とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅くなりました〜。ギンガ愛してる〜!!


第十二話 傷心

前回のあらすじ

機動六課へ出向してきたギンガとアキラ、ギンガとスバルの姉妹対決、アキラとシグナムの剣を使う者同士の激しい戦いの後に、二人を待っていたのは隊長部隊VSFW部隊という理不尽な組み合わせの戦い!アキラはギンガを守り抜く事はできるのか!!

 

「こんなの↑今まであったっけ?」

 

「作者の気まぐれだそうだ」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「うおおおおお!!!」

 

グラーフアイゼンを振り上げながら飛ぶヴィータ。ヴィータが追いかけてるのは、スバルだった。

 

「ひいいいい!」

 

「オラオラァ!全力で戦わなきゃいつまで立っても勝ち星あg」

 

ヴィータのセリフを、茂みから突然出てきたアキラの足蹴りが邪魔をする。勢いよく飛んでいたヴィータは、そのまま地面をスライディングして行った。

 

「ん、何か蹴ったか?」

 

蹴った張本人もヴィータに気づいてない。

 

「痛ってぇ……不意打ちとはやってくれるじゃねぇ……ってあれ?」

 

ヴィータが起き上がった時には、アキラはすでにその場にいなかった。アキラは先ほどフェイトの襲撃を受け、ギンガからだいぶ引き離されてしまったのだ。何とかフェイトを振り切り、ギンガの元へ向かってる途中だった。

 

ようやくギンガの姿が見えたかと思うと、ギンガはライトニング達と仲良くなのはに襲われているところ状態。

 

「ギンガ!」

 

アキラは懐から何かを取り出し、ギンガの足元に投げた。

 

「キャア!?」

 

投げたものが一瞬で大量の煙を発生させる。アキラが投げたのは煙幕が発生する小さな爆弾。煙幕でなのはの視界を曇らせているうちにアキラは、ギンガとライトニング達を抱えて茂みに飛び込んだ。

 

「ふぅ……」

 

「アキラ君、助かったよ………なのはさん結構本気で来るから」

 

「模擬戦とはいえ使用するものは本番となんら変わりない。これが傭兵の訓練だったら全員死んでいる。大切なのは、臨機応変だ」

 

アキラは軽い説教じみたことを言ったが、それに同意する者が一人いた。

 

「うん、その通りだね♪」

 

いつの間にか、なのはが真後ろに立っていた。

 

(こいつ、俺の煙幕を逆に利用して…………っ!)

 

アキラはギンガを抱えて茂みから飛び出す。そして、アキラはとうとうなのは達相手にECディバイダーを出した。地面に着地した時には、救出し損ねたライトニングはもう撃墜されている。アキラはギンガの前に立ち、刀をなのはに向けた。

 

なのは一人なら、ディバイダーを持ったアキラなら負けることはない。だが、状況はさらに悪化する。ライトニングどころか、スターズも撃墜されたらしく、残りの隊長が集まって来た。

 

「さっきの借りを返しに来たぜ」

 

「もう降参かな?」

 

「アキラ君………」

 

ギンガはアキラと背中合わせで立つ。ギンガはもうダメって顔をしているが、アキラは表情を微動だにさせない。それどころか、余裕の表情である。

 

「うまくかかってくれたか」

 

「!?」

 

「ギンガ、目ぇ瞑れ!」

 

そういうとアキラは上空に手榴弾のような物を投げた。

 

「非殺傷の閃光玉だ。これであんたらの視界を潰す」

 

隊長ら全員の視線が一瞬閃光玉に向けられ、全員視界を守ろうと目を瞑る。その刹那、アキラは刀を構えてまず、なのはに突っ込んだ。刀を振り下ろす直前にアキラは小さくつぶやいた。

 

「なんて、嘘だ」

 

アキラはバリアジャケットのみ切り裂くつもりで刀を振り下ろすが、その攻撃はなのはがとっさに出したレイジングハートで防がれる。

 

「何となく怪しいと思ったよ………っ!」

 

アキラが投げた閃光玉は何も起こらず、ギンガの後ろに落ちただけだった。そのことに隊長達も気づき、目を開ける。そして、一斉に二人に襲いかかろうとしたが、アキラはギンガを守ろうとしない。

 

「嘘ってのも嘘だけどな」

 

アキラが言った瞬間に閃光玉は強力な光を発した。隊長達は一瞬目を潰される。ギンガはアキラを信じてずっと目を瞑っていたおかげで光を食らってない。アキラは光が収まらないうちに、ディバイダーを上空に向けた。

 

「フロストバスター・拡!!」

 

少しのチャージの後に一発の魔力弾が上空に放たれる。魔力弾は少し上がったところで無数の小さな弾に変わって隊長達のいる場所に一斉に降り注いだ。

 

それから役一秒後、光は完全に収まったが、隊長全員のバリアジャケットが所々氷ついている。それはアキラの技が命中したということだ。アキラは隊長達の状態を見た後、刀を納刀した。そしてバリアジャケットを解除する。

 

「ルールは、決められた武器で一発でも入れられれば、隊長は撃墜……それで良かったよな?」

 

反論できる者はいなかった。

 

 

ー訓練終了後ー

 

 

「キツイね〜。スバル、いつもこんななの?」

 

訓練は終了し、ギンガは身体をほぐす運動をしながらスバルに尋ねる。スバルも同様の行動をしながら答えた。

 

「今日は特別ハードだったけど、大体こんなかんじ。このあとは、しっかりご飯食べて、しっかりお仕事!」

 

(ずっと変わらないって思ってたけど………何時の間にかずっと立派になって……)

 

母親のような感想を抱きながら、ギンガはスバルの成長を噛みしめる。ギンガは自分の後ろにいるアキラを見た。アキラは相変わらず無表情でいる。せっかくあの四人を倒したのだからもっと喜んでも良いと思っていた。しばらく見ていると、アキラは急に表情を変えた。

 

「ママ〜!」

 

ヴィヴィオが訓練所に来たのだ。

 

「アキラ君?」

 

「ん?」

 

「どうしたの?眉間にしわ寄せて……」

 

「別に………」

 

アキラは特に何も言わずその場を立ち去ろうとする。だがその時、アキラの耳になのはとフェイトの声が入って来た。

 

「ヴィヴィオ、走ったら危ないよ〜!」

 

「転ばないようにね〜」

 

「あっ!」

 

フェイトとなのはの忠告も虚しく、ヴィヴィオは転びかける。しかしその刹那、アキラが懐からクナイを取り出し、ヴィヴィオに向かって投げた。

アキラの投げたクナイはヴィヴィオの着ている服のフードに引っかかり、そのままヴィヴィオの隣にあった木に刺さる。

 

ヴィヴィオは転ばず、軽い宙ぶらりんの状態になった。

 

「大丈夫か」

 

アキラはヴィヴィオの元へ駆け寄り、ヴィヴィオを抱えてクナイを抜く。

 

「親の言うことはちゃんと守れよ。あの二人なら、間違ったことは言わねぇさ」

 

「うん!」

 

「ヴィヴィオ、大丈夫?アキラ君、ありがとう!」

 

「ん……」

 

ヴィヴィオはフェイトとなのはの元へ駆けて行く。アキラが小さなため息をついて、また隊舎に戻ろうと振り返るとそこにはギンガがいた。ギンガはなぜか笑顔だ。

 

「どうした」

 

「ううん、なんだかアキラ君がこう…人道的な行動をしたのがなんか嬉しくて」

 

「好き勝手言ってくれるな。元々人を守るために力を付けてたんだ。当然だろ………ただ………」

 

アキラはそこで言葉を止める。

 

「ただ?」

 

「いや、何でもない。それより腹が減った。さっさと食堂行こうぜ」

 

「うん…」

 

ギンガの後ろについてアキラも歩き出す。その他の者もぞろぞろと食堂に向かい歩き出した。その中で、アキラは誰にも聞こえないような小さな声で呟く。

 

「みんな俺を怖がってすぐ逃げちまうんだけどな」

 

アキラの言った言葉をの通り、アキラが今まで助けた人は全員アキラを恐れ、逃げていった。それはギンガも同じ。アキラが初めて助けた時に、ギンガはアキラの底しれない悲しみと、自分に対しての憎悪を恐れ、差し伸ばされた手をはじいたのだ。

 

だが、逃げなかったのはギンガが初めてだったと、アキラはそのことに今更気づいた。

 

「………ギンガ…」

 

アキラはギンガ対する意識が少し変わったのを感じる。

 

 

ー食堂ー

 

 

アキラは食堂で、エリオとキャロ、ギンガに誘われFWと食事を共にすることにする。正直あまり群れるのは好んでいなかったが、断る理由もなく、ギンガと離れるのも面倒なので、FWの中に入った。

 

「はい、アキラさんどうぞ!」

 

スバルがパスタを大量によそった皿をアキラに渡した。

 

(洋食は苦手なんだが…………ていうかどう考えても盛りすぎだろ……)

 

アキラは文句を直接口には出さず、差し出された物を受け取り食事を始めた。相手が例えばメグの様な立場の人間なら文句も言ったろうが、相手はギンガの妹であり、自分よりも階級も年齢も低い。

 

更に、自分が 普通に言ったとしても相手は自分が怒ってる様に感じるのもアキラは知っていた。

 

ギガ盛りのパスタと格闘しながらアキラはチラリとなのはとフェイトのいる席を見た。そこにはピーマンを嫌い、軽く涙ぐむヴィヴィオの姿。その姿にアキラはセシルを重ねていた。子供で意外と世話が焼けるところはヴィヴィオに、お節介で、誰に対しても優しかったり、自分を理解してくれることに対してはギンガをセシルに重ねていた。

 

「スバルもちっちゃい頃はあんな感じだったなぁ」

 

ヴィヴィオを見ていたギンガが、昔のスバルを思い出し、呟いた。スバルは急に話を振られて恥じらいと焦りで顔を赤くする。

 

「そ、そんなことないよぉ!え、えっと、アキラ君は小さい頃はどんな感じだったのかなぁ!?」

 

昔の話はスバルにとって相当恥ずかしいことのなのか、何とか話をずらすためにアキラに話を振った。アキラはパスタを一旦置き、お茶を一口。

 

「……俺の昔なんざ食事を明るくする話題にゃなんねぇよ。まぁ、訓練尽くしの毎日だったな。俺が望んでそうしたもんだが」

 

静まる一同。こうなるのは分かっていたという態度でアキラはまたお茶を飲もうとする。その時、エリオが口を開いた。

 

「あの…アキラさん」

 

「なんだ?」

 

「どんな訓練してたんですか?」

 

アキラは手を止める。何故そんなことを確認したがるのか、アキラは疑問に思った。自分に対しての嫌がらせか、素で聞いているのか、判断し辛い質問だったが、思い切ってアキラは尋ねる。

 

「何でそんなこと聞く」

 

「あの…別に機動六課の訓練じゃ物足りないって言う訳じゃないんですが、今日のアキラさんの戦い方を見て思ったんです。もっと、大切な人をどんな状況でも助けられる様な強さが欲しいって……」

 

「…………」

 

「アキラ君……?」

 

しばらく黙ってるアキラの顔を覗き込む様にギンガは首を動かす。アキラは悩んでるような、いつも通りのような表情を浮かべながら腕を組んでいた。

 

少ししてアキラは結論を出した。

 

「教えてやるよ、傭兵流の訓練法」

 

 

ー昼食後ー

 

 

アキラはエリオを訓練場に再び連れてきている。そして、あのアキラがどのような教育をするのか気になったなのは、シグナムと、エリオが心配だったフェイト、アキラがうっかりエリオを殺しはしないでも、大怪我させないか心配なギンガ。等々が集まった。

 

「いいか、さっきも言ったが必要なのはまず、臨機応変さだ。どんな状況でも正しい判断をし、守り、戦う。そのために必要なのは決断力、洞察力、俊敏さ、反射神経、大体その四つだ」

 

「はぁ……」

 

「要するに素早さ。それがもっとも必要なことだ」

 

「はいっ!」

 

エリオの威勢を確認すると、アキラは刀を抜く。そして構える。

 

「わかったら始めんぞ。今から俺がお前に攻撃する。まずはそれを避けてみろ」

 

「はい」

 

アキラは刀を居合斬りの構えを取った。エリオも構える。アキラは一歩踏み込み、刀を振った。エリオはそれを見てから後ろに動き攻撃を避けようとする。アキラは手を途中で止め、片手を刀の柄に添えて押した。

 

瞬時の出来事だった。アキラの刀はエリオの首すれすれに当たり、エリオの首からは少し血が垂れる。

 

「ダメだ。攻撃の避け方はそうじゃない。ぎりぎりまで引きつけ、避けて反撃の機会を待つ。恐怖心を忘れろ。相手をより早く戦闘不能にすることに専念する。確かに守るのも大切だが、相手がいるなら一刻も早く脅威を消し去ることも大切だ」

 

「……はいっ!」

 

そんな様子を見ていたなのは達。

 

「アキラ君、結構教えるの上手だね」

 

訓練の様子を見ていたなのはがギンガにいった。ギンガは少し俯いて、無理して作った笑顔で対応する。

 

「そうなんですよ…………色々、悲しい過去がなかったらもっと幸せな人生を歩めたと思うんですけどね………」

 

「遅いっ!もっと早く!」

 

「はいっ!」

 

アキラの指導は夕方まで続いた。

 

 

ー深夜 六課宿舎ー

 

 

アキラはその後、仕事をバリバリとこなして夜の訓練でもそれなりの戦績を上げ、今は武器の整備をやっている。刀の刃に欠けてる部分はないかと色々見たり、隠し持ってる銃は異常はないかと色々だ。

 

そしてそれらが終わった後。時計を見るともう一時。明日は訓練場の整備をしなければならなかったはず。

 

「………もう寝るか」

 

そうした矢先にギンガのいる宿舎の部屋の中を監視している周るポッドから緊急事態のデータがアキラの腕時計に送られ、アキラの腕時計から警報が鳴った。

 

アキラは急いで狙撃銃でギンガの部屋の中を窓から覗く。そこには白い服…と言うよりか甲冑のような物を纏った白髪の男がいた。そして、眠っているギンガに近づこうとしている。アキラはその男に向かって引き金を引いた。

 

弾丸はギンガの部屋の窓を貫き、男に命中……………しなかった。

 

「!?………どうなってやがる!!」

 

アキラは更に二発放つ。しかし弾は当たらない。

 

(どういうことだ………?あの弾道で当たらない筈がねぇ………)

 

「くそっ!」

 

考えるよりもとにかくギンガを助けることが最優先にしたアキラはコンバットナイフを両手に持ち、窓から屋根伝いに走り始める。そしてギンガの部屋に窓から飛び込んだ。窓が割れる音がしてもギンガは目を覚まさない。それをアキラは不審に思ったが、今はそれどころではなかった。

 

「テメェ!ギンガから離れろ!!」

 

アキラはナイフを構えて突っ込む。男はアキラに手のひらを向けた。

 

「ぐあ!?」

 

男の手のひらからは魔力波が放たれ、アキラはその場に押さえつけられる。魔力ではない、違う何かの力で身体が拘束されていた。

 

「相変わらず血の気が多いな」

 

「てめぇは何者だ!なんでギンガの部屋にっ!」

 

男は眠っているギンガのベッドの手前にしゃがむ。そしてギンガの頭に手を伸ばす。

 

「や……めろぉ!ギンガに触れるなぁ!!!」

 

「安心しろ別に何もしない」

 

男は言葉の通り、ただギンガの頭を撫でているだけだ。ギンガは何故か目覚めない。それに色々おかしいことにアキラは今気づいた。先ほど銃声を三回も響かせ、窓ガラスを叩き割ったのに誰も起きてこない。

 

恐らくこの男が何らかの方法で音を消しているか、この隊舎内の人間を昏睡状態に陥らせているか、とにかくこの男がとんでもない力を持っているのだけはよく分かった。

 

「……」

 

しばらくすると、男は立ち上がる。それと同時にアキラの拘束が外れた。拘束されている間必死に動こうとしていたため、体力が無駄に奪われ、アキラはその場にひざまずく。

 

「はぁ!はぁ!クソっ!」

 

「橘アキラ、ギンガを………この先なにがあっても絶対に守れ。決して離れるな」

 

「なんなんだテメェは……」

 

男は再び手のひらを前に出す。アキラは身構えた。しかしアキラの身には何も起こらず、さっきアキラが叩き割った窓ガラスが元に戻って行く。壊れた物を完全に元に戻す魔法なんてありはしない筈なのに。

 

「……なん………だと?」

 

「近いうち、お前とギンガは危機に陥る。必ず……気をつけろよ」

 

「何言ってやがんだ!誰だか知らねぇが、拘束して何が目的か吐かせてやらぁ!!!」

 

アキラはナイフを構えて再び突っ込む。ナイフを振り、男の足を切ろうとしたが、ナイフが当たる前に男は消えていた。

 

「………どこに…」

 

それから数分間しばらくアキラは身構えていたが、男が再び現れることはなかった。

 

 

ー翌朝ー

 

 

「ん………」

 

カーテンの隙間から射し込んで来る朝日に照らされ、ギンガは目を覚ます。まだ眠いが今日は訓練場の整備の係を任されている。眠い目を擦りながらギンガは起き上がった。起き上がった視界に映ったのは、ベッドにもたれ掛かりながら体育座りしているアキラ。

 

「きゃぁ!!!」

 

「あぁ、起きたのか」

 

「な、なんでこの部屋に…」

 

「数時間前この部屋に不審者が侵入していた」

 

ギンガは驚く。寝ている間誰かが入ってきた気配はしなかったからだ。

 

「それでアキラ君が捕まえてくれたの?」

 

アキラは首を横に振る。

 

「圧倒的な力の差で負けた………」

 

「ええっ!?」

 

アキラはその男について説明した。狙撃銃の弾丸が効かなかったことや、ギンガには危害を与えなかったこと、窓ガラスを元に戻したこと等……。全て聞いたギンガは、今のアキラの内心を何となく読み取った。

 

アキラはきっと落ち込んでいるのだ。必死に守ろうとしたのに何の役にも立てなかったことが。そう予測したギンガは、体育座りしたままのアキラを抱きしめた。

 

「ありがとう、アキラ君」

 

そう耳元で囁く。

 

「何だよ急に」

 

「だって、アキラ君はそこまでして守ってくれたんだもん。経緯はどうであれ、結果的には私は助かったんだし」

 

「それは…あの男がそもそも何もする気がなかったんだし」

 

「それはわからないけど、とにかく自分に自信を持って!アキラ君が来たからその人逃げたのかもしれないよ?」

 

ギンガはアキラを必死に慰めた。アキラを慰めると同時にギンガはこれはチャンスと思っている。この事態を利用すれば、アキラが自分に振り向いてくれるのではないかと。

 

しかし、アキラは中々元気を出してくれなかった。

 

「……俺は…誰かを守ることしか人様の役にたてねぇ。なのに、それすらまともに出来ずに自信なんか持てるかよ………」

 

「アキラ君………アキラ君なら大丈夫、どこが悪かったのかきちんとわかってるから。そこをちゃんと理解していれば、もうきっとミスはしないよ」

 

これが今のギンガが思いつける最大の励まし。

 

「ギンガ………」

 

 

ー午後ー

 

 

訓練を終わらせたギンガとスバルはマリエルと共に、身体検査に出掛けた。当然アキラも一緒に着いていく。ふたりはいつも通りの動きで検査のカプセルに入った。二人がカプセルに入るのを確認したアキラは、何だかやりきれない顔で椅子に座る。

 

「なぁ…マリーさん」

 

「ん?どうしたの?」

 

「俺は…ギンガをちゃんと守れてんのかな……」

 

マリエルは少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻った。そしてアキラに気づかれないように、ギンガの入っているカプセルへのマイクを繋げた。

 

「どうして?」

 

「どうして………?傭兵…いや、護衛をやる人間はただ対象の肉体を護ってればいいって訳じゃない。その心も護らなきゃいけない。なのに俺は……。ギンガに励まされてばっかだ……」

 

マリエルはため息をつく。そしてアキラのおでこをつついた。

 

「むお」

 

「難しく考えすぎだよ。変なルールに縛られないで、アキラ君の出来る事をしたらいいんじゃないかな?というか、アキラ君はちょっとやり過ぎてる感じがあるけどね?」

 

「マリーさん……」

 

ギンガには普段話さない相談をマリエルにしている様子を聞き、ギンガはアキラも普通の人っぽいところもあるんだなぁと思う。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

検査終了後、スバルは「チョコポッド」なるお菓子を買いにいった。ギンガとアキラは店の外で待っていた。待っている間にギンガをアキラが横目で見るとけっこう表情が固いのに気づく。

 

「ギンガ」

 

「なに?」

 

ギンガは真っ正面を見ながら応答した。ギンガは、アキラの事も心配だったが、もう一つ悩みの種があった。機動六課に来る理由にもなった戦闘機人についてだ。母の仇。責めて誰がクイントを殺したのか目星がつけば良いのだがと考えている。そしてアキラは、ギンガがなにか悩んでいることも何となく気づいていた。

 

「表情…固ぇぞ」

 

「え…ああ。うん…」

 

「ギン姉、アキラ君、おまたせ〜」

 

大量のチョコポッドを抱えたスバルが出てくる。

 

「また随分買い込んだわね〜」

 

アキラに出来るせめてものこと、マリエルからの助言を早速生かそうとアキラは考える。

 

(ギンガは…きっと悩みがあるんだ…誰にも話せない…俺じゃダメなのか?)

 

「アキラさんも、はい」

 

そんなこと考えているとスバルにチョコポッドを差し出される。考え事に意識を回していたので、アキラは少しスバルに驚きながらも遠慮した。

 

「え?あ…いや俺は…」

 

慌ててるアキラを見てギンガはクスクスと笑う。

 

「もらっておいたら?」

 

「え…えっと…」

 

「ほら、口開けて?あーん」

 

アキラは始めは戸惑っていたが結局折れた。

 

「じゃあ……」

 

「どう?」

 

「…うまい」

 

その後、二人は色々話していた。機動六課に入れた事とか、ギンガが目標だとか。そんな話の後にギンガがまた暗い表情を見せた。

 

「スバル、近いうちに多分…戦闘機人との戦いがあると思うんだ、だから………」

 

ギンガは何か言いたげだったが表情を変える。

 

「頑張ろう」

 

「うん!」

 

何か言葉を引っ込めたのが分かった。しばらくしたらマリエルが迎えにきた。スバルは助手席に、ギンガとアキラは後部座席に乗る。

 

車内は明るかった。ギンガも最初はギンガも暗い表情だったが笑った。

 

「ギンガ…」

 

「なに?アキラ君。」

 

「あんたの幸せってなんだ?俺じゃ…役不足か?」

 

「え?アキラ君、それってどういう…」

 

「…いや」

 

アキラは頭を軽く押さえてから窓の外を見る。

 

「なんでもない。忘れてくれ…」

 

「…アキラ君」

 

 

 

続く


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