とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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The スランプ。


EX第4話 新たな関係

アキラとギンガの二人がもう一つの地球の中島家に居る頃、ミッドチルダの西部エルセアにあるギンガの実家であるナカジマ家ではまるでお通夜のように重苦しい空気が漂っていた。

 

アキラとギンガの二人が乗った次元航行艦が突如発生した次元震に巻き込まれ、乗客の救助中に二人が船外に放り出され行方不明になったと知らせが届いた。

 

たとえ戦闘機人であっても次元のはざまに呑み込まれれば生きて帰ってくることはできない。二人の安否は絶望的な状況であることはすぐに分かった。

 

「わ、私が‥‥私が二人に新婚旅行を勧めなければこんなことには‥‥」

 

一番責任を感じていたのはアキラとギンガの二人に新婚旅行を提案したウーノだった。

 

「そんな、ウー姉のせいじゃないっスよ」

 

「そうだよ。次元震なんて予測できなんだから」

 

ウェンディとディエチがウーノを慰めるも彼女は両手で顔を覆いものすごく落ち込んでいる。

 

「おい、アキラとギンガの乗った船が遭難しかけたって街頭テレビで放送していたが二人は無事なのか!?」

 

アインハルトと(無理矢理)デートをしていたノーリが街中でアキラとギンガが乗った次元航行船が次元震に巻き込まれた放送を見て慌ててナカジマ家にやってきた。

 

乗船者であり、なおかつ管理局員であるアキラたちの実家ならば何か情報が入っているかと思ったのだ。

 

乗っていた次元航行船は次元震に巻き込まれたが、沈没したわけではない。しかし、二人がもしかしたらケガを負っているかもしれない。

 

「そ、それが……」

 

しかし、事態はノーリの予想を遙かに上回る最悪の事態だった。

 

「“海”の次元航行艦が周辺を捜索しているけど、まだ見つかったって知らせは………」

 

もうこの時点でナカジマ家に居る皆はアキラとギンガの生存を半ば諦めている感じだった。

 

ノーリと共にナカジマ家に来たアインハルトも同じ様子で俯いている。だが、ノーリはあきらめた様子ではない。

 

「なにシケタ面をしてんだよ。あの二人がそう簡単にくたばると思っているのか?」

 

その中でノーリだけは二人の生存を信じていた。

 

「ノーリさん……そうですよね。皆さんも信じましょう!!お二人のことを!!」

 

ノーリとアインハルトはウーノたちを励ます。

 

「ああ。その通りだ。二人は生きている」

 

「っ!?」

 

そこにナカジマ家の者ではない第三者の声がした。皆は声がした方を向くとそこには白騎士リュウセイが立っていた。

 

(こいつ、いつの間に!?)

 

(気配なんて全く感じなかった………)

 

ノーリ、アインハルト程の武術魔導師がリュウセイの存在に気づけないくらいの出現。それはまるでそこにいたのが当たり前のような感じだった。

 

「おい、あんた。今さっき『二人は生きている』って言っていたが、それってアキラとギンガの事か?」

 

ノーリがリュウセイに質問を投げかける。

 

「そうだ。次元震が起き、あの二人が船外の彼方へ飛ばされそうになった時、俺がゲートを開いてあの二人を別世界へ緊急避難させた」

 

「別世界って‥‥じゃあ、二人は今どこにいるんですか?」

 

「………ここからそう遠くはないさ」

 

アインハルトの質問に対してリュウセイは気まずそうに視線を逸らす。

 

「…………どういうことです?」

 

「少し厄介な状況でな。あまりに緊急な次元転移だったせいか中々その世界にアクセスできない」

 

『えぇぇぇぇー!!』

 

リュウセイの発言にその場に居た者全員が思わず声を上げる。

 

しかし、生存が絶望視されていたアキラとギンガであるがそれが実は生きているとリュウセイが語った時は絶望が一気に希望へと変わった。

 

だが、肝心の二人の居場所が跳ばした世界に入れないとくれば話は別だ。

 

「それじゃあ、二人が本当に生きているのかわからないじゃないか!!」

 

「いいや、あの二人は生きている。あの世界を見つけて帰還の準備が出来次第、あの二人をお前たちの下に必ず戻す。それは約束しよう」

 

『………』

 

そう言い残し、リュウセイは消えた。

 

「…あの騎士を信用して大丈夫でしょうか?」

 

ウーノが心配そうにリュウセイのことを信じて大丈夫なのかと不安視する。

 

「確かに胡散臭い奴だが、今はあいつを信じるしかないな‥‥」

 

自分たちはアキラとギンガの二人を捜す手立てがない以上、リュウセイを信じて、彼がアキラとギンガの二人を連れて帰ってくれることを待つしか出来なかった。

 

 

 

―異世界―

 

 

 

おやつが終わってもアキラとギンガへの質問タイムはまだ続いていた。

 

「へぇ~そっちのギン姉はお母さんと離れて暮らしているんだぁ~」

 

「うん。今は実家を離れてアキラ君と娘のアリス、それと従弟(ノーリ)たちと一緒に暮らしているの。だから、久しぶりに母さんを見れたなーって‥‥と言っても何時も写真とかもらっているわよ」

 

「……」

 

こっちの世界のスバルからの質問にギンガは答えるが、それには嘘が含まれていた。

 

確かに向こうの世界ではクイントと暮らしてはいない。

 

それは間違っていない。

 

何しろ、向こうの世界のクイントは既に故人なのだから。

 

しかし、向こうの世界のクイントが既に故人である事実を伝えると驚くどころか色々と心配させてしまうかもしれないからギンガはその事については黙っていた。

 

「ゲンヤさんも居たら良かったんだけど、生憎海外の学会に出席中で留守なのよ」

 

(ん?学会?)

 

(そういえば、この世界のお父さんは何の仕事をしているんだろう?)

 

自分たちの世界ではゲンヤは時空管理局陸士108部隊の部隊長を務めているが、魔法がないこの世界には当然、時空管理局なんて組織はない。

 

しかし、ゲンヤ・ナカジマ、この地球では中島ゲンヤであるが、彼はこの世界に存在している事は確かだ。

 

となれば、この世界のゲンヤは一体どんな仕事しているのか気になる二人。

 

「あ、あの、さっき学会に出ているって言っていましたけど、この世界のお父さんはどんな仕事をしているんですか?」

 

「あら?そっちのゲンヤさんの仕事は違うのかしら?」

 

「お父さんは大学ってところのキョウジュをやっているんだよ」

 

「えっ?大学の教授?」

 

(この世界のゲンヤさんは大学で働いてんのか)

 

「そっちのゲンヤさんはどんな仕事をしているの?」

 

「えっとなんていうか……」

 

「まぁ公務員だよ。警察みたいなもんだな」

 

この地球には時空管理局と言う組織が無いので、時空管理局を知らないクイントたちに時空管理局と言う組織における陸士部隊の部隊長をしていますなんて言ったところで通じない。答えに迷ったギンガの代わり無難に公務員だとアキラが答える。

 

「あぁ~あぁ~明日学校が休みだったらよかったのにぃ~」

 

スバルが残念そうにつぶやく。

 

「スバル、無茶言わないの。終わったら沢山遊べるでしょう?」

 

少女ギンガがスバルを窘める。

 

(そっか、こっちのスバルも私もチンクたちも普通に学校に行っているんだ)

 

自分やスバルはヴィヴィオやアインハルト、ノーリのように学校へ通ってはおらず通信教育をして、訓練校でもスバルはティアナと出会うことが出来たが、自分はこの出生のことを気にしすぎて親友と呼べる者が出来ず、後々の失恋に繋がることになる。

 

メグと出会ったのはギンガが失恋した後で、彼女は失恋で傷ついているギンガを慰め、それからギンガとメグの交流が始まり、ここでギンガは親友と呼べる存在に出会った。

 

「放課後は時間があるんだから」

 

「そうだ、それなら明日はみんなでブレイブ・デュエルをやろう。なのはさんやフェイトさん、王様たちにも紹介したいし」

 

(ん?王様?誰のことだ?)

 

(ヴィヴィオの事かしら?)

 

なのは、フェイトは知っているが、王様という人物に心当たりはなく、自分たちの世界では聖王のクローンとされるヴィヴィオのことを指しているのかと思ったアキラとギンガだった。

 

その後、ギンガは中島姉妹と共にトランプやボードゲームなどの様々な遊戯を行って親睦を深めた。

 

二人のアキラは戸惑いつつも少女ギンガやスバル、ウェンディが誘い半ば強引に巻き込まれた感じとなった。

 

気が付けば楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕食も終わり、スバルやウェンディは慌てて宿題に取り掛かっている。

 

ギンガもクイントを手伝おうとしたのだが、クイントから『いいのよ、ギンガはお客さんなんだから』と言われたのだが、やはり亡き母とこうして肩を並べて一緒に料理を作ることが出来るのだからその貴重な機会を無駄にしたくはなかったので、クイントと共に夕食の準備をした。

 

ただ、おやつ同様、大食乙女が居る中島一家の夕食の量もすさまじい量だった。

 

(この世界のゲンヤさんも食費に関しては苦労しているんだろうな‥‥)

 

自分や向こうの世界のゲンヤと同じくアキラはこの世界のゲンヤにも同情した。

 

しかもミッドのナカジマ家と異なり人数がこちらの方が多いのだから、食費もこちらの中島家の方が多いに違いない。

 

「お部屋はやっぱりアキラ君とギンガは夫婦だから一緒の方がいいかしら?」

 

「えっ?ええ」

 

「…」

 

クイントが中島家における寝室について二人に尋ね、ギンガはそれを了承する。

 

「いや、折角だしギンガ、今日くらいはクイントさんと一緒に寝たらどうだ?」

 

アキラは何となく察し、ギンガにクイントと一緒に寝てはどうかと提案する。ゲンヤは留守みたいだし、クイントもきっと一人で寝るのだろうからギンガが一緒に寝ても問題はないだろう。

 

「えっ?あっ……その…アキラ君はいいの?」

 

「気にするな。大丈夫だ」

 

アキラは大丈夫だと言ってギンガを見送る。

 

「寝巻は、ギンガは私の寝巻を使ってね…そっちのアキラ君にはゲンヤさんの寝巻を使って頂戴」

 

「はい」

 

「ありがとうございます」

 

寝巻を受け取ると、宿題を終えたスバルがギンガをお風呂に誘いギンガはこの世界のスバルと共に入浴した。

 

ミッドでも父が地球の日本人を祖先にもつので、ナカジマ家でもお風呂の仕様はあまり差がなかった。小さい頃はよくスバルとこうして一緒に入浴をしたことを思い出すギンガであった。

 

そして、中島夫妻の寝室にてクイントと布団を並べて横になる。

 

「そう言えば、ギンガもお母さんなのよね?」

 

「は、はい」

 

「ってことはアキラ君とやっちゃったってことよね?」

 

「えっ?ええ……まぁ……」

 

「ねぇ、ねぇ、初体験はいつ?アキラ君優しかった?それともガッツリな肉食系だった?」

 

母親としてのクイントとしてみれば、たとえ別世界とはいえ娘の大人な事情には興味があった。ギンガがタジタジになりながらも顔を赤らめてクイントと大人な話をした。

 

こんな内容はとてもじゃないが、この世界の自分を含む子供たちには聞かせられない。

 

他にも二人はいろんな事を話した。真っ暗な部屋の中で、他愛も無い事だったり、大変だったことだったり。自分たちの世界の父親であるゲンヤの事を伝えたり、離れて暮らしているけどそれでも母であるクイントの事が大好きだって事を話したり。

 

(電気が消えていてよかった。)

 

クイントと話をしているギンガは内心そう思っていた。

 

ギンガは無意識のうちに涙目になっていた。

 

しかしこれは決して悲しみの涙ではない。あの日、任務へ参加したまま生きて帰ってこなかった母。その母に自分はお帰りを言えなかった。

 

あの元気な母がまさか無言の帰宅をするなんて思ってもみなかったから。

 

もう二度とお話ができないなんて信じられなかった。

 

でも、今はこうして母が隣で一緒にお話をしている。

 

例え世界が異なり、魔法が使えなくても容姿も声も自分が知る母と変わらない。

 

その事実がギンガにとってとても嬉しく、楽しく、そして何よりもあたたかい。ギンガが流した涙はまさに歓喜の涙だったのだ。

 

 

 

―アキラの寝室―

 

 

 

(ギンガは今頃、クイントさんと仲良く寝てんのかな)

 

用意された部屋でアキラは布団に入りぼんやりと天井を見ながらギンガの事を思う。

 

あの日、自分が余計なことをしなければ、今のような力があれば、自分たちの世界でもこの世界と同じ光景があったのかもしれない。

 

アリスの事もかわいがってくれたかもしれない。

 

あの時の自分の無力に悔しさを感じつつもギンガが少しでもクイントの時間を楽しんでくれればと思いつつアキラは静かに瞼を閉じた。

 

 

 

―翌朝―

 

 

 

子沢山の中島家では、それはもう朝からドッタン・バッタンの大騒ぎであった。しかし、この大騒ぎが中島家の朝の恒例行事なのだろう。

 

だが、ギンガにしてみれば子供たちのドッタン・バッタンな大騒ぎは初体験であるが、クイントが鼻歌を歌いながら朝食の支度をする姿は懐かしい光景であった。

 

朝食を終え、中島姉妹たちは学校へと向かいようやく一息つける。

 

「それで、昨日言ったアキラ君とギンガの現状を何とかしれくれるかもしれない人のことなんだけど、昨夜電話をしておいたわよ。後で家に来てくれるって言ってたわ」

 

「ありがとうございます。それで、誰なんですか?その人って」

 

「私の兄さんよ」

 

「「えっ!?」」

 

「兄さんはこの前、未来から来たって子を元の時代に送り返した実績があるから二人もきっと二人のことも何とかしれくれるかもしれないわ。ただ、ちょっと変わり者だけどね」

 

そう言ってクイントは洗濯をしに行った。

 

クイントはアキラとギンガが置かれたこの状況を打破できるかもしれない人物が自身の兄であることを告げるが、クイントの兄発言にアキラとギンガは困惑した。

 

「ギンガ」

 

「なに?」

 

「クイントさんにお兄さんが居たのか?」

 

「う、ううん…居ない筈だけど……」

 

クイントの兄、つまりはギンガにとっては叔父にあたる人物なのだが、ギンガはこれまでの人生の中でクイントの兄にあたる人物とは会ったことがない。

 

「もしかして、ギンガとスバルがクイントさんに助け出される前にその人は亡くなっていたとか?」

 

アキラはギンガとスバルがクイントに助け出される前にクイントの兄は故人になっているのではないかと予測する。

 

「ううん、いないはずだよ。私も本当の娘じゃないけど、一応その辺はわかってるから」

 

「「‥‥」」

 

それでも、二人はクイントの兄がどういう人物なのか気になり、庭先に出る。そして、昨日からもう一つ気になっていたのだが、中島家の隣の家があまりにも特徴的だったのでそれを見ていた。

 

中島家は周囲の住宅同様、ごくごく普通の日本家屋なのだが隣の家?は何処の悪の組織かと言うほど特殊なデザインだった。

 

「おや?そこにいるのは……なるほど、やはりクイントの娘だ。クイントによく似ている」

 

その声を聞き、二人は心がざわついた。

 

二人にとってこの声は忘れられない声だからだ。

 

「クイントからは大まかな話は聞いている。まさか、未来ではなく、この世界とは別の世界から来たとはねぇ……平行世界………アニメ・漫画の陳腐な設定だと思っていたがまさか存在するなんて…聞かせてくれないかい?それはどんな世界なの―――ガァっ!?」

 

完全に無意識に、アキラはその声の主を蹴り飛ばしていた。

 

「に、兄さん!?」

 

アキラが蹴り飛ばしたのは忘れもしない、狂気じみた顔で立っていたジェイル・スカリエッティだった。

 

「いきなり、何をするんだい!?君は!!」

 

泣き目になりながら訴えてきたスカリエッティを見てアキラはようやく異世界の住人であることを思い出す。

 

「す、すまない!完全に無意識で……」

 

「どうやらそちらの世界の私は相当に嫌われているようだね……」

 

「その顔のせいじゃないの?」

 

クイントがやれやれといった感じでスカリエッティに手を貸し、スカリエッティが立ち上がる。

 

「「……」」

 

何度聞いてもクイントの口からはスカリエッティを兄という言葉が聞こえ、敵対している様には見えない。

 

そんな兄妹の様子をアキラとギンガは唖然として見ている。

 

「ふむ…では、改めて名乗ろうか。クイントの兄であるジェイル・スカリエッティだ」

 

「えっ?マジで?」

 

「スカリエッティが母さんの兄!?」

 

あのスカリエッティがこの世界ではクイントの兄という衝撃的な事実にアキラとギンガは目が点となった。

 

 

続く

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