とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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投稿が遅くなり申し訳ありません。

なるべくテンポ上げて行きたいです。


第九話 告白

ー事件現場ー

 

機動六課に協力を依頼された事件、とりあえずアキラ達の任務はガジェットの殲滅とレリックの捜索だった。そして、事件現場の森に着いたアキラとギンガ。

 

「ギンガさん、一回二手に別れよう。現状だと固まると狙われる可能性もあるから」

 

「了解」

 

アキラは自分の懐からアキラ本人が使ってる通信機と同型の通信機をギンガに渡した。

 

「俺との通信ならこっちの方が早く繋がる。この黄色いボタンを押せば緊急信号が出る。本当にピンチで通信する暇もない状況ならこれを押してくれ。なにがなんでも駆けつけるからよ」

 

「ありがとう」

 

そしてアキラはギンガと一旦別れ、森の中へと侵入して行く。森の中は足場が悪く、戦闘には向いてない。ガジェットならともかく例の召喚獣や融合機と遭遇したらまずい。だが、戦闘には向いてなくとも逃げるだけならなんとかなる。

 

だからアキラはあえて二手に別れたのだ。今ギンガは無事だろうか、そんなことを考えながらアキラは更に森の深くへと向かった。

 

森の中は静かだったが、しばらく進んでいると何かもの音がする。アキラは警戒しながら音がした方に歩いて行く。そしてほんの少し開けた場所に出た。そこには薄汚れたマントのような物で全身を隠し、木に寄りかかった少女がいた。ルーテシアだ。

 

(女の子?)

 

(あの時の騎士…っ!)

 

アキラは女の子に近づき、しゃがんで目線を合わす。ルーテシアはフードを深く被り、顔を隠しながらも攻撃のタイミングを伺った。

 

「大丈夫か?何でこんなとこにいる」

 

ルーテシアの返答は少し経ってからだった。その返答もとても小さな声。アキラが気づいていないことに賭けての返答だからだ。

 

「……迷子になって…足も怪我しちゃって…」

 

「足?ちょっと見させてもらうぞ?」

 

アキラは少女の怪我をしているという足を見た。確かに足に傷がある。

 

「親は?」

 

「わからない…多分森の中のどこか」

 

「……しょうがねぇな」

 

アキラはポケットからハンカチを取り出し、少女の足の傷の場所に巻いた。ルーテシアはアキラのこの行為を見てアキラが自分の正体に気づいてないことを確信した。

 

「とりあえず…下にいる捜査本部に保護してもらうか……歩けるか?」

 

ルーテシアは首を横に振る。歩けないのは事実だ。

 

「ほら、おぶってやっから。安心しろ、お前の親も見つけてやるから」

 

あえて抵抗はせず、ルーテシアはそのまま背負われる。

 

正直抵抗するのは無意味だからだ。今この場で抵抗すれば正体がばれ、自分の身を危険に晒すことになる。ならばこの男を利用してゼスト達と合流しようという魂胆だ。ゼスト達と合流できれば、後に戦闘になってもガリューもアギトもゼストもいる。

 

倒せずとも逃げることはできると踏んだのだ。

 

「名前は?」

 

アキラは少女を背負いながら聞く。ルーテシアにとってはマズい質問だが、必死で名前を考える。

 

「…………ルー」

 

「ルーか。覚えやすいな」

 

ルーテシアは不思議とまるでお父さんに背負われているような安心感を持っていた。そして、しばらく森を歩いているとルーテシアにアギトからの念話が来る。

 

(ルールー!聞こえる!?ルールー!)

 

(あ、アギト?)

 

(大丈夫!?今こっちからはルールーは見えてるけど…)

 

(この前の騎士だけど…正体に気づいてないみたい。でもアギトみたら気づいちゃうかも)

 

しばらく二人の念話の対談が続き、一つの作戦が完成する。単純だが、ゼストを保護者、もしくは親としてアキラの元に行かせ、そのまま安全にルーテシアを保護すると言った方法だ。

 

作戦は早速実行される。

 

「ふぅ…あと少しで外だ…」

 

「ちょっと失礼」

 

「あん?」

 

少女の様に、薄汚れたマントのようなものを羽織ってる男がアキラの前に現れた。その身なりからアキラは男を警戒する。

 

「………何者だ」

 

「お父さん…!」

 

ルーテシアがアキラの背中から叫んだ。当然作戦の内の猿芝居。

 

「お父さん……この子の保護者か?」

 

「ああ。ルー!」

 

「お父さん!」

 

アキラはルーテシアを父親と名乗る人物に渡す。ゼストはお姫様だっこでルーテシアを受け取り、アキラに一礼した。

 

「あ、これやるよ」

 

アキラは制服のポケットから飴を一個取り出し、ルーテシアに渡して頭を撫でる。

 

「もう迷子になんじゃねぇぞ」

 

「うん…ありがとう」

 

ゼストはもう一度アキラに一礼してから去っていった。

 

その後、召喚師の行方を探すも見つからず、残りのガジェットをすべて殲滅して作戦は終了となる。結果は空のレリックのケースなどが見つかっただけだった。そして更にその後もギンガはアタックするチャンスを逃し、とうとう時間が来てしまう。

 

19時。アキラが告白される時間が。

 

 

ー108隊舎 屋上ー

 

 

アキラは一応、ギンガについて来るかと聞いたがギンガは首を横に振った。すぐに戻ると伝えたアキラは屋上に走る。

 

一人になったギンガは、アキラの姿が見えなくなってからこっそり屋上に向かった。正直帰ろうかとも思ったが、不安と希望を持ちながら屋上にゆっくり歩を進める。もうほとんど人のいない隊舎に響く自分の足音、それさえも自分の心を紛らわす逃げ道になった。ゆっくり歩いたつもりが、いつのまにか屋上に着いている。ギンガはこっそりドアを開け、ドアの隙間から屋上を覗いた。

 

そこから見えたのは、アキラの後ろ姿と、アキラの前に立っている一人の少女。少し管理局の制服がなぜかサイズがあっていない。しかし、青い髪、中々いい身体付き、トパーズのような美しい瞳…普通に美人だ。

 

「来てくれて……ありがとうございます」

 

「別に?で、話ってなんだ?」

 

アキラはまだ気づいてないのか、普通に尋ねる。

 

「私の名前はアーシア」

 

(アーシア?)

 

ギンガはそんな名前は聞いたことがなかった。隊の人間の名前は結構知ってるつもりだったが、彼女の名前は聞いたことがない。アーシアは名乗ってから少しして話を始めた。

 

「あの…橘アキラ陸曹」

 

「なんだ」

 

「急な話で申し訳ありませんが…私と………付き合ってくれませんか?」

 

「ああ。構わないぜ?」

 

なんの躊躇も、迷いもない返答。

 

ギンガはそれを聞いた瞬間に、目に浮かんだ涙を抑えながら屋上から離れ、階段を駆け下りた。人が来なさそうな適当な部屋を見つけ、そこに飛び込んで部屋の隅でうずくまる。お腹の中で何かが動いているような気持ちの悪い感触、裏切られたと言う事実に、押し寄せる悲しみ。

 

ギンガはそれらの感情を抑えながら、涙を流した。

 

「う、うぅ……うっうわぁぁ…」

 

 

その頃、屋上。

 

「え…本当にいいんですか!?」

 

「なにに付き合えばいいんだ?仕事か?」

 

「え?」

 

アキラの脳内↓

 

付き合う=恋愛←× 付き合う=用事に付き合う←○

 

 

そのことに気づいたアーシアは、大きくため息を着く。それと同時に、屋上にメグが現れた。

 

「いやぁ!アキラ陸曹悪いね!ここらにカップルが多くて入り辛い店があってさぁ!こいつそこに行きたがってて…悪いね!今の話忘れて!」

 

メグはアーシアを連れて走り去ってしまった。

 

「何だったんだ…あれ。まぁいいか」

 

アキラはさっきまでギンガと一緒にいた場所に戻る。しかし、そこにギンガの姿はなかった。

 

「ギンガ?」

 

アキラは少し焦る。トイレか、それとも誰かに呼ばれたか、状況もわからないまま少し(1分)待ったが、ギンガがくる気配がないので自分で動き始めた。

 

隊舎内を慌てて探しまくるが、どれだけ探してもギンガは見つからない。アキラの不安な気持ちは募る一方。しばらく走っていると、アキラの前にメグが現れた。

 

「お前はさっきのギンガの同僚のええと……まぁいいや!ギンガ見なかったか!?」

 

メグはアキラの肩を掴んで言う。

 

「落ち着いて!深呼吸三回!」

 

いつもふわふわしているメグとは一転、鋭い目つきでアキラを見ながら叫んだ。

 

「お…おう」

 

「ギンガ探してるんでしょ?あんた、なんのためにあの変なポッド使ってる訳?」

 

「ポッド……はっ!」

 

アキラはポッドのギンガを見張らせてる機体の撮影した映像を通信機に映す。そこには薄暗い部屋でうずくまるギンガの姿があった。

 

「この景色…あの部屋か!」

 

場所を確認したアキラは走って行った。一人残されたメグは小さくため息を着く。

 

「全く世話が焼けるねぇ。彼氏も、彼女も……」

 

「でも今回でいい感じになりそうですよ?メグ様」

 

そう言ったのは、さっきのアーシアだった。しかしさっきの管理局制服ではなくメイド服だ。

 

「やーごめんね?アーシア」

 

「いえ、使い魔としてやれることがあれば何なりと」

 

そう、本人も言ったとおりアーシアはメグの使い魔なのだ。管理局制服が少しぶかぶかだったのは、メグの制服をアーシアが借りていたのだ。同じ身長だが、メグより少しアーシアの方が色々と小さいのだ。

 

 

ー印刷室ー

 

 

ギンガは泣くのも疲れ、床に座り込んで呆然としていた。何となく視界に入ったハサミ、それを握りながら。しばらくは何もせず、じっとしているだけだったが、気持ちはどんどん暗くなる。

 

過去に自分が付けた手首の傷跡。それにハサミをなぞらせた。

 

「どうせ…戦闘機人だもんね…生きる価値なんか…」

 

ギンガはハサミを振り上げ、手首に刺そうとする、がその刹那。

 

「やめろ!ギンガさん!」

 

それをアキラが止めた。

 

「はな、放して!」

 

「やめろ!!」

 

アキラはギンガからハサミを取り上げようとしたが、中々うまくいかない。そして、もみ合ってる最中にアキラの腕にハサミが刺さってしまった。

 

「ぐうぅ!」

 

「あ…アキラ君!」

 

混乱し、取り乱してるギンガは慌ててハサミを抜こうとするがアキラはそれを阻止する。

 

「アキラ君……抜かなきゃ……あ、それより病院に……」

 

「安心しろ。この程度で死ぬかよ」

 

アキラはポケットからハンカチを取り出し、ハサミを抜いた手に巻いた。そこで一息つく。

 

「明日にゃ治る。それよりどうしたんだ?ギンガさん。こんなとこで……こんなこと…」

 

アキラが尋ねると、ギンガはアキラの顔から目を反らして言う。

 

「アキラ君こそ…何で私のところに来たの……?アーシアさんのところにいかなくていいの?」

 

「…聞いてたのか」

 

ギンガは小さく頷く。

 

「でもアキラ君がアーシアさんと付き合うって…聞いた時に…気づいたらここにいたんだけど」

 

「ああ、なんか知らんけど俺の代わりに…あの…ギンガさんの同僚のメグ…だったか。あいつが代わりに付き合ってやるそうだ」

 

その言葉にギンガは困惑した。女同士なんてそんなことはメグに限ってあり得ない。あれだけの面食いで彼氏を作りたがり、何よりギンガの恋を応援するのだから彼女自身が…と言うことはあり得ないだろう、ギンガはそう思った。

 

そして、そんなことを考えてるうちにアキラの勘違いと今回の騒ぎの犯人がギンガには分かった。

 

「アキラ君…」

 

「うん?」

 

ギンガは一応、アキラがアーシアと付き合ってないことは分かったが、ギンガはまだ不安だった。だから一応アキラに聞く。

 

「これからも、私のそばにいてくれる?」

 

「…ギンガさん。目を瞑ってくれ」

 

ギンガは言われた通り目を瞑る。アキラはそっとギンガの前髪を退かし、そして…そっと額にキスをした。ギンガの額に触れる柔らかい感触。ギンガはそれで何をされたか分かり、顔を真っ赤にする。

 

「ア………アァァァァァァアキラ君何を…」

 

「おまじない…だ。昔セシルのお父さんがセシルにしてくれたらしい。これからもずっと一緒に、元気にいよう。そういうおまじないらしい。だから、例えこの先なにがあっても俺はギンガさんから離れねぇよ」

 

ギンガはアキラの手を握り、ぎゅっと両手で包み込む。そして顔をぐっと近づけた。

 

「アキラ君……お願いがあるんだけど…」

 

「なんだ?」

 

「これからは…ギンガって呼んで?」

 

急なお願いだったが、アキラは別に気にせず頷いた。

 

「別に構わねぇが?」

 

「うん、ありがとう」

 

こうして二人の関係を騒がせた事件は幕を閉じた。そして…そんな会話を外で聞いていた、ゲンヤ。

 

「孫の顔が見れんのも…近そうだなぁ…」

 

 

ー翌日ー

 

 

「メ〜グ〜?」

 

「ん?げっ!」

 

メグが振り返った先には、笑顔だが明らかに堪忍袋の緒が切れ、怒りまくってるギンガがいた。

 

「あ、アハハ、どうしたの?ギンガ」

 

「ん〜?ちょっと「お話し」したいんだけどいいかな?」

 

「アハハ………」

 

その後、メグは「あんなに怒ってるギンガ・ナカジマはもう誰も見れないだろう」と語ったとか。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ー現場調査ー

 

翌日、アキラとギンガは最初の六課との共同捜査した場所での調査をしていた。ギンガはこの間にもアキラに少しずつアプローチしている。とは言え全部メグの入れ知恵だから、少々卑猥なのが混じってるが。

 

しかしギンガは一つ気になっている。昨日のアキラの傷が、綺麗になくなっているのだ。しばらく聞けなかったがギンガは思い切って聞こうとした瞬間、アキラの通信機にどこからか通信が来た。

 

「ん?」

 

通信に出る。

 

[あ、アキラ君?]

 

画面に映ったのはなのは。なのはがアキラに直接連絡をいれてくるなんて滅多にないことだ。

 

「高町空尉か。なんのようだ?」

 

[えっとね。ちょっとお願いがあってね]

 

 

続く


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