C108の時に本を出したかったのですが中々うまくいかなかったので、この日に投稿しようと思います。
まだ終わってない話もいくつかありますが、とりあえずこの話を終わらせます。
完結編は二部構成にして9月中には終わらせます。
ガンブレの話もいつかかけたらいいな。
応援ありがとうございました。
エクリプスウィルス事件。世界にまき散らされた「毒」。それが多くの世界を絶望と恐怖に陥れた。特務六課と多くの管理局員によって事件は終息した。
その被害者であり、事件を解決した管理局員の関係者出会ったトーマ・アヴェニールはエクリプスウィルスを完治させ、同じくすべての始まりであったアキラ・ナカジマも同じようにエクリプスウィルスを身体から消すことに成功した。
―黙示録の祭壇―
「最近は、暴走が少ないですね」
ここは黙示録の書が封印されている祭壇。今日も見張りのサラが黙示録の封印を維持していたのだが、今日は普段よりも暴走が少ない日だった。
「さて、今日は何を飲みましょうかね………」
サラの最近の趣味は紅茶だ。毎日いろいろな茶葉を試している。幼い日からずっとこの祭壇でテレジー家の役目を果たしている彼女にとっては、紅茶の味の違い一つとっても大きな変化なのだ。
「…?」
だが、カップを準備していると、カップが僅かに振動していることがわかった。
「これは…」
刹那、サラは黙示録を封じている空間の地下からなにかが上がってくるのを感じた。
「何が」
声を出すよりも、黙示録を封印している空間がスタッフに覆いつくされるのが先だった。
―ナカジマ家(アキラ宅)―
「おはようギンガ」
「うんおはよう」
中島家では、いつも通りの平和な朝が迎えられていた。アキラが早く起き、朝食を用意しているとギンガも起きてきた。二人で朝食の準備を進めていると、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま」
「ノーリ!おかえり」
そしてノーリが朝のトレーニングを終えて帰ってきた。事件からさらに5年の年月が経っていた。ノーリは今や正式なDDSA選手として活躍している。
「母さん、今日夕飯いらないから」
「あら、リンネかアインハルトと約束?」
「ああ。二人とな」
「お前もいい加減どっちかに決めたらどうだ?」
「そんな簡単な話じゃねぇし、俺は父さんみたいに馬鹿まっすぐじゃないんだ」
かつてはアキラのクローンとして生まれたことで、養子であったものの、アキラとギンガを両親と思うことはなかったが、少しずつその心の壁はなくなり、今では本当の親子のように接していた。
「アリスを起こしてくる」
「ああ、頼んだ」
ノーリがアリスの部屋に行くとアリスはまだすやすやと寝息を立てていた。
「アリス、起きろ。朝だぞ」
「ん~………あ、兄さまぁ、おはよぉ」
もうアリスも大きくなって聖ヒルデ魔法学院の一年生だ。
「ああ、おはよう。父さまと母さまが朝ごはん作ってるぞ」
「ん~……だっこ」
「だめだ。そんなあまえんぼじゃ父さまや母さまみたいに立派になれないぞ」
「いいんだも~ん。アリスは父さまや母さまや兄さまみたいに戦う人じゃなくて、もっと平穏に暮らすんだも~ん」
管理局の戦力の中でも上位の父と母の娘でありDASS選手の妹ではあるが、アリスは戦うことを望んでいなかった。
(ま、その方がいいよな……)
結局折れたノーリはアリスを抱っこしたまま居間に降りてきた。
「も~アリスはまた」
「まぁいいじゃねぇか」
「甘すぎるんじゃねぇか?お兄様?」
「茶化すな」
いつも通りの平和な一日が始まろうとしていた。
だが、その平和はアキラとギンガの通信機に緊急のアラートが鳴ったことで崩れ去る。
「………父さま……母さま…」
「ノーリ、アリスを学校まで送ってくれるか」
「ああ」
「ごめんね……」
二人はすぐさま準備をすると、家を飛び出していった。
―管理局本部 ファントム―
緊急用のアラートは通常の物ではなく、ファントム専用の物だった。ギンガはエクリプスウィルス事件の際には一時的にファントムとして同時捜査権を持っていたがそれはもうない。
しかし、エクリプスウィルス事件のようなことを再度起こさないためにも特例としてアキラと一緒にいることが許されているのだ。
「ファントムが召集されるなんて穏やかじゃねぇな」
「ああ。はっきり言ってこれは今相当まずいことになっている。正直今ここで話している時間も惜しいほどにね」
普段は何が起きてものらりくらりとしている小此木の顔に焦りが見えていた。アキラは相当なものだと察する。
「何があった」
「黙示録の封印が解かれた」
「え!?」
「サラは!?」
「………行方不明だ…。以前話した黙示録の道具には、書、槍が存在している。そしてそれは君達も見ているね」
「ああ」
「そして噂に鍵があるという話をしたのも覚えているかい」
「………まさか」
「ああ…………鍵が出現した。黙示録が封印されていた空間の最下層に封印されていたんだ。それが暴走し、封印の間を破壊した……」
「…………」
以前から黙示録の鍵と呼ばれる黙示録シリーズが存在しているという話はあったが、存在は確認されていなかった。しかしそれは黙示録が封印されていた空間の最下層に存在していたのだ。
「…………それで」
「鍵は人型の物であり、意思をもって行動している。いまどこにいるのか……」
そのとき、管理局中に緊急アラートが鳴り響いた。
「ミッドチルダ南西に超巨大な魔力反応!!!」
「まさか……」
―ミッドチルダ南西部―
「兄さま……あれ何?」
アリスが指さす先には長髪の男性が空中にたたずんでいた。
「…………っ!!!!!!!」
ノーリには、アキラとつながっていた期間分の戦闘体験や経験がある。要するに命のやり取りをした現場にいた時間が長い。だから、空中に見える長髪の男を見た瞬間に気付けた。
あれは危険だ
ノーリはとっさにバリアジャケットを装着し、アリスを抱えて可能な限り遠くへ飛んだ。
「兄さま!?」
「アリス!!黙ってろ!舌を噛む!!!!」
一方、長髪の男はミッドチルダの街並みを眺めていた。
「…………あれから随分と時間が経つと言うのに………人類はまだ愚かな戦争を繰り返しているのだな……」
そう、この男こそ長年の封印から解き放たれた。黙示録の鍵であった。
「無駄に発展した魔術と科学、次元航行技術………どれだけ規制、管理したところで過ちは繰り返される………であれば」
黙示録の鍵は、指を地面に向ける。
「いっそ消えた方が。苦しみもないだろう」
黙示録の鍵の指先が光ると同時に、南西部一帯が、吹き飛んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「う………」
アリスが眼を覚ますと、あたりには粉塵が舞い、司会が不良あったが瓦礫が転がりさっきまで見ていた街並みはないのが分かった。ノーリに抱えられ、空を飛び、それから少ししてとても大きな光が見えたところまでは覚えている。
「……なんで…こんな兄さま…?」
「ア………アリス」
「兄さま!!」
声のした方を見ると、そこには瓦礫の下敷きになり、頭と片手だけが見えているノーリがいた。
「兄さま!兄さま!!」
「俺は………大丈夫だ……アリス…お前はなるべく遠くへ…」
「嫌!いや!兄さまぁぁ!!!!」
アリスは泣き叫びながら必死に瓦礫をどかそうとする。ばかりでその場を動こうとしない。
「アリス………早く…」
「ノーリさん!?」
偶然だったが、たまたま近くを通りかかったリンネ・ベルリネッタが来た。急な爆発と爆風に襲われたが鍛え抜かれた身体でそれをしのぎ、動体視力で飛ばされてくる瓦礫を回避していたのだ。
「リンネ………アリスを……頼む…」
「そんな……こんな瓦礫すぐにどかします!!ノーリさんも……」
「リンネ!!!」
(もう………俺は助からない)
「え……」
ノーリは途中から念話で話し始めた。
(腰から下がもう吹き飛んでる………瓦礫から出たところで助からねぇ……)
「そんな………」
(だから頼む………アリスだけでも……安全なところへ………)
「…………っ!」
リンネはあふれ出るショックと悲しみを無理やり飲み込み、アリスを抱きかかえる。
「リンネお姉さま!いや!離してぇ!!」
「………ノーリさん……アリスさんは必ず安全な場所に連れていきます……」
「………頼んだ」
「兄さまぁぁ!」
今にも消えそうな意識の中、ノーリは最後の力を振り絞って笑った。
「大丈夫だよアリス。兄ちゃんが強いの知ってるだろ?あとで絶対追いつくから………だから、リンネお姉ちゃんの言うことよく聞いて………な?」
「………うう……絶対…だよ?」
「ああ………絶対……だ」
「………っ!!」
リンネはあふれ出しそうな涙を抑えながら、黙示録の鍵がいる方向とは逆の方向へ走り出す。ノーリはそれを何とか見送り、姿が見えなくなると口から大量の血を吐いた。
「ごぼっ!…………悪いなアキラ…しばらくアリスが悲しむだろうが、まぁ、うまくごまかしてくれ………やべぇやつだが………絶対に…………勝…………て……………よ?」
ノーリは地面に力なく頬をつけ、後に絶命した。
そして、黙示録の鍵は自身が放った攻撃によって腕が震えていることに気付く。
「………まだ……完全ではない……か。まぁいい」
黙示録の鍵は黙示録の書を取り出し、ページを開く。すると、空間が開き、そこから大量のスタッフが流れ出し、地面を覆いつくしていく。
「俺が動かずとも、これで終焉は早まるだろう」
―管理局ファントム本部―
「まさか………こんな………」
「………これから管理局最大警戒態勢を敷く。地域住民には地下シェルターへ避難を促せ。最寄りの局員にも出撃命令は出さず、僕とツムギ、アキラの三人で出撃、黙示録の鍵を打ち滅ぼす!」
緊急かつ異例の指示が出された。幸いにも黙示録の鍵は初撃以降行動を起こさず、同じ場所にたたずんでいたので避難も、局側の準備も万全に完了した。
だが地上はかなりの割合がスタッフに包まれていた。
出撃間近になり、アキラとギンガは別れの挨拶をしていた。
「アキラ君……」
「安心しろ。俺は絶対、勝ってくるよ。ツムギもいるんだ大丈夫」
「うん……」
「それに……………ノーリの仇は絶対に討つ………」
「生きて帰ってね」
「当たり前だ」
いつも通りな態度を示していたが、アキラは明らかに怒りに身を焦がしていた。すでにエクリプスウィルスは失われ、以前のように無理な戦いはできないが、紫皇の力と胸に秘められたロストロギアの力は健在だ。
「行くぞ、アキラ、ツムギ」
「ああ」
「うん」
小此木はすでに力の制限を解除し、普段であれば社交性の方で優先して出るはずのカエデも今は引っ込み、戦闘力重視のツムギが表に出ている。それほどに、深刻な事態ということだ。
三人は黙示録の鍵の前に転送された。
「さて………君が黙示録の鍵………ということでいいのかな?」
「………あの少女と……戦った戦士か」
あの少女というのはクラウドのコトだろうとアキラは察する。
「管理局だ。おとなしく投降しろ」
「…………俺は人ではない。打ち倒すというのなら、好きにしろ」
「じゃ、遠慮なく」
ツムギは瞬時に動き、目にもとまらぬ速さで黙示録の鍵に蹴りを放った。しかし、かつてアキラをぶっ飛ばし、ビルを三棟ほど貫通させたほどの蹴りを、黙示録の鍵は片手で止めた。
「……」
だがツムギは動揺も見せず、すぐさま軍刀を振った。黙示録の鍵はその攻撃をスタッフで作った触手で防ごうとしたが、ツムギの斬撃でスタッフは消し飛ばされた。
そして一気に突きを放ったがその突きは黙示録の鍵が出現させた槍によって防がれた。
「黙示録の槍…」
「はぁぁ!!」
少し出遅れたがアキラも黒星を抜いて切りかかる。しかし、目の前に大量のスタッフが伸び、アキラの行く手を阻む。
「このっ!」
「アキラ!惑わされ……ぐぁぁぁ!!」
小此木が地面から伸びてきたスタッフに襲われ、地上を覆うスタッフの海に飲まれていった。
「小此木!!」
小此木が飲まれたことに気を取られ、アキラも同じように波にのまれかけたが、アキラは何とかそれを避ける。しかし、次々と迫ってくるスタッフに対応しているうちにどんどんツムギと距離を離されてしまう。
「くそっ!」
「………」
だが、ツムギはそんなことも気にせず、黙示録の鍵との戦闘を続ける。
「お前は何のために戦う」
「私?」
一般人が入りこめば瞬時にサイコロステーキになるであろう軍刀と黙示録の槍との応酬が続く中で黙示録の鍵はツムギに話しかける。
「戦えって言われたから戦うだけ」
「虚しいな」
一瞬の隙を狙い、黙示録の鍵は魔力光線を指先から放つ。その光線はツムギの脛を貫通する。
「っ!」
「もらった」
黙示録の鍵は槍を突く。何とかツムギはそれをなんとか躱した。しかし遅れてやってきた衝撃波にバリアジャケットが粉砕され、それと同時に右腕が吹っ飛ぶ。
「………っ!」
「サヨナラだ」
黙示録の鍵はツムギの腕を掴むとそのまま地面を流れるスタッフの渦に投げた。相当なスピードで投げられたのか、腕の痛みもあってか、抵抗できずにそのままスタッフに呑み込まれた。
「ツムギ!!」
ツムギの方に向かおうとした瞬間、アキラは目の前に迫った槍を目にする。
間一髪のところでその槍を刀で防ぐもののアキラは後方にあったビルに突っ込む。防いだ刀を持っていた手がびりびりとしびれている。顔を上げると黙示録の鍵がすぐ目の前に立っていた。
「あとはお前だけか」
ツムギも小此木もスタッフの濁流から上がってくる気配はない。
「………くそっ!」
アキラは黒星を抜いて構える。あのツムギが一瞬で倒された相手に、太刀打ちできるのか。そんなことはわからない。だが、勝てる勝てないではない勝たなくてはならない。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」
続く。