とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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すいませんいろいろやってたら遅くなってしまいました。
9月中は難しいかもですが、ペース高めていきます。あと少し、お待ちください


完結編:Ⅰ 絶望

その日は、絶望の日となった。ファントムという名を伏せて、次元管理局の精鋭が対処に当たっていると庶民には知らされ、その戦闘の様子は映像で全世界に中継されていた。

 

そして、小此木、ツムギと精鋭が落とされていく中、最後に残ったのはアキラだけだった。

 

黙示録の鍵の攻撃は素早く、重い。

 

おまけに真下を流れるスタッフの濁流からも触手を使った攻撃が来る。アキラが一人きりでそれをどうにかできているのは、アキラが歴戦の戦士であり、数々の死闘を潜り抜けてきていたからだ。

 

だがアキラでも反応するのがやっとだ。連撃が来れば息をする暇もない。

 

 

「はぁ………はぁ………はぁ………」

 

「………ずいぶん、粘るな」

 

「テメェの目的はなんだ!」

 

「………俺は黙示録と共に人類の刻んて来た歴史を見た。黙示録が食らう人間の絶望、悲壮はいつの世も変わらなかった。同じ歴史、時代、悲しみを幾重に繰り返すだけなら、人類にもはや存在価値はない。全てを無に返し、終焉を作り上げる」

 

「てめぇがそんなん勝手に決めんな!」

 

アキラはマイティギャリバーをガトリングモードで起動させ、黙示録の鍵に向かって弾丸をばらまく。

 

そんなものになんの意味はない。アキラもそんなことはわかっている。

 

だが、奴はこれを躱すことはわかっていた。躱すことで生まれる僅かな隙。アキラはその隙にすべてをかける。

 

「一閃必倒…っ!竜閃禍!!!!!!」

 

アキラの持っている技で最大にして最強の奥義。それは見事に黙示録の獣に命中した。黙示録の獣はビルを貫き、吹っ飛んでいった。

 

決まったように見えた。

 

だがアキラは小さくため息をついて口から血を吐く。

 

「ああ………」

 

その瞬間、アキラは背後から槍で貫かれた。

 

「よく頑張ったが、もう、終わりだ」

 

「こんな強ぇの、ルール違反だろ………」

 

黙示録の書がもたらした災悪は今に始まったことではない。ウィード、そしてクラウドと黙示録の獣によってミッドは壊滅的な被害を食らった。

 

でもみんなでなんとかできた。今回だって、最大戦力が同時に出た。負けることはないと思っていた。

 

だが、結果はこれだ。

 

竜閃禍を放った時の手ごたえでアキラはもうわかりきっていた。

 

 

 

(勝てねぇ…………ギンガ………みんな………逃げ…)

 

 

 

アキラは槍を引き抜かれ、そのまま地面に落ちていく。そして、スタッフの濁流にのまれ、消えていった。

 

 

 

ー時空管理局本部 会議室ー

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

その様子は、管理局で流されていた。誰もが信じて疑わなかったファントムの勝利。しかし、結果は、このざまだ。ギンガもその様子を見ていた。

 

目の前で最愛の人間をなくすのはこれで二度目だった。誰も、ギンガに声をかけることはできない。かけられないのではない。皆、気持ちは同じだったからだ。

 

会議室にいるのは、ギンガ、メグ、そしてエリオやキャロ、スバルを覗いた元六課の面々。

 

そこに、はやてがやってくる。

 

「いま、上層部からの命令が下されました。ただいまをもって、時空管理局及びその関係職員全員は現時空管理局本局を破棄、次元艇を使用し、一般市民と共にミッドチルダからの脱出を最優先にすること」

 

「そんな…」

 

「現最高戦力が負け、これ以上の消耗を抑える方針………だそうです」

 

「…………メグ」

 

「アリスは預からない」

 

ギンガが言おうとした言葉をメグは遮った。その言葉に、ギンガは絶望的な表情を見せた。これまで見せたことがないほどの顔にメグはやや顔を反らす。

 

「お願いよ…」

 

「ウーノだって断ると思うわ。マスクの時とは事情が違う。あんたが行動してどうなるもんでもない!」

 

ギンガは力なくメグの肩を掴む。

 

「お願い……………ここで…死なせて」

 

「聞けるわけないでしょ…アキラはあんたを死なせるために前線に出たわけじゃない!!」

 

その直後、管理局本部が大きく揺れた。

 

「なにが…」

 

モニタを見る。黙示録の獣が、もうすぐ前までやってきていたのだ。本局の防御壁も破られ、いまにも街を吹き飛ばした攻撃で本局が破壊されてもおかしくない。何なら下層部はすでにスタッフに覆われ始めている。

 

「…………緊急避難!!!」

 

「ギンガ!とにかく今は逃げるわよ!!」

 

六課メンバー含め、全員が脱出艇に急ぐ。ギンガもメグの言葉に小さくうなずきながら脱出艇に急ぐ。去ろうとするギンガは、横目でモニターに映る黙示録の鍵を見つめていた。

 

「アリス!!」

 

「母様!!今の揺れ、何!?」

 

別室で預かられていたアリスをギンガは抱きしめて脱出艇に向かって走る。

 

「大丈夫!今から安全なところに避難するから!!」

 

「父様は!?それに、ノーリは………」

 

「…………………っ!大丈夫…だよ!」

 

必死に取り繕う。ノーリに念話も通じない。おまけに外はスタッフで埋め尽くされている。もう、生存は絶望的だ。

 

脱出艇に向かう道中、ギンガたちの前にはやてと守護騎士たちが現れた。

 

「はやてちゃん!」

 

「はやて、どうしたの?みんなも」

 

「私たち、八神はやてならびに守護騎士には、黙示録の鍵の迎撃命令がでました」

 

「そんな…っ!」

 

「なら、私たちも一緒に!!」

 

「あかん!!!!」

 

珍しいはやての怒鳴り声が、廊下に響き渡った。今にもバリアジャケットを展開しようとしていたなのはとフェイトはその言葉に動きを止める。

 

「二人は現状最も可能性のある戦力の二人や。別の次元で対抗策を練って、確実に獣を仕留めなあかん」

 

「それじゃあ………」

 

そんなのは、はやては捨て駒だと言っているようなものだった。そんなの二人が許すわけがない。だが、はやての目には決意がみなぎっていた。

 

「アキラ君が命張ったのに、ウチが命張らないわけにもいかない。大丈夫や。脱出艇が出発できたらウチらもタイミング見て引く」

 

はやては優しく微笑むが、その笑顔は作り笑顔であることは容易に分かった。だがはやての言うこともごもっともだ。なのはとフェイトは気持ちをぐっと抑え、敬礼をする。

 

「ご武運を」

 

「まかしとき」

 

なのはたちが去ると、はやては小さな深呼吸を一つする。

 

「ほな、行くよ、みんな」

 

「どこまでもついていきます。我が主」

 

 

 

ー脱出艇ー

 

 

 

脱出艇には当然のごとく多くの局員が押しかけていた。ギンガたちもその順番を待っていた。

 

「ギンガ姉!!」

 

そこにセッテ、ウーノ、ウェンディ、チンクがかけてきた。

 

「…………セッテ…ウーノ」

 

「ギンガ………その…」

 

ウーノはギンガの前に立つが、何も言えなかった以前アリスの世話を任されたとき以上の顔だ。何とか、言葉をしぼりだそうとしたとき、デッキの下層階にスタッフが流れ込んできた。

 

「スタッフが……!」

 

「みんな!急いで脱出艇……………に」

 

局員を誘導していたフェイトの言葉が止まる。

 

流れ込んできたスタッフの濁流の中に、見知った人間の腕と、剣が見えたからだ。フェイトは瞬時にバリアジャケットを装備して下層階に飛び込む。

 

「シグナム!!!!」

 

急いでスタッフの濁流から、シグナムの腕を引っ張った。

 

 

 

しかし、その濁流の中から引っ張り出されたのは、レヴァンティンを握ったシグナムの腕だけだった。

 

 

 

「--------------っ!!!!!!」

 

 

 

声にならない声を上げた。そして、その刹那の動揺を狙われ、フェイトまでもがスタッフの渦に呑み込まれた。

 

「っ!!皆さん!早く乗ってください!」

 

すぐにでもフェイトを助けに行きたかったなのはは感情を抑え、迫ってくるスタッフから局員を守る選択をした。それを見ていたギンガは、一つの決意をする。

 

「ギンガ姉!!急いで!!!」

 

「ギンガ!!」

 

「……うん」

 

急いでギンガは脱出艇に向かう。すでにナンバーズとなのはも脱出艇に乗っている。閉じかけているドアにギンガも駆けた。

 

 

 

そして

 

 

 

アリスをウーノに押し付けた。

 

 

「ギンガ!!!!」

 

「母さ」

 

それと同時に脱出艇のドアが閉じ、脱出艇が動き出した。ドアの前でアリスとナンバーズの叫ぶ声が聞こえてくる。

 

 

ギンガは振り返らずにバリアジャケットを装備した。

 

「ごめんね。アリス。馬鹿な母様で…………でもね」

 

ギンガは上を見る。そして、ウィングロードを展開して天井を突き破って外に出た。外に出ると、少し離れた場所に黙示録の鍵がいることをギンガは視認する。

 

 

 

先ほど迎撃に出たはやてと守護騎士たちが、すでにいないことも。

 

 

 

「……………あの時の、女か」

 

ギンガを視認した黙示録の獣は、その姿を見てクラウドと戦った管理局の人間であることを認識する。

 

「アナタを…………倒す!!!」

 

ギンガが纏っているバリアジャケットはライジングネメシスギャリバーだ。さらに目も赤い。最初から限界まで戦闘力を上げている。

 

「ふっ!」

 

ローラーブーツを極限まで回転させ跳ねるようにジャンプし、ウィングロードに頼らない高速空中移動を行う。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ギンガのリボルバーナックルが黙示録の鍵の顔面にめり込み、鍵を近くの建物まで吹っ飛ばした。

 

「………」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

ギンガはさらに追撃する。強力な蹴りが鍵に命中したように思えた。しかし、ギンガの足がビルを砕いただけでそこに獣はいなかった。

 

「!!」

 

刹那、ギンガは体をねじって背後に迫っていた槍を何とか躱す。そして一気に跳ねて距離を取った。全く気付かないうちに鍵はギンガの背後にいた。

 

「…………ずいぶん無茶をしているな」

 

「うるさいっ!」

 

再びギンガは獣に向かって跳び、拳を振ったがそれは空を切るだけだった。

 

「あの男の伴侶だろう?案ずるな。すぐに後を追わせてやる」

 

再び背後を取られた。すぐに振り返って反撃ないし回避に移ろうとする。しかし、ギンガの体をスタッフが押さえ、反撃を妨げる。

 

戦闘機人としてのリミットを外しているギンガに高々スタッフの拘束はほんの一瞬身動きを妨げる程度の役割しか果たせない。

 

しかし、敵はツムギ相手に互角以上にやりあう存在。

 

その一瞬で十分。

 

ギンガの目の前に槍が迫る。

 

「っ!!!!!」

 

「幻影跳躍(ファントム・ステップ)!!!!」

 

ギンガを槍は確かに貫いた。しかし、それに手ごたえはない光の粒となって消滅した。

 

「……………新手か」

 

ギンガを助けたのはメグだ。得意技のファントムステップでギンガを間一髪助けたのだ。

 

「メグ…」

 

「フンっ!」

 

直後、ギンガの頭にメグのデバイスがめり込む。

 

「いった!」

 

「この馬鹿!!なに勝手に死のうとしてるのよ!!!!あんなに止めたのに!!!!」

 

「アナタこそ、こんなところにノコノコ出てきて!死ぬ気!?」

 

「死んでたまるかぁ!!」

 

今度はギンガを思いっきりぶん殴る。

 

「彼氏も見つけてないのにまだ死ねるもんですか!!こいつぶっ飛ばして、アンタをアリスのとこまで連れ帰る!!」

 

「勇ましいな。だがたった二人で俺に勝てると思うか」

 

「あら?誰がアタシ一人だって行った?」

 

「なに?」

 

鍵の背後から七本の刃が回転しながら襲い掛かる。しかし、その程度の攻撃は地面を覆うスタッフで防がれる。

 

「さすがに一筋縄ではいきませんね」

 

そこに来たのはセッテだった。

 

「セッテ!」

 

「…………愚かだな。先ほど、お前よりも実力のある仲間が、俺に殺されたのをもう忘れたか?」

 

「………」

 

(セッテ、わかってるわね)

 

(はい、最大限隙を作ってギンガ姉を逃がします!!)

 

セッテとメグは息を合わせて同時に飛び出す。

 

「スタッフとは後悔…………人の記憶と感情の塊」

 

地面を蠢くスタッフが鍵の腕に巻き付き、先端に鎌のついた触手が三本生成される。ただの黒い何かとしか認識できなかったスタッフは色を変え、硬度を変える。

 

かつてウィードの肉体を作っていた時と同じだ。

 

(触手型の武器!)

 

(でも攻撃の隙は与えな…)

 

「消えろ」

 

次の瞬間、目にもとまらぬ速さで動いた触手は、セッテの上半身を切り飛ばした。メグはファントムステップでなんとか回避していたが、鍵の攻撃の際にとっさに出した手の小指と薬指がずるりと落ちるのが分かった

 

「セッテ!!!!!!!」

 

「こんのぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

メグは痛みを気にするよりも先に鍵の横に回り込んで攻撃を仕掛けようとする。そのとき、スタッフの濁流の中から片手を失ったシグナムが飛び出してきた。

 

「紫電一閃!!!!!!!」

 

おそらく、片手を失いながらも身を潜めていたのだろう。拳で紫電一閃を放ってメグとの挟撃を行う。

 

しかし、メグは槍に、シグナムは触手を束ねて作られたドリルに貫かれた。

 

「がっ………」

 

「ごほっ…」

 

「先ほどの守護騎士とやらか。闇の書の主ともども確実に仕留めたと思ったが」

 

「きさ………ま」

 

「どこまでも、愚かだな。だからこそ俺が滅ぼす。すべてを滅ぼす。悲しみも、苦しみもない世界へ」

 

鍵はシグナムとメグを近くに放り投げる。シグナムはビルの上に、メグはスタッフの濁流にのまれた。ギンガはあたりを見回す。

 

体を切断され、動かなくなったセッテ。腹部に大穴を開けられ絶命したであろうシグナム。スタッフに飲まれていった親友。

 

さっきまで隣にいた頼もしい戦友は今や動かない肉塊となっている。

 

「セッテ…………シグナムさん…………メグ………」

 

「絶望したか。女」

 

鍵が語り掛けてきた。

 

「何を思って俺の前に来たか、それは聞くまい。だが、これはお前の行動が招いた結果だ。お前も死を受け入れろ」

 

 

 

続く

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