とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅くなりました………すいません。
これからは月3くらいのペースでやってきます。

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第十一話 出向

覚えているのは、血なまぐさい臭い。覚えているのは、肉片の転がった部屋。覚えているのは、助けてくれた人の……声と差し伸べてくれた手。覚えているのは……。

 

「アキラ君…」

 

「う…」

 

真っ暗な中に差し込んでくる光。そこには、一度見たことがある天井と心配そうな表情のギンガ。アキラは自分がどういう状況に置かれているのか、よく理解出来ていなかった。

 

「大丈夫?私の事わかる?」

 

「ギンガ…」

 

名前をいうと、ギンガはホッとした表情に変わった。そしてへなっと椅子に座り込む。アキラはゆっくり身体を起こした。起き上がって見ると、ギンガ以外にも、マリエル、前にも会った医務室の先生、ゲンヤがいた。

 

アキラは一体なぜこんなに人が集まっているのかよくわからなかった。そして、自分がここで寝ていた理由も。その解説はギンガがしてくれた。

 

「びっくりしたんだよ?マリーさんが屋上でアキラ君が寝てるっていうから…起こしにいったらなにやっても起きないんだから…」

 

「だからここに?」

 

「医務の人によると、寝てたっていうより気絶してたんだって……」

 

「気絶………何でだろうな、マリーさんと話してたような気がする」

 

「あは、夢の中で私が出てきたのかな?」

 

適当な会話の切れ目を見つけ、ゲンヤが口を挟む。

 

「アキラ、目覚めたんならさっさと準備しろ。これから機動六課に行く。事情は移動中話す」

 

「ん、わかった」

 

 

ー三十分前ー

 

 

「アキラ君の記憶に鍵を!?」

 

「うん」

 

ギンガに協力してもらった方が、今後もやりやすいということでマリエルは全てをギンガに全てを話した。アキラの記憶の一部に、魔力で鍵をかけてある事を。ギンガはそれを聞くと、とても驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの凛々しい真面目な顔に戻った。

 

「そうなんですか……」

 

「思い出したら……今のアキラ君じゃ、絶対に精神を崩壊させる恐れがある…だから……ギンガにも協力して欲しいんだ。アキラ君のためにも……ね?今アキラ君が寝てるのも、さっき私と話してる時に鍵を開けさせるようなキーワードが出たせいだと思うんだ。それに段々記憶の鍵が緩んできてる。また掛け直すけど、もし鍵が外れそうな兆候が出たら教えてくれるだけでいいから」

 

ギンガは悩んでいる様だった。しかし、少ししてから強く頷く。

 

「はい……それは良いんですが………その…鍵をかけてあるアキラの記憶って何なんですか?」

 

「それは……」

 

マリエルは少し困った顔をしてから、同席していたゲンヤに目で尋ねた。ゲンヤはマリエルの表情のの意味を理解したのか、頭を掻いてから部屋の隅から、ギンガの斜め前にある椅子に座る。

 

「そろそろギンガには話してもいいかもな。ギンガ、このことは………アキラはもちろん、スバルにも話すな」

 

「うん…」

 

ギンガが頷いたのを確認すると、ゲンヤはポケットから一枚写真を取り出した。そしてそれを、ギンガに見せる。写真に写っているのは、クイントとゲンヤ、幼い頃のスバルとギンガ、それから…茶髪の少年。

 

「ギンガは…昔たまに遊んだこの男の子を覚えてるか?」

 

ギンガは写真を見てもピンとしない表情を浮かべる。記憶が曖昧らしいのか、うっすら覚えてるような、覚えていないようなそんな風な感じにしか思い出せない、という表情だ。

 

ゲンヤは写真をしまい、遠い目で天井眺めながら話を始めた。

 

「今からもう十年くらい…それ以上前になるか……クイントの命日。クイントはとある研究所の秘密を手に入れるために…その研究所に仲間と侵入した。しかしその警備は硬くてな、途中まではうまく行ったんだろうが…やはり敵に気づかれた。それでクイントは殺された」

 

「……」

 

その場にいるゲンヤを含んだ全員の表情が暗くなった。ゲンヤはそれを感じながらも続ける。

 

「でもな、その部隊で遺体が帰ってきたのはクイントだけだったんだ」

 

ギンガが驚いた表情を浮かべた。当然だろう。

 

ギンガは管理局に入ってからクイントが死んだ事件を個人的に調べた。だが当時の記録を見てもあまり詳しいことは記されてはいなかった。事件の概要、任務の目的、参加した隊員が全員事件内で死亡、行方不明になっていること。その当時ギンガは少し気になったが、あまり気にしないことにしたことが一つあった。

 

クイントの遺体は誰が持ってきたのか?

 

「クイントの遺体はな……さっきの写真の……」

 

ゲンヤは一瞬アキラが眠っているベッドの方を見る。ギンガはそのゲンヤの瞳の動きを見落とさなかった。

 

「まさか………っ!」

 

「……アキラが持ってきたんだ。当時、敵の包囲網が強力で誰も入れなかった研究所から…。クイントの遺体を大切そうに抱えて、返り血なのかあいつの血なのか、白いコートを真っ赤に変えて……そん時あいつは錯乱して精神は正常じゃなかったらしい。一体どうやって研究所まで行って研究所に潜り込んでクイントの遺体を持ってきたか一切不明だ。そんなこと確認できる精神状態でもなかったからな」

 

クイントの遺体が戻ってきたことには合点が行ったが、なぜアキラがクイントの遺体をわざわざ危険を犯して運んできたことに疑問を持ち、ゲンヤに聞いた。

 

「アキラ君と母さんはどんな関係だったの?」

 

「お前はもうリイン曹長から、アキラの出生は聴いてるよな」

 

ギンガは頷く。

 

「アキラを造った研究所からアキラを救出したのがクイントだった。それから、何回か家に遊びに来てたんだ。そうだ、スバルの内気を直してくれたのもあいつだったな………まぁ、アキラはそんな感じでクイントを心の拠り所にしてたんだ…だが、クイントが死んだのを目の当たりにしたんだろうな。あいつはクイントの遺体を抱えたまま敵味方関係なく襲った。取り押さえるのにはかなり時間がかかったらしい。だがアキラは落ち着くことはなく、しょうがなくクイントとの思い出を封印した」

 

「…」

 

しばらくモヤモヤしていた気持ちが晴れたギンガは、未だに眠っているアキラを見た。時々アキラの表情に違和感を覚えることがあったのを思い出す。それは多分、ギンガと話してる時に記憶の鍵に引っかかるようなキーワードが出て、思い出したくても思い出せずに、現実との矛盾が折り重なってアキラもよくわからない状況に陥っていたのだろうと思う。

 

「わかりました、私もなるべく気をつけます」

 

「うん、ありがとうギンガ」

 

 

ー現在ー

 

 

アキラは準備を済ませて、車の運転をしながら機動六課に向かうことになった経緯を聴く。

 

「戦闘機人か……なるほどな、目的は違えど標的は同じってことか」

 

「出向するのは私とアキラ君だけど、六課のメンバーとの連携が必要だけど、まぁアキラ君なら大丈夫だよね」

 

「むしろ周りが足引っ張んなきゃいいけどな」

 

相変わらず口は悪いアキラ。だがもう周りも慣れてしまったのか、大した反応はなかった。

 

 

―機動六課―

 

 

さて、今日から機動六課にしばらくいる事になったアキラとギンガ。もちろん朝練も一緒に行う訳だが、最初に二人の紹介から始まる。

 

「もうみんな知ってると思うけど、今日からギンガとアキラ君が機動六課に出向して、事件の操作に協力することになりました」

 

「陸士108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です」

 

「同じく、橘アキラ陸曹だ」

 

それから、マリエルの紹介があって朝練の開始。だが、早速スバルとギンガが模擬戦をすることになった。

 

「いい、アキラは絶対に手を出さないでね?」

 

模擬戦が始まる前にフェイトがアキラに念入りに忠告する。アキラはそれをめんどくさそうに聞きながら最寄りの木に寄りかかった。一応アキラでもそこらへんはわきまえてるつもりではあるが、周りに信用されるはずもない。なんせギンガを守るために部隊長にすら刀を向けたのだから。

 

少しすると、なのはの合図で模擬戦が開始された。しかしアキラは模擬戦を見ることもなく、木の木陰で空を見上げるだけ。

 

「………見ないんですか?」

 

ティアナが尋ねる。するとアキラは少ししてから説明した。

 

「見なくても、勝敗くらいわかる。今回はギンガが勝つ」

 

「なんでわかるんですか?」

 

「スバルも強くなったが、まだだ。あいつにはまだ足りないものがある」

 

「足りないもの?」

 

「プライドと…勝ちに対する執着心だ」

 

ティアナはその意味が良くわからず、首を傾げる。アキラはティアナに「そんなことも言わなきゃわかんねぇのか」と言いたげな表情を浮かべた後、頭を掻きながらため息を一つ。そして、ティアナに説明を始めた。

 

「まず、ギンガはどういう立場にある?」

 

「えっと、スバルのお姉さんですか?」

 

「そうだ。そうなるとギンガは姉として負けられない立場になる。それがプライド。負けられないのなら意識しなくても、貪欲なまでに勝ちにこだわろうとする。それが人間だしな。だが、スバルにはそれらがない。あったとしてもそれはギンガには劣るだろう。妹だから特に気にするような物も無いしな」

 

アキラがあらかた説明を終え、ティアナを見るとティアナはなにか言いたげな雰囲気である。

 

「………言いてぇことがあるんなら言っても構わねえ。俺は誰かに尊敬されるような人間じゃねえからな」

 

「…では…お言葉ですがアキラ陸曹、スバルは確かに……まぁその、抜けてるようなところもありますが、決して妹だからなんて甘い考えをするような人間じゃありません」

 

「…どうだか」

 

アキラは試合を横目で見ながら言った。

 

「…」

 

試合は、二人の激しい地面での戦闘の後、互いにウィングロードを使った試合に発展している。アキラはそれを見ていると、訓練服の中から小さな瓶を取り出した。

 

「……何ですか?それ」

 

「傷薬。俺が山でとってきた薬草とかを組み合わせたモンだ。店とかで売ってるのよりも全然効く。今ギンガが利き手守ろうとして、右手で防いで傷を負ったのが見えた」

 

ティアナが試合の現場を見ても、二人の姿を認識するのがやっと。やはりこの橘アキラという人物は、ただ者ではないとティアナは改めて認識する。

 

数分後、激しい戦いだったが結果はギンガの勝利。だがギンガはいつも通りの勝利ではないことを実感していた。あんなに人を傷つけることも、傷つけられることも嫌ってたスバルがこんなにも強く、立派になったのを嬉しく思っていた。

 

「ギンガ、手出せ。怪我したろ」

 

「え?あ、うん」

 

アキラはギンガの怪我に薬を塗る。考えてみれば、スバルの内気を最初に治してくれたのはアキラだったという話を、ギンガは思い出した。

 

「ありがとう、アキラ君」

 

いつも、いつでも自分のことを心配してくれることと、スバルのこと、二つの意味を込めてギンガはアキラにお礼をいう。アキラはいつもの表情で応じた。

 

「ん……ああ」

 

そんな様子を見ていたスバルは試しに声をかける。

 

「アキラくーん、私も手に怪我してるんだけど〜」

 

「んなもんかすり傷だ。唾つけときゃ治る」

 

「………」

 

「さてと…次だね」

 

「ん?」

 

アキラがギンガの治療を終え、ギンガにタオルを渡しているとなのはに見られる。次とは一体なんの話だろうか。そんな顔をしていると奥からシグナムが出てきた。

 

「次は私とお前で模擬戦だ。元傭兵の力、見せてもらおうか」

 

「え?」

 

シグナムの興味もとい、アキラの実力を図るという意味も持った模擬戦、と言う事になっていた。

 

「たくっ事前に説明しろってんだよな」

 

「制限は5分。全力で戦ってね〜」

 

なのはは気楽に手なんか振っている。このあと、模擬戦ではなく戦士同士の戦になることも知らず。

 

「アキラ陸曹!」

 

シグナムが試合開始前にアキラに言う。

 

「なんだ」

 

「これは模擬戦だが、決して手加減はしない。全力でかかってこい」

 

それを聞いたアキラは、挑発するようにシグナムに言った

 

「副隊長さんが全力を出す程の相手ならな」

 

「ほう、面白いことを言うやつだ………では私もお前に全力を出させてやろう……」

 

「それじゃあ…レディ…ゴー!!」

 

なのはの合図で模擬戦が始まる。アキラは刀を抜刀しながらシグナムに突進した。シグナムはレヴァンティンを構えたまま動かない。アキラは動かないシグナムに一瞬フェイントをかけて斬りかかるが、第一撃は防がれた。

 

「ふっ…ぐぐ…」

 

「ぐ…」

 

刃が交差し、ギシギシと音を立てる。

 

「ハァ!!!」

 

「!!」

 

シグナムが一度アキラの刀を弾き、そこから抜刀してアキラに斬りかかる。斬りかかられたのをアキラはバク転で回避した。シグナムの攻撃はそれだけでは収まらず、更に一発強めの攻撃を放つ。アキラはギリギリでそれを防いだ。

 

「ふっ!」

 

アキラは防いだレヴァンティンを力で押し戻し、レヴァンティンごとシグナムを蹴り飛ばした。そして刀の先端をシグナムに向け、刀に魔力を籠める。

 

「氷牙っ!」

 

刀の先端から氷の刃が放たれた。シグナムはすぐに体勢を立て直し、氷牙をレヴァンティンで防いだ。しかし、氷牙はレヴァンティンに命中した瞬間炸裂し、一瞬シグナムの視界を覆う。

 

(しまった、これは目眩まし………っ!)

 

その一瞬でアキラはシグナムの後ろに回り、刀に魔力を溜める。

 

「氷牙………」

 

シグナムも対抗するためにレヴァンティンのカートリッジを一つ飛ばしてレヴァンティンに火炎を纏わせた。

 

「紫電………」

 

「「一閃っ!!!!!!!!」」

 

正反対の属性の魔力がぶつかりあい、その場に大きな衝撃波が広がる。互いの剣がぶつかった部分の地面にはクレーターが出来、そこを中心に波紋が広がっていた。

 

アキラとシグナムは互いに衝撃波から逃げるためにバックステップで距離を作っていた。シグナムはすぐさまレヴァンティンを構え直す。

 

「なるほど…なかなかいい動きをしている。魔力も中々の物だな」

 

「そいつは……」

 

アキラは鍛えた強靭な脚に軽く魔力を籠め、その場から前方に跳ね、一気にシグナムとの間合いを詰め、斬りかかる。シグナムは鞘のみで防ごうとしたが、一撃が思ってたよりも重く、止むを得ずレヴァンティン本体も使って防ぐ。

 

「どうも!!」

 

「ぐっ!」

 

シグナムは身体をねじり、アキラを弾いた。

 

「はぁぁぁ!!!」

 

「うらぁぁぁっ!」

 

互いに互いの刃を弾き、隙があればそこに攻め込み、攻め込まれたら防ぐか避けるかして反撃に移る。そんな一進一退の戦闘を約一分間続けた。

 

一方、その様子を見ていた傍観者達。

 

「すごいね、アキラ君。シグナムさんと互角に戦ってる」

 

「シグナムは全然本気じゃねぇけどな」

 

ヴィータが言う。

 

「でもアキラ君も本気じゃありませんよ、ヴィータ副隊長」

 

ギンガも言う。

 

「そうなのか?あたしからは結構一杯一杯に見えんだけどよ」

 

「アキラ君は刀で戦ってるうちは本気じゃないですよ。アキラ君はデバイスを出してからが本気です」

 

「へぇ…」

 

ヴィータは改めてアキラを見た。そう言われれば確かに、表情には余裕が見えなくないかもしれない。しかし引っ掛かるところもある。なぜ最初からデバイスを使わず、普段から刀を持ち歩いてるのか。

 

「ウェイ!」

 

アキラがシグナムの攻撃をいなし、カウンターを繰り出した瞬間だった。レヴァンティンが叫んだ。

 

『Schlange form』

 

「うぉ!?」

 

シグナムの剣が分列してアキラに襲いかかる。アキラはギリギリで連結刃を弾いた。

 

(連結刃!?また面倒なものを…)

 

アキラは刀に魔力を込め、居合切りの構えを取った。だがシグナムもそれに素直に突っ込ませるほど馬鹿でない。シグナムは連結刃をアキラの周りに渦巻かせるように操る。しかしアキラは構えを解かず、連結刃の動きを目だけで追っていた。

 

「氷牙…………一閃・拡!!!!」

 

アキラが刀を引き抜き、刀を振るうとアキラを囲っていた連結刃が一気に凍りついた。

 

「なに!?」

 

「もらった…!」

 

レヴァンティンが凍った隙をつき、アキラは連結刃の囲いからジャンプで抜け出した。そして、さっきよりも多く魔力を刀に注ぎながらシグナムに突っ込んで行く。

 

『Explosion』

 

カートリッジが一つ飛ばされ、レヴァンティンが火炎を放ち、解凍されて元に戻る。

 

「行くぞ…」

 

シグナムが居合切りの構えを取ると、レヴァンティンの炎が一段と大きくなった。何かくる。危険を察知したアキラは、足を止め、守りの構えを取った。

 

「火龍……一閃!!!!!!」

 

「炎熱砲!?」

 

アキラは刀に溜まった魔力を使わず、ガードで防ぐ。火炎がアキラの身体を痛めつける。アキラが耐えていると、少しずつ威力が弱まり視界が開けてきた。完全に視界が開けたさきに見えたのはシグナムの獣のような瞳だった。

 

「紫電一閃!!!」

 

アキラはさっき貯めたままにしてあった魔力を開放する。

 

「氷牙一閃!!!!」

 

アキラの構えから首を落とすことは出来たが、あえて武器を狙う。 刃が交差し、衝撃波が再び起こった。多くためていた魔力はシグナムの紫電一閃を押す。

 

シグナムも負けじと対抗する。

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」

 

魔力がぶつかり合い、爆発が起きた。爆煙が少しずつ晴れ、お互いの姿が目視出来るようなる。

 

「はい、そこまで〜」

 

アキラの刀はシグナムの首に、シグナムのレヴァンティンはアキラの首にいっていた。これはとりあえずお互いの、通常時の力は互角ということを認め合ったようなものだ。

 

「なるほど、お前の力はよくわかった」

 

そう言ってレヴァンティンを下ろす。

 

「あんたも中々だな」

 

アキラも刀を下ろした。

 

それから少し休憩が入り、次の訓練へ備える。なのはは木の木陰でくつろいでるアキラを見た。アキラは刀の手入れをしながらもギンガの方を見ている。なのははアキラの後ろに回り、こっそり近づき、驚かそうとした。

 

「ア」

 

声をかけた瞬間、なのはの首に刀が向けられていた。

 

「なんだ、高町隊長か。驚かせんな」

 

「こ、こっちが驚いたよ………」

 

アキラが刀をしまうと、なのははアキラの隣にしゃがみ込んだ。なのはが近くに、いや、ギンガ以外の女性が普通に自分に近づいてくるのは珍しいと思うアキラだが、別に追い払う理由もないのでどうもしない。

 

「………何か用か」

 

「アキラ君はどうしてそこまでギンガを守ろうとするの?」

 

「理由がなくちゃダメか」

 

「ううん、ただちょっと気になって」

 

アキラは手入れを終えた刀の刃に日差しを反射させる。

 

「俺は夢がない、権力もない。あるのは無駄な学力と戦闘技術だけ。だから戦うことしか出来ない。だったら、人を傷つけるよりも守った方がいいだろ」

 

「………そうだね」

 

なのはは微笑んだ。アキラはなぜなのはが微笑んだのかわからず頭に「?」を浮かべたが、なのはは事情は言わず、立ち上がった。そして休憩終了の知らせを叫ぶ。

 

「さぁ!みんな!休憩は終わり!今日の最後の訓練いくよー!」

 

「はーい!」

 

アキラは疑問を残しながらも、立ち上がりギンガとFW達の横に並んだ。

 

「本日最後の訓練は、隊長部隊対、FW+αでの模擬戦です!」

 

「え………えぇ!?」

 

それを聞いたギンガは文字通り目を丸くする。

 

「あ、ギン姉、この訓練はたまにやってるやつでね」

 

「制限時間内で全力で逃げて」

 

「指定された攻撃で一撃でも入れられれば隊長は撃墜ってことになります」

 

「私たちも一撃で撃墜されるんですけどね」

 

説明しなれた様子で四人はギンガとアキラに説明した。

 

「四人で綺麗にリレーしてんじゃねぇよ気持ち悪りぃ。でもまぁ大体ルールはわかった。単純で助かる」

 

「ギンガはスバルと同じでデバイスを使った攻撃。アキラ君はその刀かデバイス、どっちでもいいけどなるべく本気でね」

 

「ああ、全力でぶっ潰してやる」

 

 

 

 

続く

 


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