とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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Force編の展開がうまくまとまらないので今回から新章を開始します。Forceは定期的に更新出来たらなと思ってはいます。ストーリーはForceの始まる直前です


異次元編
EX第1話 新たな旅


「新婚旅行だと?」

 

「はい」

 

ある日の昼下がり、アキラの家に遊びに来たウーノからの提案だった。結婚してからはアリス出産までこれと言って何もできず、生まれてからもすぐに黙示録事件が発生し、ゆっくりする時間がまるでなかった。去年から今年にかけてもノーリ達が巻き込まれたダズマ出現の事件があった。育休中であるはずのアキラたちは多忙を極めたということで、ゲンヤからの旅行のプレゼントだということらしい。

 

「アリスちゃんとセッテ、ノーリは私たちが預かるので………ノーリさんは、アインハルトさんかリンネさんの御宅にお泊りしますか?」

 

ウーノがいたずらな笑みでノーリに提案する。するとノーリは飲んでいた水を噴き出した。

 

「げほっごほっ!ふざ…ふざけるな!どっちかって言うと保護しろ!俺を!」

 

ノーリは必死にウーノの提案を拒否した。

 

「というか別にセッテもノーリも家事も炊事もできるし、預からせるのはアリスだけでいいんじゃないか?」

 

「確かに………そうですね。別にそちらに行かなくても私たちは別に」

 

「アキラさんにギンガさん、それにノーヴェさんも出て行ってしまって………ゲンヤさんがさみしがっているんですよ。口には出しませんが、なんとなく態度でわかります。なので、来ていただけると…」

 

ウーノは苦笑いで言った。

 

「そうだな……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうぜ」

 

「私もそうしましょうか」

 

ウーノの話を聞き、セッテたちはアキラたちの旅行中はゲンヤたちのナカジマ家に身を置くことにした。アリスはやはりアキラたちが連れて行こうという話をしたが、旅行中くらいゆっくり休むべきだといわれ、結局預けることとした。

 

そして、出発の朝。

 

「おはようございます、ノーリさん」

 

「…………」

 

アキラたちを見送ろうとノーリが扉を開けた瞬間、玄関には満面の笑顔のアインハルトが立っていた。

 

「今日からアキラさんたちはご旅行だそうで。私たちも休日ですし、一緒にデートでもとノーリさんをお迎えに来ました♪。お二人がご旅行ということは普段お誘いしても断られる理由最多のアリスさんの面倒を見ることもありませんね?」

 

「どこから情報が漏れたんだ…っ!」

 

ノーリは庭に向かって逃げた。

 

「ティオ」

 

「にゃあ!」

 

ノーリは庭の塀を飛び越え、その先の道路に出る。しかしその目の前にライジングモードで高速移動してきたアインハルトが現れる。

 

「げ」

 

とっさのことで反応しきれなかったノーリはアインハルトに一蹴された。そして気絶させられたノーリはアインハルトに引きずられ、どこかへと連れていかれた。

 

「ノーリも女難が大変ね…」

 

「まぁ、どっちかって言うと幸せ者だろ。本人にその気がないだけで」

 

引きずられていくノーリを見ながら二人は遠い目をしていた。

 

 

 

-次元船港-

 

 

 

「では、お気をつけて」

 

「ああ。アリスのこと、頼むな」

 

次元船の乗り込み口前でアキラとギンガはアリスを渡した。

 

「これにアリスの世話の方法、大体書いてあるから…………あ、ミルクあげるときはちゃんと人肌の温度にしてから…」

 

「大丈夫ですよ。よく面倒を見いている私もついていますから」

 

アキラは割とあっさり目にアリスを渡したが、ギンガは最後まで心配そうだった。

 

「心配するなギンガ。別に死にやしねぇだろうさ」

 

「でも…もしも急に熱とか出して、それの対応が遅れて脳にダメージが…」

 

「そこまで心配するな。シャマル先生や教会の双子もついててくれるっていうし、体力には自信ありきの戦闘機人の集まりだ。早々滅多なことはねぇよ」

 

「うん……」

 

最後まで後ろ髪を引っ張られる様子だったが、ギンガは不承不承ながら了承して船に乗った。出航してから数分、いまだにギンガはアリスを心配しているようだった。

 

「たまにの二人っきり……知り合いなんて一人もいない完全な二人なんだ。有意義に使おうぜ」

 

「そうだね…うん!そうしよう!」

 

アキラの言葉でやっとギンガは元気な態度を見せてくれた。

 

「ふぅ…」

 

今回の旅行の行先は地球。ゲンヤの先祖の故郷であり、高町なのはたちの故郷でもある。ゲンヤが用意してくれたのは管理局の人間の権力を使った次元旅行。いうなれば調査任務という名の慰安旅行だった。

 

本来次元航行システムを持たない地球はミッドの人間が入れる世界ではない。いや、一方的な往来は可能だが地球の人間には知られてはならないのでミッドに住む一般人が入るのは不可能だった。なので今回は以前から地球で僅かに確認されていた謎の反応の調査と報告任務をアキラたちに託したのだ。任務は解決ではなく調査だけなので任務はほぼおまけで旅行をしてこいとのことだった。

 

「地球か……今回は日本ってとこに行くらしいが……」

 

「日本では私たちのナカジマって名前やアキラ君の橘っていうのは一般的みたいね」

 

「へぇ」

 

「あと小此木さんもね。こう思うと結構私たちの周りに地球出身者って多いのかもね」

 

「そうだな。あの世界に魔法技術はないって話だが…」

 

その瞬間だった。大きな衝撃がアキラたちの乗る船を襲った。

 

「!?」

 

「きゃあ!!」

 

アキラは席を立ち、操縦席まで走った。

 

「何があった!?次元震か何かか!?」

 

「わかりません!次元通路に裂け目が……そこから超高温の熱風らしきものが当たっています!」

 

「なんだと!?」

 

そうこうしているうちに船内の温度がどんどん上がっていく。

 

(この温度上昇速度………あと5分もしないうちに人間が燃え上がる温度にまでなる………)

 

アキラとギンガはバリアジャケットを纏えば耐えられるだろうが、この船には操縦者含め、別次元へ行く予定の一般人もいる。

 

「………ギンガ、悪いが付き合ってくれ」

 

「え?」

 

「バリアジャケットを着て、外で熱風とやらを防げるかどうか試してみる。このワイヤーガンの先端を船内で持っててくれないか?」

 

「………止めても聞かないよね」

 

「悪い」

 

「ううん、がんばって」

 

アキラは次元船の扉を開け、船壁に張り付く。外に出た瞬間、いままで味わったことのないような熱風がアキラを襲う。

 

(熱い…!火災現場でもこんなには……)

 

アキラは船体に無理やりしがみつき、直接熱風が当たっている個所に向かった。既に直接当たっている場所が融解を始めている。

 

もはや熱波というより火炎そのものだった。火の温度は最大数千度

 

(中途半端な氷結魔法じゃ追っつかねぇ!これは……!)

 

「ユルティム・グラセ・ブレイカァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

禁術指定までされている究極の氷結魔法をアキラは放った。その一撃で融解部分は一瞬にして凍り付き、熱波を抑えた。

 

「ぐうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

アキラは自身の技で全身が凍り付きそうになるが、それも熱波で相殺される。

 

「ここまでとは………」

 

「アキラ君!」

 

「来るなギンガ!これは………マジで危険だ!」

 

その時、急に熱波が止まった。

 

「なんだ………?」

 

「アキラ君!?大丈夫!?」

 

「あ、ああ………なんなんだこれは…?」

 

しかし、安堵したのもつかの間。熱波が発生していた次元の歪みから今度は超強力な次元震らしき衝撃波が発生した。 

 

「!!」

 

船外にいたアキラはその衝撃波にふっ飛ばされる。

 

「アキラ君!!!」

 

ギンガも必死にワイヤーを引っ張ったが、その衝撃が大きすぎたために強靭なワイヤーが千切れる。

 

「…ぁ」

 

次の瞬間、ギンガは何も考えずに次元空間に飛び出していた。

 

「ギンガ!?馬鹿野郎戻れ!」

 

「嫌だし、無理だよ…」

 

ギンガは次元空間でアキラに追いつく。

 

「馬鹿が……」

 

「馬鹿で結構」

 

『アキラ二尉!ご無事ですか!?』

 

次元船の操縦者から通信が入った。

 

「俺らはいい。お前らは乗客を目的地にしっかり助けろ。いいな」

 

『…了解』

 

通信はそこで途切れ、次元船は緊急加速を始めた。

 

「………馬鹿野郎」

 

「ごめん」

 

次元空間に放りだされた人間が生きて帰れる可能性は限りなく低い。別次元に放りだされればまだ生き残る可能性は残るが虚数空間に引きずりこまれれば死は確定する。

 

(クソっ………こんなところで…)

 

アキラはギンガを抱きかかえ、次元空間を彷徨う。いずれどこかで別の次元に引き込まれるだろう。さすがのアキラもこの空間では抗うことはできない。唯一の可能性として冥王の鎧という手段があるがそれはいま封印されている。

 

「全く、面倒をかける」

 

そこに、唐突に白い鎧を纏いし男、リュウセイが次元空間に現れた。

 

「お前…」

 

「さっきの次元震で次元空間の歪みが恐ろしく強い。それに、何か強制的な力が次元空間に干渉し本来の目的地には飛ばせそうにないが、頑張って生き延びろよ。家族に無事は伝えておいてやる」

 

リュウセイが手をかざすと、二人の背後にゲートが出現した。二人はそれに吸い込まれていった。

 

「………この次元震…それにゲートに干渉している力………原因を調査する必要がありそうだな…」

 

リュウセイは次元震と熱波が発生した次元の裂け目に飛び込んだ。

 

(それにしてもあいつは面倒ごとに巻き込まれることが多いな……たまたまか、それとも……因果なのか…)

 

 

 

-とある次元世界-

 

 

 

「………この人は」

 

とある次元世界。そこでは一人の少年が目の前に突如として出現した女性に困惑してしていた。

 

「う…」

 

自分のよく知っている少女によく似た女性。

 

「アキラさーん!どうしましたー!?」

 

少年は近くにいた少女に呼ばれた。少年は女性を抱えて声の方に歩き始めた。

 

 

 

続く


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