異世界転生者殺し-チートスレイヤー- 続   作:抹茶れもん

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 作者はこの作品に結構なポテンシャルを見出したので、リハビリも兼ねて投稿しました。
 至らぬ点が多々ありましょうが、どうぞ暇つぶし程度にごゆるりとお楽しみください。

※注:この話には「賢者◯孫」の主人公を彷彿とさせるキャラクターが登場しますが、マジで関係ないのでどうかその点をご了承ください。



『神の手違い』殺し

 

 ———殺す。絶対に殺す。俺は例え、何があってもお前たちを殺し尽くす。

 

 ———目の前の屑を、完膚なきまでに、徹底的に打ちのめしてやりたい。

 

 ———そのニヤケ面を苦悶に歪ませ、無様な悲鳴を上げさせたい。

 

 ———尊厳を破壊し、絶望を知らしめ、地に這いつくばり、みっともない命乞いをしながら死んでくれ。

 

 ———人を人とも思わぬ外道には、地獄ですら生ぬるい。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「俺とお茶でもしませんか?」

 

「ハァ……?」

 

 未だ混乱から抜け出せていないと見える眼前の畜生、「神の手違い」ルイ=クロフォードに向かって、俺はにこやかに話しかける。

 

「ですから、お茶会ですよ。お茶会。まずはお互いに親睦を深めようじゃありませんか。ホラ、俺達はまだ互いに知らないことが多すぎるでしょう?」

 

 だが俺の内心は怒りで真っ赤に染まっていた。いや、もはや一周回ってひどく冷静になっている。だからこそ、今はどうやったらこいつを上手く殺せるのかということに全力を費やせる。

 

「例えば……そう、ヒキコモリのゲエムハイジンだったり、能無しのシャチクだったり、ニジゲンに夢中の恋愛脳なヒモテとやらだったり……ね?」

 

「……ッ! お、前。一体……!」

 

 これらは全て、俺に転生者殺しの話を持ちかけた「魔女」の言っていた台詞だ。正直、その言葉が意味するところはほとんど分からない。分かるのはせいぜい穀潰しを詰るくらいの罵詈雑言だろうということくらいだ。

 

 ただ、この男は先程俺の口から出た「インキャヤロウ」という言葉にとてつもなく動揺していた。俺が全く知らない言葉に、こいつは大きく反応した。

 これらの言葉は……きっと異世界の言語だ。転生者達がもともといた世界の言葉。

 

「おや……どうされましたか? あっ、もしかして俺のことをもっと知りたくなりました? それはよかった! でしたら、ぜひご一緒しましょう。街の宿舎に小さな部屋をとってあるのですが、よろしいですかね? もちろん、俺と貴方。二人だけの秘密の茶会ですよ?」

 

「くっ……!」

 

 なら、それを知っているこの世界の住人である俺は奴らにどう見えるのか。当然、不審極まりない不気味な男に見えるだろう。放ってなどおけないだろう。なぜなら『想定外の事態や謎なんて転生者には必要ない』のだから。

 

「チィ……! あァ、分かった! いや、ええ、分かりましたとも。話は終わりです。なら早く行きましょうか」

 

 歯噛みしていたルイだったが、予想通り俺の誘いに乗ってきた。口調も丁寧語に整えているものの、眉間に寄ったシワがいいように弄ばれた苛立ちをこれでもかと主張しているようだ。

 しかし、その行動に少しの溜飲を下げていた俺は、直後のルイの行動に再び息を飲むことになる。

 

「フン、少し目立ってしまいましたね。このような醜態を晒すとは……頭が煮え繰り返りそうですよ……!」

 

 パチン、と。ルイが指を鳴らす。それだけの行動で俺達の動向を固唾を飲んで見守っていた全ての人間が頭から崩れ落ち、動かなくなる。一瞬で騒がしかった店内が静まり返り、照明に映し出される人影は俺達二人以外にいなくなった。

 

「な……!」

 

「ご安心ください♪ なにも殺してはいませんよ。さすがに一般市民を殺すのはアウトですからねぇ。

 ただ……この数分の出来事を、綺麗さっぱり忘れていただいただけですから。言うなれば『記憶消去魔法』! アハハ! まぁ思いついたの数秒前だし、強引にいじくったから、ワンチャン脳みそイっちゃってるかもしれませんけどねー!

 まぁ君にも都合いいだろうし、別にいいでしょ。これぐらい!」

 

「……このッ、クソ野郎……!」

 

 あまりの暴挙に、俺は思わず動揺を露わにしてしまった。そして同時にこう思う。やはり、こいつは……

 

「あれェ? 俺また何かやらかしちゃいました? まぁ、いいや! それよりさぁ。ねぇねぇ、村人クン。勘違いしてもらったら困るんだけど……俺、最強だから。

 場所を変えるのは情報を俺が独占するため。ここじゃあいくらなんでも目立ちすぎる。君なんて秒で殺せるんだよ? だからあんまり調子乗ってると……死ぬよりひど〜い目に合わせちゃうかも? なんちゃって! アッハハハハハ!」

 

 こいつは絶対に殺しておかなきゃならない、人間の屑だ……!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ヘェ〜ここがお茶会場? 予想通りボロっちぃですねぇ! 一瞬物置小屋かと錯覚しちゃいましたよ! ハハハ!」

 

 俺達はしばらく街中を歩き、路地裏にひっそりと佇む寂れた宿に到着する。お世辞にも繁盛しているとは言い難い外観の木造建築。「これからお前をぶち殺します」とは到底言えないほどに転生者殺しの場所として、明らかに不釣り合いに思えた。

 隣で腹を抱えて嘲笑っている人間の屑とほぼ同意見なのが余計に俺を苛立たせ、それと同時に、本当にここでルイを殺せるのだろうかと不安に陥る。

 

「……まぁ、そう言わずに。とりあえず、さっそく部屋に行きましょうか」

 

 俺は内心の焦燥感をひた隠すのに必死であった。大丈夫、上手くいくはずだ。だって魔女がそう言っていたのだ。この宿の一室で、ルイを私の前に連れて来いと。

 

 薄暗い板張りの廊下がギシギシと音を立てる。

 

 ……本当に上手くいくのだろうか。相手はあのルイ=クロフォード。新進気鋭の大魔術師。魔女は魔法を使うと言っていたが、先程一瞬で数十人を気絶させた化け物に対して有効なのか?

 

 目的の部屋の前に着く。なぜか部屋の前のランプが消えていて、隣の部屋のランプの灯りでかろうじてドアノブの位置が分かるほど暗かった。

 

 もう、俺は口から心臓がまろびでそうな程に緊張していた。今まで人が死ぬなんて、そのような縁のある生活は一切送ってこなかった。剣術は人一倍努力したが、実際に命のやり取りをしたことは一度としてない。

 それがある日、唐突に村のみんなは全員無惨に殺されて。俺は知らない女に命を救われて。そして、今から昔憧れていた転生者を殺す現場に居合わせる。

 これは夢なのだろうか。まるで現実感が湧いてこない。熱に浮かされるように、ただ大切な人達が殺された怒りと悲しみと現実逃避で、気づいたらここまで来てしまった。

 後戻りなどできやしない。ここでルイを殺さなければ、どの道俺に明日はない。

 

 覚悟を決めてドアを引き開ける。ギギィ、と木の軋む音が鼓動の音に掻き消される。

 

 俺はすでにこれ以上ないほど混乱していた。ありとあらゆる葛藤と緊張とがないまぜになり、思考が焼き切れそうだった。

 

 そして、部屋の中には……

 

「ははっ」

 

 ……誰もいなかった。まさにもぬけの殻と言わんばかりの有り様だ。

 

「……ほら早くお入りくださいよ、ルイさん。今お茶を用意しますので、どうぞごゆるりとおくつろぎください」

 

「……言われずとも。さっさとしてくれませんかね。こっちは貴方と違って暇じゃないんですよ」

 

「ええ、分かっていますとも。俺も早く終わらせたいですから」

 

「フン……飲めるように入れてくださいね。まぁ片田舎の村人の入れる茶など、最初から期待などしていませんが」

 

「そうおっしゃらずに。これでも料理はそれなりにできる方なのですよ」

 

「この世界基準での話ですよねそれ。当てになるワケないじゃないですか」

 

「ははは、まぁ……」

 

 最初から、期待などしていなかった。あんな怪しげな女、信じる方が馬鹿げている。どの道成功などしなかっただろう。相手は鉄をバターのように引き裂き、山すら軽々打ち砕く最強の人間「転生者」たちだ。どうせ初めから無様な村人の生き残りを笑い物にする腹だったのだろう。

 

 結局は状況に流されただけのことだ。一般人の俺にはそうすることでしか現実を受け入れられなかった。父さんも、母さんも、妹も、友人も、村の大人も子供達も、……リディアも。みんな死んだ。殺された。こいつら転生者に皆殺しにされた。

 

「うっ……」

 

 目尻から涙が溢れ落ちる。ようやく、俺にはもう何も残されていないのだと思い知った。これから一人でのたれ死んでいくのだろう。夢も果たせず、後悔に塗れ、無様に飢えて死ぬのだろう。

 

怨みの一つも果たせずに!

 

 許せるわけが無い。許して良いはずが無いだろう!いったいどれほどみんなが苦しんだと思っている! なんで死ななきゃならなかったんだ! どうして……!

 

「リディアが死ななきゃいけなかったんだよ!?」

 

「うおっ!?」

 

 台所にあった包丁を、呑気に座っているルイに飛びかかるようにして振り下ろす。

 殺意が湧いたのだ。店で啖呵を切った時とは比べものにならないほどに憎しみが沸騰する。これは流された結果の恨みじゃない。

 これは、俺自身が今自覚した、腹の底から沸き出る怨みだ!

 

「あっぶねぇな! いきなり錯乱しだしましたよ。この人」

 

「ガッ……!」

 

 だがそんな勢い任せの攻撃が届くはずもなく、俺はあっさりと蹴り飛ばされ、首を片手で締め上げられる。これではさっきの焼き増しだ。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!」

 

 それでも俺は包丁を必死に振り回す。ただ、目の前のこいつがっ、憎い……! 殺したい! 殺してやる!

 

「チッ、面倒っ、ですねぇ!」

 

「ぎっ!? ああぁあ"あ"あ"っ!」

 

「アハハ、その腕……もういりませんよね?」

 

 包丁を持った右腕が雑に吹き飛ばされ、肩口から冗談のように舞い上がる血飛沫が俺とルイを汚していく。

 

「うっわ! きったな! も〜何してくれるんですか……この服結構高かったんですよ? 全く、結局こうなるならさっさと殺しておけばよかったですねぇ。貴重な時間を無駄にしてしまいましたよ」

 

「……して」

 

「あん?」

 

「殺じてやるあ"あ"あ"あ"ッ!!」

 

 殺す! 殺す! 殺す!殺す!殺す!!

 

「威勢はよくても……弱けりゃ何にもできやしないですよ〜」

 

 殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺……

 

「じゃ、バイバ〜イ!」

 

 ……殺さなきゃ、ダメなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……?」

 

「がっ!」

 

 バタン、と。強靭な腕で俺を掴み上げていたルイが倒れ込む。同時に俺も床に放り出される。

 

「はははははっ! 上出来じゃないか、リュート! しかしまさかこんなにも上手くハマるとは……やはり作戦とは綿密に立てておくものだな。これは実に快感だ」

 

「ま、じょ……?」

 

 血溜まりに佇み、美しい肢体を真紅に浸しながら、ケラケラと冒涜的に嗤う、白銀の髪の美女。自らを「魔女」と名乗る、俺に転生者殺しを持ちかけた得体の知れない女がそこにいた。

 

「あ、え……な、んへ……?」

 

「あぁ……、ルイ。ルイ=クロフォード! はははっ、無様な姿だ。実に似合っているぞ! 額に入れて飾りたいぐらいだ……」

 

「ひっ……!」

 

 魔女はとぐろを巻く蛇のように、あるいは舌なめずりをする獅子のような表情で艶やかにルイの元へ向かう。

 

「『なぜ俺が倒れているのか』か? いいだろう、いいだろう。教えてやるとも。時間はたっぷりあるからなっ!」

 

「ぎ、ぇっ……!」

 

 魔女はそのままルイを蹴り上げ、顔を踏みつけにして雄弁に語る。俺は朦朧とする意識のまま、ただそれを眺めていた。

 

「まず、お前が授かったチート能力(スキル)だが、たしか『魔道具作製』と『三無魔法』だったな。これらはたしかにこの世界の魔術体系を無視する脅威的な力だ……。しかし一見無敵に見えるこれらの能力にも、弱点というものがちゃあんと存在するわけだ」

 

「あ"、ッ……」

 

 魔女はそう言っておもむろにルイが腰に佩いた剣を取り上げる。

 

「まず『魔道具作製』。これは強力な魔法効果を物体に付与するものだが、刻み込んだ魔法効果を発動させるには当然魔力が必要だ。あらかじめいくらか貯めておくこともできるだろうが、これほど大規模な魔法なら、その場で魔力を注ぎ足さなければ発動させるのはいくら転生者でも不可能だ。そして効果発動のために魔力を注がなければならないなら、準備する時間が無ければ脅威足りえない。ようは気付かれる前に奇襲してしまえばいいだけだ」

 

「ぎっ、あ"あ"あ"ッッ!!」

 

 魔女がルイの腕に剣を突き刺し、ゴリゴリと骨と鋼の擦れ合う音が狭い部屋にこだまする。

 

「そして『三無魔法』だが……これが中々厄介でなぁ。なにせ詠唱も触媒も魔法陣も必要がなく、さらには無属性であるが故にあらゆる属性に変質が可能と、まさにチートな性能だ。これがあれば大抵の危機など危機として成り立たん。しかし、これにも発動するに当たって一つ条件がある」

 

「あ"、……」

 

 ルイの目玉を狂気に染まった血色の瞳が覗き込む。

 

「それは、イメージだ。そもそも魔法というのは術師の魔力、詠唱、陣、触媒、想像力の五つに要素で神秘を行使する技術。お前の場合はなんの詠唱も補助も使用しない代わりに、普通の術師より発動する魔法の効果を強くイメージする必要があるようだな。お前の魔法はお前の想像力に左右される……つまり言い換えれば、お前のイメージさえ乱してしまえばお前はもう一切の魔法を使えなくなるというわけだ」

 

「あ……あ……」

 

「そこでだ。私はお前を殺すにあたって、一つ策を用意した。それがリュート、お前だよ」

 

 俺を用意した? しかし、俺は何も成せていない。むしろ返り討ちに遭っただけだ。今にも腕からの出血で意識が飛んでいきそうなのに。

 

「村で死にかけていたお前を掬った時に、ただ掬うだけでは物足りないと思ってな。お前の身体に細工をさせて貰ったのさ。具体的には私の調合した薬品をお前に投与した」

 

 何しやがってんだ……この女。

 

「その効能は、『人間の大脳を一時機能不全にさせる』というものでな。ああ、バカでも分かるように簡単に言おうか。つまり『思考力と行動能力を奪う』ということだ。やはり魔法薬は良いな。『魔法薬学にこそ魔導の真髄あり』とはまさにこのことだ」

 

 魔女は嬉しそうに種明かしを進めていく。まるで新品のオモチャを手に入れた童女のように。

 

「ルイ。お前はそうとも知らず、まんまとリュートの腕を引きちぎり、血液中の薬品をモロにかぶった。その時点で我々の勝利が確定したというわけだ。お前が不用心で助かったよ。他のベストナインにはおそらく通用しなかったからな」

 

 そして魔女は今度はうずくまる俺の側に歩みを進め、俺の肩に手を当てる。

 

「『神よ、この者の傷を癒やし給え』……だったか? 全く、魔女が神に祈りを捧げるなど、大した笑い話もあったものだよ」

 

「うっ、ガッ、あ"ァああ"!」

 

 腕に激痛が走り、閉じかけた意識が強制的に叩き起こされる。腕がひとりでに治っていく感覚が非常に不快感を煽る。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「よし、傷の治療はこれでいいだろう。さて、リュート。傷も治って絶好調のお前に、一つやっておいて欲しいことがあるのだが」

 

「な、んだよ……」

 

 俺はぐらつく視界の中、かろうじて立ち上がりながら魔女に返事を返す。今度は、一体何をしでかすつもりだってんだ。

 

「ふふ、リュートよ。お前が殺せ。このナメクジのように這いつくばる人間の屑を、殺せ」

 

「……」

 

「どうした。やらないのか? 今にも殺したくて仕方がないように、私には見えるが?」

 

 殺す。あぁ、そうだ。俺の殺意には些かの衰えもない。

 

 俺はうつ伏せに倒れているルイに向かって、のそり、のそりと足を引きずっていく。

 

「ひっ……あ、あ"ぁあ! あ"あ"あ"あ"っ!!」

 

「……」

 

 無言で奴の腕に突き刺さっている黒剣を引き抜く。

 

「や、やへ、でっ……!」

 

「……」

 

 そして、そのまま躊躇なく心臓に突き刺した。

 

「ぎっ、ぃゃあああ"あ"あ"あ"ッッ!!」

 

「……」

 

 室内に絶叫が響き渡る。その悲鳴が、ひどく心地よい。

 

「あ"ッ! ぐぶっ! ぅあ"あ"! あ"あ"あ"あ"!」

 

 続けて肩、腹、左手と突き刺し、胴に刃を振り下ろす。冗談のように真っ二つだ。

 

 それから、それから、何度も同じように、突き刺し、抉り出し、引き裂き、潰す。こいつの全てを殺すように、丹念に、丹念に。

 

 もう、ただの村人だった俺は死んだ。あの日、みんなと一緒に死んだんだ。

 

 だからせめて……お前も……一緒に……死ねェっ!!!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「……」

 

「おっ終わったか。いやぁ随分とハッスルしたたじゃないか。どうだ? 楽しかったか?」

 

 俺の前には、もうルイはいなかった。あるのはどろどろになった肉の塊だけ。

 

「楽しかった……か。いや、分からない。胸に、ぽっかり穴が空いた気分だよ」

 

 最中は、ほとんど思考していなかった。ただ、殺すということだけ考えて、剣を振り下ろし続けた。

 

「何でだろうな……あんなに憎くて、今でも憎しみが次から次へと湧いてくるのに。全然、すっきりしないんだよ」

 

 怨みを晴らしたなら、もっと気持ちがいいものだと思っていた。実際は、ひどく疲れ果てて、何も考えられない。

 

「なぁ、魔女。お願いだ。教えてくれよ。どうして……こんなにも、寂しいんだ」

 

 寂しい。そう、寂しいんだ。ひどく孤独で、寒々しい。

 

「ふふふ、それはだな、リュートよ。お前に何も残っていないからだ」

 

 誰もいない。俺には愛する家族も、恋する幼馴染も、仲の良い友人も、殺すべき仇も、もう……何も無い。教えてくれ、教えてくれよ。

 

「俺は……これから。どうすればいい……?」

 

「何だ、そんなことか。くだらない。実に簡単な話じゃないか」

 

 え……?

 

「お前には今、生きる目的が無い。縋るものが無い。だからこそ、自分という存在が宙ぶらりんなのさ。だから……そんな状況を解決するには、何かしらの目的が必要というわけだな」

 

 ……目的。

 

「そう、目的だ。お前はどうしたい。何がしたい。何もしたくないのなら、私はお前をここに捨てて行く」

 

「っ……!」

 

 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。見捨てないでくれ。頼むから置いていかないでくれ。一人きりなんて、耐えられない。

 

「ならば、どうする。私は転生者を余さず殺す。ついて来れるか、お前に」

 

 あぁ! ついて行く……! 何でもする……! だからどうか……

 

「俺を、救ってくれ……」

 

 魔女の口端が、ニィ、と釣り上がる。まるで、そう。悪魔の如き形相だった。

 

「ならば、ここに契約を交わそう。リュートよ。お前は私に全てを捧げろ。そうすれば、私はお前の復讐劇に最高の華を添えてやろう! お前に……生き方というものを教えてやる。

 お前を、掬い上げてやろうではないか」

 

 魔女が契約を持ちかける。きっと、この誘いに乗れば、俺は本当にもう戻れない。けれど。

 

「あぁ……約束する! 俺はあんたに全てを捧げるから! だから、俺を、導いてくれ……」

 

 魔女の目が爛々と輝く。今まで見てきた中で、間違いなく極上の笑みを浮かべ、魔女は(しもべ)に手を差し伸べる。

 

「あぁ、誓おう! これにて契約は成立した! お前の全てを使い、お前に最高のショーを見せてやる!」

 

 ここに悪魔と俗人の、限りなく愚かな契約が結ばれた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ———人を人とも思わぬ外道には地獄ですら生ぬるい。

 

 ———生き地獄が、大口開けて待っている。

 

 ———悪魔が嗤って呼び寄せる。

 

 

 ———自業自得の愚かさに、その身を焼かれて死んでくれ。

 

 

 ———愚かに過ぎるキサマらには、そんな末路がお似合いだ。

 




⚪︎作者の個人的な原作キャラクターへの印象
・リュート……一般人相当の軟いメンタルの持ち主。優しい性格だが状況に流されやすい。主体性が薄い無個性系主人公。当作品ではこれから転生者を皆殺しにさせるため、作者にメンタルを足蹴にされた。
・魔女……おしゃべりが大好き。絶対に悪女。当作品では作者が原作を深読みしすぎたせいで死ぬほど独自設定を盛られた。しかしそれらを公開する予定は今の所ない。
・ルイ……誰もが真っ先に考える典型的なかませ転生者。テンプレすぎて逆に今時珍しい。作中で魔女の策にハマったのは魔道具に解毒効果があることを過信したため。ちなみに作者は別に「賢者◯孫」に対するヘイトは一切ないです。むしろこいつ描くために漫画版3周ぐらいするハメになりました。

⚪︎原作に対する個人的見解
 さすがに他作品を彷彿とさせすぎた。匂わせるどころかモロだったので原作者様が匙加減ミスったのだと思っています。しかしよく読み込んでみると所々「ん?」と思うことがあり、中々作り込まれていると感じました。もうちょっと続いてたら化けていたかもしれませんね。
 まぁ、当作品では独自解釈でかなり設定を捻じ曲げてしまった節があるので……少し申し訳ない気持ちもあります。ちなみに作者はなろう系大好きです。特にSAOが大好きです。

⚪︎今後の投稿について
 リハビリも兼ねて書いた作品なので、続くかは未定です。なので一応短編として投稿させて戴きました。気が向いたら続きを書くかもしれません。書きたい場面も多々ありますから、まぁ期待しないで待っていてくだされば作者としては
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