とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅くなったり寄り道したりですいません。やっと第二話が完成しました。なるべくペース上げていきます。別世界編も並行していくんでよろしくお願いします


第二話 ソレは復讐の刃

ある日、小此木の仕事場にギンガは現れた。

 

「珍しいね。君からというのは」

 

「はっきり言います。私にあの男を………マスクを追わせてください。単独で」

 

「………まぁ、そんなところだと思ったよ。準備はしてある」

 

そういわれ、ギンガは少し驚いた。我ながら無茶な提案をしに行ったと思ってたからだ。しかし小此木は、しばらく共に戦った彼女の気持ちを分からないほど鈍感ではなかった。

 

「……言っておいてなんですが、できるんですか?」

 

「私を誰だと思っているんだい?管理局の最高権利者に意見できる立場の人間だよ?君一人に特権を与えるくらい、造作もない」

 

小此木はギンガにバッジを渡した。半透明の素材でできたバッジだ。

 

「君をファントムに一時的に入隊させる。そのバッジは独自捜査の許可証だ。知っているね?」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「無茶だけはしないように。君を死にに行かせるために許可しているわけではない」

 

「……分かっています」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「じゃあそのガキを頼んだ]

 

「…」

 

「逃げようとか考えるなよ。変な動きをすればすぐこの女を殺す」

 

ナナシはアイシスにトーマを運ばせるように命令した。ナナシはまだやることがあったようで、リリィを人質にとった。

 

「わかってる…」

 

アイシスを見送ると、ナナシはリリィと共に教会に戻った。その途中、リリィはナナシに話しかける。

 

(何をするの…?)

 

「ん?言語機能がやられているのか?」

 

脳波か念話か、どちらかわからないが頭に直接話しかけられたナナシはリリィに聞いた。リリィは小さく頷く。

 

「そうか…………まぁいい。俺の仲間が無駄な殺しを行っちまった。このままじゃなんだ」

 

ナナシは死んでしまっているシスター三人を回収し、チャペルの床に手を身体の上に合わさせて寝かした。そして、三人の前で手を合わせる。

 

「コラテラルダメージ……だ。許せ」

 

そしてナナシは、手を合わせ終わるとシスターの指一本だけ切り落とした。

 

(………?)

 

「さぁそろそろ行こう。もうすぐ局の連中が来る」

 

 

 

-林道-

 

 

 

四人は気絶したトーマを運んで適当な森の中に身を隠した。ナナシは動けないトーマの代わりに二人の食事の準備までしていた。

 

リリィから聞いたシスターへの行動。それらも鑑みて案外この男は優しいのではと思い始めていた。

 

「…あんた…トーマをどうする気?」

 

料理の手伝いをしながらアイシスはナナシに訪ねた。いくら優しいかもしれないとはいえ、敵は敵。目的をはっきりさせておくのは大切なことだ。

 

「俺らのアジトへ連れていく。そこの女も一緒にな。テメェはいらねぇが俺らのこと覚えてられると問題だ。アジトで記憶の改ざん処置をさせてもらうそれでお前は自由だ。いいな」

 

「…」

 

その対応が良いのか悪いのか、それを考えているとき、トーマが目を覚ました。

 

「う…」

 

(トーマ!)

 

「トーマ、大丈夫!?」

 

「ああ…アイシス…リリィ…俺は大丈………夫!?」

 

「起きたか」

 

トーマはナナシの姿を見て飛び上り、痛む身体を抑えつつ二人の前に出た。

 

「お、お前…なんで…………」

 

ナナシは鍋を混ぜながら一緒にいるその理由を答えてやる。

 

「お前には俺と一緒に来てもらう。拒否してくれても構わないがお前、下手に動くと捕まってロクなことにならねぇぞ」

 

「お前なんかと一緒にいるよりずっとマシだ!!」

 

トーマはディバイダ-を出現させてナナシに向けた。ナナシは小さくため息をついてディバイダ-を出してトーマを無力化しようとしたが、アイシスがナナシの前に立った。

 

「トーマ!待って!」

 

「アイシス!?」

 

「…」

 

「トーマ!そんなに警戒しないで!戦ったのは事実かもしれないけど、一応今は助けられてるっていうか…」

 

口にした言葉も真実だが、アイシスはともかく今はトーマを戦わせるべきではないと判断したが故の行動だった。

 

「アイシス…」

 

「俺は別にかかってきてくれても構わないぞ?料理の片手間でお前を押させることもできるだろうさ」

 

「………」

 

(トーマ…)

 

トーマは少し考えてからディバイダーを収納した。

 

「あんたを信用したわけじゃない………でも、リリィやアイシスに何もしなかったし…むしろ助けてもらったみたいだから……今だけは」

 

「………お人好しだな。恨む相手が目の前にいるなら、なにを差し置いても殺すべきだ」

 

ナナシの言葉に反論できず、トーマは黙った。考えてみれば、さっきと比べてナナシに対する怒りや復讐心が高まらない。さっきは唐突だったからか、アイシスが止めたからか。

 

「ほら、出来たぞ。食え」

 

ナナシはよそった料理を差し出す。

 

「…」

 

「毒なんぞ入ってねぇから安心しろ。ここで殺すことが目的じゃねぇ」

 

「…ありがとう」

 

しかしこのナナシという男、妙に優しく感じた。リリィの話によるとシスターを殺したのもナナシではないという。

 

(なんなんだこいつ……でも、こいつはアキ兄を…)

 

そのとき、トーマは持っていた食器を落とす。

 

「あれ…?」

 

(トーマ!?)

 

「トーマ、大丈夫!?顔赤いよ!?」

 

トーマは意識を失いかけ、ふらりとその場に倒れる。

 

「トーマ!」

 

アイシスたちがかけより、その額に手を当てた。その温度はやけどしそうなほどの熱さだった。

 

「すごい熱……トーマ!大丈夫!?トーマ!」

 

「放っておけ」

 

ナナシは妙に冷たい反応を取った。

 

「十分考えられる状況だ。身体が作り変わっているんだ。恐らくな。なにもしないでも勝手に収まる」

 

「でも…」

 

その時、どこからかモーター音のようなものが近づいてくるのがわかった。

 

「………この音…」

 

崖の上から、一台のバイクが飛び出してきた。バイクはナナシたちの後方に着地し、緊急停止した。

 

「なに!?」

 

「…見つけた」

 

停止したライダーのヘルメットの奥から重たく、冷たい女性の言葉が聞こえてきた。たった一言だったが、恨みつらみが重なり続けてできた呪いのような言葉だった。

 

「まさか現場からやみくもに探し回ってたのか?」

 

「そんなの今は関係ないわ。ようやく見つけたんだから、逃がさない」

 

バイクから降りた女性はヘルメットを取った。ヘルメットの中から髪が解かれて美しい紫の髪があらわになる。やってきたのは単独捜査の権利を得たギンガだった。アイシスは突然現れた人物に驚きながらも戦闘態勢を取った。

 

「………そこのあなたたち…下がってなさい。全部終わったら、保護してあげる」

 

「管理局…?」

 

ギンガはナナシの姿しか見えていなかった。そのせいか、アイシスと重なったトーマの姿は見逃していた。

 

「覚悟しなさい、マスク…」

 

「………」

 

ギンガは首にかかっていたデバイスを取り出す。それはブリッツギャリバーではなかった。色が暗すぎる。紫色ではあったがそれはほとんど黒に近い紫、紫黒色だった。

 

「ライジングネメシスギャリバーセットアップ」

 

黒い光がギンガを包みこむ。ギンガの身体には通常とは違うバリアジャケットが装備された。

 

「それは……」

 

黒いパワードスーツのようなメカメカしいデザインのバリアジャケット。追加されているアーマーが多く、分かりにくいが、パワードスーツのアーマーの下のベースとなっているのはナンバーズたちが着ていたナンバーズスーツだった。

 

ナンバーズスーツに黒いアーマーが追加され、更にリボルバーナックルの形状も変化し、足のローラーブーツもノーヴェのジェッドエッジに酷似したものになっている。

 

「ナンバーズスーツを流用した新しい装備か………母を殺し、自らをも兵器に仕立て上げようとした犯罪者の力を使うのか?」

 

ナナシは妙にギンガの事情に詳しかった。

 

「よく知ってるわね。でもね、アキラ君だって私が拐われたときは大切な人の仇である人間の力をも利用して私を助けてくれた。だったら私だってそれくらいの覚悟がなきゃ駄目じゃない」

 

「ほぉ……いい覚悟だ!であれば俺も、全力で相手をしなければ無礼というもの!」

 

ナナシはそう叫んで上着を脱ぎ捨てた。そして、二の腕に巻かれた腕輪についている小さなレバーを上げた。

 

『Engage Konig VC6 React』

 

「リアクトオン!!」

 

竜巻のような火炎がナナシを包み込む。そしてその中から腕に鎧を装着し、ショットガンから歪んだ形の剣と変わったディバイダーを持ったナナシが現れる。

 

「さぁ!俺を倒してみろ!」

 

「…」

 

ナナシはディバイダーに火炎を纏わせ、ギンガに向かって振るった。

 

次の瞬間、ナナシの目の前に広がる森は広範囲に渡って焼き払われる。しかしギンガはそれを躱し、横からナナシに迫る。

 

(アキラ君を倒し、その身体さえも消滅させたこの男の攻撃…っ!けどそれは私たちがなにも知らなかったから!)

 

尋常じゃない速度でギンガはナナシの側面に迫り、ナナシに殴り掛かった。その拳はナナシの顎に命中し、ナナシは上空に吹っ飛ぶ。

 

「ウィングロード」

 

ギンガはウィングロードを展開し、ナナシを上へ上へと殴り上げていく。妙に抵抗しないナナシに僅かに疑問視したが、それよりも今は攻撃を優先した。

 

ある程度上空に飛ばされたナナシに、ギンガはさらにウィングロードを展開する。ナナシを中心に球を形成するようにウィングロードの檻を展開する。

 

そして、ウィングロードの檻の中でナナシに攻撃を仕掛けた。ウィングロードの足場を蹴り、ナナシに攻撃し、その先にある足場を蹴って再度攻撃をする。それを全くの隙を与えずに連続で攻撃を仕掛け続ける。

 

(隙を与えるな…っ!……意識を攻撃にだけ集中させろ!)

 

数秒で28回もの打撃を与えたギンガは最後に下から上への打撃を与え、上空でリボルバーナックルを変形させた。

 

「リボルバーバースト!!!!」

 

そして変形したリボルバーナックルがバーニア噴射し、真下に突貫する。上から下への位置エネルギーに加え、バーニアのエネルギーが加わった一撃がナナシに命中する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そのままナナシは地面に叩きつけられ、ナナシを中心にクレーターが出来る。

 

「はぁ……はぁ……はぁ」

 

「………」

 

殺す気で撃った一撃だった。しかし、ナナシは特に痛む様子も見せずに起き上がる。

 

「この程度か?」

 

「!!」

 

その一言にギンガは逆上し、ナナシに突撃する。

 

「リボルバースパイク!!!」

 

ギンガの蹴りがナナシの顔面に命中した。しかしそれだけに終わらず、よろめいたナナシの先に高速で移動し二撃三撃と繰り返し当てていく。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「……」

 

「!」

 

その時、ギンガの動きが突然止まる。

 

「…?」

 

「ぐっ………こんな…ところで…」

 

ギンガはその場に跪き、喀血した。

 

まだギンガは自身の装備であるライジングネメシスギャリバーに彼女が付いていけてなかったのだ。バックファイアが生じ、ギンガの身体を傷つけていた。

 

リボルバーナックルを二つ同時に使用することすらまだギンガにもできない。スバルはJS事件で偶然一度だけ使用したがそれはたまたまだった。そこにさらに、リボルバー系の装備を足に二つも付けているのだ。制御しきれなくて当然だ。

 

「なんと……まだ装備が完全ではないとは…」

 

「ぐ……」

 

「ならば……」

 

ナナシはディバイダーの刃に炎を纏わせ、振り上げる。

 

(……動け!動け!こんなところで負けるわけには…)

 

「消し炭にする価値もなし」

 

ナナシはディバイダーを下ろし、アイシスたちのいる場所まで戻ろうとした。

 

「な……め…るなぁぁぁぁぁ!!!」

 

ギンガは軋む身体を無理やり動かし、ナナシの背中に殴り掛かる。

 

「愚かな」

 

ナナシは背後からの攻撃をジャンプで回避し、そのままアイシスたちのところへ降り立った。

 

「絶対に殺さねぇことを約束するからおとなしくしてろ」

 

「え?」

 

そしてアイシスを抱え、ギンガの前に立つ。そしてアイシスの首にディバイダーの刃を当てた。

 

「このガキを殺されたくなかったら大人しくその装備を解除しろ。お前じゃ俺には勝てない」

 

「あなたは…どこまで…」

 

「…さぁどうする?俺はフッケバインのメンバーだ。人を殺すくらい、なんてこともねぇぞ?お前の旦那も殺したんだからな」

 

そのとき、ナナシの全身をバインドが縛り上げる。

 

「!」

 

そして風のような速さで何者かがアイシスを奪還した。

 

「今だ!ギンガ!」

 

アイシスを奪還したのは近くに捜査に来ていたシグナムだった。そしてシグナムの合図でギンガはすぐに殴り掛かる。

 

その一撃は防がれたが、状況を進展させた。

 

(相手は強敵…しかし、要救助者もいる中でこの状況は無視できない!)

 

 

 

-六課本部-

 

 

 

「スクランブル!フッケバイン、及びマスクが出現しました!現在シグナム空尉とギンガ陸尉が交戦中です!」

 

六課本部内で緊急回線が開かれる。各世界で新装備のテストをしていた各隊長にもナナシとの戦闘のことが伝えられた。

 

そして、そこにたまたま新装備のテストに付き合っていたメグが通信を聞いた。

 

「………ギンガ…あのバカ…あんな装備で…」

 

 

 

続く

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