【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート 作:一般紳士君
久し振りのサイドストーリーじゃい。
最近のマイブームはこの小説をゆかりさんやきりたんに読んでもらってRTAっぽさを感じることです。
正直に言うと、後輩君への第一印象はあまりよくなかった。後輩君に何か失礼なことをされたわけではないけれど、スクールアイドル部を探しに行ったはずの侑ちゃんが隣に男の子を連れて帰ってきて、しかもその子と親しげに話していたから。つまりはただの嫉妬だ。自分でも子供っぽいとは思うけど、なんだか侑ちゃんが取られちゃった感じがして思わず嫉妬してしまった。
「ええっ!? わ、私がスクールアイドル同好会に!?」
「お願い! 頼れるのは歩夢だけなんだ!」
そんなことを考えていたら、侑ちゃんにスクールアイドル同好会に入らないかと誘われた。
「あ、あんな風に歌ったり踊ったりするの、私には無理だよ! 私なんかとは世界が違う感じだったし……」
「そんなことないですよ。歌も踊りも最初はできなくても、頑張って練習を続ければだんだんとできるようになりますから」
「歩夢って昔からどんなに苦しい時でも頑張れる子で、すごいなってずっと思ってたんだ」
「へぇ。侑先輩がそこまで言うってことは、ほんとに頑張れる人なんですね、歩夢先輩は。すごい人ですね。尊敬します」
「うん、私もそう思うよ」
さっきまで後輩君に嫉妬してたけど、褒められた途端に嫉妬心よりも嬉しさの方が上回ってしまった。人に褒めてもらえるのは嬉しい。けどこの名も知らない後輩君に褒められるといつもより嬉しく感じる。なんでかな? 後輩君が褒め上手なのかな? それとも……
「……」
「ん? かすみ、どうした?」
かすみと呼ばれた後輩ちゃんがぷっくらと頬を膨らませていた。可愛らしいけど、何かに怒っているように見える。その視線は後輩君の方に向きつつも、時々私の方にも向けられていた。もしかして私、何か怒らせるようなことしちゃった……?
「かすみんだって……頑張れるけど……」
「本当に頑張れる?」
「ほんとだってば。もっとかすみんのこと信じてよぉ……」
「ごめんごめん、冗談だって。かすみが頑張れるやつだってことは前から知ってるから。かすみのこと信じてるから。1人で部室を守って、練習も続けて、そんなことができるやつが頑張れないわけないだろ。でも、これからのスクールアイドル同好会は昔とは違うってことを示すためには、かすみ以外にも頑張れる人が必要なんだ。それが歩夢先輩なんだよ。かすみを信じてないってことじゃ決してないから」
「もと男がそう言うならいいけどぉ……」
ふふっ、2人とも仲いいなぁ。まるで私と侑ちゃんみたい。後輩君が侑ちゃんで、後輩ちゃんが私。褒められて顔が赤くなっちゃう所なんかも私にそっくり。
「それに頼りになる人は多い方がいいからな。もちろん侑先輩のことは頼りにしてるけど」
「そっか、元樹君は私のこと頼りにしてくれてるのかぁ……」
―――なんとなく察してはいたけど、この子はやっぱり人たらしだ。侑ちゃんと同じ天然なのか、それともわざとやっているのかまではまだわからないけれど。
「ええ。滅茶苦茶頼りにしてますよ」
「あはっ、侑ちゃんはやっぱりすごいなぁ」
「えっ、そう?」
「だって、スクールアイドル部を探しに行って、そこが潰されそうって聞いたらすぐ部員集めに走って……。それに……それに、会ったばかりの後輩君にこんなに頼りにされてるなんてすごいよ!」
後輩君は会ったばかりの私を褒めてくれたけど、頼りにされるかどうかはまた別問題だ。会ったばかりの人から頼りにされる人なんてそうそういない。
「……ねえ、幼稚園の時のこと、覚えてる?」
昔のことを思い出す。私が辛い時、苦しい時、いつも侑ちゃんが隣にいてくれた。いつも侑ちゃんが支えてくれた。
「……私、侑ちゃんがいたからいろんなこと頑張ってこられたんだ。だからね、あなたと一緒に、スクールアイドル頑張りたい」
「ほんとっ!?」
「えっ、いいんですかぁ!?」
「ありがとう、歩夢! 一緒に頑張って、たくさんの人を笑顔にしようね!」
「うん! これからよろしくね! 後輩ちゃんと後輩君も……えっと、かすみ……さん? それから元樹君……でいいのかな?」
「歩夢先輩は先輩なんですから、かすみんって呼んでくれていいですよ!」
「でも、部活ではかすみさんの方が先輩だし……」
「も~! もっとフレンドリーにしてくれていいんですよっ! だってこれから同好会の仲間になるんですし~!」
「フレンドリー……あだ名とか? えっと……中須かすみちゃんだから……かすかす?」
「ぎゃー! なんで昔のあだ名知ってるんですかー!? かすかすはダメですー! 禁止禁止!」
私がかすみさんのことをかすかすと呼ぶと、かすみさんがすごい拒否反応を示した。何か踏んじゃいけないものを踏んじゃったかな……。
「か、かすみちゃんでいいよね? ねっ、かすみちゃん!」
「それで! それでお願いします!」
「ご、ごめんね、これからよろしくね、かすみちゃん。元樹君のことは何て呼べばいいかな?」
「俺のことは何と呼んでもらっても構いませんよ」
なんでもいいかぁ……。なんでもいいって言われると困っちゃうな。変なのを挙げてかすみちゃんみたいに何か踏んじゃったら申し訳ないもんね。
「じゃあ……もと君なんてどうかな?」
「あ、いいねそれ! どう、もと君?」
「いいと思いますよ」
気に入ってもらえてよかった。もと君はあんまり興味がなさそうだけど。本当に気に入ってもらえたのかな……? それともあだ名とかに興味がないだけ?
「それじゃあ、これからよろしくね、もと君」
「はい。こちらこそよろしくお願いします、歩夢先輩」
差し出されたもと君の手を握る。もと君とは初めて会ったはずなのに、なんだか懐かしい感じがする。どうしてだろう。もと君の手が温かいからかな? 握っていて安心できるというか、心が満たされる感じがしてずっと握っていたくなる。こんな気持ち初めて。
「歩夢先輩? どうかしましたか?」
「えっ? あっ、ごめんね」
もと君に指摘されてぼぉーっとしていたことに気付いた。その間もずっともと君の手を握ったままだった。迷惑だったよね? 名残惜しいけど手を離す。
「私、スクールアイドルって全然勉強したことないからわからないことだらけだけど……頑張るから、たくさんいろんなこと教えてね」
「もちろんです! スクールアイドルとしては、かすみんの方が先輩なんですからねっ!」
「俺も全力でサポートしますから」
「よーし、じゃあ、残りの人達にも戻ってきてもらえるよう皆で頑張ろう!」
「「「「おー!!」」」」
もと君のためにも、かすみちゃんのためにも、そして何より侑ちゃんのためにも、まずは部員集めを頑張らなくっちゃ!
* * *
彼との再会は突然のことで驚いたけど、それ以上に久し振りに会えたことが嬉しかった。
講堂で演劇部の練習をしていると、椅子に座って私の演技を眺める元樹君の姿が目に入った。元樹君に会うのは久し振りのことで、演技中なのに思わず元樹君の方を向いてしまった。元樹君と目が合うと、彼は小さく手を振ってくれた。さすがに手を振り返すことはできないので、小さく微笑んで答える。
練習が終わって、私はすぐに元樹君の元に向かった。
「お待たせしました」
けど、元樹君は何の反応も示してくれなかった。
「あの、元樹君……?」
呼びかけても反応してくれない。よく見ると元樹君は目を閉じていて、うっすらと寝息のようなものも聞こえる気がする。もしかしなくても寝てる? 起こしてあげなきゃ。でもその前に元樹君の寝顔をスマホで撮影しておく。いつものキリッとしたかっこいい顔も素敵だけど、寝顔は可愛らしくていつもとのギャップがあっていい。
「元樹君、起きてください。元樹君」
軽く彼を揺さぶる。
「んぁ……?」
「あっ、起きましたか? こんな所で寝たらダメですよ?」
寝起きの元樹君は少し辺りを見渡した後、私の方を見ていつものキリッとした顔に戻った。
「ごめんごめん。ちょっと眠たくて」
「もう、だからって寝たらダメでしょ?」
「ごめんて。次から気を付けるからさ」
仕方ない人だと思いつつも、こんなやり取りがとても懐かしく感じる。
「久し振りだね、元樹君。今日は何の用?」
「しずくと一緒に帰ろうと思ってな」
「一緒に? もちろんいいですよ。帰り支度してくるからちょっと待っててね」
まさか元樹君にそんなお誘いをされるなんて思っていなかった。元樹君が誰かを誘って一緒に帰っている所を見たことがなかったから。
「元樹君とこうやって2人っきりで一緒に帰るのは初めてだね」
「そうだな」
元樹君の横に並んで一緒に帰る。2人の距離は拳1個分くらい。恋人ではないけれど、友達という言葉では包み隠せない私の気持ち。まさに私達の関係を表したような距離感だ。……『私達の関係』というよりも『私の気持ち』の方が正しいかな。元樹君が私のことをどう思ってくれているかわからないから。ただの友達か、それともそれ以上なのか、元樹君の態度からは全く読み取れない。
「なんで私と一緒に帰ろうと思ったの?」
「ちょっとしずくと話したいことがあってな」
「話?」
話って何のことだろう。私が期待しているようなものでないことだけは確かだろうけど。同好会のことかな? 元樹君との接点は残念なことに同好会以外はないから。
「俺が言えたことではないけど、なんで同好会に来なくなったんだ?」
「やっぱりその話だよね……。……わかりました。元樹君にはちゃんとお話しします」
私が同好会に行かなくなった理由をちゃんと元樹君に伝える。
スクールアイドルのことが嫌いになったわけではないということ。スクールアイドル同好会のことが大好きだということ。そして、せつ菜さんに自分のやりたいことを上手く伝えられなくて悔しいと思ったこと。
元樹君は私の話を真剣な表情で聞いてくれた。
「せつ菜さんに感じ取ってもらえるだけの表現力を磨きたくて、演劇部で修行をさせてもらってたの」
「そうだったのか……。そういう理由なら俺らに伝えてくれればよかったのに」
「余裕がなくて……それに元樹君は同好会に来てませんでしたし……」
「補習だったからさ」
「ほんとに補習だったんだ……。もうっ、ちゃんと勉強しなきゃダメですよ?」
「えぇ……やだなぁ……」
本当に嫌そうな顔をする元樹君。いつも頭の回転がすごく速いから、勉強も得意なんだと思ってた。今度勉強を教えてあげようかな。かすみさんも一緒に。
「勉強の話は一旦置いといて……しずくはスクールアイドル活動のために演劇部に所属していた、っていう認識で間違いないか? スクールアイドルへの情熱はまだなくなってないって考えてもいいよな?」
「ええ、もちろんです。スクールアイドル活動をしたくて編入してきたんだもん。そう簡単にはなくならないよ」
「それなら同好会に戻ってきてくれないか? 今同好会が大変な状況なんだ。今月中に11人部員を集めないと解散させられるんだよ」
「ええっ!? 私が勝手をしていたせいで……本当にごめんなさい! 私も同好会に戻ります!」
「本当か!? ありがとうしずく!」
感謝の言葉と共に手を握られる。あまりにも突然のことで心の準備ができておらず、恥ずかしさと嬉しさで全身が熱くなっていくのを感じる。多分顔も赤くなっちゃってるよね? 元樹君にもバレちゃってるよね……?
「私以外の人は今はどうしてるの?」
誤魔化しと言わんばかりの変な質問をしてしまった。
「実は彼方さんもエマさんもせつ菜さんも来てないんだ」
「来てない? じゃあ今の同好会には誰がいるの?」
「俺とかすみ、それと歩夢先輩。あと同好会には入ってないけど、部員集めを手伝ってくれる先輩が1人」
「その歩夢さんという方は?」
「今日同好会に入ったばかりのスクールアイドル界期待の新星」
スクールアイドルっていうことは、その歩夢さんも女の人だよね?
「……その人は可愛いんですか?」
「そうだな……しずくと同じくらい可愛い人だよ」
「私と同じくらい……」
私のことを可愛いと思ってくれているのはすごく嬉しいけど、知らない先輩と同じと言われるのは複雑だ。
「では、元樹君は私と歩夢さんのどっちが好みですか?」
「へっ?」
かなり意地悪な質問をしてしまった。だけど気になってしまったのだから仕方ない。もし歩夢さんの方が好みだなんて言われたらどうしよう。今日の夜は多分泣いちゃうだろうし、立ち直れないかもしれない。やっぱり聞かない方がよかったかな……?
「うーん……」
元樹君はなかなか答えてくれない。この空白の時間が私の不安をかき立てる。判決が出るのを待っている気分だ。
「かなり迷ったけど、俺はしずくの方が好みかな。しずくは清楚と可愛いが奇跡的なバランスで両立してるから」
「そうですか、私の方が……。ふふっ、ありがとうございます」
私の方が好みかぁ……。恋愛感情とまではいかなくても、元樹君も私のことをそんな風に思ってくれてたんだ……。心の底から嬉しさがこみ上げてくる。今日の夜は泣かなくてもよさそうだ。
心に余裕が生まれたからか、今の自分を少し客観的に見ることができた。
なんで私は会ったこともない歩夢さんのことをこんなに敵対視しているのだろう。元樹君が取られるのが嫌だから? きっとそうだ。歩夢さんに元樹君への恋愛感情は当然ないだろうけど、でもそれはあくまでも現時点での話だ。これから先どうなるかはわからない。元樹君は誰にでも優しいから、歩夢さんもコロッとやられちゃうかもしれない。もしそうなった時、歩夢さんに元樹君が取られちゃいそうな気がするんだ。……ううん、気がするじゃなくて確証がある。絶対に歩夢さんに取られちゃう。
何故かはわからないけど、そう断言することができた。歩夢さんには会ったことなんてないはずなのに……。どうしちゃったんだろう私……。
りなりーと愛さんの分も書こうと思ったけど、りなりーは幼馴染特権で1Part分使いたくなったし、愛さんは前回あまり活躍させてあげられなかったせいで書くことがありませんでした。