【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート   作:一般紳士君

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りなりー誕生日おめでとう!(n日遅れ) 誕生日限定URが10連で出て超ハッピーでした。
「あなたとコネクト、したい」は直球すぎてまずいですよ!(建前) いいよ! こいよ!(本音)


……えー、前回から期間が開いてしまったことについてですが、決してサボっていたわけではないんです。
創作力UPのために、世界一フットボールの熱い青い監獄に入寮してきたり、リンクでライクしたり、お酒とおつまみを食べてたら執筆する前に眠くなっちゃっただけなんです。

ちょこっとずつ投稿頻度を戻せるように頑張ります。


あとOVAの部屋着栞子ちゃん、えちえちすぎて我死ゾ。


サイドストーリー Part28/m

 バスが目的地に到着した。バスが停止するときの慣性を感じながら、ぐっすりな元樹を起こすため肩をゆする。

 

「元樹、着いたよ」

「……」

「侑ちゃんも起きて」

「んぅ……あゆむ、おはよ……」

「うん、おはよう。バス着いたよ」

「あ、もう……?」

 

 ゆうゆは少し寝ぼけてはいるけど、さっと起きたみたい。元樹は……うん、起きてくれそうにない。

 

「元樹! 起きてってば!」

「……」

 

 うーん、起きてくれないぞぉ? これは困ったなぁ……。歩夢とゆうゆ含め他の乗客は皆降りていて、残ってるのはアタシ達だけだ。

 運転手さんの迷惑になってしまうので、早く起こそうと体を必死で揺する。

 

「んん……あい、せんぱい……?」

「あっ、やっと起きた」

 

 眠たそうに目元をこすりながら元樹が目を覚ます。

 

「着いたから降りるよ」

 

 アタシの左腕にだきついたままなので、そのまま引っ張り上げるように立ち上がる。けれど元樹はそれに抵抗するようにギュッと腕に抱きついてくる。

 

「まだ、離れたくないです……」

「えぇ~、そんなこと言われても……急にどうしたの?」

「……少し怖い夢を……それで愛さんに甘えたくて……」

「……もしかして起きてた?」

「いえ……」

 

 甘えたいなんて元樹の口から出ると思ってなかったから、てっきりさっきの話を聞いてたのかと……。

 

「……少し汗かいてるよ」

 

 元樹の顔はほんのり汗ばんでいる。車内はいい感じに空調が効いていて、汗をかくような温度ではない。

 

「そんなに怖い夢だったの?」

「……はい」

「そっか」

 

 今にでも泣いてしまいそうな表情に、自分の中の加護欲のような何かが刺激される。空いた右手をそっと元樹の頭に乗せる。

 

「よしよし、じゃあ手繋ごっか。こうやって抱きついたまま歩いてると危ないからね。あと恥ずかしいし」

「……うん」

 

 手を握ってあげると安心したように表情が和らぐ。寝起きだからか、それとも夢のせいか、普段からは想像できないくらい言動が幼い。なんというか、ギャップがすごい。

 

「大丈夫? 少しは落ち着いた?」

あのー、そろそろ降りてもらえるとー

「あ、すみません、今降りまーす! ほら、運転手の人が待ってるから降りるよ。……大丈夫、ずっと繋いでてあげるから」

 

 運転手に促され、半ば強引に元樹を立ち上がらせる。一瞬不安そうな顔をしていたが、ぎゅっと握ってあげると安心したようにすぐに頬を緩ませる。

 

「歩夢、ゆうゆ、お待たせ」

「よかった、ちゃんともと君起きたんだ。……あっ

「ぐっすり眠れた? 私は快眠だったよ!」

「うーん、まぁ……そこそこ?」

「……と、ところで、なんで2人は手を繋いでるの……?」

「あ、ほんとだ……」

 

 歩夢は少し驚いたように、アタシと元樹が手を繋いでいることを指摘する。さて、どう答えたものか……。

 

「……歩夢先輩、なんか怒ってます?」

「別に……怒ってなんかないもん」

「でも拗ねてはいますよね? もしかしてしっt……むぐむぐ」

 

 変なことを言って話が拗れそうだったので、口を塞いで止める。うーん、元樹には悪いけど、正直に話した方が理解してもらえそうだし、面倒くさそうなことにならなさそうかな。

 

「いやー、元樹がさっき怖い夢見ちゃったらしくて」

「むぐっ」

「そう、なんだ……」

「びっくりしたぁ……もしかしてもと君と愛ちゃん付き合ってるんじゃって思っちゃったよ」

「あはは……りなりーがいるのにそんなことできないよ

「ん? 何か言った?」

「ううん、何でもないよ」

 

 アタシはりなりーと元樹に結ばれてほしい。だからアタシと元樹が付き合うなんてことはありえない。こういう言い方はよくないかもしれないけど、異性として好きってわけじゃないしね。もちろん友達や後輩としては大好きだし、元樹から告白されたら迷っちゃうかもしれないけど……。

 

「それより! ここからちょっと歩くから、ちゃんとアタシについてきてね!」

「はーい、侑先輩も勝手に動いて迷子にならないように気を付けてくださーい」

「この年になってそんなことしないって~。私そんなことしそうに見える?」

「見えます。侑先輩、最初に会った時も生徒会室と真逆の方向に走り出したじゃないですか。違うって言っても止まってくれなかったですし」

「うっ、そんなことも、あった気が、します……」

 

 2人で楽しそうに話している。うん、元樹に元気が戻ってきたみたいでよかった!

 

「へぇ、私の知らないところでそんなことがあったんだ」

「はい。歩夢先輩と会う前……それもほんと10分前とか20分前とか直前の話ですよ」

「……よくそんなこと覚えてるね」

「記憶力にはそこそこ自信があるので」

「侑ちゃんは私がちゃんと見ておくから安心して。だからもと君は後ろじゃなくて前を向いて歩こうね。危ないよ」

「はーい」

 

 こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、なんだか歩夢お母さんみたい………。

 元樹が前を向いたのを確認した歩夢とゆうゆが2人で話し始めて、こちらから意識が逸れたのを確認してから小声で元樹に話しかける。

 

「元樹、さっきはごめんね」

「なんのことです?」

「怖い夢見ちゃったーって2人に言っちゃったこと。まるで元樹が怖がり見たいに思われちゃったかもなぁと……」

「ああ、別にいいんですけど、なんで急にあんなことを?」

「いやー、あのままだとなんか変な空気になりそうだったし、止めた方がいいかなーって。いい感じに誤魔化せる嘘がその場で思いつかなかったから、もうホントのことを言うしかなかったんだよね。ほんとにゴメン!」

「いいですよ、全く気にしてませんし。というか……いえ、やっぱりなんでもないです」

 

 何かいいかけてやめたけど、実は怖がりで合ってました……とか?

 

「ねぇねぇ、どんな夢見たのか聞いてもいい?」

「えー……うーん、秘密です」

 

 夢の内容を思い出したのか、元樹の手に力が入る。

 

「そんなに怖い夢だったの?」

「えと……なんでそう思ったんですか?」

「だって手にぎゅ~って力が入ったから。そんなに怖かったのかなぁって」

「はぁ、よく気づきますよ……そうですね、すごく怖くて嫌な夢でした。誰でもいいから傍にいてほしいくらい……」

「そっかそっか。今日は愛さんがずっと一緒にいてあげるからね」

「……それって、愛先輩の家に泊まってもいいってことですか?」

「えっ!? そ、それはどうだろぉ……一応おばあちゃんに聞いてみるけど、急なことだから難しいかも……」

 

 スペースも寝具もあるけど、おばあちゃんが許してくれるかどうか……まぁダメっていうことはないだろうけど。元樹も礼儀正しい子だし。

 

「き、着替えはどうするの? 男物の服はお父さんのしかないよ?」

「……ぷっ、あはははっ! 冗談のつもりだったんですけど、そこまで真剣に考えてくれたんですね」

「っ~! か、からかったなぁ?」

「さぁ、なんのことやら」

 

 ニヤニヤと笑いながらこちらを見てくる。元気になったのはいいけど、うーん……。

 

「ところで、さっきの言いぶりだと事前に連絡したら愛先輩の家に泊まっていいって風に聞こえたんですけど……いいんですか?」

「ま、まぁいいけど……」

「へー、じゃあ気が向いた時にお泊りさせてもらおー。できればr……」

「あれ? 愛ちゃんの家ってここじゃないの?」

「え?」

 

 歩夢に指摘されて振り返ると、『もんじゃ宮下』の看板が掛けられた建物をとっくに過ぎてしまっていた。

 

「あ、気づいたら通り過ぎてた……」

 

 元樹との会話に夢中になっていて、周りに気を配れてなかった……歩夢がちゃんと見てくれてて助かったよー。

 

「えー、こほんっ。気を取り直して、ここが愛さんの家だよ。いらっしゃい!」

「くんくん……あー、いい匂いがする!」

「そうでしょそうでしょ!」

「うぅ~、お腹が空いてきちゃったぁ~」

「もぉ侑ちゃんたら……」

「歩夢は違うの?」

「……私も空いてきちゃった、かも」

「……」

 

 何も言わないけど、元樹も隣で目を輝かせている。歩夢達どころか本人も気づいてないだろうけど、ちゃかりお腹を鳴らして空腹をアピールしてくる。

 

「そんなに期待されてるなら、それに応えてい()()()よね。期待だけに! あははっ!」

「愛ちゃん……」

「よしっ、じゃあ入ろっか。元樹も待ちきれないみたいだし!」

「別に、そういうわけじゃ……」

 

 誤魔化すようにそっぽを向く元樹を引っ張り、店の中に入る。歩夢とゆうゆも続いて中に入ってきた。

 店の中にはお客さんがいっぱいいて、テーブルもほとんど埋まっている。

 

「わぁ、大盛況だね」

「うん、今日は特に多いかな。パッと見た感じだと常連さんがいっぱい来てくれてるみたい」

「ふーん……空いてるのはあそこだけみたいですね。あそこ使わせてもらいましょう」

「アタシは準備とかいろいろしてくるから、先に座って待ってて」

「……はい」

 

 名残惜しそうにしながらも、素直に手を放してくれた。アタシ自身も名残惜しくないといえば嘘になるけど、さすがに厨房に入れるわけにはいかないしね。

 

「おーい、愛ちゃん」

「えっ?」

 

 うちの常連さんで、アタシが小さい頃からもんじゃを食べに来てくれているおじさん達に声をかけられた。……もうお酒を飲んでるみたいだけど、大丈夫かな……。

 

「さっきの子達は愛ちゃんのお友達かい?」

「うん、そうだよ。みんな愛さんの友達! 最近仲良くなったんだ!」

「へー、あの愛ちゃんがねぇ……灌漑深いねぇ……」

「あのイケてる男の子は愛ちゃんの彼氏?」

「うえぇっ!? ち、違うよ! 元樹は彼氏じゃなくて、その……た、ただの友達!」

「さっきあの男の子と手繋いでなかった?」

「確かに手は繋いでたけど! でも彼氏じゃないの!」

「ABCでいうとどこまでいった? B? それともCまで?」

「え、ええええ、えっちなことなんて一切してないって!」

「じゃあA?」

「キスもまだ! そもそも付き合ってないんだってばっ! おじさん達もう酔ってるでしょ!?」

「酔ってないよー……ひっく」

「まったく……」

 

 酔っ払いおじさん達は放置して、厨房にそそくさと隠れる。生地と具材を準備したりしながら火照った顔を冷ます。さっきの会話3人にも聞こえてたよね……はぁ、ほんとに元樹とはそういう関係じゃないのになぁ……。

 おじさん達が話に夢中になってるタイミングを見計らい、3人がいる席まで移動する。

 

「あー、もう大変な目にあったぁ……」

「お疲れ様です。なんか大変そうでしたね」

 

 元樹が隣にズレて場所を開けてくれたので、そこに座ってもんじゃを作る準備を始める。

 

「いつもあんな感じなの?」

「ううん、全然そんなことないよ。ただ今日はアタシが初めて男の子の友達連れてきたから、それで興奮しちゃってるのかも。アタシが小さい時からの常連さんだから、なんていうか、親心、みたいな? あと単純にお酒が入ってるからってのもあるけど」

「そうなんだぁ。じゃあいつか愛ちゃんが本当に恋人を連れてきたとき大盛り上がりしそうだね」

「多分ね。いざその時になったらみんなに紹介したい気持ちもあるけど、収拾がつかなくなりそうなんだよね」

「あー……」

 

 お酒が入ってる時に紹介しちゃったらもみくちゃにされちゃいそうなんだよねー。だから紹介するなら皆が飲んでないときかなぁ……まぁそもそも彼氏ができるかどうかすらわかんないけど。

 

「ま、それは置いといて! そろそろもんじゃ作っちゃうよ~!」

「愛先輩、お願いします。周りを見てたらもうお腹がペコペコになっちゃって」

「任せて、すぐに作るからね」

「愛ちゃん、私に手伝えることあるかな?」

「うーん、特にはないかなぁ。今日は愛さんお手製のもんじゃを味わってほしいから、皆はゆっくりしててほしいな」

「そっか。じゃあもんじゃが出来上がるまでゆっくりしてるね」

 

 いつものように鉄板でもんじゃを焼いていく。元樹とゆうゆは目を輝かせながらその様子をじっと眺めており、時折お腹を鳴らして完成をまだかまだかと待っている。歩夢は2人とは対照的にうずうずとしている。早くもんじゃが食べたいってのもあるだろうけど、何か手伝えることないかなーって感じかな、歩夢のことだからきっと。

 

「……愛先輩、もう少し時間かかりそうですか?」

「あともう少しかかるかな。もう待ちきれないの?」

「それもあるんですけど、やることがなくて少し、ほんの少しだけ暇だなぁと」

「それならあそこに漫画が置いてあるよ」

「ほんとっ!? ちょっと見てこよっかな」

「侑ちゃん……」

「なるほど、漫画……」

「あれ? もしかして漫画あんまり好きじゃない?」

 

 ゆうゆは本棚に飛びついて漫画を物色してるけど、元樹は退屈そうに本棚を眺めている。

 

「いえ、漫画は好きですよ。でもパッと見た感じだと古めの、読んだことある漫画ばかりだったので」

「そうなの? でも確かに最近本棚の中身変えてないからなぁ」

「なるほど。……愛先輩、もしよかったら今度本屋に行って、一緒に漫画探しません? お店に置く用の」

「それ楽しそう! ……折角だから、その時はりなりーも誘ってみよっか。漫画とか詳しいだろうし、きっといいのを選んでくれると思うよ。あと詳しそうなのはせっつーもかな?」

「確かに。璃奈とせつ菜先輩にも声かけてみましょうか」

「あ……ゆ、侑ちゃんも意外と漫画とか詳しいよ!」

「へぇ、そうなんですか。どんなジャンルが好きなんですか?」

「えぇとね、バトル物が好きって言ってたかな。名前は忘れちゃったけどあの海賊の漫画とか」

「あー」

 

 海賊の漫画……? うーん、愛さんあんまり詳しくないからわかんないや……今度りなりーに聞いてみようかな。

 

「あとね、実はこっそり恋愛漫画も読んでたりするんだよ」

「へぇ、ゆうゆが……」

「うん、最近は部活のこうh……」

「ちょっ、それ以上はダメ!」

 

 本棚からゆうゆが飛び戻ってきて、慌てて歩夢の口を塞ぐ。歩夢はどんなゆうゆの秘密をバラそうとしたのだろうか。『後輩』って言いかけたような気がしたけど、まさかね……。

 

「ゆふひゃん?」

「もと君がいるのにそんなこと喋っちゃダメだって!」

「えぇ~、愛さんもっと詳しく知りたいな~」

「愛ちゃんのお願いでもダメ!」

「ざんね~ん……元樹は普段どんなのを読んでるの?」

「俺ですか? そうですねぇ……」

「愛ちゃん! あとどれくらいでもんじゃ完成しそうかな!?」

「え?」

 

 元樹の言葉を遮るように歩夢が言葉を発した。

 

「あと少しで出来上がるけど……急にどうしたの?」

「えと、その……」

「歩夢先輩、もしかして腹ペコなんですか?」

「……実はそうなの。もうお腹がペコペコなんだ~」

「歩夢ってば食いしん坊さんだなぁ。エマっちみたい!」

「歩夢今日はいつもよりよく食べるね」

「あはは……今日はなんだか無性にお腹が空いちゃって」

「まったく、歩夢先輩は可愛いですね。最初の一口は歩夢先輩に差し上げましょー」

「えへへ、もと君ありがとう」

「よしっ、ちょうど出来上がったよ!」

「……!」

 

 出来上がったもんじゃを見て、皆目を輝かせている。元樹なんて口の端からよだれが垂れてしまっている。下に落ちるといけないから、紙でそっと拭き取ってあげる。

 

「うわぁ~、すっごく美味しそうだよ愛ちゃん!」

「ほんと、うまそう……」

「どんなもんじゃい!」

「あはははは! もんじゃだけに、どんなもんじゃいって! いひひっ! お腹痛いよぉ~!」

 

 ちょっとしたダジャレでゆうゆがめっちゃ笑ってくれた! 笑いすぎて床の上で転げまわってるけど、鉄板にぶつかるようなことはないし、他のお客さんにぶつからないように歩夢が止めてくれてるし、止めなくても大丈夫かな。

 

「侑ちゃん、笑いすぎだよ……」

「……そんなことより歩夢先輩、一口目どうぞ」

「うん、じゃあいただきまーす。ふぅ……ふぅ……あむっ」

 

 ヘラでもんじゃを少し多めに掬い取り、口の中に含む。その様子をアタシと元樹の2人で見守る。

 

「うん、すっごく美味しい!」

「でしょ? うちの自慢の味だからね」

俺も……

 

 元樹がもう待ちきれないといった表情でもんじゃを見つめている。そんなに楽しみにしてくれていることに嬉しさを感じながら、もんじゃを食べるようのヘラを元樹に渡……

 

「ほら、もと君も食べて? すっごく美味しいよ」

 

 そうとしたところで、先に歩夢が差し出した。自身が使った後のヘラにもんじゃを乗せ、元樹にあーんをするように。

 

これって間接キスなんじゃ……

「はい、あーん」

 

 歩夢が使ったヘラを元樹が使うなんて、これはもう紛れもなく間接キスだ。2人とも全く意識してないのか、それとも気づいていないのか、顔を赤らめもせず恥ずかしがるような素振りすらない。

 

「あの、歩夢先輩、熱くてこのままじゃ食べられなさそうです」

「あ、そうだよね。ちゃんとふぅふぅしてあげないとね。ふぅ……ふぅ……」

 

 ヘラで掬った分のもんじゃに息を吹きかけ、熱を冷ましている。うーん、なんか恋人ってより姉弟って感じ……でも間接キスなんて……アタシがそうやってうんうん唸っているうちに、2人はどんどんと先に進んでいく。

 

「はい、これで大丈夫だよ。あーん」

「あーん」

「……どう、美味しい?」

「美味しいかい?」

「んー……ごくんっ、ん、最高です」

 

 元樹は嬉しそうに頬を緩ませる。うん、頑張って作ってよかった!

 

「ほらほら、愛先輩も食べてください。作ってくれた張本人なんですから」

「じゃあ愛さんもいただこうかな」

「ほらっ、侑ちゃんもそろそろ食べて」

「うぅ~、お腹が痛くて起き上がれないよぉ~。歩夢、食べさせて~」

「えぇ? も、もぅ、しょうがないなぁ~」

 

 歩夢に甘えるゆうゆを眺めながら、アツアツのもんじゃを口に含む。うーん、いつも通り美味しい。

 隣の元樹は慣れていないのか、ヘラで掬ったもんじゃをそのまま食べている。固めたりしていないので崩れていて食べづらそうだ。

 

「元樹、こうやってジュッってしてあげると、硬めのもんじゃにできるよ」

「ん? んー……」

 

 さっき目の前で実演してみせたけど、加減がわからないのか少しやりづらそう……。

 

「……愛先輩、その、うまくできないので愛先輩に作ってほしいなー……なんて」

「いいよ。元樹のヘラ貸して」

「やったっ」

「硬めと柔らかめどっちが好み?」

「柔らかめがいいです!」

 

 なるほど、柔らかめかぁ、それは慣れてないと調整が難しいかもなー。アタシがジュージューする様子を、元樹は隣で目を輝かせながら眺めている。この反応、りなりーとそっくりだなぁ……。

 

「これくらいかな。はい、どうぞ」

「できればふぅふぅして冷ましてほしいです」

「そ、それはちょっと恥ずかしいかなぁー」

「歩夢先輩はしてくれたのに……」

 

 それは歩夢が元樹に対して過保護なだけだよ。そんなことを考えながら、ふぅふぅともんじゃを冷ます姿を眺める。ホントは誰もいないところならやってあげてもよかったんだけどね。でも今は目の前に歩夢とゆうゆがいるし、酔っ払い中のおじさん達に見つかったらまた厄介なことになるし……。

 

「あむっ……あ、うまっ……」

 

 目を見開き、思わず漏れてしまったかのように呟く様子を見て、自然と口角が上がってしまう。その様子が可愛かったって言うのはもちろんあるけど、自分が頑張って作ったものを美味しいって思ってくれるのはやっぱり嬉しいね。

 

「あ、愛先輩、もう1個……」

「ふふっ、いいよ。たーんとお食べ~」

「ありがとうございます。ふぅ、ふぅ、あむっ……」

 

 目をキラキラとさせながらもんじゃを食べる姿に、アタシも歩夢も、いつのまにか起き上がっていたゆうゆも、皆笑みを浮かべている。なんだか歩夢が過保護になる気持ちもわかるなぁ……。

 

「あいせんはいはたべないんれふか?」

「こーら、口に入れたまま喋らないの」

「ん、ごく……愛先輩は食べないんですか?」

「うん、愛さんは大丈夫だよ。だから遠慮せずいっぱい食べていいよ。もちろん歩夢とゆうゆもね」

「ありがと、愛ちゃん」

「愛先輩もう1回、いいですか?」

「もっちろん。……はい、どーぞ」

「ふぅ、ふぅ、はむっ」

 

 うーん……なんだろ、段々餌付けしてるような気分になってきちゃったなぁ。出来上がるまで待ってる時も、尻尾を振ってご飯を待つワンちゃんみたいで……うぅ~、ヨシヨシしたくなってきた……。

 

 

 

「ふぅ、満腹満腹……愛ちゃんごちそうさま! すっごく美味しかったよ」

「俺もお腹いっぱいです」

「お粗末様でした。皆が美味しそうに食べてくれて愛さんも嬉しかったよー」

 

 言葉通りお腹いっぱいになるまで食べたであろう元樹とゆうゆはとても満足そうな表情をしている。まぁその2人よりも歩夢の方が食べてたけれど。ゆうゆも言ってたけど、意外と食いしん坊さんなんだなぁ……。

 

「愛ちゃん途中から全く食べてなかったけどよかったの?」

「皆が美味しそうに食べてくれるなら、アタシはそれで満足だからさ。お手製のもんじゃを元樹がいっぱい食べてくれただけで愛さん大満足なんだ!」

 

 すぐ近くの元樹の頭をヨシヨシと撫でる。途中からもうワンちゃんにしか見えなくなっちゃって、ずっとヨシヨシしたくて仕方なかったんだよねー。本人はきょとんとして、いくら甘えたがりでもワンちゃんみたいに擦り寄ったりはしてくれなさそう。まぁされたらされたで困っちゃうけれど。

 

「あっ、もうこんな時間……そろそろ帰らないと」

「あー、俺もそろそろ……」

「そっかぁ……」

 

 時計を見るともう6時近くになっていた。体感よりも時間が過ぎていて、友達といる時間は楽しすぎてあっという間に過ぎちゃうなぁと改めて実感する。

 

「もうちょっと一緒に遊びたかったけど仕方ないよね。今日はありがとう、すっごく楽しかったよ! ゆうゆと歩夢も急に誘ったのに来てくれてありがと!」「ううん、お礼を言うのはこっちだよ。今日は誘ってくれてありがとう」

「もと君と愛ちゃんと一緒にお出かけできてすっごく楽しかった! 普段とは違う2人も見れたしね」

「アタシも知らない皆が知れて面白かったよ! 元樹が意外と甘えたがりだったとかね」

「はて、なんのことやら」

 

 そっぽを向きながらとぼけている。その様子が琴線に触れたのか、歩夢はすっと元樹の隣に移動し、頭を撫で始めた。うん、気持ちはわかるけどね。

 

「……じゃあ愛先輩、俺はこれで失礼します。今日はありがとうございました」

「うん、またね~!」

「ばいばーい!」

「また部活でね」

 

 3人が一緒に歩いていくのを見送った後、背中に突き刺さる視線を感じ、厄介な仕事が残ってるなぁと実感する。さらにお酒を飲んでるみたいだったし……はぁ、頑張って追求から逃れないとなぁ……ほんとに元樹とはただの友達なのに……。

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