とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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ちょっと次の話が止まっているので異世界編の続きです。遅くなってすいません。


EX第2話 新たな再会

-ある次元世界-

 

 

 

ある次元世界では白い甲冑の男、リュウセイがアンモナイトのような物体を眺めていた。その物体はとある船の中の個室に置かれていた。

 

「次元移動に干渉していたのはコイツだったか………」

 

しばらく眺めていると、その部屋に黒い髪の少女と紅い髪の少年が飛び込んできた。

 

「テメェ!何者だ!」

 

「動かないで」

 

少年がナックル型の武器を向けて威嚇をする。リュウセイは二人を少し眺めてから口を開く。

 

「近いうちにこの世界に災いが降りかかる。気を付けろ」

 

「なに?」

 

それだけ伝え、リュウセイは次元転移でその場から消えた。

 

「消えた…!?なんだったんだあいつ…」

 

「とにかく…報告に行こう……今の人が言っていたことも気になるし………」

 

二人はその場から離れ、どこかへ走っていった。

 

 

 

-別の次元世界-

 

 

 

「うーん…」

 

別の次元世界。ギンガは目を覚ます。目を開けて最初に目に入ってきたのは木製の天井だった。

 

「ここは……」

 

「あ……」

 

「ん?」

 

小さな声がした。声の方を向くと扉の影から僅かに頭を出した青い髪の少女がこちらを見ていた。しかしギンガはまだ意識がはっきりせず、状況を理解できずにいる。

 

「き…君は?」

 

声をかけるが少女はドアの向こうに走って行ってしまった。

 

「……?」

 

「お母さん!あの人起きたよ!」

 

遠くの方から声が聞こえた。しかしギンガはそれを気にする余裕はない。

 

(ここは………どうして私こんなところで寝ているの…えっと……えっと…)

 

必死で記憶を呼び起こそうとするが、頭がうまく働かずにいまいち考えが纏まらない。そうこうしているうちに、足音が近づいてきた。さっきの子のものではない。大人の足音だ。

 

そして扉が開かれる。

 

ギンガは扉の向こうから現れた人物を見てわが目を疑った。

 

「母さん!?」

 

見間違えるはずもない。そこにいたのはもう何年も昔に死んだはずの母、クイント・ナカジマだった。

 

「母さん……って呼ばれると違和感ないわね……やっぱりあなた……ギンガ…なの?」

 

「どうして母さんが……」

 

その衝撃と共にギンガは唐突に思い出す。ここに至るまでの事象を思い出す。

 

「そうだ……アキラ君…アキラ君はどこ!?それにここは…」

 

「アキラ………ねぇ。アキラ、呼んでいるわよ!」

 

クイントが天井に向かって呼びかける。すると屋根からアキラがベランダに降りてきた。しかし、降りてきたのはギンガの旦那であるアキラではない。見た目中学生くらいの少年だった。

 

「……」

 

「アキラ…君?」

 

「ああ、俺はアキラだ……けど、あんたは知らない」

 

「私もあなたは…知らない………名前は…フルネームは?」

 

「橘アキラだ」

 

アキラの旧姓だ。まぁ仮にこの歳で今と同じ「ナカジマ」だったらそれはそれでおかしいのだが。

 

「やっぱり昔のアキラ君?」

 

クイントが亡くなる前、アキラとギンガ、スバルは遊んだことがある。そしてクイントが死んだ事件の際にアキラは現場に居合わせて暴走したため、アキラの記憶からクイントの記憶は封印された経緯がある。

 

だが、その時のアキラは10歳にもなっていないし、こんな和風の家に住んだ記憶もない。仮に次元超越に失敗して過去に飛んだとしても話が噛み合わない。

 

「アキラと面識があるようだけど、その前に教えて?あなたは誰?」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「なるほど?まとめると、あなたはミッドチルダっていうところから来たギンガ・ナカジマさんで、次元旅行中に事故に巻き込まれてここに来たと…?」

 

「はい…」

 

とりあえずギンガは簡潔に説明した。話はまずクイントとアキラが聞いたがいまいち信じられないような表情をしていた。

 

「こちらからもいいでしょうか?」

 

ギンガはずっと気になっていることを聞いた。

 

「ええ、どうぞ」

 

「クイント……さんでいいんですよね?」

 

このクイントそっくりの人物は誰なのか。それが疑問だった。

 

「ええ、私は中島クイントで間違いないわ」

 

(名前が少し違う………きっと母さんとは完全な別人なんだ………)

 

ギンガは自分の母もクイントだということを伝えた。死んだことを伝えるべきではないと判断し、それは伝えなかった。

 

「なるほどね………ということはとてもあの子と同じとは思えないわね…………入ってきて」

 

クイントは扉に向かって呼びかける。すると、扉の向こうから少女が入ってきた。その少女は、幼いころのギンガそのものだった。

 

「………わ、私?」

 

「は、初めまして、中島ギンガです。13歳です…」

 

「恐らくだけど、あなたとこの子は別人なのよね?」

 

「……恐らくですが…」

 

(母さんにそっくりな人…アキラ君にそっくりな子、そして私にそっくりな子……よく似ているけど名前がなんとなく違うし、それに)

 

「少しいいかしら?」

 

「え、は、はい…」

 

ギンガは中島ギンガと橘アキラに近付き、腕に触れた。そして少しだけ皮膚と、骨肉の感触を確かめる。橘アキラと中島ギンガの腕は柔らかかった。戦闘機人の皮膚に使われている強化筋肉の感触も体内の機械骨格の感触もない。

 

ただの、人間だ。

 

「…」

 

「なぜ悲しそうな顔をするんです?」

 

橘アキラがギンガの顔を見て訪ねてきた。

 

「え、ええ。ごめんなさい…何でもないわ」

 

(たぶん別人なんだろうけど…なんだか根っこの部分は同じに思えるわね……このちびアキラ君…)

 

「まぁ、とりあえず行く当てもないってことで良いのかしら?」

 

まだ半信半疑という感じだが、クイントはとりあえず信じてくれたようだ。

 

「………まぁ、そうなります…」

 

「だったらしばらくウチで泊まりなさい?これもなにかの縁だろうし」

 

予想外の提案だった。ギンガはさっさとこの家を追い出されてもおかしくない立場だ。それでもクイントは家で面倒を見るという。

 

「……いいんですか?」

 

「ええ。うちは元々大所帯だし、アキラもウチの居候だしね。一人二人増えても変わらないわよ」

 

「……でも」

 

乗り気でないギンガに対し、クイントは食い気味に伝える。

 

「それに、仮に次元とやらが違えど自分の娘が困っていたら助けたくなるのが親心ってもんなのよ」

 

「………母さん…。わかりました。じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

「うん。じゃあ、うちの案内でもしておこうかしら。いらっしゃい」

 

ギンガはクイントに連れられ居間に向かうこととなった。その途中、ギンガは気になったことを聞いた。

 

「そういえば大所帯って言ってましたけど…ほかの家族は父さんと…スバルですか?」

 

「そっちにもスバルはいるのね?父はゲンヤさんでいいのかしら?」

 

「ええ…まぁ…」

 

正しくはギンガ自身、クイントのDNAから創られた戦闘機人なのでゲンヤが正当な父というわけではないが、家族構成的には間違ってはいない。

 

ギンガはそれを説明すると長くなるので黙っていた。

 

「ウチはギンガの下に妹がたくさんいてね、そっちにはいない?」

 

「妹…」

 

正当な妹と呼べるのはスバル、そして同じくクイントの遺伝子を持つノーヴェくらいのものだが、家族構成的にはナンバーズの妹たちがいる。

 

「一応…」

 

「そう。だったらわかるかしら。今はみんな出かけてるからいないんだけどね」

 

「そうなんですか……でも、まぁ多分見ればわかります」

 

「そう……それから、私も次元がどうこうなんて信じられないのにあの子たちにそれを説明して理解できるとは思えないから…未来から来たってことにしてもらっていい…?」

 

「はい?」

 

意味不明な提案にギンガは真顔になる。

 

「異次元からのお客さんは初めてだけど、未来からのお客さんは来たことがあるのよ。この子たち」

 

クイントは写真を取り出した。その写真には、アインハルトとヴィヴィオが写っていた。

 

「ヴィヴィオに…アインハルト!?」

 

「やっぱりそっちにもいるのかしら?」

 

「はい………」

 

(そうか、こっちの私が今この年齢ってことはヴィヴィオもアインハルトも未来の存在ってことか………本当によく似ている)

 

「それで、どうかしら」

 

「………下手に嘘をつくとこの世界のためにならないかもしれません。それに、私が知ってるあの子たちとは少し違いますが、きっと信じてくれるって信じてます」

 

「そっか………まぁ、その通りかもね……面倒だけど説明頑張りますか」

 

 

 

 

 

 

 

一方、ここは三人の少女が公園で遊んでその帰り道。その中の赤毛で三つ編みを垂らしたセミロングの少女が空き地にうつ伏せの状態で倒れている男の人を見つける。

 

「…………人が倒れている」

 

「え?あっ、ホントだ!!」

 

「大変っス!!」

 

赤毛の少女と同じ年頃の青髪の少女と赤髪でパイナップルみたいな髪型の少女が倒れている男性の下へと駆け寄る。

 

「だ、大丈夫?その人?‥‥その‥‥怖い人じゃない?」

 

「「えっ?」」

 

しかし、最初に男性を見つけたセミロングの少女は二人よりも後ろにおり、恐る恐る二人に声をかける。

 

セミロングの少女は元々内気な性格なのだが、彼女の家では少し前に長女である姉が誘拐されたことがあり、セミロングの少女はかなり警戒していた。

 

青髪の少女とパイナップル髪の少女もそのことを思い出し、駆け寄るスピードを落として警戒しながら恐る恐る倒れている男性へと近づく。

 

パイナップル髪の少女が男性の背中を指で突っつくが男性が起きる気配はない。

 

「大丈夫っス、寝ているだけみたいっスよ」

 

「でもなんでこんなところで寝ているんだろう?」

 

三人の少女たちが男性の様子を窺っていると後ろから声がかかった。

 

「おや!?そこにいるのは中島さんちのご姉妹ですか!?」

 

「そんなところでなにしてるのん?」

 

振り替えるとそこには二人の女子高生が立っていた。

 

 

 

―中島家―

 

 

 

「遅いわね……いつもだったらそろそろ帰ってきていい時間なんだけど…」

 

クイントが子供たちの帰りが遅いことに心配していた時、玄関の扉が開かれた。

 

「お母さーん!!!」

 

「あら、帰ってきたみたい。ちょっと状況整理させるからそれまで隠れておいて?」

 

「あ、はい」

 

ギンガに奥に隠れているように言い、クイントは玄関まで向かった。そして、玄関には三人の娘と、二人の女子高生に抱えられた大柄な男がいた。クイントはあまり表に出してないが驚きまくっていた

 

「…………あらまぁ…」

 

「スバルちゃんたちに頼まれてここまで運んできました!」

 

「キリエめちゃくちゃクタクタのKMSよぉ…」

 

二人の女子高生の内赤髪の少女は元気だったがピンク髪の少女はクタクタになっていた。

 

「この人!アキラさんにそっくりで!」

 

「………まぁ、部屋に運びましょうか」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「頑張って生き延びろよ。家族に無事は伝えておいてやる」

 

白騎士リュウセイのその言葉を最後に自分とギンガは何かに引っ張られるような感覚でゲートの彼方に吸い込まれていった。

 

「っ!?」

 

瞼をバッと開けると目に映ったのは木で出来た天井であり、自分は布団に横たわっていた。

 

(あの野郎、無茶苦茶なことを言いやがって‥‥)

 

自分をあの環境から救ってくれたことには感謝するが、自分たちを元の世界に戻してくれれば良かったのだが、それが出来ず自分とギンガをどこかの世界に跳ばした。自分が覚えているのはそこまでで、ここがどんな世界なのか未だにわからない。

 

(っ!?ギンガ!?ギンガは!?ギンガはどこだ!?)

 

そこでようやく自分と同じくこの世界に跳ばされた妻のことに気づき布団から飛び起きる。自分と一緒にこの世界に跳ばされたのであれば、ギンガも近くにいる筈なのだが、隣にギンガは居なかった。

 

しかし、自分がここにいるのであればギンガも必ずいる筈。

 

ギンガを捜しに行こうと部屋の出入り口である扉へと向かおうとした時、部屋に一人の女性が入ってきた。

 

「あら?目が覚めたの?」

 

「っ!?」

 

その女性の姿を見てアキラは大きく目を見開いた。

 

 

 

―状況説明―

 

 

 

「なるほど?ここは異世界で、俺やギンガ、クイントさんのそっくりさんがいるってわけだ」

 

既にこの世界の状況を知っていたギンガに状況を説明されてアキラはため息をつく。

 

「平行世界………ってわけでもなさそうだよね」

 

「まぁ、世界の在り方がまるで違う。完全な異世界って言っていいだろう…………」

 

「そうね……」

 

アキラは再びため息をつくが、同じように頭を抱えるギンガを見て少し安堵してギンガを抱きしめた。

 

「!」

 

「何はともあれ、お前が無事でよかった…」

 

「…………うん」

 

二人がそのままキスに移行しようとしたとき、気づかぬうちに窓の外にこの世界のアキラがいた。

 

「あー盛り上がってるところわりぃんだけどさ、そろそろチビたちにお前たちのこと説明したいから来てもらっていいか?」

 

「…す、すまん。とりあえずそれが先決だよな…………ガキの姿とはいえ自分に注意されるのはちょっとへんな感じだな…」

 

アキラは未知の感覚に戸惑いながらもともかくこの世界で生き抜く覚悟を決めた。たとえもう戻れなくとも、ギンガさえいればそれでよかった。

 

 

 

続く


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