とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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なぜだかR-18繋がりで閲覧数が増えた…。
ちょっと遅くなりました。近々ひぐらしも投稿したい…

評価、コメント、投票、随時募集中です。


第十話 親子

ー機動六課ー

 

 

「……」

 

「…………」

 

見つめ合う、少女と俺とギンガ。

 

「えっとギンガ・ナカジマです」

 

「…橘アキラ」

 

あまり顔の知らない二人に来られて少女は戸惑ってる様だ。

 

「ほら、ご挨拶」

 

「ヴィヴィオ…」

 

高町空尉に言われ、ヴィヴィオは俺たちの事を恐れながら自己紹介をした。なんでこんなことになっているのか、それは今から数時間前に遡る。

 

 

ー約二時間前ー

 

 

アキラのもとに珍しく高町空尉から通信があった。アキラは一体なんの様かと思ったが、何かお願いがあると言う。そのお願いとは。

 

「つまりあれか、あんたは俺とギンガにガキのお守りをしろと」

 

[ま、まぁそうなるね]

 

「冗談じゃねぇ。切るぞ」

 

[ま、待って!お願い!アキラ君!アキラ君って昔小さい子の護衛やってたんだよね!?お願い!ほんの少しの時間でいいから…]

 

「ほんの少しの時間って……あんたなぁ……こっちにも仕事が…」

 

「アキラ君」

 

「ん?」

 

いつのまにかギンガがアキラの後ろに立っていた。どうかたのかと思ったのだが、そのギンガの手には報告書らしき物がある。何となく嫌な予感がした。しかもそれはしっかり的中する。

 

「もう現場調査ほとんど終わったからあと報告書書いて今日の仕事終わりなんだけど…」

 

高町空尉の目が輝いた気がした。もう多分、言い訳は通用しないだろう。そう思い、アキラは言った。

 

「あー!もうわかったわかりました!行きゃいいんだろ!」

 

で、今に至る訳だ。ちなみに到着した時の状態は、高町空尉が出かけようとするのをあの例のレリックを持った少女が、高町空尉が出かけようとするのを必死で阻止しようとしてる状態だった。

 

めんどくさいタイプの子だと言う予感も的中する。

 

(高町空尉、俺がどうにかしてこの子の視線を集中させるから。そのうちにあんたは)

 

(うん)

 

「よしっ。うーん…」

 

アキラは少女、いや、ヴィヴィオを喜ばすためにそこにきていたFWの身長を調べ始めた。アキラが今からやるのは昔セシルにもやった…とある芸。

 

「お前はティアナだったか」

 

「はい……」

 

「お前、ちょっとそこに立ってろ」

 

「はぁ……」

 

ティアナは指示された通り、壁の前に立つ。アキラはそのティアナの頭の上にりんごを乗せた。その時点で、ティアナは何か嫌な予感がする、さらにアキラは目隠しをした。ティアナの嫌な予感は的中する。

 

「よしっヴィヴィオ、よく見てろよ?」

 

「うん」

 

「ティアナ、動くなよ」

 

「はい……」

 

アキラは懐刀を取り出し、鞘から引き抜いた。そしてそれを目隠ししたまま、りんごに向かって刀を投げる。刀は見事にりんごに突き刺さった。その下のティアナは冷や汗をダラダラと流す。相手がスバルなら文句を言えるが、相手は上司な上に実力的にも勝てない相手。だから何も言わずに去って行く。

 

「おー!」

 

FW達から拍手が鳴る。だが、拍手が鳴ったのはFWからだけだった。

 

「アキラ君…」

 

「何だ?」

 

「ヴィヴィオちゃん…見てない…」

 

苦笑いでギンガは言う。ゆっくりと目隠しを外すアキラ。そこに写った景色は入って来た時よりさほど違いのない物だった。ヴィヴィオがなのはに泣きついてる状態。多分見てはいたんだろうが、なのはが退室しようとしていたのを発見してしまったのだろう。

 

「こんのクソガkむぐぅ!」

 

「落ち着いてください!」

 

「相手はまだ子供ですから!子供ですから!」

 

「アキラ君ストップ!!」

 

スバル、ティアナ、ギンガの三人でキレたアキラを必死に押さえつける。ギンガがどうしようと、アキラを押さえながら考えているとフェイトが落ち着いた様子で入ってきた。フェイトは、ヴィヴィオが落としたウサギのぬいぐるみを拾う。そしてヴィヴィオに優しく微笑み、落ち着いた様子で話す。

 

「こんにちは」

 

「ふえ?」

 

「この子はあなたのお友達?」

 

フェイトはかなり慣れた様子でヴィヴィオをなだめる。その様子を見ていたアキラの脳裏で一瞬フラッシュバックが起きた。誰かになだめてもらっているような感覚がフラッシュバックされたのだ。

 

「アキラ君…どうしたの?」

 

「いや…」

 

「?」

 

「アキラ君」

 

気づけば状況は解決されて、ヴィヴィオは少し涙目だが、一応泣き止んでる。

 

「じゃあ、後のことよろしくね?」

 

「へいへい…」

 

アキラはヴィヴィオを抱えてソファーの方に行った。ギンガもそれについて行く。とりあえずなのは達隊長陣はすぐに退室し、ヴィヴィオをなだめようと来ていたFW達も事態が収拾したのを確認すると、ぞろぞろと退室して行った。部屋にはアキラとギンガの二人と、ヴィヴィオだけが残される。

 

ギンガは、始めは普通に過ごしていようと思ったが、どうにも意識してしまう。二人きりで、子供のお守り。それがまるで夫婦のようだと思ってしまうのだ。

 

「さて…なんかしたいことあるか?」

 

「なのはさんに会いたい…」

 

「やっぱりそれか」

 

アキラはぽりぽりと後頭部を掻きながら考えていると、いい考えを思いつく。アキラは通信機の中に、小さなディスクを入れた。通信機は結構アナログな形だが、一応スクリーンは出せる。そこには高町なのはが少し昔に撮った、教導用の映像が映し出された。

 

正直、ヴィヴィオには少し難しいだろうが今のヴィヴィオはなのはの姿を見れるだけで安心できるだろうと、アキラは思ったのだ。これは過去に、セシルが仕事で出かけた両親がいない時に、ずっと家族が写った写真を持っていることを思い出したから思いついたこと。やはりどんな経験でも役に立つと思ったアキラ。

 

「ふぅ…」

 

「アキラ君」

 

「ん?」

 

「あの……その……もう少し寄ってもいいかな?」

 

「?構わないが…」

 

ギンガは思い切ってチャレンジしたのだ、いつまで経っても埋まらない二人の距離を埋めようと。だがアキラは、ギンガとは違い全く意識してない様な感じだった。でもこれだけでも大きな前進だとギンガは思う。

 

ー30分後ー

 

教導用のビデオも終わり、本を読んだりしたがやはりそれでごまかせる時間は一時間にも及ばない。いよいよ手詰まりになった二人。

 

「しょうがない……ギンガ、FW部隊呼んで来い。訓練用の服を着させてな。俺は庭にいる」

 

「ん?あ、うん」

 

ギンガは言われた通りにFW達を呼んだ。だがギンガには少し疑問に思うことがある。外に出るのはいいが、FWまで連れてなにをするのかそれも訓練用の服まで着せて……正直アキラがやる運動はものすごいハードに思えたからだ。

 

もしそんなのをヴィヴィオにやらせるなんて言い出したらどうしようと、アキラをどう止めようとかばかり考えている。

 

FWを集め、庭に向かうとそこには上着を脱いで袖を捲り、柔らかめのボールを持っていた。

 

「来たな」

 

「……なにするんですか?アキラ陸曹」

 

「ドッジボールだ」

 

「ドッジボール!?」

 

その場にいた誰もが驚いた。それもそうだ。あの橘アキラが急にドッジボールをしようなどと言ったのだ。例えればヴィータが急に何事も許し、お嬢様口調になって性格がものすごく丸ーくなったのと同じくらいに驚きの出来事だからだ。

 

ギンガに至ってはアキラが熱でも出しているんじゃないかと思うくらいだ。

 

「ただし、普通のドッジボールをする気はない。FW、それとギンガ」

 

「?」

 

「相手は俺一人。お前たちは…ヴィヴィオを全力で守れ」

 

「はぁ…」

 

「これは俺の家でやっていた訓練法だ」

 

「はい」

 

アキラからルールの説明がされたあと、FWとギンガはひかれた枠の中に入り、構えた。さっきの説明通り、アキラは完全に一人。最初にボールを投げるのはアキラの方だ。

 

「じゃあいくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

今の季節は7月。だいぶ暑くなってきたこの時期に地獄の訓練は始まった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

夕方、ようやくなのは達は聖王教会から帰ってきた。渋滞に巻き込まれ、予定よりも帰りが遅くなってしまったのでヴィヴィオとアキラのご機嫌取りのためのお土産を持って。

 

「こんなに遅くなっちゃった…ヴィヴィオ……泣いてなければいいんだけど…あとアキラ君が怒り狂ってなければいいんだけど…」

 

「ある意味どっちも怖いよね」

 

フェイト共に苦笑いしながら自分たちの部屋に走る。ドアの前に付くと、一度耳をすませる。だがしかし、部屋からはヴィヴィオの泣き声もアキラの怒りの貧乏ゆすりみたいな音も聞こえなかった。なのは達はゆっくりドアを開ける。

 

ドアを開けてもヴィヴィオも来ない、アキラの怒りの声も聞こえない。

 

「ヴィヴィオ〜?」

 

「あ、お帰りなさい」

 

ヴィヴィオの変わりに出迎えてくれたのは青い髪で、エプロンをした女性だった。

 

「どなたですか?」

 

フェイトは誰だかわからず尋ねたが、なのはにはその女性に見覚えがあった。なのは自身がホームキーパーを…主にヴィヴィオの世話を頼んだアイナ・トライトンである。これは、既になのはが保護責任者になる決意を固めた印でもあった。

 

「アイナさん!もう来てくれたんですか?」

 

「ええ」

 

「なのは、この人は?」

 

一人だけアイナのことを知らないフェイトが、なのはに尋ねる。

 

「これから、わたしたちの部屋のホームキーパーになってくれる、アイナ・トライトンさん。ごめんね、事前に言っておくべきだったね」

 

「うん…あ、それよりヴィヴィオとアキラ達は?」

 

「ああ、その子達ならあそこに…」

 

アイナが指差した先を見ると、ソファーの上で肩を寄せ合って寝ているアキラとヴィヴィオとギンガの姿があった。ちゃんと三人のは毛布がかけられてる状態で。なのは達がポカンとしてると、アイナが軽く笑いながら説明する。

 

「私がきた時にはもうこんなで…新人達と激しいスポーツをしたみたいで……多分ヴィヴィオが眠ったのに始まって周りも…あ、毛布かけたのは私です。最初は寝る気はなかったと思いますよ?」

 

「多分そうですね」

 

「ん〜なんやこうして見ると親子みたいやな〜」

 

「わっ!はやて!」

 

「はやてちゃん何時の間に!?」

 

三人の後ろに何時の間にか八神はやてが立っていた。

 

「なんやおもろいもんが見れると思って来たんやけど…あながちウチの勘は間違ってなかった見たいやな」

 

はやてはそんなことを言いながら、眠る三人を見守る。だがはやてもアキラ達を起こそうとはしなかった。普段なら起こすはやても、この平和な風景に癒されたんだろう。

 

「ん……」

 

少しすると、アキラが目を覚ました。はじめは寝ぼけていて、どうなってるかよくわかってなかったアキラだが、意識がはっきりして行くにつれ現状を理解するアキラ。だがしかし、別段焦る訳でもなく、毛布を退かす。

 

「……」

 

「あ、アキラ君起きた?」

 

「ああ…寝ちまってたのか」

 

頭を掻きながら起き上がり、ずれた毛布をかけ直してから帰りの準備を始めた。

 

「私の車で送って行こうか?」

 

フェイトが提案した。アキラは少し考えるが、ギンガの様子を見て頷く。やはりアキラとしてはギンガをなるべく起こさないようにしたいのだろう。ギンガは不満を持つだろうが、ギンガのことを考えればアキラにとって当たり前の行動だった。アキラの持論だが、寝るという行為は人間の行動で一番リラックスできる行為だと思っているからだ。

 

最近は出動が多く、緊迫状態が多かったから少しはリラックスして休んで欲しいとアキラは思っていた。

 

「ありがとうな…テスタロッサ隊長」

 

「ううん」

 

アキラは未だに寝ているギンガを背負い、フェイトの後に続く。

 

 

ー駐車場入口付近ー

 

 

(母さんの背中…あったかい…母さんの優しさが直接伝わってくるような……)

 

「ん?」

 

「ん?起きたか?」

 

ギンガが目を冷ましたのは、アキラの背中。自分がアキラの背中にいることを理解するのに時間がかかった。

 

「え!?わっ!お、降ろして!」

 

「遠慮すんな」

 

「は、恥ずかしいから!こんなところ誰かに見られたら…」

 

ギンガは、アキラは気づいてないが、奥の壁の影に……スバルと六課のヘリパイロットのアルトがニヤニヤしながら自分たちを見ていることに気づいてしまう。ギンガは顔を真っ赤にしてなんとか力尽くで降りようと暴れた。

 

「は、早く!」

 

「おっと!暴れんなって!」

 

「降ろして〜!」

 

ギンガがあまりに暴れるので、アキラは手を滑らしてしまった。ギンガはそのまま床に落ち、尻餅をつく。その際、足を挫いてしまった。

 

「大丈夫か!?」

 

「足…やちゃった…」

 

「……………………………おぶってやるよ」

 

「うん」

 

軽い捻挫とはいえ、すぐに治すには安静にするのがベスト。結局、ギンガは車までアキラに背負って行ってもらうことになったのだ。

 

 

ー翌日ー

 

 

この日、アキラはデスクに向かいながら何かを悩んでいた。アキラのPCで開いてるのはこの後、まとめて完成させた物をゲンヤに見せなければならない物。だが、いつも仕事をぱっぱと終わらせるアキラが珍しく進んでいない。

 

提出する書類の内容は、前々回ついに姿を現した敵についての書類。このあとマリエル技師も来てマリエル技師の意見も取り入れ、敵の正体を仮決定してから提出に行くのだが…アキラにはその正体はだいたい分かっていた。アキラが悩んでいるのは敵の正体がわかっているからではない。敵の正体は、ほぼ全員わかっているだろう。「戦闘機人」。問題はその先。ギンガがなんて思うかがアキラの悩みの元だった。

 

橘家の教えにこんなのがある。「護衛任務はただ守れば良いってわけではない。守る人物の精神的にも傷つけないこと。つまり、身体も心も護れなければそれは護衛が成功したとは言わない」。アキラは今もその教えに従い護衛をしている。だからこそギンガを今回機動六課の任務にギンガを加えさせるべきか悩んでいた。

 

聞くところによると、ギンガの母は戦闘機人に殺されたと言う話だ。人間、感情的になるのが一番危険だ。自分が考えてどうにかなる問題ではないが、少なくともゲンヤ…ギンガ本人にも相談するべきだろう。

 

「…屋上に行くか…」

 

考えているのも疲れたので、アキラは休憩がてら屋上に向かった。

 

 

ー屋上ー

 

 

「ふぃ〜」

 

アキラは屋上のベンチに座り、缶コーヒーを飲んで一息つく。

 

「まず…」

 

アキラはいつも自分でコーヒーを淹れているせいで、缶コーヒー等をあまり美味しく感じてなかった。だが今回は淹れる気になれなかったのだ。

 

「あれ、アキラ君?」

 

「マリーさん」

 

「あはは、久しぶり〜」

 

アキラとマリーは知り合いである。ギンガの定期検診の時に会ったし、マリエルはアキラと初めてあった時に「ギンガの異常を見逃したらただじゃおかない」と刀を向けられて言われたので忘れるに忘れられない相手だった。

 

「どうしたの?こんなところで…」

 

「あんたこそどうしたんだ」

 

「ん?まぁ〜何となくね。108や六課からもらったデータ見てから、何か気が重くてね…」

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

マリエルは少しため息をついてアキラの隣に座る。

 

「やっぱり、ギンガのこと?」

 

「ああ。ギンガの母親は…戦闘機人に殺されたらしいしな…」

 

「まぁ…そう予測されてるだけだけど…現場の状況を見る限りね……」

 

その刹那、またアキラにフラッシュバックが起きた。しかも今度は長く、段々と明確に過去の映像が流れ込んで来る。アキラは頭を抱えながらその場にうずくまった。歯を食いしばらせ瞳をぐっと瞑り、自らの頭を掴んでいる手に力が加わり、爪が刺さって血が流れている。

 

「うあわぁぁぁ!」

 

「アキラ君!落ち着いて!」

 

「クイント…さん……?」

 

「っ!」

 

その名前を聞いた瞬間、マリエルは特殊なスプレーをアキラの顔の前で吹いた。アキラはそれを吸って倒れる。マリエルがアキラに使ったのは催眠スプレー。マリエルはアキラをベンチにもたれかからせ、ギンガに通信する。

 

「ギンガ?」

 

[マリーさん!もう来てたんですか!]

 

「うん、それより…アキラ君が屋上で寝ちゃってるから…運ぶの手伝ってくれない?」

 

[アキラ君…仕事放ぽって昼寝してたって…すいません]

 

「ううん…いいんだ…」

 

[じゃあすぐ行きます]

 

ギンガが通信を切る。

 

「まだ…あのことは話さない方がいいですよね…クイントさん…」

 

一人でマリエルは、空に向かって呟いた。

 

 

 

続く

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