なのはの新作はまだかな…
平日の昼下がり、学校は終わっているが、子供たちの姿は中島家にはなく、今中島家に居るのはクイントただ一人であったが、お風呂掃除に洗濯物の取り込み、夕食の支度などやる事は多々あった。
特に年齢や体付きの割に大食乙女が揃う中島家では食事の量はまさに相撲部屋並みなので、支度をするにしても早めに行わなければ夕食の時間に間に合わない。
クイントが台所で夕食の支度をしていると、突如として家が揺れだした。
「地震?………いえ、これはもしや」
それなりの揺れなのだが、スマホに地震速報が通知されない。
となると、この地震の様な振動の原因はただ一つだ。自分の兄がまた何かろくでもない実験をしているのだろうと判断したクイントは急いで家の外に出る。
「兄さん!!また変な実験をしているんでしょう!?ご近所迷惑だから早く止めなさい!!警察を呼ばれちゃうわよ!!」
中島家のお隣に住むスカリエッティを注意する。
そんなスカリエッティは自宅兼研究所の地下に居た。
この地下室こそがスカリエッティの研究所とも言えるスペースで怪しげな機械や試薬が入った瓶、アルコールランプやビーカーと言った理科の実験で使う様な工具が数多く存在している。
そんな地下室の中心にはスカリエッティが今でも研究・開発中の機械があり、以前その機械から、二人の未来からの使者が来たのだが、今スカリエッティの目の前には先日の出来事と同じ現象が起きていた。
「えっと……君たちは一体?」
スカリエッティは恐る恐る装置の上に居る二人の男女に声をかける。
二人の男女の容姿は、妹夫婦とその子供立ちが住んでいるお隣の中島家に居る居候の少年と姪の一人であるギンガにそっくりな姿をしていたのだが、二人とも自分が知る少年と姪よりも幼く見え、何よりも姪の髪の色は妹であるクイントと同じ青紫色なのだが、今機械の上に居る姪そっくりの少女の髪の色はギンガと同じく自分の姪の一人であるディエチみたいな茶色だった。
「えっ?あ、あの……」
茶髪の姪にそっくりな女の子は戸惑っている様子であるが、少年の方は落ち着いている。
「この時代では、『初めまして』になりますね」
「この時代?となると君たちはやはり……」
「はい。お察しの通りです。俺たちは未来から来ました」
「では、ヴィヴィオ君やアインハルト君たちと同じ?」
「ヴィヴィオやアインハルトは未来の世界では友人(?)の関係です」
「なるほど……」
(あの二人は、学年は違っていたが、確か同じ学校に通う学生だったからな、同学年の友人がいても不思議ではないが、その友人たちが何故、過去の時代に……?それにこの子たちの容姿がアキラ君とギンガ君に似ているのも気になるが……まさか……)
以前未来から来たヴィヴィオはブレイブデュエルにおけるホビーショップT&Hのチームメイトの一人である高町なのはの関係者であったので、この二人も未来における橘アキラと中島ギンガの関係者なのだと察しがついた。
「あっ、自己紹介が遅れましたね。俺の名前は中島ノーリ。海聖中学校一年です。それで、こっちは妹の……」
(い、妹!?)
二人の関係が兄妹であることにスカリエッティは心の中で驚く。
「中島アリスです……海聖小学校の四年生です」
ヴィヴィオとアインハルトはstヒルデ女学院の初等部と中等部に通っていたが、ノーリとアリスは別の学校に通っていた。
なお、リンネもヴィヴィオ、アインハルト、ノーリとは違う学校ブルゲローニ学院中等部に通っているのだが、それぞれ違う学校に通っているノーリたち結びつけたのが、やはりブレイブデュエルなのかもしれない。
「それで貴方はスカリエッティ博士………だよな?」
「あ、ああ、いかにも私はジェイル・スカリエッティだ」
スカリエッティは名乗る。
「やっぱり、ヴィヴィオやアインハルトが言った通り若いな……」
「はい。白髪とかありませんしね」
ノーリとアリスは二人でひそひそ話をするかのように今のスカリエッティの容姿について話している。
(なんかデジャヴを感じるな……このやり取り……)
ヴィヴィオとアインハルトがこの世界に来たばかりの時もスカリエッティの容姿についてひそひそ話をしていた。
「えっと……それで、君たちはどういった経緯でこの時代に?まさか、また未来の私が何らかの実験をして巻き込まれたのかい?」
スカリエッティはノーリとアリスにこの時代に跳ばされた原因を尋ねる。
「いえ、今回の件に関して未来の貴方は関係していません」
「はい。むしろ、兄さんの女難の相が原因です」
「ん?女難の相?どういうことだい?それは?」
「おいアリス……その話は…」
二人が言うには今回、ノーリとアリスが過去に跳ばされた原因は未来のスカリエッティが関係しているわけではなく、ノーリが何かの事情に関係しているみたいだ。
「こうなったのも兄さんのせいでしょう?」
「俺が悪いのか……?」
「兄さんが言いにくければ私が話しますが?」
「分かった、分かった。俺が話す」
妹に語られるのは兄としての屈辱感があるが、自分で語るのも自身の黒歴史を暴露するのも屈辱であるが、元の時代にも戻るにはスカリエッティの協力が不可欠なので、この時代に跳ばされた原因も彼に伝えた方が良さそうだ。
そして、ノーリはスカリエッティにこの時代に跳ばされた原因を話した。
「そうか……それは災難だったね」
スカリエッティはノーリの話を聞いてなんか同情した様子だった。
「それにしてもあのアインハルト君がね……」
スカリエッティが知るアインハルトは内気でお淑やかな少女であり、明るく社交的なヴィヴィオとは対照的と言う印象だったのだが、ノーリの話を聞くとヤンデレ、メンヘラと言う単語が思い浮かんだ。
「ええ、普段のアインハルトは、お淑やかと言うか内気に見えるんですが、どういう訳か俺の事になると性格が豹変するんです。それにリンネの奴も」
「「……」」
ノーリ自身はアインハルトとリンネが自分の事になると何故性格が豹変するのか?その原因が分からない様子であり、そんなノーリの様子を見て、スカリエッティもアリスも唖然とする。
「アリス君、ノーリ君はもしかして」
「はい。父さん似で兄さんはどうも女心には鈍感みたいで」
「アインハルト君とチラッと名前が出てきたリンネ君には何か同情するよ」
「アインハルトさんやリンネさんは兄さんの好みじゃないから気づかないのかな?」
どうやらノーリとアリスの父親は妻となった女性に一途だったので、その息子であるノーリも女性に対しては一途な性格かもしれず、ノーリがアインハルトやリンネに靡かないのは、アインハルトとリンネがノーリの好みではないから靡かないのかとアリスは予測する。
「それで、俺たちは元の時代に戻れるのでしょうか?」
「ああ。一応、ヴィヴィオ君とアインハルト君を元の時代に送り帰した実績とデータがあるからね。ただ、装置の調整や整備があるから流石に今日中は無理だ」
「はい。それは分かっています」
「ヴィヴィオさんもアインハルトさんも過去の時代で約一ヶ月過ごしたみたいですからね」
この時代のスカリエッティが、自分たちが知るヴィヴィオとアインハルトを過去から戻の時代に戻したのは知っているので、二人はこの時代のスカリエッティの腕を信じていたが、いくら彼でも『今すぐに戻の時代に戻してくれ』と言われて直ぐには難しい様子であり、それはノーリとアリスも理解していたので、その点は了承した。
(ヴィヴィオ君とアインハルト君みたいに二人にもブレイブデュエルをしてもらったら、面白いデータが取れそうなのだが)
ヴィヴィオとアインハルトの友人と言う事ならば、当然この二人もブレイブデュエルをしている可能性が高く、ヴィヴィオとアインハルトの時の様にプレイしてもらえれば様々なプレイデータが取れるのだが、今は未来からの来訪者だけではなく、異世界からの来訪者も来ている。
未来と異世界この二つの世界からの来訪者が重なる機会なんて今後二度とないチャンスではあるが、その来訪者たちが全て妹の嫁ぎ先である中島家に関係している点を見ると引き合わせて大丈夫なのかと言う不安もあり、スカリエッティは一人葛藤したのだった。
スカリエッティの自宅兼研究所にて、再び未来からの来訪者たちが訪れていた頃、アキラとギンガは初めてブレイブデュエルをプレイした後、今回初めて顔合わせをしたメンバーから質問攻めにあっていた。
「将来、アキラ君とギンガさんが結婚するのは分かったけど、私たちはどうなっているのかな?」
「以前、ヴィヴィオとアインハルトが来た時は聞きそびれちゃったもんね」
ヴィヴィオとアインハルトが来た時は一体どんな経緯があって未来から過去に来たのかは聞いたが、ヴィヴィオとアインハルトの出生関係はタイムパラドックスの観点から聞けなかったが、未来の自分たちについてはやはり知りたかったみたいだ。
「正確には俺たちが来た未来はこの世界の時間軸の未来じゃないんだ。だからこの世界の俺とギンガが将来結婚するのかは分からない」
「えっ?そうなの?」
アキラが以前この世界に来たと言うヴィヴィオとアインハルトが来た未来とは異なる世界の未来から来た事を伝えるとこの時代のなのはは意外そうに言う。
「ああ、実際に今この場で俺たちが知っているのは、なのは、フェイト、はやて、スバルたち中島姉妹、それにティアナだけだ」
「ええ、私たちは居ないの?」
「ああ、少なくとも俺たちが今住んでいる場所には居ないな」
アリサがアキラに名前を呼ばれなかったメンバーの所在を尋ねると、アキラはミッドには居ない事を伝える。
「でも、アリサさんとすずかさんについては以前、フェイトさんやはやてさん、スバルから聞いた事があるので、少なくともお二人はフェイトさんたちとは知り合いだと思いますよ」
ギンガがフェイトやはやて、そして六課時代に地球へ出張に行った際にアリサとすずかに出会った事をスバルがギンガに話していたので、少なくともアリサとすずかはちゃんと存在し、フェイトたちとは恐らく知り合いの仲であるとフォローする。
「ボクたちについては何か知らないの?」
そこにレヴィが自分たちについて何か情報がないのかを尋ねるが、
「すみません。私の知る限りでは」
「………」
「ガーン……」
アキラは黙っていた。多少知っている事情があるのだが、それは黙っていた。
そして歴史が異なる未来とは言え、自分たちの未来の事を知っているかもしれない人物たちから『知らない』と言われ、レヴィはショックを受けている。
「そうだ!ねぇおっきいアキラさん!せっかくブレイブデュエル始めたなら、一緒にイベント回りませんか!?」
「イベント?」
「はい、今期間限定のイベントをやっていて………これです!ジュエルシードっていうアイテムを集めるイベントなんです」
「ジュエルシード………」
その名前をアキラは聞いたことがあった。
かつてなのはたちがいた世界でなのはが魔導士になるきっかけとなった事件でその根幹となったロストロギアの名前だ。
「フリーマップ上にランダムで出現するモンスターを倒すと手に入るらしいんですけどそれがなかなか強くて………」
「アキラさんたちがいれば百人力です!」
「なるほどなぁ」
アキラはイベントの概要を見ながら少し考える。
思えば思うほど平和な世界だ。なのはたちからきいたジュエルシードの事件はなのはが魔導士になるきっかけであり、フェイトの家族が亡くなってテスタロッサ家に引き取られるきっかけになる事件でもあったと聞いていた。
それが、子供の遊びの延長にあるとは。
元の世界では顔を見れば反射的に殴ってしまうようなスカリエッティも、目の前で、そして自分のふがいなさで失ってしまったクイントも生きている。
「……」
「おっきいアキラさんどうしたの?」
「ん、いや。そういえばさ、この世界に………セシルって子はいないか?」
「アキラ君………」
セシル、それはかつてアキラが守れなかった少女の名だ。アキラはもし叶うならと思い、セシルがこの世界にいないかを尋ねてみた。
「ああ………セシルさん……」
その名前に心当たりがあるらしい。
「いるのか!?」
アキラは思わずスバルの肩を掴む。
「う、うん。アキラさんの元婚約者でしょ?あ、それってこっちの世界だけなのかな?」
「婚約者………そうか……セシルは……この世界で……」
どんな形であれ、生きていてほしい人がこの世界にいてくれた。それだけでアキラは嬉しかった。元婚約者と聞くに何かあったらしいが今はそんなことどうでもよかった。
「アキラさん?どうかしたの?」
「あ、ああ………気にするな。今度会わせてくれ」
「うん。アキラさんに相談してみるね」
またセシルに会える。その悦びで満たされたアキラの横顔にギンガはどこか不安を感じていた。だからか、ギンガは急に話題を変えた。
「ところでそちらの皆は?はやてさんたちとよく似てるけど…………ご姉妹とか?」
「あやつと同じことを言うでない。容姿が似通っているのはたまたまだ。たまたま」
「私たちは留学生です。わたしはシュテル、この子がレヴィ、そしてディアーチェ。グランツ博士…このブレイブデュエルの開発者の一人であるお方の家にステイさせていただいています」
シュテルと名乗る少女が丁寧に説明してくれた。そしてディアーチェと紹介された少女が前に出る。
「異界からの訪問者とは中々興味深い話だが……ブレイブデュエルを始めたのなら貴殿らは仲間でありライバルだ。どうだ?これから親睦会も含めフリーフィールドを探索と言うのは」
「いいね!僕このおっきいギンガと一緒がいい!」
「そう焦るな。公平に2グループに分けるとしよう。異界のギンガと異界のアキラの2グループだ。よいか?」
「ああ」
ギンガのチームにはフェイト、レヴィ、、ディアーチェ、スバル、ノーヴェ、すずかが、アキラのチームにはなのは、シュテル、ティアナ、アリサ、ウェンディらがついていくこととなった。
「さぁゆくぞ!」
続く