とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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次回は来週当たりに投稿します。説明が多くて読みづらいと思いますが、次回を読むための説明書だと思ってくださいww

感想、評価、投票随時募集中です!


第十四話 波紋

ー地上本部 公開意見陳述会当日ー

 

九月十四日。この日、地上本部と機動六課は壊滅的なダメージを受けていた。次元犯罪者ジェイルスカリエッティの制作した戦闘機人「ナンバーズ」が、それぞれの能力を駆使した作戦で管理局を翻弄しながら大打撃を与えたのだ。襲撃されることを、聖王協会のカリム・グラシアに予言されていながらも全く抵抗が出来ずに、一方的にやられたのだ。

 

また本部の護衛には様々な部隊がついていたが、機動六課もついていた。もちろんギンガ・ナカジマもこの任務に参加していた。そして、襲撃があってから約47分経過した現在。本部西側ではちょうど激しい戦闘が終わったところである。

 

そこには、戦闘機人が三人。それと瀕死の重傷を受け、棺桶型の箱に収納されようとされているギンガ・ナカジマ。そして、同じく重傷を受けている橘アキラ。だがアキラにはまだ若干の息があった。アキラはもう僅かにしか動かない手を伸ばし、戦闘機人らを止めようとする。

 

「ま………て…………」

 

「もう貴様は黙っていろ。出来損ないが!」

 

戦闘機人がアキラにナイフを投げた。ナイフはアキラに当たる直前で爆発し、アキラは爆風に包まれる。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

目の前が真っ暗になったと思った瞬間、アキラの額に突然激痛が走った。

 

「痛っ!!!!!!」

 

「きゃっ!!」

 

後頭部…というか身体の背面は柔らかいものに包まれている。布団である。額の痛みを耐えながら目を開けると、そこにはアキラに与えられた六課の寮の部屋の景色。そして額をさすっているギンガがいた。

 

「………あれ、ギンガ?」

 

「いたた………あ、アキラ君起きた?もうすぐ朝練始まるのに来ないから心配したんだよ?」

 

(夢…………?)

 

アキラは起き上がると、ギンガを見る。目立つ外傷も見えない。さっきの景色ではギンガは片腕をもがれていた。しかし、ギンガはいつも通り。アキラは時計を見た。日付は九月十一日。夢で見た景色の一日前。

 

「大丈夫?顔色悪いし…さっきもすごいうなされてたけど」

 

「………ああ。先…行っててくれ。着替えてすぐ行くからよ」

 

「うん………」

 

ギンガは一抹の不安を抱きながらもアキラの言う通りにし、部屋を出て行った。先ほどの夢のことを考えながら訓練着に着替え始める。さっきの夢の正体は何なのか?予知夢?それとも別の何か?何にせよ、何か嫌な予感をアキラは感じていた。

 

今夜から始まる本部防衛。アキラは刀を抜き、窓の光に掲げて剣に誓う。

 

「どんなことがあっても必ず守る………。例え、この身を犠牲にしても。もうあんな思いはしたくない………」

 

 

ー訓練所ー

 

 

「それじゃあ訓練を始めたいんだけど………………アキラ君?」

 

「なんだ」

 

「近くない?」

 

「問題ない、始めてくれ」

 

アキラは朝からギンガの右後方にピッタリとくっついていた。それはもう、ギンガの周りに虫一匹の存在さえも許されないような雰囲気を醸し出している。ギンガはアキラがついてくるのは慣れていたが、今日ほど密着してきたのは初めてで流石に動揺している。なのはの忠告にも逆らう始末。

 

「問題あるんだけど………せめてちゃんと整列しようか?」

 

「チッ………わかった」

 

「い、今舌打ちしなかった?」

 

「してない」

 

 

ー食堂ー

 

 

「…食べないの?」

 

「軍用食糧がある。これで充分だし、栄養も補給される」

 

食事の時もアキラは離れなかった。ギンガの席の後ろに立ち、味気のなさそうな物を食べている。隊長やFWが普通の食事をするように促すが、アキラはかたくなに断った。ギンガの護衛はいつも通りだとしても、今日のアキラはやたらと神経質。というか神経質の域を超えている。

 

「はぁ〜」

 

ギンガは深いため息をついた。

 

その後もアキラはずっとついて来た。何か理由があってのことだと信じ、ギンガはあえて文句は言わず、アキラのやらせたいようにやらせている。アキラに逆らう気もないし、アキラは意外とガラスのハートだから叱ると結構落ち込む。落ち込まれたらそれはそれで面倒だ。面倒と感じながらも、アキラの護衛を断れないのはこの胸にある恋心のせいだろうと、ギンガは少し頬を緩めた。

 

 

ーシャワールームー

 

 

アキラも流石に更衣室や、トイレ、シャワールームまでには入って来なかった。当然だが。今日はこれから地上本部の防衛の任務につくため、早めにシャワーを浴びて仮眠を取り、ヘリでライトニングよりも先に本部に行く。

 

ある意味、ギンガが一番気を休められる場所だった。脱衣所で服を脱いでからシャワールームに入る。すると後ろから声がした。

 

「ギン姉〜」

 

「スバル」

 

「今日のアキラさん異常だけど何かあったの?」

 

「それがわからないのよ……今朝から急に………起こした時に頭はぶつけたけど、それが原因とは思えないし……」

 

「………えいっ!」

 

ギンガが頭を抱えていると、スバルが後ろに回ってギンガの胸を鷲掴みにする。

 

「きゃっ……………っ!!!!」

 

ギンガは思わず声を上げそうになった。しかし、ギンガは全力で声を押さえる。叫べばきっとアキラが飛び込んでくると思ったからだ。だがギンガの努力も虚しく終わることになる。ギンガの足元に何かチクリとした感触が触れた。

 

「?」

 

ギンガが下を向くと、そこには………どこから入って来たのかゴキブリがいる。いるだけならまだしも、ギンガは触れてしまったのだ。さらにそのことにスバルも気づいてしまう。

 

姉という立場で、幼い頃から立派に生きてきたギンガでも、苦手な物は苦手だった。

 

「ひっ………」

 

「「キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!」」

 

二人して思いっきり大声で叫んでしまう。ギンガとスバルが声を上げて一秒経たない内にアキラがシャワールームに飛び込んで来た。

 

「ギンガ!敵は何処だ!!ってうおぁ!」

 

アキラは勢いよく飛び込んだ為、シャワールームに入って二歩で滑って転びかける。何かに捕まり、体制を立て直そうと手を伸ばした。アキラが手を伸ばして掴んだのはギンガが胸から下を隠してるバスタオル。

 

「あ……」

 

「◎*£☆∬ゑωーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

声にならない悲鳴を上げ、ギンガはまだ転びきれてないアキラに左拳での鉄拳制裁を無意識に降してしまった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

―夜 機動六課宿舎前―

 

その後、アキラが女性用のシャワールームに入った事情と一ミリも覗きや、やましい気持ちがなかったというアキラの証言もアキラの日頃の行動から見て取れ、アキラは女性陣から許され、部隊長のはやても事態を大事にしなかった。そして、アキラがギンガも仮眠をとっている宿舎前にいるとフェイトがやって来た。

 

「こんな所で何してるの?アキラ君」

 

「フェイト隊長…」

 

アキラもフェイトの存在に気づき、フェイトの方を見る。

 

「…ギンガの護衛?」

 

「ああ」

 

「そっか………頬大丈夫?結構腫れてるけど」

 

クスクスと笑いながらながら、フェイトはアキラの隣に立つ。アキラは頬を少し押さえながら答えた。

 

「大したことねぇよ。フェイト隊長こそ…こんな所でなにしてたんだ?」

 

「ちょっと寝つけ無くてね………散歩」

 

フェイトは正直不安だった、カリムの予言が。何も起こらないで欲しい…それがフェイトの願いだった。いや、全員同じ考えではあるが、フェイトはその気持ちが人一倍大きい。それより、今問題が発生した。今ので既に会話が止まってしまったのだ。不安な気持ちを紛らわす為に、アキラと雑談でもしようと来たのだが、気まずい空気が流れてしまう。

 

フェイトはどうにかして話題を見つける。

 

「ねぇ、アキラ君ってなんで刀を使ってるの?」

 

「あん?」

 

「デバイスがあるのになんで使わないのかなって」

 

「…俺はセシル………いや昔、護衛を失敗した時に家とも縁を切った。だが、親父の教えで刀を持つ者は刀は自らの魂が宿ったものだと言われて…だから今も刀を使ってる。それにデバイスは今の俺には持て余すからな」

 

「そっか………」

 

またもや沈黙がその場に続いた。しかし沈黙を破る様にアキラが口を開く。

 

「ヴィヴィオは…」

 

「え?」

 

「ヴィヴィオは元気にしてるか?」

 

アキラが聞きそうもない質問にフェイトは少し驚いたが、よく考えてみればヴィヴィオのお見舞いに来たり、転びそうになったヴィヴィオを助けたりと、ギンガ以外にやりそうもないことをしたりと理由は話さないがヴィヴィオを結構気にかけていたのでそこまで驚く程ではないと思い直たフェイト。

 

「うん、前に比べたらとっても元気になったよ」

 

「そうか…」

 

アキラはヴィヴィオを見てると、どうしてもセシルを思い出す。だから…少し気になっていた。そして、一つの引っかかりを感じている。前に見舞いに行った時にも感じていたが、今回の事件とヴィヴィオ何かしらの繋がりがあると。しばらく短い会話をフェイトとしていると、そこにギンガから通信が入る。

 

[アキラ君、おはよう……今どこ?]

 

眠そうなギンガがアキラに聞いた。

 

「寮の前にいる。準備整えてこい。ゆっくりでいいから」

 

[うん………]

 

「たく、寝癖立ち過ぎだってんだ」

 

アキラが小さく呟く。その横顔が、フェイトには何となく笑ってるように見えた。

 

 

―地上本部 北側―

 

 

アキラとギンガ、その他機動六課のメンバー数人は先に本部防衛に行く。ヘリで運ばれた後、所定の位置まで行った。

 

「ギンガ、暑くないか?」

 

「うん、大丈夫」

 

9月とはいえまだ暑い日がある。もう少し経てば過ごしやすい気候になるが、まだまだ結構暑かった。アキラ達は今、北側の警備をしている。もう少ししたらスバル達も来る筈だ。

 

「身体の方は大丈夫か?」

 

「うん、もう大丈夫。アキラ君も大丈夫?シャッハさんと結構激しい戦いしてたけど」

 

「む……」

 

先日、聖王教会のシスター、シャッハ・ヌエラとシグナムを相手にしたFWとアキラ達の模擬戦が行われたのだがその際にシグナムが「ギンガ護衛禁止命令」を出したのだ。アキラはギンガに危険に晒さない為に、二人をさっさと撃墜して終わらせようとしたが、シャッハはシグナムと互角の実力を持つ者。

 

結果、アキラはシャッハとシグナムに翻弄されながらもFWと戦ったが最終的にアキラが二人を相手にすることになり、かなり粘ったが結局負けてしまったのだが。

 

「あ、そうだ。ギンガに渡したい物があったんだった…忘れてた」

 

「渡したい物?」

 

アキラはポケットから一般的な大きさよりも少し大きいお守りを取り出す。それをギンガの手に握らせた。

 

「お守り?」

 

「今回の任務、すごく嫌な予感がするんだ。俺も可能な限りギンガから離れないようにするが、もしかしたら何かあるかもしれない。だから一応持っててくれるか」

 

「もう、心配性だなぁ。でもありがとう、持っておくね」

 

しばらくの間、二人に沈黙の時間が訪れた。何も起こらず今回の件が終わってくれるのが一番だが、生暖かく吹く風が嫌な予感を漂わせている。二人で空を眺めていると、一機のヘリが飛んで来るのが見えた。恐らくなのは達の乗ってるヘリだろう。

 

………時期に夜明けだ。

 

 

ーほぼ同時刻 スカリエッティラボー

 

 

地上本部襲撃まで残り数時間となった時、スカリエッティはナンバーズに見せる為のデータをまとめていた。大体まとめ終わると、スカリエッティは一息入れようと席を立って部屋の出口に向かう。

 

「………ほう、橘アキラのデータか」

 

突如スカリエッティの後ろから声がした。振り向くと、そこにはアキラの前にも現れた白い甲冑を纏う白髪の謎の男がいる。

 

「誰だ?君は。部屋のロックはかけて置いたはずなんだがね」

 

スカリエッティは焦らず、冷静に対象した。

 

「にしても管理局…いや、ミッドそのものを敵に回すなんて大層な計画だな」

 

「質問に答える気はないのかね?」

 

「………そうだな、俺は…あえて言うならこの世界の管理人とでも言っておくか」

 

スカリエッティはその返答に少し笑う。随分面白い事を言う奴だと思ったのだ。

 

「それはそれは…まぁ私のラボで警報一つ鳴らさず、ナンバーズに気づかれる事なくここまで来たんだ。相当な力を持っているんだろうね。是非とも研究したいが、悪いが侵入者には侵入者の扱いがあるからね」

 

そういうと、スカリエッティは柱にあったボタンを押す。すると床から二機のガジェットIII型が出現し、男に襲いかかる。

 

III型の平たく、大きい触手が男に迫るが男は動こうとしない。そして触手が男のいた位置に直撃した。しかし、そこには男はいない。スカリエッティも流石にその事態には驚く。男はIII型の後ろに立っていた。

 

男はIII型が振り向く前に、手をIII型の方に向けて指を人差し指を横に素早くスライドさせる。するとガジェットがいきなり機能停止し、その場に倒れた。

 

(瞬間移動の類か?いや…違うな。移動した痕跡が見つからないが…………?)

 

「参ったね。君は何をしに来たんだい?私を殺す気かな?」

 

男はスカリエッティに向かって歩を進める。

 

「なに、俺は警告しに来ただけだ…」

 

スカリエッティまであと数歩となった瞬間、スカリエッティの部屋の扉が開いてトーレとセッテが飛び込んで来る。スカリエッティが押したスイッチは、警報を鳴らさずにウーノとトーレに緊急事態を知らせる為の装置でもあった。

 

トーレとセッテは同時に男に切りかかる。男は二人に手のひらを向けた。すると男の手から波動が放たれ、二人は動けなくなる。

 

「ぐあぁ!」

 

「ぐ……」

 

「乱暴だな」

 

男は一言言った後に二人を解放した。二人はその場に跪く。

 

「くっ!ライドインパルス!!」

 

トーレはISの「ライドインパルス」を使い、高速移動で男に再び切りかかった。トーレからは男は止まってるように見える。狙いも定まってる。100%外すことはないと確信を持ちながら男を切った………しかし、刃は命中しなかった。

 

「!?」

 

トーレは驚く。確かに今のは命中するルートだった筈。トーレは再びライドインパルスで高速移動を始める。それと同時にセッテがISを発動させた。

 

「スローターアームズ!」

 

セッテの専用武器、ブーメランブレードを自在に操る「スローターアームズ」。奇妙な軌道を描きながらブーメランブレードが男に迫る。ブーメランブレードとトーレがほぼ同時に男に接触した様に見えた………が、どちらの攻撃も命中せず、またもや男の身体をすり抜ける。

 

攻撃を避けた男は、突然セッテに向かって歩き始めた。

 

「可哀想だよな……」

 

「可哀想?私が?」

 

セッテはブーメランブレードを手元に戻し、構える。

 

「ライド…」

 

「少し黙っててくれ」

 

男は動こうとしたトーレにバインドをかけた。そして、セッテの頭に手を伸ばす。この時なぜかセッテは動けなかった。強制的に拘束されているのではなく、自分が目の前の男を敵と認識してないような不思議な感覚。セッテがボーッとしてる間に、男はセッテを撫でた。

 

撫でられたことでようやくセッテは我に帰り、ブーメランブレードを振り回す。

 

「離れろ!」

 

「おっと…………まぁいい、ジェイルスカリエッティ、こんなくだらねぇ計画はとっととやめて、自首することだな…お前にとっても、こいつら…ナンバーズにもいいことなんかなんもねぇぞ」

 

そう言うと男の身体は薄れて行き、一分経たずに消えた。

 

「……何だったんだあの男」

 

「まぁいい、トーレ、姉妹を全員集めてくれないか」

 

「わかりました、ドクター」

 

ドゥーエを除いた戦闘機人11名が集合し、これから行われる地上本部襲撃についての説明をスカリエッティが始めた。スカリエッティは、先ほどの男の事は混乱を招くだけなのでトーレとセッテには口止めしておいた。

 

「今回の襲撃は、成功すればこれからの計画を大きく前進させるだろう。ドゥーエは別行動になっているが、姉妹11人力を合わせて事態に当たって欲しい。例の特殊部隊襲撃と「聖王の器」の確保。地上本部の制圧、Fの遺産とタイプゼロの確保………だが、今回君たちに注意して欲しい人物がいる」

 

スカリエッティはファイルからデータを展開し、とある管理局員のデータを表示する。それは、橘アキラのデータだった。

 

「彼の名前は橘アキラ。今タイプゼロファーストと共に特殊部隊に出向しているのだが……この男は要注意だ。かつてとある研究所で行われた計画の生き残りなのだが、その戦闘力は計り知れない。彼との戦闘はなるべく避けて欲しい」

 

スカリエッティにしては珍しい事を言うなと思ったノーヴェがスカリエッティに尋ねる。

 

「なんで避けるの?対して強そうには見えないけど……ていうかもし相当危険だとしても、そいつと会ってもすぐ逃げればいいんじゃない?」

 

「ところがそうもいかないこの男はタイプゼロファースト……ギンガ・ナカジマの護衛を名乗り、彼女のそばから離れない。そういう状況にあるから注意してもらいたいんだ。そしてもしも彼と戦闘することになった場合、彼の左腕に注意するんだ。彼には君たちと同じ【先天固有技能】、【IS】を持っている。能力名は「ハッキングハンド」。彼の左手で触れた記録のあるもの…コンピューター、人の脳、細胞、それらを彼の好きな様に書き換えることが出来る………簡単に相手やガジェットを手駒にできてしまうからね。重々注意してくれ」

 

橘アキラの注意を終え、作戦が開始される。先行隊が管理局に侵入を始めたのだ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ー陳述講演会 終了間近ー

 

 

時は過ぎ……陳述講演会も終わりを迎えようとしている。アキラとギンガが北側の経過報告をしに行った帰り道。ギンガが軽い安堵の混じったため息をついた。

 

「ん?」

 

「何だかんだで、何も起こらず終わりそうで良かったね」

 

「………まぁ確かに……………いや、なかなかそうとは言えないな」

 

「え?」

 

ギンガの意見に賛成しようとしたアキラだったが急に険しい顔をして遠くを見つめる。ギンガも同じ方を向くが、目を凝らしても何も見えなかった。なにかアキラが勘違いしてるのではないかと思い、ギンガは少し笑ってアキラの肩を叩いた。

 

「アキラ君、なに言って…………」

 

「感じるんだよ………同類の匂い…機械油臭ぇ匂いが!」

 

ギンガがアキラの言葉を飲み込めずにいると、その瞬間にアラートが地上本部全体に鳴り響いた。

 

「!!」

 

「管理局のノロマが…………ギンガ、今から俺が言うことをよく聞け」

 

ギンガは頷く。アラートまで鳴ったとなると、ギンガもお仕事モードだ。表情はきりりとし、既にさっきの表情は消えている。

 

「恐らく会場の周りにガジェットが大量に召喚されるだろうが、ギンガはなるべく内側を行ってFWと合流しろ。一緒にいてやりてぇんだが……さっきから色んなとこから救援要請がきてんだ…正直どうでもいいんだが、ここが崩されるのも結果的にギンガに危害が及ぶかもしんねぇ…だから」

 

「うん、大丈夫。とりあえず私は行くから、アキラ君も頑張って!アキラ君の力は、守る力だから!」

 

ギンガはアキラの言いたい事を大体理解し、アキラを勇気づける。アキラはギンガと共にいたい気持ちを必死にこらえる。

 

「いいか、忘れんなよ?通信機のこの黄色いボタンを押しゃ緊急信号がでるからな?」

 

「うん、これもあるし、大丈夫」

 

ギンガはさっきアキラから受け取ったお守りを見せ、FWと合流する為に走って行った。ギンガを見送ると、アキラはどこか不安そうな表情のまま一旦本部の外へ行く。

 

一応本部に結界は貼られているが戦闘機人の仕業か、結界や防御壁は弱くなっていた。その所為で今にも結界は破られそうな上に、魔力砲は通る為入り口付近にいた魔導師の大半は既にやられている。魔導師が減っているのにも関わらず、ガジェットは次々に召喚されている現状で、AMFを物ともしないアキラは必要不可欠な戦力だった。

 

アキラは刀を引き抜き、バリアジャケットを装備する。

 

「ギンガ待ってろよ……すぐに行くから………無事でいてくれ!!!」

 

 

ー地上本部 屋上ー

 

 

地上本部の屋上にはあの白い甲冑の男がいた。そして、様々な場所で起きている戦闘を映像で見ている。正しく高みの見物と言ったところだ。

 

「さて……どうなるか」

 

小さく呟いた。

 

 

 

続く

 

 


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