とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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二ヶ月ぶりです。遅くなって本当に申し訳ない。忙しいと手が止まった先に中々進めなくて…。今回のラストの部分、それが書きたいがためだけにこの作品始めたといっても過言ではありません。


第四話 限界突破、オマエを狩る力

管理局がフッケバインへの攻撃を仕掛けたのはシグナムたちが負けてから数時間後。夜が明け、その日の昼頃に攻撃を仕掛けた。これはその数時間前。病院での話だ。

 

 

 

-病院-

 

 

 

ギンガは病院で検査を受けた。ライジングネメシスギャリバーからのバックファイア、そしてナナシ受けたダメージ。それらの検査をしたが、そこまでの異常は見られなかった。

 

「……」

 

検査を終わらせたギンガはそのまま集中治療室に向かった。集中治療室ではいまフェイトが治療を受けている。ギンガはお見舞いに来ていたティアナに訪ねる。

 

「フェイトさんの容体は?」

 

「………まだ予断は許しません……」

 

「…………ごめんなさい。私が……焦ってたから…」

 

「いいえ。ギンガさんのせいじゃありません。ある意味では…」

 

ティアナは意外なことを口にした。ギンガは驚く。

 

「……どういうこと?」

 

「…………もう、古い話だからしてもいいかな…フェイトさんのこと、悪く思わないでくださいね?」

 

「……」

 

「フェイトさん、六課の頃からアキラさんのこと…好きっていうか……心配していたんです」

 

「…」

 

「最近聞いた話です、お酒の席で。最初はアキラさんが心配だったそうです。きっと、心は誰よりも弱いのに体が誰よりも強いから、誰にも頼れずにいるって。それが心配だったらしくて。ギンガさんを守るっていうのは、他にやることがないからそれを生業にして自分の存在意義を作り出すためだって」

 

「かもしれなかったわね」

 

「でも、どんどん強くなっていくアキラさんを見て、心配はなくなったけれど代わりにアキラさんを想う気持ちだけは残ったって。それですこし、アキラさんのことを想うようになったけどギンガさんがいたからって…」

 

「…」

 

「でも、アキラさんが殺されたことに対して、その想いが蘇って、あの男…マスクが許せなくなったって」

 

「私と同じだった…」

 

「だから…マスクが現れたって聞いて、フェイトさんはソニックモードで現場に飛んで…」

 

「私を守って………斬られた」

 

ティアナは小さく頷く。

 

「ギンガさん、フェイトさんがこんなことになったからっていうわけじゃありませんが…アリスちゃんのこともあります。戻ってください…」

 

「戻れないわ…」

 

「どうして…っ!」

 

「アキラ君の時と同じ……仇を取るためならなんだってするわ…。あのとき、ウィードを見付けたアキラ君の気持ち、ようやくわかった…。仇を取るまで…止まらない…」

 

ギンガには声が掛けられないくらい重い空気、そして今にも崩れそうな背中があった。もうギンガは限界なのだ。アキラのいない生活が。きっとギンガが殺された場合、アキラも同じようになっていただろう。

 

ただ、あの男を追うことしか生きがいが無いのだ。

 

子どもを育てることで忘れさせようとティアナは考えた。しかし、子供程度ではギンガの心は修復できないほどに傷付いていた。それほどアキラとギンガの共依存関係は深かった。

 

「ギンガさん…」

 

 

 

ここで話はさらに前へと遡る。

 

 

 

-数か月前-

 

 

 

アキラが殺され、そしてギンガに特務隊への誘いがあった数日後の話だ。ギンガは牢獄に面会に来ていた。

 

「また君かね?」

 

「ええ。話があるわ。事件の協力じゃない。私個人が話したいの」

 

面会の相手はスカリエッティだった。

 

「君には嫌われていると思ってたがね。嬉しいよ」

 

そう言った瞬間、ギンガはスカリエッティの胸倉を掴み、自分の方へ引き寄せた。

 

「黙りなさい。私の質問にだけ答えて」

 

「………優しい表情の凛々しい捜査官はどこに行ったのかね?それともなんだ?身内でも死んだか?」

 

「…っ!」

 

ギンガは拳をスカリエッティの顔面にめり込ませた。

 

「…私の、質問だけに、応えなさい」

 

「面会中の囚人に暴力とは…」

 

スカリエッティは鼻血を垂らしながら言った。

 

「今の私は処分なんて恐れない。いいから話を」

 

「………聞きたいこととは?」

 

スカリエッティはティッシュで鼻を拭きながらギンガに訪ねた。ギンガは小さなため息をついて席につく。

 

「戦闘機人の限界について」

 

その言葉にスカリエッティは僅かに眉を動かす。

 

「………というと?」

 

「私たち戦闘機人には、通常状態と戦闘機人モードの二種類が存在する。でも、戦闘機人モードを発動しても絶対的な力が手に入るわけじゃない」

 

戦闘機人は確かに強い。だが、その力は兵器としてあまりにも中途半端だとギンガは考えていた。戦闘特化させていてもオーバーSランクの魔導師に勝てない。わざわざ人体に機械まで入れて作り上げた甲斐がないと感じていた。

 

「まだ上があると?」

 

「ええ。貴方なら知っているんじゃない?」

 

「仮に知っていたとして、君はそれを知ってどうする?」

 

「………絶対に殺したい相手がいる。そのためにはそれが必要」

 

「……………私としては貴重なタイプゼロである君に危険な橋は渡らせたくない。教えたくはないがこれを知っているのは私だけではない。私が言わなくても君はきっと別の形で知ろうとするだろう。結果が同じなら私が教える」

 

スカリエッティは不本意ではあったが伝えることにした。他の方法で調べ、危険な使い方をしてギンガに傷付かれるのを恐れたのだ。

 

「オーバーリミットモード。それが戦闘機人の限界だ」

 

「オーバーリミットモード……それを使うにはどうすればいいの?」

 

「簡単だ。新しいデバイスを作りたまえ。戦闘機人にはオーバーリミットモードを発動させないための制御システムがある。そのシステムの解除方法は体内に存在する制御装置を取り除かないと不可能だが………私なら外部から制御装置を停止させるプログラムをデバイスに装備することができる」

 

「そう、ならそれを作って」

 

「………わかった。ではそうしよう」

 

意外なほどあっさり承諾され、ギンガは拍子抜けした。

 

「妙に協力的ね。なにか企んでいるの?」

 

「いいや、だが私が断っても君は恐らくウィード辺りのところに行くだろう。彼は妙に君たちに協力的だからね。調子に乗って君を簡単に殺すシステムを作られても困るのだよ」

 

「そう…」

 

「くれぐれも気をつけたまえ。これは、君自身も殺す悪魔の契約だ。私としても君に死なれるのは困る」

 

「………」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

-飛空艇フッケバイン-

 

スカリエッティから託されたシステムを手にギンガはフッケバインに乗り込んだ。そして、ナナシに対峙した時にそのシステムを発動させた。

 

ギンガの瞳は赤く輝き、全身に魔力のオーラを纏った。

 

「その力…」

 

「…っ!」

 

ナナシの目の前からギンガが消えた。それと同時にナナシの首が掻っ切られる。ギンガが通り過ぎ様に手刀で首を斬り裂いたのだ。

 

「!」

 

(やはり表皮が硬い…っ!だけど………だけど関係ない!今度こそ、ここでこの男を殺す!)

 

ギンガはUターンしてナナシに飛び掛かる。ギンガの攻撃は上手くいなされる。ナナシはディバイダーを取り出し、ギンガに向けて突く。その攻撃をギンガはイージスシールドでガードした。

 

ナナシの連撃をガードし続けたが内一撃がギンガの頬を切り裂く。

 

「!」

 

そのことで一瞬気を取られたギンガにナナシは蹴りを入れた。ギンガは壁まで吹っ飛び、めり込んだ。しかし舞い上がった粉塵からギンガが飛び出して来る。

 

ナナシはディバイダーでさらに攻撃を仕掛けるが右腕に切り傷を残した程度で背後に回られた。ナナシは即座に背後に向けてディバイダーの銃口を向けたがディバイダーは弾かれナナシはその顔にギンガの左拳を食らった。

 

「…っ!」

 

ナナシはすぐさまディバイダーを拾い上げ、リアクトをした。

 

「炎舞!」

 

炎を纏った剣を振るうと強力な炎熱砲がギンガに向けて放たれる。ギンガはしばらくトリッキーな動きで炎熱砲を避けるが追い詰められ、再度イージスシールドを展開して炎熱砲を防ぐ。

 

「ぐっ……」

 

一瞬イージスシールドで防いだギンガは一気に射程から外れ、ナナシの懐にもぐりこもうと接近する。しかしそう簡単に近づけさせてはくれない。少し近づけたもののそれ以降は反撃を受け、思うように近づけない。

 

(戸惑うな…押していけ!)

 

思い切ったギンガは一気に突貫した。ナナシはそれに対しディバイダーを振るううがギンガは拳を前に出した。戦闘機人の強化皮膚と右腕のストライクナックルの硬度がギンガの腕を守り、切られるどころかディバイダーに押し勝つ。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ナナシは後ろに下がりながらギンガに牽制攻撃をするが、全て弾かれる。最終的にナナシはギンガの背後に回られ、手刀でわき腹を貫かれた。

 

「ッ!」

 

「………っ!」

 

しかし、ギンガは右腕に異常を感じた。その隙をナナシは見逃さない。ギンガを掴み、壁に向けて投げ飛ばした。ギンガは再び壁に激突する。すぐに動こうとしたが、右腕が動かないことに気付く。連続して攻撃を弾き続けた代償だった。

 

さらにバインドで縛られる。

 

「………炎熱集中、炎王剣・烈火斬」

 

ディバイダーから発生した炎を一か所に集め、炎の剣を作り上げた。

 

「今度こそ死ね」

 

「ギンガさん!」

 

ギンガのピンチに気づき、エリオがナナシにストライクカノンを向ける。ナナシはすぐさまそこから移動する。そしてその隙にギンガはバインドを破ってエリオの前に飛んだ。

 

「邪魔しないで」

 

「は、はい…っ!」

 

ギンガの威圧に負け、エリオは怖気づいた。

 

「お前がいくら強くなろうと、お前は俺には勝てない」

 

ナナシがギンガに言う。

 

「反応速度には追い付いている。力でも負けていない………私は貴方に勝つ」

 

「………なぜそこまで俺にこだわる?あの男のことか?」

 

「……当然でしょう?」

 

「…くだらんな。俺を倒したところでヤツは戻らん。過去にこだわらないで娘の為に教育の一つでもしてやったらどうだ?そんな力を使ったところで見てみろ。お前の身体は勝手に傷付き、片腕も動かないのに俺は大した傷はついていない。お前にもはや勝ち目はない。もう諦めたらどうだ?」

 

ナナシは面倒くさそうにギンガに言った。

 

「あなたは分かっていない……あなたが奪ったのはアキラ君の命だけじゃない。アリスが、私がアキラ君と過ごすはずだった時間アキラ君と繋がっていた人々の日常それらすべてを奪った。だから私は貴方を許さない………仮に私が死んでも、次の復讐者が必ずあなたの首を取るっ!」

 

「愚かな………どこまでも愚かな考えだ」

 

ナナシはディバイダーを握り、ギンガに飛び掛かった。

 

「!」

 

しかしその直後、何かに気付いたナナシはディバイダーを投げ捨ててギンガの背後に回り込んだ。

 

「!?」

 

(今……認識できなかった…!スピードにまだ上があるの!?)

 

ギンガが驚愕しているとナナシはギンガを抱きしめるように飛びつき、一気に壁際まで跳ねた。

 

次の瞬間、フッケバインとヴォルフラム全体に強力な分断魔法が放たれた。戦艦二隻は推力低下し、どんどん落ちていく。乗員たちも大半が意識消失、心肺停止などの状態になった。

 

フッケバイン内部で戦闘していた者たちも一緒だ。皆立つ力すら失ってその場に伏していた。しかしその中で唯一起き上がる者がいた。ギンガだ。

 

「今のは一体…?」

 

混乱する頭で辺りを確認する。回りの人間は全員倒れていた。そして暗くなったその場に、誰かが歩いてくる音がする。それはナナシも例外ではない。

 

目の前で最愛の旦那の仇が弱っていると言うのに、ギンガは止めをさそうともしない。なぜなら、それを上回る程の事態がギンガに起きていたからだ。頭の中にノイズ交じりの声が響く。

 

(ごめんな……どうか……幸せに…)

 

一方ナナシは全身の重みに耐えながら辺りの状況を把握しようとしていた。

 

(トーマか……あの野郎…「ゼロ」か……。よりにもよって…どうして…)

 

その時、フッケバインの廊下の奥から誰かが歩いてきた。

 

「すいません、監理局の人。要救助者が二人います。どうか、助けていただけませんか?」

 

「トーマっ!?」

 

「その声…スゥちゃん?」

 

トーマが捕らわれていたアイシスとリリィを救出してここまでつれてきていたのだ。

 

「スゥちゃんだよね?この子たちをお願い…」

 

エクリプスが暴走し、視覚モードが強制的に変更され、目の前にいるのが誰かわからない状態だった。

 

「トーマ!どういうこと?それにこの子たち…」

 

「この子たちとは旅先で会って、俺のせいでこんなことに巻き込まれちゃったんだ。二人ともいい子なんだ、優しくしてあげて」

 

「フッケバインのみんな、こんな目に遭わせてごめん。ドゥビル、フォルティスと一緒に色々説明してくれてありがとう。ナナシ、急に襲い掛かってごめん。優しくしてくれてありがとう。無理だと思うけど………どうかちゃんとギン姉に謝って。仲間に誘ってくれてありがとう。だけどごめん、俺一人で行く」

 

「トーマ!一人でってどこへ…」

 

「スゥちゃん…あの日からずっと優しくしてくれて、家族になろうって言ってくれてありがとう。本当にうれしかったし幸せだった。ごめんね、バイバイ、スゥちゃん」

 

トーマは涙を流しながらスバルに手を振った。

 

そして床を破壊してそのままフッケバインを脱出した。

 

「トーマ!トーマ!!」

 

「トーマ……馬鹿野郎…」

 

ナナシは壁に寄りかかりながらも無理やり身体を起こし、ディバイダーを拾い上げてステラに通信を取る。

 

「ステラ、俺はトーマを追う………後のことは任せた」

 

『うん…ナナシ、大丈夫?』

 

「俺は問題ねぇ。あのバカをほっとくわけにはいかねぇよ」

 

『それもそうだね……気を付けて?』

 

「………ああ」

 

まだトーマの放ったディバイドゼロエクリプスのダメージは身体に残っているものの、ナナシはなんとかトーマを追おうとした。すると、その足を誰かが掴んだ。

 

「待ちなさい………」

 

ギンガだった。いくら周りより少しダメージが少ないとはいえ、無理をやったバックファイアもあるギンガは動くには難しい状態だった。

 

「動くのもままならない状態でまだ歯向かうか………離せ」

 

ナナシはギンガの腕振り払った。そしてトーマが脱出した穴に向かった。しかし、ギンガはナナシに向かって叫んだ。

 

「待って………待ってよ!」

 

「しつこい。さっさと回収してもら…」

 

「待ってよ!アキラ君!!!!!」

 

 

 

「!!」

 

 

 

続く

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