何でも売ります、買っていかれますか   作:夜ノ 朱

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第五話

 

ケータイを確認すれば、走り始めて3時間が経っている。ヒソカは余裕そうに汗一つ掻くことなく走っているが、ミアンダの額にはいくつもの汗が浮かんでいる。他の参加者は顔だけでなく、服すらも汗ばんだ参加者がいる為まだマシなのかも知れないか。

 

「ミランダ」

「な、なんですか、出来るなら話しかけないで貰えますか?ムカつくので」

 

コイツ...まあ、唯一走らずにヒソカに背中合わせで引っ付いているのでムカつくのも分からなくはないが、流石にヒソカの背中が汗で滲んできた場合は【伸縮自在の愛】の層を厚くして貰おう。歩く?ありえませんわー

 

「アレだけ鍛えてやったのに、汗掻くってどうなの?対してスピードも出てないのに、俺たちとの稽古よりこっちがキツイってわけ?甘えんな、走れ一番前のサトツさんの隣で走って来い」

「は!?走っても無いのに何でそんな事言えるんですか!?」

「うるせぇ、俺は今から寝るから。お前がちゃんとやってるかはヒソカが付いて監視すっからな、サボったらお前の稽古量倍にすっからな」

「自由か!」

「え...それってボクの仕事になるのかい?」

 

取り敢えず寝ることにした、全てはヒソカに任せれば問題ないだろう。しかし走ってないというが開始早々に、三男坊がスケボー使ってたじゃないか。全く...zzZ

 

 

 

「それで、ミアンダはどうしてここにいんだよ。親父達から命令されたわけ?」

 

不意に声が聞こえた、といってもさっきから揺れが酷くて起きてしまった。途中には急に叫ぶ声が聞こえたし、ハンター試験というのは変なものばかりだな。

 

「いえ、もしそうだとしても、面倒なので断っていたと思います。面倒なので」

 

ミアンダの声も聴こえた。ミアンダと誰かが話しているのか、あいつにも友人が出来たのかも知れない。相手の声からして三男坊と話しているようだ。何も知らないようで、シルバからは何も聞いていないのかもな。

 

 

「は?2回言う必要あんの?何かムカつくのだけど...」

「そう言われましても...それより、まだ先がありますのであまり余計な体力を使いたくないので話しかけないで欲しいのですが」

 

揺れと話声で目が完全に覚めたようで、三男坊とミアンダの声がよりはっきり聞こえてくる。ミアンダの声色からして、割と本気でウザがっているのがわかる。アイツ元主人の家族に対しても遠慮なしに、モノを言えているのには尊敬するよ。常識が欠如していんじゃないのか?...割とあり得る。

 

「はぁ!?ムカつくぅ、大体この程度で疲れるなら受けなきゃ良いだろ。俺としてはペースが遅すぎ、こんなんじゃ逆に疲れちゃうんだよな。結構ハンター試験も楽そうかもな、つまんねーの」

 

終いにゃアイツ無視しだしたぞ。三男坊は気にしていないのか、試験開始時に見た黒髪怒髪天の子の声が聞こえているからその子と話しているようで気にしていないようだ。

 

「なー、ヒソカ。ミアンダはちゃんとサトツの隣走ってる?」

「ん?起きたんだ...♧ちゃんと走っているよ、最初は怪訝そうに見ていた試験官も今では気にしてないようだね♡」

 

ヒソカと背中合わせで話していれば、後ろを走る受験者たちからすごく見られる。何なら視線が合う程度には、見られている。

 

「そ。てか、めっちゃこいつ等こっち見てんだけど。不愉快だからやめてくれない?もしくはヒソカ何とかしてよ」

「キミって本当に自由だよね♢どうして欲しいの?」

「俺を前方に向けて、背面走りするか後ろの人間全部処理してよ」

「...♧」

 

面倒になったのかヒソカは返事をせずに、背面走りをしてくれた。ヒソカがいきなり背面走りをしだしたことに驚いたのか、もしくは俺の存在に驚いたのか周囲の視線が集まったが、ミアンダの監視のために比較的に前方に位置していたため集まる視線は少ない。この程度なら我慢できそうだ。

 

「え、人間?生きてるの?」

「は?エミルじゃん。お前もここにいるのか」

「なんだー、いたら悪いか三男坊。ミアンダがいるんだから、俺がいてもおかしくないだろ?怒髪天君は始めましてだな、その髪は地毛なの?固めている訳?」

 

ヒソカの奇行で最初に怒髪天君、次に三男坊が気付き怒髪天君から話しかけてきた。三男坊は相変わらずだが、怒髪天君は純粋に心配してくれているようだった。

 

「怒髪天?俺はゴン!ゴン=フリークスって言うんだ。エミルさんでいいのかな?」

「おいゴン、エミルに敬称なんて使う必要ないぜ。コイツ自身、常識も経緯もないんだからな」

 

ゴン君もとい怒髪天君が礼儀正しく敬称を付けてくれたのに、三男坊の要らない発言で怒髪天君は困っている様子だった。

 

「変なことを言うな、三男坊。ゴン君か俺の名前はエミル=フドウ、好きに呼んでくれよ」

「うん!エミルさんはどうして受験してるの?」

「あぁ...なんでだろうな、友人に勝手に受験させられたってのが一番じゃないか?」

 

俺の答えに良く理解できなかったのか不思議そうな顔ををしているが、それに対して三男坊は興味なさげに走っており見向きもしない。可愛げないな

 

「ということは、余りハンターには興味ないの?」

「ないな。落ちるなら落ちるで良いし、何なら早く楽になりたい。風呂に入りたいし、飯食いてぇ。汗ばっか掻いて周りの人間がくせぇ」

「あははは...」

 

終いに苦笑いで怒髪天君に流されてしまったが、周囲の人間から怒気の乗った視線を向けられた。仕方がないので睨み返せば、視線をそらされてしまう。逸らすなら最初から睨むんじゃねぇよ、カスが。

 

「あ、おいヒソカ明かりが見えるぞー多分外だわ」

「もう背面走りは終わりでいいのかい?」

「あぁーもういいか、飽きたわ」

「...自由だね♢」

 

ミアンダの姿も確認できたし、怒髪天君との話すことが出来たのでヒソカの安全のために前後後退しておく。

 

「ここは...?」

 

長い通路、更には階段を上った先に出たのは湿原のど真ん中。受験者の一人がボツリと呟いたのを拾ったのは、ヒソカと背中合わせになっているエミルだった。

 

「マラソン開始場所からの経過時間、走っていた速度からしてヌメーレ湿原、通称“詐欺師の塒”だろう」

「知っているのか?」

「逆に知らないのか?試験開始場所を調べるなら、その近辺を調べてどんな試験内容になるのかとか推測するのは当たり前だろ。お前は本当にハンター志願者か?そんなだったらいつ死んでもおかしくないな、俺に近づいてくれるなよ、巻き込まれるのは論外だ」

「な!?自分で走ってすらねぇくせに、偉そうなこと言いやがって!あの時といい、調子に乗っていんじゃねぇぞ!」

 

あの時?よく顔をみれば、胸倉を掴んできた男だった。特に外傷も見られず、ここまで走って来たということはミアンダの奴、手加減しやがったな...

 

「走る必要がないからな、試験官もついて来いとしか言っていない。馬鹿正直に走っていたお前らの正気を疑うよ、あと今回は掴んでくるなよ。くせぇから」

 

実際にヒソカに運んでもらっているときもサトツから見られていたが、特に小言をもらったりはしていない。黙認されていることから、俺に不正はなく文句を言われる筋合いはないのだ。

男の顔には青筋が浮かんでいるが、俺の背後にいるヒソカといつの間にか隣に立っていたミアンダの存在で動けずにいるようだ。

 

「そろそろよろしいでしょうか。388番が言われたようにここは、ヌメーレ湿原。二次試験場へはここを通って行かねばなりません。この湿原にしかいない珍奇な動物たち、その多くが人間を欺き食料にしようとする狡猾で貪欲な生き物です。十分注意してついて来て下さい、騙されると死にますよ」

 

試験官の言葉で青筋を浮かべていた人間を含め、ほぼ全員が息をのみ黙り込んでいた。その瞬間にシャッターが音を立て、階段を這いつくばりながらも登っていた者や、座り込んでいた者たちを残し残酷にも閉まり切った。

 

「では、騙されることの無いよう注意深く、しっかりと私の後を付いて来て下さい」

 

誰もが無残に閉まり行くシャッターも見ている中、サトツが宣言し足を一歩踏み出したときにソレは現れた。

 

「ウソだ!!そいつはウソをついている!!」

「「「!?」」」

 

叫びの主はシャッターの裏から現れた一人の男で、全身に血を滲ませ生傷を作っていた。その男は見えにくいが、一匹の生き物を片手に引きずっている様だ。

 

「そいつはニセ者だガッ!?」

 

そしてその男が言い切る前に、【伸縮自在の愛】を解除させて男の顔に拳を振るった。

 

「「「...は?」」」

「くせぇって言ってるだろうがよ、さっきからよぉ...完全に化けるんだったら歯形も人間様によせて来いよなぁ。さっき試験官が言ってたよなぁヌメーレ湿原にしかいない生物たちってよぉ、そんなんが最初から入れ替わってるわけねぇよな。てめぇら二匹ともケモノ臭ぇんだよ」

 

他の受験者が驚いた直後に、エミルの行動により次は呆けていた。何があっているのか、何が真実なのかわからないままに戸惑っている間にも、エミルは苛立ちを隠すことなく男だったモノを殴り続けており、そこには既に血だまりが出来ており既に生命活動を終えているだろう。

 

引きずられていた生き物は、チラッと男が死んでいるのを確認し逃げようとしたのをヒソカの投擲したトランプにより、あっけなく命を散らした。

 

「私をニセ者扱いして受験者を混乱させ、何人か連れ去ろうとしたんでしょうな。今回は388番を含む数人のみ気付いていたようですが、何人かは騙されかけて私を疑ったんじゃありませんか?

こうした命がけの騙し合いが日夜行われているわけです。それでは参りましょうか、二次試験会場へ」

 

そう言い残し、騙されたことを誤魔化している受験者もいるなかサトツは再び歩きはじめた。

 

受験生308名 ヌメーレ湿原に突入。

 

その間俺はミアンダからタオルを受け取り、手を拭きタオルを返せば再びヒソカによって運ばれている。

 

「いい拳だったね♡クロロやイルミには直接戦闘は不得意だって聞いていたけど?」

「不得意だと言ったが出来ないとは誰にも言った覚えはないよ、実際ミアンダに体術を仕込んだのはクロロでなく俺なんだから」

「彼女の甘さは、エミルでも取り除けられなかったみたいだね♢」

 

ミアンダの持つ甘さに関しては、当然ヒソカにも知られているようだった。話の中心のミアンダは既にサトツの隣に居り、そういう命令はちゃんと遂行する努力はするのに殺しや対人戦闘になると、それすら見られない。

 

「なんか上手いこと出来ねぇかな、護衛になるとするならそういう場面も多くなる。その際に甘えなんて持っていたら弱点で済めばいいが、最悪致命傷になりうるからな」

「天空闘技場なんてどうだい?対人メインで、殺しも何でもありだよ♤ついでにエミルも挑戦したらいい、エミルならすぐにフロアマスターになれるだろうしファイトマネーも良い額になるよ♡」

 

天空闘技場の名前を聞き、エミルは思案する。実はエミルは既にフロアマスターになっており、フロアを占有している。しかし、それは本格的に発を作る前であり、発を作ってからは制約により自身のフロアに行くためのエレベーターに乗ることが出来ず、ここ数年は天空闘技場に近寄ることすら出来ていない。

 

「良い機会だし、ミアンダを送り込むのも良いかもな。ヒソカも選手登録しているんだろう?壊さない限り好きにして良いから、ちょっと揉んでやってよ」

「良いのかい?」

「ミアンダにはいい薬だろう、偶には知らない間に死地に入っていたってのも良い経験になるさ」

 

その言葉でヤる気が出たのか、ヒソカの纏っていたオーラに殺気が混じり始めていた。自身の知らない間に、死地に足を踏み込むことが強制とはいえ決まってしまったミアンダは悪寒を感じて身を震わすことになるのだが、離れた場所にいるエミルに知る由はなかった。

 

「おーい、ミアンダ!ちょっとおいでな」

「えー!嫌ですよ!折角ここ維持しているんですよー!」

「ご褒美をあげよう!」

 

ウソはついていない。ここまで頑張ったミアンダに、死ぬ危険性のない死地をプレゼントするだけだからだ。

この言葉がトリガーになり、ミアンダがやってきた瞬間に死神の試験官ごっこが始まった。

 

「ぎゃっ」

「ぐっ」

「ってぇ————!!」

 

次々とトランプを投擲していくピエロに、オーディエンスが次々と悲鳴を奏でていく。

 

「てめぇ!何をしやがる!」

「エミルさん!ご褒美ってこれですか!?」

 

この演目で舞台に上がってきたのは、ミアンダを含めて半裸のグラサンと金髪で二対の木剣を構えた青年を含めた受験者、約20数名。

 

「二次試験くらいまでは大人しくしてようかとも思ったけど、一次試験があまりにもたるいんでさ♢選考作業を手伝ってやろうと思ってね♤ボクが君達を判定してやるよ♡」

 

「「「......」」」

 

この言葉に誰もが言葉を失くし、呆けている。

しかし、バカに空気を読める訳が無かった。

 

「エミルさん!これがご褒美ですか!折角言われるがままここまで頑張ってきたのに、嘘をつくのが嫌いだという貴女が嘘をつくなんて見損ないましたよ!嘘つき!弱者!恥さらし!!」

「死ね」

「ひどい!!」

 

ミアンダのせいで緊張が緩んだのか、それとも気を取り戻すためか他の受験者がヒソカに対し反論を叫ぶ。

 

「判定?くくく、バカめ!この霧だぜ一度試験官と逸れたら最後、どこに向かったかわからない本隊を見つけ出すなんて不可能だ!」

 

いや、まだそう遠くはいってないだろうし、試験官の実力からしてオーラ量も多い、例え絶を使っていようとイルミのオーラを円で探せば十分追えるだろう。

このことを当然知らない受験者は、意気揚々と言葉をつづけた。

 

「つまり、お前もオレ達もとり残された不合格者なんだよ!!」

 

意気揚々と情けない発言をするなよ...俺の気持ちを察したのか、単純に心外だと思ったのかヒソカの投擲したトランプにより受験者は命を散らした。

 

「冥土の土産に覚えておきな♧奇術師に不可能はないの♡」

 

この言葉で僅かに残っていたプライドを傷付けられたのか、他の受験者達が己の武器を構えてヒソカを囲んでいく。

見た限り、念の存在を知らない素人集団。俺でだって数秒あれば皆殺しにできる、ミアンダも甘えを捨てれば可能だろうが期待薄だな。

 

「そうだなぁ~...君たちまとめてこれ一枚で十分かな♢」

 

そういい、一枚のトランプをこれ見よがしに見せつける。当然ヒソカを囲んでいた受験者達は激昂、我先にとヒソカに向かっていき命を散らしていった。ある者は頸動脈を一閃、またある者は目を次は顔を切り裂かれていく。囲いが消滅するのには時間は当然、数分も掛からなかった。

 

「くっくっく...あーはっはっはァ————ア♡」

 

高笑いをあげながら、次々と切り裂いていくヒソカを止められる者は当然いない。そしてとうとう残りはミアンダ、半裸グラサン、金髪青年の三人のみ。

 

「君達全員ふごーかく♡」

 

地面に倒れ伏し、物言わぬ動くことの出来ぬ者たちを指してそう告げるヒソカ。そして残りの三人を指差して、笑顔で告げた。

 

「残りは君達、三人だけ♡」

 

半裸グラサンは傷を負った腕を抑え、金髪青年はそれを背に二対の木剣を構えている。ミアンダは彼等から距離を取り、明らかに俺に攻撃しようする素振りを見せている。バカなの?

ヒソカはミアンダから視線を外し、先に二人組をターゲットにしているようでそちらへとゆっくり近づいている。あと数歩というとこでミアンダが吠えた。

 

「今だ!行けぇ!!」

 

吠えると同時に、三者三様の動きを見せた。半裸グラサンはヒソカと逆の方向に走り、金髪青年は持っていた木剣をヒソカに目掛けて投げつけ視界を封じたあと、半裸グラサンとは違う方向へと走った。吠えたミアンダは硬で覆った拳で、ヒソカに背後から奇襲を掛けた。

 

「くっ...」

「バカなの?奇襲要因が合図を送ったら、それは奇襲じゃないでしょ」

 

拳は片手で簡単にヒソカに止められ、投げられた木剣を空いている手で受け止め、そのままがら空きだったミアンダの胴へと叩き付けられた。

 

「う~ん♡エミルの言う通り、格上相手に硬を使うのは自殺と一緒♢ボクが木剣に周を纏わせていたら、その時点で胴体から真っ二つだったよ♧」

 

ヒソカの発言を受けるミアンダは、周を纏まさずとも男の膂力で振るわれた木剣で打たれたのだから蹲って唸っている。

 

「それでも好判断だ♡ご褒美に10秒待ってやるよ♢」

 

呑気に10秒数えだしたヒソカをよそに、ヒソカでもご褒美はくれるのにとぼやいたミアンダを俺を許してあげようと思った。ご褒美は稽古時に重りを付けてあげよう。

 

 





やっと原作2巻に突入できました・・・

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