とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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アフターストーリー終了です。


第三十三話 信条

アキラが紫皇の鎧を起動させ、ブラスター4起動状態のなのはと最後の勝負となった。先に仕掛けたのはなのはだった。

 

なのはの大型射撃がアキラを襲う。アキラは鎧の一部をバラしてそれを自身の前に展開させて盾を精製した。その盾はなのはの魔力1ミリたりともアキラに届かせることなく、完全に防ぎ切った。

 

「!」

 

「おぉぉぉぉぉ!!!」

 

アキラは一気になのはに向かって走り出した。そして結晶を展開し、それを足場にしてなのはに近付いていく。

 

(飛行魔法を使わない!?)

 

「万閃必壊、乱咲!」

 

アキラが結晶が砕ける勢いで足場を蹴り、瞬間でなのはの横を通り過ぎた。その刹那でアキラはなのはに峰打ちを数十発当てていた。さすがに重たい峰打ちを同時に何発も食らえば堪える。アキラも本気の攻撃だ。なのはの左腕と肋骨が一本折れた。

 

「さっきは決まらなかったが今度は受けてもらうぜ」

 

上をとったアキラは自身の真上に結晶から足場を精製し、身体を翻して足場に足をつける。刀を両手でもって構え、足場を強く蹴り飛ばしてなのはに向かって真っ逆さまに突撃した。

 

「一閃必倒!竜閃禍!!」

 

破壊力と切断力、二つが入り混じったアキラが持てる技の中で恐らく最も強力であろう技がなのはに直撃した。

 

利き腕を折られたなのはは右腕で攻撃を防ごうとしたがとっさに張ったシールドなど簡単に引き裂き、なのは浮遊狐島を貫通して地面に落ちた。

 

アキラも技を放ってからそのまま浮遊魔法も使わずに地面に降り立った。

 

「はぁ、はぁ……」

 

なのはが墜ちた場所には浮遊小島の瓦礫が大量に振り注ぎ、なのはの生存が心配されるレベルだった。だが、次の瞬間瓦礫が全て吹っ飛んだ。そしてその下からボロボロのなのはが出てくる。

 

「は、大したモンだ。アレ、俺の放てる技の中でも最大級の技だぜ?」

 

「ううん、かなり効いたよ。バリアジャケットもボロボロ。防御力には自信あったんだけどな」

 

二人とも涼しい顔で会話をしているが、もうそろそろ限界だった。アキラはなのはの全力を結構食らっているしこの鎧の維持にもかなり負担がかかっている。なのはもなのはでアキラの予想以上の攻撃力に圧倒されていた。

 

「そろそろ終わりにしてぇな」

 

「そうだね」

 

「でも負けねぇ」

 

「私もそれは同じ」

 

「…」

 

「…」

 

なのはがレイジングハートを構え、砲撃した。近くに散らした魔力球とブラスタービットも射撃する。アキラは結晶の盾でメインの砲撃を防ぎ、他の射撃は回避した。

 

そして盾後ろから横に出てなのはに向かって一気に走り出した。

 

なのはは砲撃を中止し、向かってくるアキラに向けて魔力弾を放ちつつ全身を防御フィールドで固める。アキラは弾丸を完全に躱し、斬撃を飛ばして防御フィールドを消そうとした。しかし、背後を取ったブラスタービットが砲撃を放った。

 

アキラはそれに気づいて結晶の盾を背後に展開した。しかし、右、そして左からもブラスタービットがアキラに砲撃する。それもなんとか盾を出現させて防ぐ。

 

アキラの盾は通常の魔力の盾と違い、自身で押さえる必要がない。だが展開の際に僅かな隙はできる。その隙を狙われ、アキラはバインドで縛られた。

 

「ぐっ……」

 

(ここ!)

 

自由を奪い、その隙になのはは最後のブラスタービットをアキラの上に、レイジングハートでッ正面からアキラを狙う。

 

(くっ!俺が結晶で出せる盾は最大で4つ!まだビットが砲撃を続けてるせいで他を消滅もさせらんねぇ!)

 

「エクセリオン!!バスタァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「あぁぁぁぁぁ!」

 

上からの砲撃を何とか新たに精製した盾で防ぎ、そのまま盾を上にも伸ばして防ごうとしたが魔力が持たず、スピードが出なかったため間に合わなかった。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

(全身を魔力ダメージで抉られる。今は鎧でダメージが軽減されているが時期に魔力も尽きて鎧が消え、俺は魔力ダメージで敗北するだろう………負ける、負ける。負けるってことは…………死ぬ。死ぬのと一緒だ。駄目だ。今はまだ死ねない…俺の為に力を尽くしてくれた連中の為に…何より…………アリスの…ギンガの為に!)

 

「俺はギンガとの明日を………守りたいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

(その邪魔をするものは!全部!)

 

アキラの想いに共鳴した鎧が輝き、結晶が出現した。その結晶はアキラの足元から戦闘場のフィールドの中に広範囲にわたって包み込む。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、」

 

「………!」

 

アキラはその場に跪く。辺りを見ると結晶が地面を覆い、更に地面から枝状に伸びた結晶がブラスタービットを、そしてなのはを捕縛していた。それだけではない、なのはのバリアジャケットは強制的に解除されていた。

 

「これは…」

 

(う、動けない……)

 

アキラはふらふらと立ち上がり、なのはに向かって歩いた。

 

(もう身体から生み出せる魔力がねぇ……だが、構わない)

 

アキラは結晶の鎧を解除して刀の状態の紫皇に戻し、その切先をなのはに向けた。

 

「降伏しろ。勝負はついただろ」

 

「……うん…」

 

なのはの戦闘終了の意思を見せると、結晶は砕け、全て光となって消滅した。

 

「………ああ、よかっ………た…」

 

勝負がついた瞬間、アキラはそのまま真後ろにぶっ倒れた。魔力はすべて使い果たし、肉体疲労も精神的疲労も限界だったのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「う……」

 

アキラは何か薄明るい空間で目を覚ました。まるで宇宙の様な空間。身体がふわふわと空間を漂っている。いや、正しくは明るい空間から暗い空間に少しずつ落ちていく感じだ。

 

「おめでとう」

 

「!」

 

目の前にリュウセイが現れた。

 

「何とか生き残ったな。これからもギンガを護るために生きろ。そして戦え」

 

「………お前。本当になんなんだ?」

 

「何度も言っているだろう。俺は世界の管理人で、お前とギンガが最高の未来を得ればそれでいい。今回は祝福と………警告、それからまぁちょっとした救済だ」

 

そういってリュウセイは暗い空間へ落ちていくアキラの腕を掴み、光の方へ投げ飛ばした。

 

「うおぁ!」

 

「間もなくお前に災難が降りかかる……どうなるかはお前次第だ。気を付けろよ」

 

「ま、待て!それは一体どういう………っ!」

 

 

手を伸ばし、去っていこうとするリュウセイを掴もうとして目を覚ました。視線の先には見知らぬ天井。

 

「ここは…」

 

アキラはゆっくりと身体を起こす。どうやらここは病室で自分はベッドで寝かされていることを理解する。

 

体中が痛い。そしてさっきの試合が思い出される。

 

「俺は…」

 

「アキラ君?」

 

入り口付近から声がした。視線を向けるとそこには花の入った花瓶を持ったギンガが驚いた表情でこちらを見ていた。

 

「…ギンガ?」

 

「……」

 

ギンガはほぼ微動だにしないで持っていた花瓶を落とした。花瓶は床に落ちると同時に砕けた。ギンガは瞳に涙を溜めて声を押し殺しながら両手を口元に当てる。

 

「…っ!……っ!」

 

「ギンガ?どうした?」

 

「アキラ君!」

 

ギンガは涙を瞳一杯に溜めながらアキラに抱き着いた。

 

「!!」

 

「………良かった、良かった…!」

 

「どうした…?」

 

ギンガはしばらくアキラに抱き着いて離れようとしなかった。アキラは一体どうしたものかと思ったが、後から病室にきたなのはに話を聞かされた。どうやらアキラは死にかけていたらしい。

 

アキラはあくまでも人口魔導師だ。魔力を消費しすぎることは今まであったが、本当に空になる直前まで使いすぎるとアキラは肉体の維持が難しくなる。アキラが最後に発動した戦闘場の地面を包み込むほど発生させた結晶。それはアキラが本来自身の身体で制御して残しておくべき魔力まで使って発生させたのだ。

 

小此木がその場で協力してくれた魔導師たちから魔力を受け取り、アキラに流したことで何とか命拾いしたらしい。

 

「まぁそういうわけだから。アキラ君もあんまりギンガを悲しませちゃだめだよ?」

 

「……すまねぇ」

 

「でも、無事で戻ってきてくれてよかった。アリスも喜んでる」

 

そういってギンガはアリスをアキラに渡した。アキラはアリスを抱えてあやす。

 

「そうだな………ただいま。アリス」

 

「だうぁ」

 

ようやく日常が戻ったような空間に小此木がやってきた。

 

「やぁアキラ陸尉。さっきは危篤だったがもう大丈夫そうだね」

 

「ああ。おかげさまでな。お前が協力してくれたんだって?」

 

「まぁそうなんだが…君の身体に馴染むように調整したとはいえ、妙に馴染むのが早かった。なにか心当たりはあるかい?」

 

「心当たり…」

 

その時、アキラは夢に現れたリュウセイのことを思い出した。

 

「何度も言っているだろう。俺は世界の管理人で、お前とギンガが最高の未来を得ればそれでいい。今回は祝福と………警告、それからまぁちょっとした救済だ」

 

(リュウセイはそういってた………そうか、アイツが…)

 

「心当たりはねぇ。だが、もしかしたら、神の気まぐれかもな」

 

そう言ったアキラの表情は、どこか穏やかだった。リュウセイの介入の理由は分からない。だが、おかげでアキラは生き永らえた。今はそれを喜んだのだ。

 

「そうか…………最高評議会からの結論を伝えに来た。アキラ・ナカジマ二等陸尉。君は充分な戦力であることを示した。よって君は「ファントム」に所属することを条件に陸士108部隊戦闘部隊隊長として管理局に努めることだそうだ」

 

「了解だ。サンキュウな。小此木」

 

「ああ」

 

 

 

-数日後-

 

 

 

アキラは退院し、自身の家に戻る日が来た。車で送られ、アキラは自宅の前までやってきた。

 

車を降り、玄関の扉を開ける。しかし、玄関を開けた先は暗かった。いや、人の気配がないという感じだ。玄関を開けた瞬間歓迎されると思っていたで少し驚く。

 

「…?。あ、あれ?ギンガー?」

 

家の中に入り、歩を進める。

 

「ノーリ?セッテ?」

 

そして、居間の扉のドアノブに手を掛け、そのまま開けた。

 

その瞬間。

 

「「「「おかえりー!!!!」」」」

 

クラッカーの音と共に大勢の声が部屋に響く。部屋の中にはギンガ、ノーリ、セッテは当然ながら、ゲンヤ、ナンバーズ、メグ、なのは、フェイト等々主に機動六課の知り合いの面々がアキラの生還を祝って暮れに来たのだ。

 

「アキラさん!」

 

状況を飲み込めずポカンとしているアキラにヴィヴィオが花束を持ってきた。

 

「ヴィヴィオ……久しぶりだな」

 

「退院おめでとうございます!それから、ママを助けてくれてありがとうございます!!」

 

そう言ってアキラに花束を渡す。アキラはやや困惑しながらも花束を受け取る。

 

「助けた…っけか?俺?」

 

「忘れたの?トーレと戦っているときに助けてくれたじゃない?」

 

「助けたっていうか、あんたらの戦いに勝手に入ってっただけだが…」

 

「まぁまぁ、ミッドを救った英雄として、ちゃんと生きて戻ってきた記念に…ね?」

 

「…そうかい」

 

アキラは少し笑って花束を受け取る。誰かに感謝されること。こんなことはいつぶりだろうかと思いながら。もちろん感謝されるのはそこまで久しぶりじゃない。だが、存在する事自体に感謝されたのはきっと初めてだった。

 

そうなったのは、そう思われるくらいに人とのつながりを作ってくれたのは、きっとギンガのおかげだ。

 

そう思うと、アキラはなんだか不思議な気分になりギンガに近付く。

 

「アキラ君?」

 

「………ありがとう」

 

それだけ笑顔で伝え、ギンガにキスをした。大衆の前でだ。ソフトキスではない。舌を思いきり絡ませに行くディープキスだ。

 

「!!」

 

「なんや、ええ感じやん」

 

「お熱いわね~」

 

ギンガも恥じらいはあったが拒むことはできなかった。3ヶ月ぶりの最愛の夫からのキス。恥じらいよりもうれしさが勝ったのだ。

 

「ぷぁ…」

 

「ありがとう…ギンガ。愛してるよ。これまでも、これからも」

 

「………うん…」

 

せっかくごちそうまで用意したが、ここは二人きりの方が良かったかという雰囲気になっているとき、メグが間に入った。

 

「おら、二人きりの世界に入ってんじゃないわよ。さっさと始めましょ。私もうお腹ペコペコ」

 

「あ、ああスマン…」

 

「ギンガだけじゃないでしょ。あんたが感謝すべきなのは。もっと周り見なさいっての」

 

「………そうだったな」

 

ここまでアキラがこれたのも、ギンガを助けられたのも、全部、ここにいる仲間のおかげだ。

 

 

 

 

続く


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