【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート 作:一般紳士君
前々回、サイドストーリーを1回挟んでから本編と言ったな。あれは嘘だ。
『明日の放課後時間ある?』
私には幼馴染が1人いる。堀口元樹。気持ちを上手く顔に出せない私だけど、元樹はそんな私の気持ちをいつもわかってくれる。小学校も中学校もずっと同じクラスで、楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、苦しい時も、いつも一緒にいてくれた。高校では学科が違うから同じクラスにはなれなかったけど。それでも昔から変わらず元樹は私の友達で、とっても大好きな人。
そんな元樹からこんなメッセージが突然きた。元樹から連絡がくるのは何か重要なことな時だけだから、これもきっと重要なことなんだろうけど……。違うとはわかっていても少し期待してしまう。お出かけのお誘いだったら嬉しいけど……。
『あるけど、どうして?』
『実は璃奈の手を借りたいんだ。できれば璃奈の友達にも手伝ってほしい』
「むっ」
私を頼ってくれるのは嬉しい。けど、元樹を愛さんには会わせたくない。元樹は可愛い子がいたらすぐ口説くから。愛さんは同性の私から見ても魅力的だから、元樹が口説かないわけがない。愛さんも優しいから無下にすることはないだろうし。大好きな元樹が愛さんに取られちゃうかもしれない。
『私だけじゃダメなの?』
『今は詳しくは言えないけど、とにかく人が必要なんだ』
こういう時の元樹は絶対に嘘はつかないから、人が必要というのも本当なんだろうけど……。私を頼ってくれたんだから、元樹の力になってあげたい気持ちは当然ある。あるけど……。
『頼む。信頼できるのは璃奈だけなんだ』
……ずるい。こんなことを言うのはずるい。こんなことを言われたら嬉しくなるに決まってるし、自分を信頼してくれてる元樹を信頼してなかった自分が嫌になる。
『わかった。元樹がそう言うなら』
『ありがとう。助かるよ』
『今から少しだけ通話できる?』
なんだか無性に元樹の声が聞きたくなってしまった。本当は直接会って声が聞きたいけど、もう時間が遅いから電話越しで我慢する。もちろん元樹がOKしてくれればだけど……。
『いいよ、好きなだけしようか』
そのメッセージがきてすぐに元樹から電話がかかってくる。きっと私の気持ちを汲み取ってくれたんだろう。
『よっ、璃奈。元気か?』
この声が聞きたかった。電話越しでもわかる優しい声。私が一番大好きな声。
「うん、元気。元樹は?」
『もちろん元気』
「今日なんで一緒に帰れなかったの?」
『ちょっと同好会に顔を出しててな。しばらく補習のせいで行けてなかったから』
「同好会……」
元樹が何か部活に入ってるのは知ってたけど、どこに入っているのかはわからない。そもそも部活に入ってること自体教えてくれなかったから。お互い隠し事はしないって約束したのに。でも私は元樹から無理に聞き出そうとしたりしない。元樹が自分から話してくれるのを待つことにする。だって私も約束を破ってるから……。
「もしかしてしばらく一緒に帰れない?」
『うーん……』
元樹と一緒に帰れないのは寂しいけど、元樹が同好会での活動を頑張りたいのなら私は応援する。私が何かをやりたいと思った時、元樹はいつも応援してくれたから。今度は私の番。
『それはまだわからないな。一緒に帰れるかもしれないし帰れないかもしれない。まぁ璃奈次第だな』
「? どういうこと?」
『秘密。明日になれば意味がわかるさ。どちらにしても、一緒に帰りたいって気持ちは璃奈と同じだよ』
「そう。なら大丈夫」
ずるい。元樹は本当にずるい。顔が熱くなっていくのがわかる。電話越しでよかった。今の私を元樹に見られるのは恥ずかしい。私の元樹への気持ちを知ってるかのような発言だけど、元樹は私の本当にわかってもらいたい気持ちをわかってくれない。鈍感。私も精一杯アピールしてるのに……。
いつかはこの気持ちをちゃんとわかってもらいたい。できれば自分の言葉で直接伝えて。今はまだその勇気はでないけれど……。
でも私にあまりうかうかしている時間はない。元樹のことを密かに狙っている人達がいるかもしれないから。実際元樹と親しげに話している子を何度か見たことがある。身長が高く、緑っぽい髪の可愛い子だった。多分元樹と同じクラスの子なんだと思う。元樹があの子のことをどう思ってるかはわからないけど、少なくともあの子は元樹に対して好きに限りなく近い気持ちを持ってると思う。元樹と話すあの子はいつも笑顔で、すごく楽しそうだったから。私にはわかる。だって同じ気持ちだから。
泥棒猫、なんて言うつもりはない。だって気持ちを伝えられない私が悪いんだから。それでも嫉妬はしてしまう。もし元樹からあの子のことが好きだって告げられたらどうしよう……。応援してあげたい気持ちはあるけど、本当の気持ちを抑えられるだろうか。元樹のことをきっぱりと諦められるだろうか。元樹と今まで通りの関係でいられるだろうか。
「……そういえば今日ね―――」
そんな不安をかき消すように言葉を紡ぐ。私の不安を知ってか知らずか、元樹も私との会話にずっと付き合ってくれた。
この日の通話は珍しく日を跨いでも終わることはなかった―――
「りなりーちーすっ!」
「愛さん、来てくれてありがとう」
「いいっていいって。それで、今日はどうしたの?」
「私の幼馴染が私とその友達に手伝ってほしいことがあるって言うから」
「えっ!? りなりー幼馴染いたの!? 愛さん初耳! どんな人なの!?」
「どんな人……一言で言えば変わった人、かな」
うん。これが一番しっくりくる。
「よくどうでもいい嘘つくし、たまに意味のわからないことも言うし、頭の回転は私よりも速いのに勉強だけはできない。あと運動もダメダメ。私よりも力がないし、100メートル走で体力が尽きちゃう」
「それは確かに変わった子だねー」
「でも優しくてかっこいい人なの。私の気持ちをわかってくれるし、いつも私のことを1番に考えてくれるし、困った時はすぐに助けに来てくれる。昨日も私が通話したいって言ったら何時間も付き合ってくれた。それに普段はおちゃらけてるけど、真面目にやる時は誰よりも真面目にやってくれるの。リーダーシップもあるし、話をまとめるのも上手。中学校の時はいっつも話の中心だった」
「うんうん。りなりーはその子のことが大好きなんだね。すっごく伝わってくるよ」
「……うん、大好き。璃奈ちゃんボード『てれてれ』」
元樹がいない時なら、元樹のことが好きだってちゃんと口に出して言える。早く目の前で言えるようになりたい。
「でも、可愛い子がいたらすぐに口説きに行くとこだけはダメ。璃奈ちゃんボード『ぷんぷん』」
「それはいけないなぁ。りなりーっていう可愛い幼馴染がいるのにね。これは愛さんがビシッと言ってあげないとダメかな?」
「ううん、大丈夫。なんだかんだ本気では口説いてないし、私がやめてほしいって言ったら1週間くらいはやめてくれるから」
「実はその子はりなりーの気を引きたくてやってるんじゃない? その手段が他の子を口説くっていうのはどうかと思うけど」
「そうなの、かな?」
そうだったら嬉しいな。元樹も私のことを意識してくれてるっていう証拠だから。
「もっとりなりーとその子のお話聞きたいな」
「うん、いいよ」
「お待たせ、璃奈。ちょっと遅れた、悪いな。お詫びはアイスティーでいい?」
「あっ、元樹」
愛さんに元樹との思い出を話していると、待ち合わせ時間に少し遅れて元樹がやってきた。……後ろに知らない女の子を4人も連れて。私と同じ1年生が2人、先輩の2年生が2人。
「あの子がりなりーの幼馴染の元樹君?」
「うん。元樹、アイスティー頂戴」
「ごめん嘘。アイスティーなんて持ってない」
「あー、嘘ついた。さっきあるって言ったのに。璃奈ちゃんボード『ぷんぷん』」
噓だってなんとなくわかってたから、本当は怒ってないけど。
「えっと……この人が元樹君の幼馴染さん……?」
「なんていうか……その……」
「どうした? 俺の幼馴染に何か?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「わかってる。あのスケッチブックが気になるんだろ?」
「ごめんなさい。私、これがないとうまくコミュニケーションがとれなくて」
「アタシとりなりーで作ったんだもんね~、この璃奈ちゃんボード!」
「そうなんだ! 個性的で、私はすごくいいと思う!」
ツインテールの2年生の人がこれボードを褒めてくれた。愛さんと作ったものを褒めてもらえて嬉しい。褒めてくれたのは元樹に続いて2人目だ。すごくいい人。
「……なんていうか、侑先輩のそういうとこすっごいイケメンですよね。いつでも本心から相手を褒められるのってすごいと思いますよ」
「えへへ、ありがと!」
……元樹とこの侑先輩? なんかいい雰囲気……。
「でも、イケメンなのは私じゃなくてもと君でしょ?」
「……そういうとこですよ、マジで……」
「もと、君……?」
元樹には元樹の交友関係があるのはわかってる。でももう我慢できない。昨日から積もっていた不安が今ので爆発してしまった。
「元樹ちょっとこっち来て」
元樹を教室の外に呼び出す。不思議そうな顔をしながらも、ちゃんと私についてきてくれた。
「どうしたんだよ、璃奈。何かあったのか?」
私を心配してくれる言葉を無視して、いわゆる壁ドンで元樹の逃げ場を塞ぐ。元樹は力がないし、何よりも優しいから無理やり手を振り払って逃げることはない。身長は私の方が小さいから、周りからは壁ドンをする側がされる側を見上げる変な構図に見えるだろう。でもそんなことはどうだっていい。
「あの人達、誰? 元樹とどういう関係?」
「あの人達は、まぁ、ただの知り合いだよ」
「誤魔化さないで」
「スクールアイドル同好会の仲間です」
「スクールアイドル同好会? 元樹も入ってるの?」
「マネージャーとして入ってます」
スクールアイドル同好会……私の知らない所であの人達と仲良くやってたってこと?
「いつから入ってたの? なんで教えてくれなかったの?」
元樹から言ってくれるまで聞かないつもりだったけど、もう我慢できない。
「入学してから割とすぐに入部した。教えなかったのは璃奈に聞かれなかったから」
「さっきツインテールの人に褒められた時、元樹デレデレしてた」
「だってイケメンだって褒められたし……」
「お互い隠し事はしないって昔約束したのに、元樹は約束破った」
「っ! ……そうだったな、ごめん……」
「これは約束を破った罰」
罰として、元樹の頬を引っ張る。少し強めに。
「いたいれふ……」
溜まっていた不満を吐き出したことで少し冷静になれた。
私の知らない所であんなに可愛い人達と仲良くしていたのは許せないけど、でもそれを責めるのは間違っていた。だって元樹には元樹の交友関係があるんだから。私も愛さんと元樹が会わないようにしてたのに。それに、私だって元樹との約束を破っている。元樹は数ヶ月しか破っていないけど、私なんてもう何年も破り続けている。好きな人ができたら教えるという約束を……。
それでもやっぱり許せないことは許せないので、軽い罰だけは与えることにした。元樹と触れ合えるので私にとってはご褒美だし。
「ゆるひて……」
「じゃあ仲直りのアレしてほしい」
いつも仲直りの時にやってくれたことをお願いしたけど、元樹はピンときていないのか首をかしげる。
「むぅ……」
でも元樹が覚えてないのも仕方のないことかもしれない。だって最後にやってくれたのは小学校低学年の時だから。それ以降は喧嘩することもなかったし。
「璃奈、ごめんな……」
そうやって仕方なく諦めようとしていると、元樹に抱きしめられた。
顔が熱い。沸騰しそうだ。でも心は満たされていく。嬉しい。幸せだ。ずっとこのままでいたい。でもやっぱり……
「は、恥ずかしい……。昔は頭を撫でてくれるだけだったのに……」
「そっか、そういえばそうだったな……」
「でも嬉しい」
私も元樹を抱きしめ返して、その胸に頬をすりすりする。周りで誰かが見ているかもしれないけど、そんなことは気にせず続ける。むしろ見せつけるつもりだ。恥ずかしくはあるけど、こうしていられる幸せの方が大きい。
「頭も撫でてやるよ」
「んっ……」
元樹は頭も撫でてくれた。抱きしめられながら頭を撫でられるの、すごくいい。すごく幸せだ。今なら何でも許せる気がする。
「……元樹はなんで私と愛さんを呼び出したの? 顔合わせのため?」
「ちょっといろいろあって、今月中に部員を11人集めないとスクールアイドル同好会は解散しなくちゃならないんだ。だからできれば璃奈に入ってほしくて。璃奈がスクールアイドルとして輝いてるところも見てみたいし」
「私を頼ってくれて嬉しい。スクールアイドルやってみたいけど、私自信ない」
「大丈夫だ。俺が全力でサポートするから。それに、さっき侑先輩が璃奈ちゃんボードを個性的だって褒めてくれただろ? 璃奈のことを認めてくれる人は他にもきっとたくさんいるはずだ。だから大丈夫。自信なんてこれからつけていけばいいって」
「元樹がサポートしてくれるなら、私スクールアイドルやってみる。でも、できれば愛さんと一緒にやりたい」
「わかった。俺に任せとけ」
「うん。お願い」
何の根拠もないけど、元樹ならやってくれると信じられる。
「じゃあ中に戻ろうか」
元樹は私を抱きしめるのと頭を撫でるのをやめ、中に戻っていく。名残惜しくはあるけど、元樹に続いて中に入る。
「あっ、2人ともおかえりー」
「何話してたの?」
「ちょっとね、璃奈を勧誘してました。璃奈も同好会に入ることになったんですけど、愛さんも入りませんか?」
「りなりーもスクールアイドルやるの!? 実は愛さんもやることにしたんだー」
「ほ?」
「さっきゆうゆ達の話を聞いて、アタシもスクールアイドルやってみたいなーって思ったんだ!」
「そうなのか……」
さっきまで元樹はやる気に満ちた顔をしてたのに、いつの間にかその役割を取られていたことを知って気の抜けた顔になった。慰めてあげるために、背伸びをして頭を撫でてあげる。サラサラしてる。
「というわけで、これからよろしくね! 愛さん頑張っちゃうよー!」
「私も頑張る」
「かすみんも2人に負けないように頑張りますよー!」
「私も頑張ります!」
「わ、私も!」
「よし、皆で頑張ろー!」
「「「「「「「おー!!」」」」」」」
スクールアイドルは初体験で不安もたくさんあるけど、それと同じくらい楽しみなこともあるし、何よりも元樹と愛さんがいるからきっとどんなことも乗り越えられる気がする。