序盤はスラスラ書けるんですがね…
これが話が進むにつれて拗れてくるんですよ
──中央暦1639年1月24日、クワ・トイネ公国経済都市マイハーク──
クワ・トイネ公国最大の港町にして公国経済の柱と名高いマイハークは、普段とは違う喧騒に包まれていた。
未確認騎が領空侵犯をする可能性があると言う話を防衛隊の騎士達から聞いた市民達が野次馬根性丸出しで見物に来ているのだ。
「お、おい!あれがそうじゃないか!?」
大通りで犇めく人々は皆一様に空を見上げており、その内の視力に優れた何名かが遠くの空を見上げて指を差す。
「…あれか。遠くてよく分からないが…確かに羽ばたいていないな。ワイバーンや火喰い鳥ではなさそうだ」
マイハークの中でも一際背の高い砦の見張り台で、マイハーク防衛隊長である女騎士イーネが、木製の筒と磨いた水晶で作られた望遠鏡を覗いて空の彼方を睨み付けていた。
彼女の目に映るのは、青空に浮かぶ異質な黒点…それは徐々にその姿を顕にしてゆく。
「な…何だあれは…?あんな形で飛べるのか…?」
ハッキリとその姿を視認したイーネの口から出たのは、驚愕と戸惑いの声であった。
色は青みがかった緑であり、全体的に鏃を思わせる形をしている。
また、その鏃の先端辺りには濃い鼈甲色の部分があるのが見て取れるが、それよりも目を引くのは未確認騎の背である。
「それに…何だあの皿は。あんな物を背負う意味が分からない…」
未確認騎の背中らしき部分には巨大な"皿"のような物が柱を介して載せられており、よく見ればその皿はゆっくりと回転しているようだ。
《イーネ隊長!未確認騎、間もなく本土上空へ侵入します!》
「分かった。魔信で最終通告を行い、応じないようであれば…撃墜せよ」
未確認騎の謎に頭をひねるイーネであったが、上空に展開するワイバーン部隊の隊長からの通信に応え、指示を出す。
《了解。…あー、あー。未確認騎、応答せよ。こちら、クワ・トイネ公国マイハーク防衛隊である。貴騎は我が国の領空を侵犯している。これ以上、我が国の空を侵すのであれば敵意があると見做し、実力で貴騎を撃墜する事になってしまう。もし敵意が無いのであれば応答し、我々の指示に従え》
《………》
《駄目です、イーネ隊長。うんともすんとも言いません。…仕方ありませんが、撃墜します》
「あぁ、許可する」
ワイバーン部隊長からの呼び掛けにも応じ無い無礼な輩を本土上空へ入れる訳にはいかない。
確かにクワ・トイネ公国は世界全体から見れば取るに足らないような後進国であろうが、それでも自らの足で立つ主権国家なのだ。
例え相手が列強国であっても領空・領土侵犯に対しては毅然とした態度を取らなければならない。
《全騎、攻撃準備!》
隊長の命令が下された瞬間、総勢12騎のワイバーンが横一列に並び、首を真っ直ぐに伸ばした。
ワイバーンによる必殺の一撃、導力火炎弾の一斉射撃体勢だ。
基本的にワイバーンは上昇力に劣っており、急上昇により攻撃を回避する事は出来ない。
それ故、攻撃を避ける場合は左右へ旋回するか急降下するかになるが、殆どの竜騎士は高度を取り戻す苦労を知っているため急降下をする事はほぼ無い。
だからこそ横隊による一斉射撃は、ワイバーンによる空戦の基本である。
《行くぞ!3…2…い…!?》
攻撃タイミングを揃える為、カウントダウンをしていた隊長は"1"を言う事が出来ず、攻撃も出来なかった。
「なっ…!?」
驚愕に染まるイーネの表情。
おそらくは上空の竜騎士達も、また地上でざわめく市民達も同じような表情となっているだろう。
──キィィィィィィン…
「何だあの上昇力は!?」
信じ難い事に未確認騎は"垂直に急上昇"したのだ。
しかもとんでも無く速く、恐ろしい程の速度で高度を上げて行く。
おそらくはワイバーンの限界高度である4000mなぞ軽々と超えているだろう。
《お、追え!あの無礼な輩を逃がすのは竜騎士の恥…》
「待て!…もういい。無理はするな」
《しかし…》
どうにか頭を切り替え、未確認騎を追尾しようとする竜騎士であったが、イーネがそれに待ったをかけた。
「あんな高さまで登られては追う事は出来ない。…悔しいだろうが、帰投してくれ」
《…はい》
イーネの指示を受けた竜騎士達は降下し、飛行場の方へ進路をとる。
「……」
──ピュンッ
それを見届けたイーネは背負っていた先祖代々伝わる名弓を手に取り、矢を番えぬまま弦を弾いた。
未確認騎はそのまま空の遥かなる高みへと消えてしまった為に、もはや目で見る事は出来ない。
それ故に矢を当てる事なぞ出来る筈も無いが、騎士としての矜持が指を咥えて見ているだけな事を許さなかったのだろう。
「…奴は何者だ」
ポツリと呟いた言葉は風と共に虚空へと消え去った。
──中央暦1639年1月27日、クワ・トイネ公国政治部会議場『蓮の庭園』──
クワ・トイネ公国の首都。
その中心にある森の中にある蓮の花が咲き誇る池の中央に浮かぶ小島。
これこそがクワ・トイネ公国の政治の中枢『蓮の庭園』である。
そんな蓮の庭園に置かれた円卓には、各地から呼び寄せられた諸侯が集まっていた。
「では皆、資料は読んでくれたか?件の未確認騎について心当たりがある者は…」
頭を抱え、どこか諦めたような口調で告げるのは首相であるカナタだ。
一国の首相がそのような態度を見せていては下々の者に示しがつかないと叱責されかねないが、それを指摘するであろう他の参加者もカナタと似たりよったりな態度である。
「もしや…ロウリアの新兵器ではありませんか?彼の国は近年、我が国を侵略する為に軍拡を進めています。その軍拡の一環で新兵器を開発し、その実戦試験としてマイハークの偵察を行ったのでは?」
参加者の一人が挙手し、自らの考えを述べる。
だが、それに対してカナタは手元にある羊皮紙を一瞥し、首を横に振った。
羊皮紙に描かれているのは、3日前に領空侵犯を行った未確認騎のスケッチだ。
青緑色で鏃の様な形をし、背には巨大な皿の様な物を背負う姿…こんな物が空をワイバーンよりも速く飛ぶなぞ考えられないし、ましてや自国と技術レベルがそう変わらないロウリア王国がこの様な物を作れるとは思えない。
「いや、それは考え難いだろう。ロウリアにこんな物を飛ばすだけの技術力があるとは思えない」
「首相、よろしいですか?」
否定の言葉を口にするカナタへ目を向けながら挙手する軍務局将軍のハンキ。
「これはあくまでも私見なのですが…遙か西の地、第二文明圏の盟主であるムーの"飛行機械"に酷似しているように思います。彼の国の飛行機械は羽ばたかない上下2枚の翼を持ち、回転する物を持っているとの噂です。この未確認騎も見ようによっては2枚の翼を持っているように見えますし、背の皿は回転していたと…もしやこれはムーの飛行機械なのでは?」
「いや、ハンキ将軍。申し訳ないが、私は違うと思う」
ハンキの言葉を否定したのは、外務卿のリンスイだ。
「ムーの飛行機械は鼻先に風車の様な物を持ち、それを回転させていると聞く。それに対してこの未確認騎は鼻先に何もないようだ。それに、ムーがわざわざこんな東の果てにくるとは思えん。万が一ムーだとしても、彼の国は列強国とは思えぬ程に温厚だという話だ。高慢ちきなパーパルディア皇国ならまだしも、ムーが何の通告も無しに領空へ立ち入るとは考えられない」
「むぅ…確かに」
リンスイは外交の為に多くの国々を巡っており、諸外国の情報を集めてきた実績がある。
そんな彼の言葉は、何とも説得力があるように思えた。
「ふぅ…ロウリアでもムーでもないとなると、振り出しに戻ってしまったな。他に何か手掛かりは…」
「会議中失礼します!」
手詰まりとなった議題をどうにかしようとするカナタだが、彼の思考を遮るように軍の若手士官が駆け込んできた。
「騒々しいぞ!いくら緊急の用でも許可ぐらい…」
「まあまあ、ハンキ将軍。どうやら彼の様子を見るに、そうも言っていられない事態が発生したらしい。君、彼に水を一杯出してやってくれ」
慌てふためく若手士官をハンキが叱責するが、カナタは落ち着いた様子で側仕えに対して息を切らす若手士官へ水を出すように指示した。
「あ…ありがとうございます…」
恐らくは全力疾走してきたのだろう。
額から汗を垂らし、掠れた声で感謝の言葉を述べると差し出されたコップを手に取り、中の水を一息に飲み干した。
「んぐっ……はぁ…はぁ…と、東方海域を哨戒中の軍船『ピーマ』からです!」
息を整えた若手士官は背筋を伸ばし足を揃えると、参加者全員に聴こえるようなハキハキとした通りの良い声で報告を始めた。
「読み上げます!《我、哨戒中に不審船を発見。500mを超える全長を持ち、全てが金属で出来ている模様。これより停船を命じ、臨検を行う》…以上です!」
若手士官の報告にカナタを始めとした面々は、顔から目玉が溢れ落ちそうな程に目を見開いた。
アズレンクロスの方もちゃんと書かないと…
あとアンケートは9月1日の6時までの受け付けとなります
異世界国家との関係について
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積極的に介入して強化する
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介入は民間レベルに留める