何でも売ります、買っていかれますか   作:夜ノ 朱

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第一話

 

「だーかーらー!それじゃあねぇんだよ!」

「だったら何だって言うんだよ!俺は確かに聞いたぞ!団長からしっかり聞いて来たんだ、間違っているはずがないだろ!」

 

ここはヨークシンにあるカフェの中、普段であれば静まり返っているはずの店内ではとある二人組の男性が言い争いをしていた。

 

片方は着流しに髷を結った無精髭の男、腰に一本の刀を挿している。

もう片方は、全身を覆うタイプの雨合羽を着用しており、顔を隠すように大きな狐の面をつけているが、声からしては男性であり無情髭の男に比べれば小柄な印象を受ける。

 

「知らねえし、んなもん俺が把握しているわけねぇだろ。

大体クロロが来たのだって数か月前だぞ、それからだったら何度か変わってる筈だ。それに俺が知るのはその時だけで、決めた瞬間に忘れるし客に言われても俺の記憶には残らねぇんだよ」

「は!?ならなんだ、完全な無駄足だったってわけかよ!」

「そうなるな。ちなみに情報屋に聞いても無駄だぞ、あいつら金蔓を見つけたって態度で古い情報でぼったくろうとしてくるからな」

 

雨合羽の男の発言を聞き、無情髭の男は深く項垂れてしまう。その態度を見ている雨合羽の男は、ため息をつき紙のようなものを手渡した。

 

「なんだよ、コレ」

「優待券だよ。お前がまだ買い物をしたいと思ってるなら、大切に持っておけばいい。再び合言葉が変わったとき、その優待券にその言葉が浮かび上がるようになっている。当然、俺には読めないようになってはいるけどな」

「おぉ!こういうのだよ、こういうの!新しい能力か?もっと早くに作ってればよかったのによぉ!」

「はい、10万J」

「あ?」

「優待券の代金だよ。忘れてねぇよな?払わねぇってのは無しだぜ、お前はすでに優待券を所持しているんだからよぉ」

「わっーてるよ!ほらよ」

 

無情髭の男は紙束を懐から取り出し、差し出されていたままだった手にのせる

 

「まいど!」

 

二人はそのまま別れて店を出ていく。

 

外は雨なんて降っておらず、カンカン照り。ここ数日雨のふる素振りすらなかった。それでも雨合羽を着たまま歩く男の姿は、人通りの多い道でも男の周囲1mくらいの空間ができてしまうほどには浮いていた。

少し歩けばつけられていることを感じ、相手がかなりの実力者でありながらも、わざと気づかせる様なやり方だ。

それならばと言わんばかりに、路地裏へと足を向けた。

 

「エミル=フドウだな」

「いえ、人違いです」

 

路地裏に入れば、案の定声を掛けられた。まだ振り向いていないが、声だけでその下手人が誰なのかわかってしまう。

 

「何を言うかたわけ、こんなに晴れているのに雨合羽を着とる奴なんぞお前しかおらんわ」

 

返答に納得しない(する訳もないが)とは思っていたが、まさか二人揃ってきていたとは思いもしなかった。

 

「いますよ!ゼノさん、他にも絶対!円の精度が悪くなったんじゃないですかー!もう年なんですよー!シルバさんそう思いますよね!」

 

最初に声をかけてきたのはシルバ=ゾルディック。現当主であり、エミルの友人でもあった。次に、呆れながらでてきたのがゼノ=ゾルディック。前当主であり、シルバの父親だ。

 

「ほぉ...言うようになったじゃないか、前に殺されそうになった時には小便漏らして泣きながら命乞いをしてきたクセにのう」

「はぁ!?おい、てめえ爺ぃ!なに大法螺吹いてんだ、良いんだぜ今この場で死んでやってもよぉ!」

 

その発言により、ゼノの顔が少し強張るのを確認したエミルは笑みを深めた。

 

エミルの身体には、超小型かつ超廉価にして超威力を誇る時限爆弾、貧者の薔薇が埋め込まれている。

貧者の薔薇とは、爆発の際に生ずるキノコ雲の姿が薔薇に酷似していることからこの名が冠せられた。

今まででのべ250もの国でその10倍の爆炎を起こし、既に512万人もの命を奪っている。コストの低さと持ち運びの簡単さから独裁小国家やテロリストに好まれ、とある国での爆発事件では首都で11万人もの死者を出した。

 

この事件を機に新規生産を禁ずる国際条約まで作られたが、保有国の8割は廃棄に難色を示しているという実情を前に、使用禁止と廃棄まで踏み込む事が出来なかったのだからタチが悪い。

 

一撃で広大な兵器実験場を蒸発させ、岩盤をマグマに変えるほどの熱と爆風のエネルギーもさることながら、起爆時には膨大な毒をまき散らし、爆発を直接受けていなくても、その付近にいただけで毒を盛られ、被害者が別の生物と出会う度に毒が伝染していくという救いようのない大量破壊兵器である。

 

このヨークシンの街中で爆発させようモノなら、それはそれはかなりの数の人間が巻き込まれて死ぬだろう。

 

「親父もエミルも落ち着け。驚かせた事は謝罪しよう、今日は殺しに来たわけではない」

「へぇ、じゃあ何しに来たんだよ」

「客になりに来た。『薪はあるか』」

 

その言葉を聞いた瞬間、エミルはうんざりとしていた表情が一転、素晴らしいほどに美しい笑みを浮かべた。

 

「嗚呼....いらっしゃいませ、お客様。奥で話を致しましょう、お金は十二分にお持ちですか?」

 

突如として話口調が変わったことに驚くこともせず、シルバは控えていた執事が準備していたアタッシュケースを開いてエミルに見せる。

 

「えぇ、えぇ確かにお客様のようで...ご来店はお付き添いの皆様もご一緒で?」

「俺一人だ」

「承知しました。ではでは、改めましてようこそおいで下さいました。お一人様ご案内!」

 

エミルの声と共に、路地裏からエミルとシルバの姿が消えた。

 

シルバが目を開ければ、暗闇の中にポツンと明かりの付いた一軒の古ぼけた家存在した。その建物には暖簾と看板が上がっており、そのどちらにも『雑貨屋』と書かれていた。

シルバは特に反応を示すこともなく、古ぼけた引戸を引き中に入った。

店内は外観からは想像できないほどに雑貨で溢れ、ナイフや拳銃に始まり刀やライフル果てには斬馬刀まで存在している。勿論武器だけでなく、犬や猫などから始まり象やキリンにライオン更には人間。人間は勿論のこと他の動物たちの足や腕、内臓や脳に目や口もある。

 

一般的なもので言うならば、パンやペン。服に化粧用品まで取り揃えられている。見渡す限りモノで溢れかえっていたが、かろうじて床にはモノが置かれていないことだけはお店らしくもあった。

そして奥の方から声が聞こえた、店主の声だ。

 

「いらっしゃい、何をお求めかな?」

 

シルバは答えた。次のターゲットが厄介な相手だということ。それを殺すために何かいい得物を準備してほしいと。

 

「あー武器か、武器屋じゃダメだったのか?うちは雑貨屋であって武器屋じゃないぞ」

 

シルバは呆れたような表情をして答えた。既に武器屋は見に行ったこと。ただし目を引かれるモノはなかった、と。

 

「で、うちに来たわけね。さあ、お客さん。希望を聞こうか!どんな得物をお探しで?刃物?銃器?爆発物?店主としてのオススメは毒物一択だがな!」

 

テンションの上がった店主に対し、シルバ慣れた様子で答えた。依頼人の要望は派手な殺しだ、と。

 

「いいねぇいいねぇ!その依頼人もわかってるじゃないか、持って来ようじゃないか。大人しく待っているんだぞ、何も触れるな動くなよ」

 

店主は念を押すように、何度も動くなと告げていずれ声が聞こえなくなった。

言われずとも動かない、シルバがここに来るのは初めてではない。

初めて来たときは物珍しさに心が引かれ、売り物を手に取ったりもした。その時に声が聞こえたのだ、店主とは違い重く深い不協和音の様な声が。声は告げた『それは素晴らしいものだ、実に良いものだ。代金はお前の右手、右足の爪を貰おう』その声が聞こえた瞬間に、右手の手先に激しい痛みを感じた。見れば出血し、爪のみならず肉ごとえぐられたような傷があった。それは右足も同様だった。

 

この店の中では、客は声が出せない。しかし、店主との会話が成立する。

この店の中では、自由に買い物ができない。しかし、買い物は成立する。

この店の中では、手に取ったものは必ず購入しなければならない。

しかし、お金で購入することができない。

それがこの雑貨屋でのルールであり、客は勿論のこと店主すらもこのルールを守る必要がある。

 

「よぉ、実に良いものだ。実に素晴らしいものが見つかった。代金は1億jってとこだな、びた一文まけねぇぞ。準備はいいよな?」

 

シルバ迷う素振りなく頷いた。この店のものは店主の言うように、良い物しかない。外れ商品を買うことなどありえないのだから。

 

「良し良し、金は床に置いといてくれよ。得物はいつも通り、シルバの家に届けるさ。またのご来店を心からお待ちしております。ってね」

 

この言葉が聞こえれば、次の瞬間には元居た路地裏に戻っていた。戻ってみれば、執事の姿は無くゼノだけがその場で立って待っていた。

 

「待っていたのか、親父」

「あぁ、ワシもエミルに用があってな」

 

短い会話が親子であったあと、ゼノがエミルに向きなおる。

 

「そ、じゃあもう帰っていい?」

「ゴトー」

「はっ」

 

エミルが気にせず、無視して帰り支度をしているのを見たゼノが執事の名前を呼ぶ。名前を呼ばれた執事が、エミルの身体を拘束し耳元でエミルにしか聞こえない音量で囁いた。

 

「あんまり大旦那さまの手を煩わせんじゃねぇよ。殺さないにしても、手足を縛って自死を封じて痛い目を合わせてやってもいいんだぜ?」

「されてやってもいいけど、俺って結構貧弱だから躓いた拍子に死んじまうかもしれねぇよ?」

 

エミルの返しで、青筋が額に浮かぶゴトーだが対するエミルは特に抵抗もせずに拘束を甘んじて受け入れている。その様子のせいで浮かぶ青筋が増えて気がしているが、エミルは一切動じない。

 

「んで、爺さん。何の用件で?生憎とお客様を迎えた直後だから、今は準備中で誰も立ち入れないよ」

「別に店に用はないわい。純粋に孫たちとの顔合わせをしてもらう為に家で飯でもどうかの?」

「毒耐性がないのに毒物食わせようとするなんて、おじいちゃん本当に耄碌してるんじゃないの?もしくは、俺をよっぽど殺したいかのどっちかだな」

 

俺の返答を聞いた瞬間、拘束が強まった気がするけど気にしてても仕方がない。

 

「安心せい、さすがに客人の料理に毒を盛ったりせんわい」

「えぇ....まったく安心できないんですけど、それに俺の移動手段といえば歩き一択だぜ?ククルーマウンテンってパドキア共和国だろ、物理的に行けねぇよ。どうしても顔合わせしたいんだったら連れて来いよ。」

 

また拘束が強まった。そろそろ限界なんだが?

 

「あぁ、それもそうじゃったな。なら、1週間後お主が宿泊しておるホテルでの食事にしようかの。予定はしっかり開けておくんじゃぞ、逃げんようにうちの執事をつけておくからその間は自由に使ってよい。じゃあの、いくぞゴトー」

「は?待てよ、爺ぃ!!」

 

言うだけ言って、ゴトーを連れて帰っていくゼノに声をかけるも無視され立ち止まることなく去っていった。路地裏に残されたのは、エミルと状況の理解が追い付いていない女性の執事だけだった。

 

「はぁ、アンタ名前は?」

「は、はい!ミアンダと申します。ミアンダとお呼びください!」

 

ミアンダと名乗る女性は、女性というよりも少女のような体形(小柄だと自覚している俺より小さい)であり、執事服も着ているというより着られているといった印象を持たせる。

 

「そ、ミアンダの荷物は?見たとこ何も持っても持っていないようだけど」

「...どうしたらいいのでしょうか」

 

話を聞けば、研修を終えた直後でありゴトーについてくるように、としか命令を受けておらず荷物どころか通信機器及び自身の金すら用意していないらしい。

 

「ゴトー?俺だけど」

『よろしくお願いします』ブツッ

 

どうしたものかと電話してみても、この通り会話すら成立しない。

今にも泣きそうな顔をしているミアンダを放っておくわけにもいかないわけで、泣き出してしまう前に声をかける。

 

ゾルディック家の執事教育を受けているはずなのにこの程度か、何よりまだ纏が安定していない。一応精孔を開いているのは確認できるが、あくまでまだ見習いの見習い程度だろう。前見たアマネに比べればまだまだだ、この程度を見張りに置いておくとなると嘗められているのだろうか。

 

「ミランダ、泣きそうになるな。燕尾服を着たお前がいる状態だと目立って仕方がない、移動するぞ」

「目立っているのは、その雨合羽とヘンテコなお面のせいだと思いますよぉ」

 

 

撒くか、よし撒こう。

そう決めたら即行動に起こした、路地裏を出て人ごみに特攻したところで絶を行い気配を消した。

 

 

 

 




名前 エミル=フドウ
年齢 18
身長 158cm
血液型 O型
系統 具現化系

念能力 万物取引(オーダートレード)
相手を客だと判断できた場合、相手と自分を念空間に引きずり込む能力。
優待券を作り出す能力。

客だという判断基準は2つ
合言葉を知っていること
お金最低でも1億jを見せること

念空間は暗闇で古ぼけた一軒の店舗のみが存在しており、その空間に入れば買い物を済ませる、又は死ぬまで念空間から出ることはできない。空間内ではいかなる手段を用いても店主には攻撃することはできず、敵対したら最後客である資格を失う。

雑貨屋店内には、外観からは想像できないほどの量や大きさのモノが散在しており、店内に置かれているものを触った場合は強制で購入させられる。その際の対価は金ではなく客自身の肉体で払わなければならず、それでも足らない場合は最後にあった人間を順に対価を強制的に払わされることになる。

店主本人と取引を行う場合は、店主に希望の品を告げれば何でも購入できるが、準備していた金で足らない場合は強制的に客の資格を失い死に至る。

店内にはルールがあり、このルールを破った場合でも資格を失う。

1、この店の中では、客は声が出せない。しかし、店主との会話が成立する。
このルールは客自身声が出せないが、話そうと思った内容が店主に直接伝わるようになっており、いかなる場合でも客は声を出すことができない。

2、この店の中では、自由に買い物ができない。しかし、買い物は成立する。
このルールは客は店主に希望を告げて購入するしか金を使って買い物をできないが、己自身の肉体を対価に払えば好きに買い物をすることができる。

3、この店の中では、手に取ったものは必ず購入しなければならない。
しかし、お金で購入することができない。
このルールは店頭に並ぶ商品を手に取った場合にのみ適応される

上記のルールは客、店主限らず、店に存在する人間は必ず従わなければならない。
ルールを破ることはできず、ルールに触れた場合は死ぬ。

制約
自分で合言葉を設定できるが知ることは出来ない。
店内で客に見られてはならない。
公共交通機関や乗り物に乗ることができない。
取引の対価はお金もしくは肉体でしかならない。
価格以上に金銭を得ることも、それ以下での取引もすることができない。
この取引で得たお金は半年以内に使い切る必要がある。
お金の利用方法は自分に関係してなければならない。

万物生成(オーダーメイド)
客の希望の品を作り出す能力
如何なる物でも作り出すことができる。それに制限はないが、作り出すものによってオーラの消費が変わる。実在し見たことがあり使ったことがある場合はそれが如何なる物でも消費オーラは少ない。その逆の場合は消費するオーラが増えるが、そのモノの説明をしっかり聞いて、イメージが出来れば消費は少なくなる。

制約
作成するときにはその姿を見られてならない。
作成するとき場所から半径5m以内に近寄られてはならない。
作成したものは如何なる場合でも使用してはならない。

万物転送(オーダートランスミット)
作成したものを客の指定した場所に転送する能力。
雑貨屋で得た金を自身の財布に移す能力。
この能力の発動に関して、オーラは消費しないが対価が必要になる。

制約
公共移動手段を使用してはならない。。
乗り物に乗ってはならない。

制約を破った場合は死ぬ。
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