超異世界要塞マクロス   作:サモアオランウータン

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sar_fewf様・山田治朗様・13FA様より評価9、トド丸様・晶彦様・名無しの雀様より評価8、路徳様・まる@@様より評価7を頂きました!

久々にマクロスFの劇場版を観ましたが…やっぱりクォーターの機動は最高ですね!


3.生きる為に

──西暦2060年1月24日、マクロス・アーク首相官邸──

 

「では首相、各省庁からの報告です」

 

「うむ…」

 

超長距離移民船団『マクロス・アーク』の中枢である首相官邸。

その執務室では、官邸の主であるトーマス・バレーノ首相が官房長官であるジョンソン・ハスラーから報告を受けていた。

 

「先ず、都市計画省ですが…。建物の凡そ60%が損傷を受けています。しかしこれは窓ガラスの破損や、ドアの建て付け悪化等の軽微な損傷も含みます」

 

「では、重大な損傷を受けた物は?」

 

「全体の30%となります。そのうち半壊判定は70%、全壊判定は25%、倒壊は5%です」

 

「…これだけで済んで良かったと思う事にしよう」

 

頭を抱え、肩を落とすバレーノ首相。

フォールド断層への落下と、突然の大気圏突入、海面への着水を準備不足で行った割には軽微な損害であると言えるだろう。

 

「次は環境省からです。えー…自然再現区での山体崩壊及び人工湖決壊により周辺の自然公園が水没との事です。これにより、上水道供給能力が半減するとの事です。ですが、不幸中の幸いと言って良いのかは分かりませんが、現在は経済活動が停止中ですので上水道使用量は平時を大きく下回ります。これなら現状の上水道供給能力と、この惑星の海水を淡水化する事で暫くは凌げそうです」

 

「とは言っても何時までも経済活動を停止させる訳にはいかん。人は水が無ければ最長でも3日しか保たない。上水道の復旧を最優先とせよ」

 

アーク船団はフロンティア船団と同じく自然保護の意識が高く、どちらかと言えばリベラル派に属するイデオロギーを持った船団だ。

それ故にシティ艦を始めとした居住可能な艦には人工森林や人工湖を持つ自然公園が設置されており、それを利用した貯水システムにより5000万もの市民が利用する上水道を運用している。

しかし、この方式は人工湖が破損するなどして決壊すると上水道システム全体の機能が低下する危険性があると指摘された為、改修する予定だったのだが結局それを待たぬままこのような事態に陥ってしまった。

 

「しかし、首相…。より深刻なのは農産物を生産していたバイオ艦の喪失です。農水産省の試算によりますと…食料自給率は60%減、特に穀物の自給率は80%減との事です」

 

「不味いな…私の記憶が正しければアークの備蓄食料は1年程しか持たなかった筈だ。今からシティ艦の自然再現区を農地にしたとしても…」

 

難しそうな表情を浮かべ、手元のメモ帳に様々な数字を書き込んで計算するバレーノ首相だが、ハスラー官房長官が申し訳なさそうに口を開いた。

 

「首相…食料は…長く見積もっても半年しか持ちません…」

 

「なん…だと…?」

 

「備蓄食料はシティ艦底部の専用倉庫に保管していたのですが…着水の衝撃で浸水が発生していたようで、備蓄の凡そ半分が…」

 

「何だと!?何故もっと早く確認しなかった!」

 

「そ…それが…負傷者救助に人手が割かれていた上に、倉庫への通路が瓦礫等で塞がれてしまっていてそれの撤去に…」

 

状況は絶望的だ。

有事の際は各所の自然公園を開墾して畑にする事も想定しているのだが、それはあくまでも十分な備蓄がある事を前提とした想定である。

開墾にかかる時間と作物が実る時間…いくら品種改良によって生育速度が早い作物があるにしても、半年あるか無いかという時間は余りにも心許ない。

 

「っ…!…すまない、怒鳴ってしまって」

 

「いえ、連日の激務お疲れなのでしょう。少し休まれては如何でしょうか?」

 

「いや、君も…他の閣僚や官僚も似たようなものだろう。私だけ休む訳にはいかん。それに…」

 

「それに…?」

 

「今寝たら、3日は起きない自信がある。それで良ければ休むが?」

 

「では、先程の発言は撤回します。首相、このままでは我々は餓死するかもしれませんので、解決策を考えて下さい」

 

軽口を言い合えば、張り詰めた空気が若干ながら和らいだ気がする。

しかし、だからと言って問題が解決した訳ではない。

どうにかして解決策を見出さなければ船団は全滅してしまうだろう。

 

──コンコンッ

 

知恵を絞る為、バレーノ首相が濃いめに淹れたコーヒーに口を付けようとした瞬間、執務室の扉がやや強くノックされた。

 

──「私です。トレノです」

 

「トレノ大臣か、入ってくれ」

 

扉の向こうから聴こえる声は、アーク船団に駐屯している統合軍を纏めるケンジ・トレノ防衛大臣であった。

それを確認したバレーノ首相は入室を許可する。

 

「失礼します。首相、いいニュースと悪いニュースがあります。どちらを先に聞きたいですか?」

 

入室するや否や、足早にバレーノ首相へ歩み寄ったトレノ大臣は古い映画の言い回しを彷彿とさせる質問を投げ掛けてきた。

 

「…いいニュースからで」

 

ここ最近悪いニュースばかりを聞いてきたバレーノ首相は、この後に悪いニュースが待っているとしても、とりあえずはいいニュースを聞いて気分を上げたい心境だった。

 

「では、いいニュースを。各方角に飛ばした偵察機…『RVF-171』が南西方向に陸地を発見しました。平坦な土地が広がる大陸規模の陸地であり、地表には高等植物が生い茂っているそうです」

 

「ほ…本当ですかっ!?」

 

トレノ大臣の言葉にハスラー官房長官は飛び上がらんばかりに歓喜した。

確かに船団内の人工森林を開墾するのは時間がかかるが、平坦な土地であれば開墾の負担は遥かに軽い。

そうなれば、作物が育つ時間を稼ぐ事が出来る。

 

「ほう…で、悪いニュースは?」

 

一方のバレーノ首相は、悪いニュースが気掛かりらしい。

すると、トレノ大臣は自らの端末を持つとホログラムディスプレイを表示させた。

 

「"先住民"を確認しました」

 

「はぁ〜…やはり、そう美味い話はないか…」

 

ホログラムディスプレイに表示されていたのは、翼の生えた爬虫類の背に乗った鎧姿の人間らしき存在に、石造りの建物が立ち並ぶ港町らしき小規模な都市とその通りに犇めく人々、その都市の郊外には区画整備された麦畑らしき農地が広がっている様が映し出された画像だ。

 

「あ、明らかに知的生命体ですよね…?何らかの単細胞生物が群体となってたまたま人型をしているとかは…」

 

「その可能性は低いでしょう」

 

一縷の望みに縋るようなハスラー官房長官だが、その望みはトレノ大臣の言葉によってあっさりと絶たれた。

超長距離移民船団の主目的は居住可能な惑星を探索し、発見次第船団ごと降下して開拓するというものだ。

しかし、そう言った惑星には往々にして生命体が存在するものであり、時には独自の文化・文明を築くレベルにある知的生命体が存在している場合もある。

 

「うーむ…この、竜鳥らしき生命体を使役して航空戦力としているのか?であれば、我々は彼らの領空を侵犯してしまったのかもしれん」

 

「はい、パイロットもその可能性に気付き、最低限の偵察活動のみに留めたそうです。…しかし、最低限にしても領空侵犯は領空侵犯です。彼らの我々に対する心象は悪くなったかと…」

 

超長距離移民船団はある程度の自治権を持ち、統合政府の総本山である地球から遠く離れて航行する事から政治思想は移民船団によって大きく事なり、それは移民予定惑星に知的生命体が存在した際の対応にも表れている。

基本的には先住民と交渉するのだが、中には有無を言わせず武力によって制圧したり、不平等条約を押し付けるような船団も少なく無い。

しかし、アーク船団は先住民を尊重する方針を執っており、先住民が移民を拒否すれば大人しく退去するという事になっている。

それ故、先住民からのイメージが悪くなるというのは船団全体の不利益に繋がってしまうのだ。

 

「しかし、首相。先住民が我々の居住を拒否したとしても、今の状態では宇宙へ飛び立つ事は出来ません。バイオ艦の再建造やシティ艦の補修と補強…それにはどんなに急いでも3年は必要でしょう。それに加え、建造と修理に必要な資源やその間の食料を確保せねばなりません。ですが、幸いな事に発見された大陸は見る限り肥沃な土地のようです。ここは、彼らに誠意を込めて謝罪し、食料と資源の輸入交渉をすべきだと考えます」

 

「私もそう思う。そうなると、再び彼らと接触しなければならないだろう。大臣、次は船を使ってゆっくりと近付いてコンタクトを取ろう。使えそうな船は?」

 

ハスラー官房長官の言葉に同意するバレーノ首相は、そのままトレノ大臣へ問いかけた。

 

「はっ!彼らが極端な排他的思想を持っていた場合、戦闘に突入する可能性があります。それを考慮すれば、ある程度の戦闘力を持つ軍艦を派遣すべきでしょう」

 

そう述べたトレノ大臣は、ホログラムディスプレイに表示されている画像を切り替えた。

 

「バイオ艦の護衛を担当していた『ウラガ級護衛空母』の『イズモ』を派遣しようと考えています。イズモは70機のバルキリーを搭載し、搭載する火砲も巡洋艦並みですので多少のイレギュラーが発生しても単艦で対処可能でしょう。それに、イズモのクルーはバイオ艦を守れなかった事を酷く悔やんでいます。このまま待機させたままでは、責任感に押し潰されかねませんので、何卒彼らに任務を…」

 

「分かった。では、そうしよう。それと、謝罪と交渉の為に各省庁の人員を同行させる必要がある。官房長官、悪いがもう一働きしてくれないだろうか?」

 

「勿論です、首相。孫が飢えて痩せ細る様なぞ見たくはありません。直ぐにでも関係省庁へ指示を出しましょう」

 

頭を下げるトレノ大臣へ承諾の言葉をかけたバレーノ首相は、疲労の色が濃いハスラー官房長官へ伺いを立てる。

それに対してハスラー官房長官は自らの頬をパンッ!と叩いて気合いを入れ直すと、何とも頼もしい笑顔を浮かべて見せた。




ちょっと色々と強引ですが、さっさと宇宙へ飛び立ってしまうと話にならないので…

異世界国家との関係について

  • 積極的に介入して強化する
  • 介入は民間レベルに留める
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