とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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陳述講演会の直前の話です(コミック版参照)
陳述講演会はもう少しお待ち下さいm(_ _)m


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第十三話 傷体

アキラ達が機動六課に来てから、しばらくたったある日、その日は108部隊と機動六課のFW部隊の合同訓練がある日だった。しかし、108部隊であるアキラとギンガは六課の残っている。そして仕事の合間に、108のラッド・カルタスと通信して今回の件を話題に話していた。

 

「呼ばれなくてちょっと残念だったね」

 

「ま、俺達の出所は108なんだし、あっちでは指導側だったからな」

 

[本当は来てくれた方が説明は楽だったんだけどね]

 

そんな話をアキラとギンガがラッドとの通信に挟んでいる頃だった。六課のアラートが鳴り渡る。画面の先の108のアラートもなっている。

 

「なんだ!?」

 

[状況アラート2。市街地付近に未確認体出現。隊長陣及び、704出動準備。待機中の隊員は準警戒態勢に入って下さい]

 

[すまない、緊急だから通信をきらせてもらうよ]

 

「あ、はい!」

 

ラッドとの通信を切った直後にはやてから通信が入った。

 

[108部隊の二人も出動や。大丈夫?]

 

「大丈夫です」

 

「問題ない」

 

任務は市街地に出現した未確認体の対処。現場は108から近い為、FWは108部隊から出撃、アキラとギンガは六課からヘリでの出撃になった。二人は急いでヘリに乗り込み、現場に向かう。だが、今回現れた未確認体はガジェットと思われ、確認された機影の数だとアキラ達が現場に着く前に片付きそうな様子であった。

 

二人きりで何となく気まずい空気

 

「間に合うかな〜?」

 

「さぁ……って…ん?」

 

ヘリ内で話していると、六課から連絡が回って来る。

 

「アキラ君!ガジェット部隊が増えたみたい。私達はそっちに!!」

 

「ああ」

 

二人は、途中でヘリから飛び降りた。そして空中でバリアジャケットを纏う準備をする。

 

「ブリッツギャリバー!」

 

「………変身」

 

二人はバリアジャケットを身に纏い、落下速度を落としながら廃市街地に着地した。とりあえず付近に敵はいないかを確認し、地下に入って行く。

反応があった方向を確認し、二人は走り出した。

 

先は暗く、少しずつ視界も悪くなってゆく。唯一の灯りは地上から差し込んでくる僅かな太陽の光だった。

 

しばらく進んでいると、アキラがギンガの前に手を出して静止を促す。そして念話でギンガに話しかけた

 

(ギンガ、見ろ)

 

アキラが指を指した方向をギンガも見る。そこにはガジェットがいた。それもまだこちらに気づいていない。

 

(俺があいつらのいる位置よりも奥に手榴弾を投げ込む。あいつらが音に反応して奥を見た瞬間に二人で突っ込むぞ)

 

(うんっ!)

 

アキラが手榴弾を投げる。手榴弾はガジェットを飛び越え、着地と同時に爆発した。その音を聞き、ガジェットが手榴弾が爆発した方向を見た刹那、アキラとギンガは壁の影から飛び出す。デバイスを使っての走行をするギンガも速いが、アキラも負けないスピードで突っ込む。

 

そして足音を聞いたガジェットが振り向くよりも先にギンガはガジェットを叩き潰し、アキラは真っ二つにした。とりあえず二人で一機ずつ。二人は止まらず、ギンガ達は次々にガジェットを倒していく。

 

「おらぁ!!」

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

勢いは更に増して行った。ガジェットは初め、I型が9機、足付きのIII型が一機だったが、もうI型が三機と足付きのみになる。

 

 

一方その頃のガジェットの指揮役のウェンディとセイン。

 

二人は六課のFWを遠距離射撃で少し遊んですぐ帰る筈だった。が、その戦闘を見ていたスカリエッティから新しく命令が出る。

 

「あの二人にもさっきと同じことして欲しいんスか?」

 

[ああ、彼らはたった二人。どう対応するのか見てみたい]

 

「まぁ、良いっスけど」

 

 

ー状況ー

 

 

「氷刀…一閃!!!」

 

氷結魔法を付与した刀でアキラはI型を斬った。アキラは刀を振った勢いを止めず、ギンガに手を伸ばす。

 

「ギンガ!」

 

「OK!」

 

アキラの伸ばした手をギンガが掴み、アキラはギンガを残るI型の方に投げた。ギンガはリボルバーナックルを構える。リボルバーナックルのカートリッジを二つ飛ばした。

 

「リボルバァァァァァ……ブレイク!!!!!」

 

ギンガはリボルバーナックルに魔力を込め、I型を二機まとめて壁に叩きつけた。残ったのはガジェットⅢ型になる。

 

しかし、III型はアキラとギンガに立ち向かわず、地下道の奥の方へ逃げ出した。ギンガはそれを見ると、足付きを追いかける。

 

「逃がさない!!」

 

「………?…………………!?ギンガ待てっ!!」

 

アキラは慌ててギンガを追いかけた。足付きを追いかけていると、いきなり足付きは止まる。ギンガはIII型にトドメをさそうと構えるが、足付きの行動は罠だった。立ち止まった足付きに、ウェンディが壁を貫いて反応炸裂弾を打ち込む。

 

エネルギーと鉄の塊のIII型が狭い通路を一瞬で満たす爆弾に変わり、その爆風がギンガを襲った。

 

「!?」

 

「ギンガ!!」

 

ギンガを庇ってアキラがギンガの前に飛び出した。ギンガの視界が一瞬暗くなる。

 

「ん……うぅ……」

 

爆風で吹っ飛ばされたギンガはほぼ無傷だった。アキラが爆弾の盾となり、ギンガは軽い火傷を負っただけで済んだのだ。

 

ギンガはゆっくりと目を開ける。視界に入るのはアキラのバリアジャケットの黒い部分だけ。ギンガは今アキラの下敷きになっている状態だった。アキラはギンガの身長より頭一個分大きいので、その分重い。どいてもらおうと思いギンガはアキラを揺すった。

 

「アキラ君、大丈夫?」

 

「………」

 

返事はない。

 

「アキラ君?……アキラ君!?」

 

「……………」

 

やはり返事はない。ギンガは無理矢理アキラの下からなんとか抜け出し、起き上がってアキラの容体を見た。

 

「!!」

 

いつもは白いアキラのバリアジャケットが、アキラの血で真っ赤に染まっている。それだけでない、足や腕、様々な部分の肉が削れていた。ギンガは息が詰まりそうになった。

 

出血が尋常でない。息はしっかりしている?心臓は動いてる?どうすればいい?どこを止血すればいい?そもそも止血云々の話なのか?

 

様々な考えがギンガの頭の中を回った。パニックに陥っていたのだ。頭を抱え、過呼吸になりながら必死に冷静になり、助けを呼ぼうとしていると、ギンガのバリアジャケットを何かが引っ張っる。

 

「ふぁ?」

 

「無事…………か?ギ…………ン…ガ」

 

「アキラ君!!大丈夫!?あ、ま、待ってて?今、救援呼ぶからね!!」

 

アキラの息がある事に気づき、ギンガはようやく冷静さを取り戻した。

 

「………無…事か?」

 

「うん、私は無事だよ?アキラ君が守ってくれたから……それより早く病院に……」

 

「よかった………今度は…ちゃんと…………守れた」

 

アキラはギンガの無事を確認すると、安心したように目を閉じる。ギンガの不安は一気に戻って来た。ギンガは必死にアキラの名前を呼んだ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ーアキラの精神世界ー

 

アキラは何処かへ沈んで行くような不思議な夢のような物を見ていた。暗く、何もない世界の底へ行くような。一体どこまで沈むのだろうと少し考えたところで、誰かの声が聞こえた。

 

「忠告した筈だ。橘アキラ。危機に陥ると」

 

あの白い甲冑の白髪の男。あの男がアキラの精神世界にまで現れたのだ。

 

「またお前か…………不法侵入者の言葉なんか簡単に信じられっかよ」

 

「確かにな…………だがこれでわかったろう?俺の忠告が正しいことが」

 

「黙れ…………。俺はお前の力は借りない…。この手で護る!」

 

アキラが言うと、男は一瞬困った表情を浮かべ、その後に少しずつ身体が薄れて行く。

 

「まぁ、それが橘アキラだからな。それはそうと、護るのなら急いだ方がいいほら今もギンガに危険が……」

 

最後にそう言い、男は消えた。アキラは流石にその警告は信じ、何とか目覚めようと意識を集中させる。

 

少しだけ開いた瞳に光が差し込んできた。そして、ぼんやりと周りの景色が見える。まだよくわからなかったが、ギンガと誰かもう一人がいるのが見えた。そのもう一人が、今まさにギンガに襲いかかろうとしている。

 

情報はそれだけで十分だった。アキラは左手にECディバイダーを出現させ、もう一人に斬りかかった。

 

 

ー事件から三日後 アキラの病室ー

 

 

ギンガはアキラの見舞いに来ている。三日前、ギンガを庇ったアキラは倒れ、そのまま三日後も目を覚ましていない。そして二つほど不思議な点があった。

 

一つはアキラの身体の再生速度。肉の一部が吹っ飛ぶ程のダメージを食らったのにも関わらず、その日の内にアキラの身体は元に戻っていたのだ。もう一つはアキラの左腕から首に伸びている謎の刺青の様な物と、左腕の二の腕に着いている銀色の腕輪。これはなぜか外れなかったのだ。皮ごと剥がそうとしたり、腕輪を破壊しようとしたが、腕輪付近と腕輪本体に触れると、肉体、腕輪を傷つけようとする物を砕いた。もはやアキラの身体の一部と言っても良い、未知の腕輪。

 

だがギンガにとってはそんな物はどうでもよかった。ただ今は、アキラが無事だったこと、あとはアキラが目覚めてくれればそれだけで満足だった。しかし、アキラはまだ目覚めない。

 

花を取り返えアキラのベッドの隣の椅子に座り、ため息をもらす。ギンガは責任を感じていた。自分が敵の行動を深く読まず、慌てたせいでアキラをこんな目にあわせてしまったから。傷が早く治ったのはいいが、目覚めてくれなければ何の意味もない。そんなことを考えていると、病室の扉が開き、片手に何かの箱が入ったビニール袋を持った八神はやてが来た。

 

「あ、ギンガ………」

 

「八神部隊長……どうも」

 

「アキラ君は……どう?」

 

「…まだ………目覚めないです」

 

はやては机と自分が座る椅子を部屋の隅から運び、ギンガの前に置く。そして、ビニール袋を机の上に置いた。

 

「ここのケーキ美味しいんよ」

 

「そうなんですか……」

 

「……聞いたで?あんまご飯食べてへんって。ちゃんと食べなあかんよ?アキラ君目覚めるまでにギンガが倒れたら、本末転倒もいいとこや。アキラ君はギンガのこと大切にしてるんやから、だから自ら盾になったの忘れたらあかんよ?」

 

「はい……」

 

ギンガは、はやての言うとおりだと思う。しかし…相手は気づいていなくても、アキラはギンガにとっての大切な人なのだ。はやての言ったことの逆だって言える。

 

しかし、はやてはそのことも少しわかっていた。

 

「にしても、アキラ君も罪な男やなぁ。こんな可愛くてこの先も見込みのある子にさみしい思いなんかさせて」

 

「部隊長…………?あの、この先も見込みのあるって?」

 

ふと疑問に思ったことをギンガが口にしてしまう。すると、はやての口は怪しく曲がる。

 

「それはもちろん………」

 

はやてが両手を前に出し、わきわきと動かした。ギンガは両手で胸を隠す。はやては手をわきわきさせながらジリジリと迫って行く。

 

「前にアキラ君に邪魔されてからずっと揉めてへんからなぁ……ギンガが今どの位なのかわからんけど、将来性はあると思うんよ」

 

「は、はぁ……」

 

「ところでギンガ、今はアキラ君起きへんし……揉んでええ?」

 

「えっと……嫌です」

 

「まぁまぁ、ちょっとだけや、ちょっとだけぇ!」

 

ちょっとだけと言いながら、はやてはギンガに向かって飛びかかろうとした。

 

「きゃ〜!!」

 

が、次の瞬間、さっきまで全く動かなかったアキラが急に起き上がり、銃剣…EDディバイダーをはやての首に向ける。はやてはギリギリで止まり、腰を抜かしたのか床にへなへなと座り込んだ。

 

「誰だてめぇ……ぐっ……」

 

「ア、アキラ君?」

 

全く起きる兆候も無く起き上がったアキラにギンガは少しの間、ぽかん口を開けたまま動かない。アキラは目覚めたばかりでは気づいていなかったが、少しして自分が刃を向けた相手が八神はやてだと気づく。

 

「なんだ、またあんたか………ギンガ、無事か?」

 

「アキラ君!!」

 

「うおっ!!」

 

アキラが起きたことで心の中の不安が消え去り、それと同時に大きな安堵感がギンガの心に溢れ、訳わからずアキラを力の限り抱きしめた。アキラが戻ってきてくれて本当に嬉しかったのだ。アキラの怪我のことも考えず、思いっきり抱きしめる。

 

「アキラ君…………アキラ君……っ!」

 

「ギンガ……いっ……ギンガ…痛ぇ!」

 

「あ、ご…ごめん………」

 

ギンガは慌ててアキラを離す。アキラはそれから周りを見渡し、自分がおかれてる状況を理解しようとした。

 

「ここは…病院だよな」

 

「うんっ」

 

ギンガは少し目に涙を溜めつつ、笑顔で答える。

 

「とりあえず先生呼んで見てもらおう?それで大丈夫だったら八神部隊長が持ってきたケーキ食べよ?」

 

「お、おう……」

 

その後、いくつかの検査を受け、結果なんとかその日の夕方には退院出来るとのことだった。はやては雰囲気考え、ケーキを置いて帰ったらしくアキラとギンガが検査を終えて病室に帰った時には姿は消えていた。

 

夕方には退院できるとは言え、担当医のシャマルから「身体のあちこちに古傷があるし、ボロボロだから少し身体を休めなさい」とも言われていたので、アキラはしばらく任務に参加出来ないかもしれなかった。さて、時間はお昼。二人は個室で昼食をともにする。アキラと弁当を食べている時に、スバルがなのはに出された問題のことをアキラに話した。

 

「自分より強い相手に勝つためには相手より自分の方が強くないといけない…か」

 

「アキラ君はこの問題どう思う?」

 

「ふむ…」

 

アキラはお茶をすすり、少し考えてからギンガに答えを言う。

 

「…想い、かな」

 

「想い?」

 

「やっぱり強いとか弱いとかそんな実力の前に勝ちたい、とか守りたい、とかっていう気持ちが大切なんじゃないか?」

 

アキラにしては結構まともな答えが帰ってきたとギンガが感心していると、急にアキラは刀を抜いて前に出す。窓からの日差しを刀身が反射し、ギンガを少し照らす。

 

「昔、義親父が言ってたんだけどよ。人が剣を取るときは必ず何かを守るためだってな」

 

「守る?」

 

「それは自分の命だったり、尊厳だったり、国だったり、名誉だったり」

 

説明の途中、そこまで言ってアキラはギンガを見る。

 

「大切な人だったりする」

 

「あ、アハハ…ちょっと恥ずかしいな」

 

ギンガはその言葉に少し照れると同時に嬉しく思った。きっとアキラにとっては深い意味はない言葉だったのだろうが、そう言われるのがギンガにとっての喜びだから。義父の言葉の話をしたアキラは納刀し、ため息を一つついた。

 

「だから、そういう想いからじゃないか?相手より強くないといけないってのは。まぁちょっと論点はズレてるかもしんねぇが……………。確かに気持ちだけで全部が全部出来るって訳じゃ無いけどよ…やっぱ想う事も大切なのも確かだと俺は思ってる」

 

「気合いの問題ってこと?」

 

ギンガはちょっと可笑しく思ってクスクスと笑った。

 

「まぁそんなとこだ」

 

アキラはそれから黙って、黙々と弁当を食べていた。そんな時にギンガが一つ思い出したように言った。

 

「アキラ君…右目…ちょっと見せてもらえる?」

 

「右目?ああ……構わんが」

 

アキラは右目を、右目というか顔の右半分を前髪で隠している。ギンガは出会った時から少し気になってたが、もしかしたら見られたくない傷や、実験の跡が残ってるのかもしれないと思い中々聞けずにいたが、アキラが起きない三日間の看病、及び検査を担当していたシャマルとマリエルによると傷らしき物はなかったとの話だった。

 

だからギンガは今回思い切って聞いて見たのだ。アキラがいいと言うので、ギンガは右前髪を退かそうと手を伸ばす。その手が顔に触れ、よく見る為に近くにきたギンガの顔が吐息の当たる距離くる。アキラは今まで感じたことのない不思議な感覚に陥った。心拍数が上がり、顔が赤くなってるのを感じる。

 

「ギンガ…」

 

「もしかしてアキラ君…右目見えてない?」

 

「…………ああ」

 

アキラの右目は黒目の部分が白濁していた。そして目の周りにはアキラの左腕にあったのと似たような刺青が入っている。

 

「昔…………………………いやなんでもない。」

 

「…そう…」

 

ギンガは教えて欲しかった。アキラは重荷を背負ってる…だからそれを少しでも軽くしたかったのだ。

 

 




次回はいよいよ陳述講演会!アキラはギンガを守りきれるのか!

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