたよ」

 

 オフショット……気になるけど勝手に見るわけにもいかないし、元樹君がこの場で見始めたらこっそり覗き見しようかしら。

 

「じゃあ僕はこれで」

「はい、ありがとうございました」

 

 新田さんが衣装室から出ていく。それとほぼ同時に元樹君が更衣室から出てくる。

 

「お待たせしました。……その封筒は何ですか?」

「これ、元樹君にってさっき渡しに来たわ」

「へぇ」

 

 受け取った封筒を元樹君に渡す。中身が気になるのか照明で透かすように見ていた。

 

「こっちが今日の分のお給料。少し多めに入れてくれたみたいよ。代役とは思えないほどいい写真が撮れたからですって。よかったわね」

「それはありがたいですね」

 

 元樹君は給料の入った封筒を開け、中身を覗くように見ていた。中身を見た元樹君は目を見開いて、そっと封筒を閉じた。そんなに驚くほど入ってたのかしら。

 

「こっちは?」

「こっちの封筒には写真が入ってるみたいよ。記念に何枚かどうぞって」

「写真……?」

 

 封筒から写真を取り出して確認し始める。こっそり元樹君の背後に回って写真を覗き見る。

 

「ふーん……」

 

 元樹君が緊張してるところ、私がそれをほぐそうと撫でてるところ、お茶を受け渡しするところ……そんな場面がオフショットとして渡されている。こんなところ撮られちゃってたのね。全く気づかなかったわ。

 

「あ、これ……これだけ2枚あるので、1枚は果林先輩にあげますね」

「あら、私にくれるの?」

「はい。俺が2枚持ってても意味ないですし、それなら果林先輩に貰ってほしいなぁって」

「そう、ならもらっておくわ。ありがとう。私も記念として大切にするわね」

 

 元樹君からもらった写真を見る。私が元樹君を抱き寄せてるところね。こんなところまで逃さず撮ってるのはさすがというかなんというか……。でもいい写真だわ。額縁に入れて飾っておこうかしら。

 

「さてと、そろそろ行きますか?」

「そうね。誰かと一緒に遊びに行くだなんて久し振りだわ。どこに行こうかしら」

「少し回り道して学校に戻って、その道中で気になるところがあったら入る、みたいな感じでいいんじゃないですかね」

「その方がいいわね。あまり遠くまで行く時間もないし」

「決まりましたね。じゃあ行きましょうか」

 

 よほど楽しみなのか元樹君が先導して進んでいく。回り道するとなると迷子になっちゃうかもしれないし、このまま元樹君について行きましょう。

 

「果林先輩は普段どんなところに行くんですか?」

「そうねぇ……古着屋なんかはよく行くわね」

「古着屋、ですか?」

「意外かしら」

「まぁ、そうですね。もっとオシャレな服屋に行くのかと思ってました」

「そんな余裕ないわよ。それに古着には古着のよさがあるのよ」

「そういうもんなんですかねぇ」

「そういうものよ」

 

 璃奈ちゃんに選んでもらった服をよく着るって言ってたし、あまり服を自分で選んで買ったりしないのかもね。今度オススメの古着屋に連れていってあげようかしら。

 

「元樹君はどんなところに行くの?」

「璃奈と出かける時はゲームセンターとかゲーム屋が多いですね。前にかすみと出かけた時はクレープとか頭のおかしいパンケーキを食べましたよ」

「頭のおかしいパンケーキ……? 何なのそれ」

「虹を模した7色のパンケーキが文字通り山のように積まれてるんですよ。クリームとイチゴもたっぷり添えてね」

 

 カロリーがすごそうね……。興味はあるけどさすがに食べられないわ。

 

「まじであれはヤバかったです。俺とかすみの2人がかりでギリギリでした。食った後しばらく動けませんでしたし……。でも完食したらお代無料っていうのはありがたかったですけど」

「しずくちゃんとは出かけたりしないの?」

「しずくとはないですね」

 

 あらま、恥ずかしくて誘えないのかしら。うかうかしてるとかすみちゃんに取られちゃうわよ?

 

「元樹君1人で出かけることはないの?」

「あんまり……行くとしてもスーパーとかくらいですね」

「へぇ、元樹君がご飯を作ったりするの?」

「まぁ……うちはあんまり親が家にいないので……」

「仕事で忙しいの?」

「そんな感じ、ですね……」

 

 あまりこの話題に触れてほしくないのか、元樹君は俯いてしまった。もしかしたら地雷を踏みぬいてしまったのかもしれない。どうにかして話題を変えないと……何か、何かないかしら……

 

「……あら、お化け屋敷じゃない」

 

 話題を変えられる何かを探していると、路上にお化け屋敷を見つけた。設置された看板を見ると入場無料と書かれている。

 

「しかもタダみたいね。折角だし入ってみる?」

「……はい、入ってみたいです」

「よし、じゃあ行きましょうか。すみません、2人いいかしら」

「お2人さまですね。こちらにどうぞ」

 

 体に包帯を巻きつけた人に入口まで案内してもらう。

 

「楽しんできてくださーい」

 

 見送りを受けながら2人でお化け屋敷に入る。中は前がギリギリ見える程度の暗さで、ヒュゥ~と風が吹く音が聞こえる。

 

「なかなかの雰囲気ね。何か出そうだわ」

「そうですね……」

 

 隣から聞こえる元樹君の声は少し震えている。もしかして……

 

「うーらーめーしーやー」

「きゃっ!」

 

 天井から白装束の女の人が急に現れた。元樹君の方を気にしてたからびっくりしちゃった。

 

「うぅ、果林先輩……」

「って元樹君?」

 

 元樹君が私にしがみついてきた。前を決して見ないように顔を私の体にうずめている。

 

「もしかして怖いの苦手?」

「……はい」

 

 元樹君は私の顔をしばらく見つめた後、恥ずかしそうにしながら答えた。

 

「ふふっ、意外に可愛いところあるじゃない」

 

 普段の強気な元樹君からは想像できない、私にしがみついてお化けに怯える怖がりな元樹君。これがギャップというものかしら。守ってあげたいという気持ちになる。

 

「いいわよ。そばにいてあげるから存分に怖がりなさいな」

「お願いします……」

 

 胴体から離れて今度は腕にしがみついてくる。私は別にそのままでもよかったのだけれど、歩きにくいと判断したのかしら。

 

「怖いよぉ……」

 

 しかしこうも怖がる元樹君を見ていると……からかいたくなっちゃうわね。

 

「あら、あそこ……」

 

 元樹君に見えるように指差す。その指の先にはもちろん何もない。

 

「あ、あ、あ……」

 

 それでも元樹君には効果抜群だったようだ。しがみつく力が強くなった。目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 

「ちょっと脅かすつもりだったのだけれど、こんなに怖がられると罪悪感が……」

「がりんぜんばぁい~……」

 

 元樹君が泣きながら抱きついてくる。吐息が首筋に当たってくすぐったい。

 

「よしよし、ほら泣かないの」

「だっでぇ……」

 

 頭を撫でて慰める。まぁ完全に私が悪いのだけれど。でも泣いてる元樹君を見てるとなんだかゾクゾクするというか……もっと見たいという衝動に駆られてしまう。

 

「ほら、先に進みましょ。次のお化けが待ってるわよ」

「待って……先に行かないで……」

「ふふっ、大丈夫。先に行ったりなんてしない、ちゃんと隣にいてあげるわよ」

 

 震える元樹君の手を握る。

 

「これで少しは怖くなくなるでしょ?」

「……うん」

「ふふっ、いい子ね」

 

 頭を撫でると安心したのか手の震えが止まる。それを確認してから元樹君の歩幅に合わせて先に進む。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

 ゾンビの格好をした人が壁を突き破って目の前に現れた。これ、毎回直してるのかしら……?

 元樹君はまた私にしがみついてきた。けれど今度は顔を逸らすことなく、涙目になりながらもしっかりとゾンビを見据えている。

 

大丈夫……怖くない……」

 

 頑張って恐怖を乗り越えようとする元樹君が可愛くて、かっこよくてついつい頭を撫でてしまう。

 

「よく頑張ったわね」

「果林先輩がいてくれたから……」

 

 嬉しいこと言ってくれるわね。

 

「さ、まだまだ先は長いわよ。一緒に頑張りましょうね」

「はい」

 

 

 

「疲れたぁ……」

 

 お化け屋敷を無事脱出し、今は出口付近に設置された休憩所のベンチで休憩をとっている。私は大丈夫だけど、元樹君は精神的にかなり疲労しただろう。

 

「久し振りだったけど楽しかったわ」

 

 たまにはこういうところに入るのも悪くないわね。

 

「元樹君はかなり怖がってたけど楽しめたかしら?」

「楽しかったですよ」

「それはよかったわ」

 

 怖いものは苦手だけど、楽しめるくらいには好きなのね。辛いものは苦手だけど好きで食べちゃうのと同じ感じなのかしら。

 

「私だけが楽しんでるんじゃないかと少し心配してたの」

「でもその割には俺をからかって楽しんでましたよね……!」

「あれは元樹君の反応が可愛かったから……ごめんなさいね、許して」

 

 最初の1回以降も何度かからかってしまった。その度に可愛い反応をするからこちらも我慢できないのだ。

 

「……まぁ俺も果林先輩に甘えまくりだったので、それでチャラにしましょうよ」

「ふふっ、いいわよ」

 

 あれくらいいつ来てもいいのに。

 

「でも元樹君が怖いものが苦手だとは思わなかったわ。怖いものなしっていう勝手なイメージがあったけど、そんなことなかったのね」

「そりゃそうですよ。俺だって人間なんですから怖いものの1つや2つあります。なんとかして克服したいとは思うんですけど、なかなかうまくいかなくて……」

「あら、そんなに気にしなくてもいいのに。1つくらい弱点があった方が可愛くなるものよ」

 

 私はそんな元樹君を可愛いと思ったし、しずくちゃんや璃奈ちゃん達もきっと真剣に向き合ってくれるだろう。

 

「でも……」

「璃奈ちゃんはなんて言ってるの?」

「璃奈には言ってないです。というか誰にも。知られるの恥ずかしいし……」

「へぇ、誰にも言ってないのね。じゃあ私がハジメテってことになるわね」

「そうなりますね」

 

 2人で笑い合う。幼馴染の璃奈ちゃんですら知らないことを私が一番最初に知っちゃった。どうしてかわからないけど妙な優越感があるわ。

 

「さてと、そろそろ移動しましょうか。人も増えてきたしね」

「そうですね」

 

 お化け屋敷から出てくる人が増えてきた。無料だから試しに入ってみようという人が多いのかしら。元樹君も十分休憩できただろうし、休憩室から出て次に行く場所を探す。

 

「次はどこに……あ」

 

 当たりを見回していると1枚のポスターが目に入った。

 

「何か見つけましたか?」

「あれ、パンダ……」

「『パンダのぬいぐるみ入荷しました』……?」

 

 ゲームセンターのポスターだろうか、とてもとても可愛いパンダのぬいぐるみのポスターが貼られている。欲しい……あの子が欲しい……ギュっと抱きしめたい……。幸か不幸かパンダ好きであることは元樹君にすでに知られてしまっている。だから元樹君と一緒に取りに行っても問題ない。

 

「ねぇ、折角だし……」

「あのぬいぐるみ、欲しいんですよね?」

 

 首を縦に振る。この察しのよさはさすがとしか言いようがないわ。

 

「でもあれクレーンゲームの景品ですよ。取れるんですか?」

「大丈夫よ」

「得意なんですか?」

「きっと大丈夫。何とかなるわ」

 

 クレーンゲームなんて滅多にしないから自信なんて全くないけど、きっと何とかなる。私のパンダへの愛と、あとは500円くらい積めばきっと取れるわ。

 

「心配だなぁ……」

 

 元樹君に心配されつつゲームセンターに入る。ゲームセンターなんていつぶりだろうか。中は広く、様々なゲームの駆動音とそれを楽しむ人達の声で少し騒々しい。

 

「広いわね。ぬいぐるみはどこにあるのかしら……」

「さぁ? どこにあるんでしょうね」

 

 元樹君の声も少し聞き取りづらい。元樹君もそれをわかってるのかいつもより声量を上げて話してくれている。助かるわ。こういう細かな気遣いができるのも元樹君の魅力ね。

 

「適当に歩き回りましょうよ。その内見つかるでしょ」

「そうしましょうか。元樹君も何かやりたいゲームがあったら遠慮しないで言ってくれていいからね」

「はい」

 

 元樹君の後を歩きながらゲーム機を1つ1つ見ていく。ほんとたくさんあるわねぇ。こんなにたくさんのゲーム機を毎日稼働させてたら電気代いくらかかってるのかしら。気になるわ。ゲームセンター、電気代っと……

 

「果林先輩、果林先輩」

 

 スマホで調べていたら元樹君に制服の裾を引かれた。

 

「どうしたの?」

「あれやってみたいです」

 

 あれは……ダンスゲームというものかしら。元樹君もこういうのに興味あるのね。

 

「でもあれはかなり激しく動くでしょ? 足に悪いからダメよ」

「えー……」

 

 遊んでいる人を見る限り結構激しく動いている。足でパネルを踏んで遊ぶみたいだから特に足に負担がかかるだろう。そんなこと絶対にさせられない。

 

「あっ、じゃあ果林先輩が代わりにやってくださいよ」

「え? 私が代わりにやるの?」

「果林先輩が踊るところ見てみたいです」

 

 期待の眼差しで見つめられて、思わず顔を逸らしてしまう。

 

「もうすぐダンスレッスンも始めるつもりですし、その予行練習だと思って」

 

 なるほど、予行練習ね。私はダンス素人だしいいかもしれない。このダンスゲームがスクールアイドルのダンスに活かせるかどうかはわからないけど……。それに私がやるだけで元樹君が満足してくれるのなら喜んでやりましょう。

 

「しょうがないわね。1回だけよ?」

「やったぜ」

 

 はしゃいじゃって、可愛いわね。

 

「じゃあ俺は後ろから見てますので」

「わかったわ」

 

 空いている台に入る。初めての人は1曲無料で遊べるみたいね。ありがたいわ。

 プレイを始めるとチュートリアルが始まった。説明を聞きながら指示に従って足を動かす。

 

「えっと、画面に流れてくる矢印と同じ床の矢印を足で押せばいいのね」

 

 画面に矢印が流れてくる。タイミングよく押しているつもりだけれどうまく合わない。目で見て合わせようとしてるのがダメなのかしら……。じゃあ次はリズムを聞いてやってみましょう。

 

「あ、うまくいった」

 

 なるほど、リズムを聞いてそれでタイミングを合わせるのがベストなのね、理解したわ。となると聞いたことのない曲だと難しいわね。知ってる曲あるかしら……。

 チュートリアルが終わって曲選択画面に移行した。どうやらジャンル別に分かれてるみたいなので、ひとまずジャンルを全部見てみる。……あら、スクールアイドルのジャンルなんてあるのね。µ'sやAqoursの曲もいっぱい入ってるみたいだわ。それほど人気なのね。ちょうど昨日µ'sの『No brand girls』の動画を見て勉強をしたしこの曲にしましょうか。難易度は……まぁ一番上のにしときましょう。難しいほど燃えるしね。

 

「頑張ってー」

 

 後ろから元樹君の声援が聞こえる。手を軽く振って応える。その直後に曲が流れ始める。昨日だけでもう何度も聞いた。リズムは完全に頭に入っている。あとは画面に流れてくる矢印を見て足を動かすだけだ。

 

「ふっ、ほっ、やっ」

 

 初めてにしてはそこそこやれてる気がするけど、結構な数ミスしてしまっている。曲のテンポが速いからか、それとも高い難易度を選びすぎたのか……きっとその両方ね。でもやっていて楽しい。中途半端な難易度でやるよりもこれくらい難しい方が燃えるし楽しめるわ。

 

「ふぅ……まぁなかなかの結果じゃないかしら」

 

 最後までやり終える。初めてやったならこんなものじゃないかしら。もちろん満足はしてないけどね。機会があったらリベンジしたいわ。

 

「お疲れ様です。どうでしたか?」

「意外と楽しめたわ。……あら?」

 

 隣の台からノーブラが聞こえる。その人も私と同じ曲、同じ難易度でやっているみたい。このゲームに慣れているのか私よりも上手だ。ほとんどミスしていない。曲が終わってその人のスコアが表示される。

 

「あの人、私よりも高い……」

 

 僅差とかじゃなくて圧倒的負け。全く知らない赤の他人で私が勝手に比べてるだけだけど、それでも負けたままっていうのは嫌な感じね。初めてだったからとか、そんな言い訳をするつもりはない。

 

「今何か言いましたか?」

「ごめんなさい、もう1回やってもいいかしら?」

「え……別にいいですけど……」

「ありがとう。もう少し待っててね」

 

 財布から100円取り出して筐体に投入する。

 

「なんか妙にやる気ですね……」

「当たり前よ。負けたままじゃいられないわ」

「まぁその気持ちもわかりますけどね。俺はちょっと他のとこ見てきますけど、いいですか?」

「もちろん」

「じゃ、頑張ってくださいね」

 

 激励を聞きながら曲を選ぶ。もちろん選ぶのはノーブラ、難易度ももちろん一番上。あの人のスコアを超えるまで何度も挑戦……といきたいけど、さすがにこの100円だけで終わりね。元樹君を待たせてしまうし、何よりぬいぐるみにかけられるお金が減ってしまう。それだけは避けなければならない。だからこの100円……3回の挑戦で越えなきゃ。

 

「……はぁ、全然ダメね」

 

 一度やって慣れたからか最初のスコアは超えたけど、まだまだあのスコアには届かない。簡単に超えられるとは思ってないけど、少し厳しいかも……。次はあの人の動きをイメージしてやってみましょうか。

 

「いい感じ……」

 

 さっきよりもいい感じでできている気がする。でも時々頭の中のイメージに体がついてこない。

 

「ダメだわ……」

 

 結果は散々だ。さっきよりもスコアは低くなってしまった。イメージに体がついてこなくなると、そこで崩れてたくさんミスしてしまっていた。何が足りないのかしら……経験? それとももっとイメージを洗練すればいい? 何も道が見えてこない。このままだと……

 

「大丈夫ですか?」

「元樹君……?」

 

 考え込んでいると隣に元樹君がやってきて声をかけてくれた。

 

「他の場所を見てたんじゃないの?」

「ん~、飽きちゃったっていうか……果林先輩が一緒じゃないとあんまり楽しくないというか……」

 

 よく平然とそんな恥ずかしいこと言えるわね……。

 

「いつから見てたの?」

「今のプレイの途中からですかね」

「そう……ねぇ、元樹君から見て、今のは何がダメだったと思う?」

「うーん、そうですねぇ……」

 

 私1人では思いつきそうにないので元樹君を頼る。分析が得意らしい元樹君なら見つけられると思ったからだ。

 

「俺はダンス素人なんであんまりちゃんとしたこと言えないですけど、なんていうか動きが果林先輩に合ってない気がしました」

「どういうこと?」

「うまく表現できないんですけど、こう果林先輩らしくない動きだったというか……一番最初にやった時の方が果林先輩らしい動きだったと思います」

「私らしい……」

 

 心当たりがあるとすればあの人をイメージした動きだったってことかしら。逆に一番最初は何も見本がなくて全部自分で考えながら動いてた。それが私らしい動きだったってこと?

 

「あとは……もっと楽しむといいと思いますよ」

「楽しむ?」

「はい、こうやって……」

 

 元樹君は指で私の口角を上げた。その時に指が唇に当たってドキッとする。

 

「にっこりん、ですよ。勝負事で本当に楽しむためには強さがいる、なんて言葉を漫画で見ましたけど、強くなる過程にも楽しむことが必要不可欠だと俺は思うんです。だから楽しんでいきましょう?」

「楽しんで、ね……」

 

 確かにさっきまでの私はあのスコアを超えようと必死になって、全然ゲームとして楽しめてなかった。今思えばあの人もこのゲームを心から楽しんでいるように見えた。そこが私とあの人の大きな違い。

 

「ふふっ、ありがとう元樹君。なんだかスッキリしたわ」

「お役に立てて嬉しいです」

「最後の1回、全力で楽しんでくるから最後まで見ててくれる?」

「はい、この目に焼き付けさせてもらいます」

「ありがとう、頑張ってくるわね」

 

 あのスコアを超えたいとか負けたくないとかは一旦忘れる。元樹君の言う『勝負事を楽しむための強さ』はきっと今の私にはまだない。だから勝負のことは頭から消して純粋にこのダンスゲームを楽しむ。一番最初のように、ね。

 

「ほっ、ほっ、ほっ……」

 

 勝負のことを忘れたら自然と楽しんでプレイすることができている。楽しんでいたら自然と口角も上がってきた。思い通りに体が動いている気がした。何回ミスしたかなんてもう数えてないけど、今までで一番少ないと確信できる。

 

「はぁ……はぁ……よしっ」

 

 最後まで楽しんでやりきった。楽しみすぎて思わずポーズを決めそうになったけど、周りの目もあるしなんとか踏みとどまる。肝心のスコアは……

 

「やったわ! 元樹君見て! 記録更新よ!」

「おお! すごいじゃないですか!」

 

 勝ち負けのことを忘れた途端にあの人のスコアを超えることができた。フルコンボというのはよくわからないけど、とにかく超えることができた。元樹君とハイタッチをして喜んだところでふと我に返る。

 

「あっ、ごめんなさい。ついはしゃいじゃったわ……」

 

 元樹君の前だというのに嬉しさでついついはしゃいでしまった。

 

「このことは皆には内緒ね?」

「なんで秘密にする必要があるんですか?」

「だって私のクールなイメージを崩しちゃうじゃない」

「うーん……別にいいと思いますけどね」

「え?」

「はしゃいでるところも可愛くていいじゃないですか。クールでかっこいい果林先輩も、そうじゃない可愛らしい果林先輩も、どちらも果林先輩自身なんですから隠す必要なんてないと思いますよ。むしろ隠さずに可愛いところをどんどん見せていきましょうよ」

「……元樹君って、そんな恥ずかしいことも平然と言えちゃうのね……」

 

 可愛いだなんて久し振りに言われた気がするわ。よく言われるのはかっこいいって言葉ばかりだから……。なんだか顔が熱い。これが体を動かしたことによるものなのか、それとも元樹君のせいなのかわからない。わからないけど……なんだかこの熱さが懐かしい感じがする。

 

「恥ずかしがる必要なんてないですからね。それに果林先輩の好きなところならもっといっぱい言えますよ。冷たいように見えて実はすごく優しいし、今日わかったのが面倒見がいいってこと。あとは……」

「……ふふっ、元樹君って面白いわね」

「そうですか?」

「ええ、すごく」

 

 あまりにも平然と言い続けるから、私の恥ずかしさも吹っ飛んで逆に面白くなってきた。

 

「クールなところも、そうじゃないところもどっちも私……いい言葉ね。こんなこと言ってくれたのはキミが初めてよ」

「じゃあ俺が果林先輩の初めてってことになりますね」

「あら、私の真似かしら?」

「さぁ、どうでしょうか」

 

 ふてぶてしくニヤリと笑う。そんな元樹君が微笑ましい。元樹君は大人びてると思ってたけど、こういうのを見てると年相応に子供っぽいところもちゃんとあるのだと少し安心する。だから元樹君とかすみちゃんは気が合うのかもね。

 

「でもやっぱり秘密にしておいてもらえるかしら。皆に知られるのは恥ずかしいし……」

「えー、どうしよっかなー」

「元樹君が怖いものが苦手なのも秘密にしておいてあげるから、ね?」

「はい、内緒にします!」

「約束よ? もし破ったりしたら……元樹君の秘密も皆にバラしちゃうからね」

「絶対誰にも言いませんから、だから俺のことも……」

「大丈夫、誰にも言わないわよ」

「はぁ、よかった……」

 

 安堵で胸を撫で下ろしている。やっぱり皆弱点だけは知られたくないのね。しずくちゃん辺りにホラー映画が見たいって誘われたらどうするのかしら。

 

「あら、もうこんな時間……」

 

 ふとスマホの画面を見たらあと数分で5時といったところだった。そろそろぬいぐるみを確保しに行かないと……。

 

「パンダのぬいぐるみがある台ならさっき見つけておきました。ここをまっすぐ行くとありますよ」

「それは助かるわ。さっ、早く取りに行きましょ」

 

 ああ、早く会いたいわ。早くギュって抱きしめたいわ。

 

「これね……」

 

 愛らしい姿をしたパンダのぬいぐるみを見つけた。ポスターに載っていたものよりも何倍も可愛い。

 

「500円で取れるかしら」

 

 財布から500円玉を取り出し、どうか私の下に来てくれますようにと祈りを込めてから投入する。そしてもう一度祈ってからレバーを操作する。

 

「ここかしら」

 

 パンダの真上に合わせ、ボタンを押してアームを降下させる。アームがぬいぐるみを掴み、そのまま持ち上げる。いい調子、そのまま穴まで……

 

「あっ、落ちちゃったわ……」

 

 まぁこんなものよ。あと4回もチャンスがあるし切り替えましょう。

 けどこの後3回も同じように持ち上げた後落としてしまった。落ちて床に激突するパンダを見るたびに心が痛む。ごめんなさい、次こそはちゃんと取るから。

 

「これが最後……あぁ……」

 

 最後の最後でやらかしてしまった。失敗できないという緊張から狙いがずれて、ぬいぐるみを持ち上げることさえできなかった。

 

「はぁ、ダメだったわ……」

「残念でしたね」

「仕方ないからこのぬいぐるみは諦めることにするわ」

 

 最後にぬいぐるみの顔をじっくりと見て目に焼き付ける。愛らしい。けどその目には悲しさが宿っている気がした。僕をこのまま置いていくの? そう訴えかけてくる。

 

「このまま諦めていいんですか?」

「だって取れなかったんだから仕方ないじゃない。ここでお金を使いすぎるわけにもいかないし……」

「……じゃあ俺もやってみていいですか?」

「元樹君もやるの? 構わないけど、難しいわよ?」

「任せてください。こう見えてもクレーンゲームは結構得意なんですよ」

 

 へぇ、璃奈ちゃんとクレーンゲームで遊んだりしてたのかしら。

 

「わかったわ。後ろから見守ってるわね」

 

 元樹君の集中を乱さないように視界に入らない位置に移動する。

 

「こういうぬいぐるみ系は腕の間とかにアームを差し込むといいんですよ」

 

 解説をしながらも、チャチャッと捜査して言った通り腕の間に差し込んでいる。すごいわ。アームはぬいぐるみを持ち上げてそのまま穴へと向かっていく。元樹君は勝ちを確信した顔をしている。

 

「あっ」

「あああああ!」

 

 だけど無情にもぬいぐるみは下に落ちてしまった。

 

「アームが揺れて落ちちゃったみたいです。ツイてないなぁ」

「残念だったわね」

 

 悔しがりながらもどこか楽しそう。取れた取れない関係なしにクレーンゲームが好きなのね。

 

「この位置なら次こそ取れるな」

「あら、もう1回やるの?」

「もちろんですよ。次でほぼ確実に取れるのに引き下がるなんてもったいないじゃないですか」

 

 元樹君はもう一度腕の間にアームを差し込んでぬいぐるみを持ち上げた。そして今度は途中で落ちることなく穴の中に落ちた。

 

「やったぜ」

「やったじゃない。おめでとう」

「ありがとうございます」

 

 元樹君は取出口から取ったぬいぐるみを取り出し、しばらくその顔を見つめた後私に差し出してきた。

 

「果林先輩へのプレゼントです。受け取ってください」

「私に? 受け取れないわ。この子は元樹君が取った子だもの」

「いいからいいから」

 

 そう言って私の胸にぬいぐるみを押しつけてくる。元樹君の優しい目とパンダの愛くるしい目の両方から見つめられて心が揺らぐ。

 

「……ほんとにいいの? このまま私に渡したらこの子は一生帰ってこないわよ? それでもいいの?」

「もちろんです。果林先輩ならきっと大事にしてくれると思ってますから」

「そう、ならありがたく受け取っておくわ。ありがとう、元樹君」

「どういたしまして」

 

 受け取ったぬいぐるみをギュっと抱きしめる。

 

「ふふっ、可愛い」

 

 もふもふしていて温かい。本物もこんな感触なのかしら。いつか本物に抱きついてみたいわ。

 

「何か元樹君にお礼をしないといけないわね」

「そんなのいらないですよ。むしろこのぬいぐるみは同好会に入ってくれたお礼ですから」

「同好会に入ったお礼? それこそいらないわよ。私は彼方への義理でも、ましてや解散させられることへの同情で入ったわけじゃない。スクールアイドルに興味があったから入ったの」

 

 スクールアイドルの雑誌……名前は何だったかしら。忘れたけど、それを図書館でたまに読んだりしていた。

 

「あとはそうねぇ……元樹君に興味が湧いたから、かしら」

「俺に? なんで?」

「私がグループ活動が苦手って言った時、グループじゃなくてもいいって元樹君言ってたでしょ?」

「言いましたね」

「あれ、私は結構衝撃的だったのよ? スクールアイドルってグループってイメージがあったから、カバーするからグループとして頑張れって言われると思ってた」

 

 実際µ'sやAqoursをはじめとして有名なスクールアイドルはグループばかりだ。

 

「侑達はグループで活動するつもりだったろうからそう思ってたと思う。でも元樹君だけは違った。グループにこだわる必要なんかない、むしろソロの方が私達にはぴったりだって。それにあの言葉は私に入ってもらうために言ったわけじゃないわよね。あの言いぶりからして、私が入っても入らなくてもソロ活動メインにするつもりだったんでしょ?」

「まぁ、そうですね。かすみから事情を聞いた時から考えてはいました」

 

 そんなに早くから……

 

「それって結構すごいことだと思うの。皆のことをちゃんと理解して、どうすべきか考えて、そして決断する。それに皆からあんなに信頼されてることも。ソロアイドルなんてそう簡単にできることじゃないでしょ? それなのに元樹君の言葉を聞いて、不安になるどころかむしろワクワクしているように見えた。それってきっと皆が元樹君のことを信頼しているから、元樹君の言葉を信頼しているからだと思うの。同級生も先輩も、皆が元樹君のことを信頼してる……だから興味が湧いたのよ」

「……そんな風に思ってくれてたんですね」

 

 元樹君は顔を真っ赤にして照れながらも嬉しそうにしている。この子はからかったりするより、自分の気持ちを素直にぶつけた方が照れちゃうのね。

 

「少し長くなっちゃったわね。結局私は自分の意思で同好会に入ったってことを言いたかったのよ。だから元樹君が気にする必要なんてないの。わかった?」

「十分すぎるほど伝わりましたよ……」

「ふふっ、いい子ね」

 

 顔が熱いのか手でパタパタと扇いでいる。こんな元樹君滅多に見られないわね。できれば動画に収めてしずくちゃんに見せてあげたいわ。可愛いって喜んでくれるかしら。それとも私しか直接見られてないのはズルいって怒るかしら。どっちもありそうなのが面白いわね。

 

「というわけだから何かぬいぐるみのお礼をしないとね。何がいいかしら?」

「いやまぁお礼のことはいつでもいいんで、今は学校に戻りましょうよ。さっきかすみから連絡が来てたので」

「かすみちゃんから? それなら早く戻らないといけないわね」

 

 ビニール袋を1枚貰ってその中にぬいぐるみをそっと入れ、ゲームセンターを後にする。ほんとは抱きしめながら歩きたいけど、そうすると皆にパンダ好きであることがバレちゃうからね。仕方ないから袋で隠しておく。寮に戻るまでの我慢よ。

 

「それにしてもかすみちゃんから……ね。元樹君に会いたくて仕方ないのかしら」

「多分この後俺の家に泊まるからだと思います。俺がいないと帰れないですからね」

「……待って。もしかしてかすみちゃんともお泊まりするの?」

「しますよ」

「なるほど……しずくちゃんも苦労するわね

 

 かすみちゃんも意外と手が早いわね。昨日の今日でもうお泊まりまで行っちゃうなんて……すごい行動力だわ。

 

「元樹君は好きな子とかいないの?」

 

 ずっと気になっていたことだ。いろんな子から好かれてる元樹君だけど、逆に元樹君に好きな子はいるのかしら。

 

「いないですよ。生まれてから今に至るまでずっと」

「そうなのね」

 

 璃奈ちゃんのことも意識したことないのかしら……。

 

「果林先輩は好きな人いないんですか?」

「へっ……? わ、私は……いないわよ。悪い?」

「いえ、何も悪くないですよ」

 

 ここでいると嘘ついてからかうのはなんだかしてはいけない気がした。

 

「でも果林先輩って何回も告白されてそうですね」

「告白なんてされたことないわ。高嶺の花だと思われてるのか、皆遠くから見るばかりで全然言い寄ってきてくれないのよ」

「へぇ」

 

 言い寄られても困るけどね。

 

「そういう元樹君こそされたことないの?」

「ないです、1回も」

「あら意外。元樹君って優しいからてっきり告白されたことくらいあると思ってたわ。彼女が欲しいとか思わないの?」

「うーん……別にどっちでも、って感じですね」

「ふぅん」

 

 もう少し恋愛にガツガツ行くタイプだったらしずくちゃん達も楽だったかもしれないわね。いや、逆にドキドキしっぱなしで心臓が持たないかも。

 

「果林先輩は彼女……じゃなくて彼氏欲しくないんですか?」

「うーん……恋はしてみたいって最近思うようになったのだけれど、いいと思える人がなかなかいないのよねぇ……」

 

 横目でちらりと元樹君を見る。

 

「でも今日一緒に出かけてみて、元樹君が彼氏だったらいいのにって少し思ったわ」

「え……」

「少し顔が赤くなってるわよ? もしかして照れちゃった?」

「照れてないです!」

「ふふっ、可愛い」

 

 でもさっきの言葉はからかうために言ったわけじゃない。本当にそう思った。優しいし頼りになる。でもそれだけじゃなく、緊張したり照れたり怖いものが苦手で甘えてきたり、そういう可愛いところを見ていると心が惹かれた。あとはパンダ好きという共通点。一緒に並んで実物のパンダを見たいと思った。もししずくちゃん達の気持ちを知る前に出会っていたら……もしかしたら好きになってたかもしれないわね。

 

「あら、もう学校ね」

 

 気づけば校門の前まで来ていた。

 

「元樹君と話しているとなんだか時間が短く感じるわ」

「実際ゲームセンターからここまでそんな距離ないですからね」

 

 急に現実的な答えをぶっこんでくるわね……。

 

「今日は楽しかったわ、ありがとう」

「俺もすごい楽しかったです。今日はありがとうございました」

「元樹君からもらった写真とこのぬいぐるみ、大切にするわ。また一緒にどこか遊びに行きましょうね」

「はい、動物園一緒に行くの楽しみにしてますよ」

 

 そういえば約束してたわね。忘れちゃってたわ。意外と早く一緒にパンダを見られるかも。

 

「さぁ、部室に戻りましょうか。さっきもらった写真、皆にも見せてあげたらどうかしら」

「そうします」

 

 しずくちゃん達は食い入るように見るんじゃないかしら。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


モデルの撮影がどんな感じかわからないので想像で書きました。絶対間違ってると思います。

作中で出てきた木下、鶴野、新田は多分今後出てきません。急に出てきて「なんだこのオッサン!?」と驚愕した人も安心してください。

あっ、そうだ(唐突) 
皆さん4thライブはいかがでしたか? 私は節約のため参加できませんでした……。円盤が発売されるまでにお金を貯めておきます。
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