とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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あけましておめでとうございます!今年もマイペースでやってきますが、応援よろしくお願いします!月に、ここの話を二話、セントを一話ってペースでやっていけたらなぁって思ってますが、なんかうまくいかない気がしますww

それでは、本編をどうぞ!

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第十七話 決意

ースカリエッティラボ アキラの部屋ー

 

本部襲撃から五日たった日。アキラの身体は少しずつ動くようになっている。戦闘で失った脚と指は、アキラの感染しているエクリプスの力で完全に再生していた。だが、まだ歩いたりするのには、誰かの手助けが必要だった。

 

スカリエッティから提案された誘い………スカリエッティ達に協力する代わりに、ギンガとアキラに管理局を打ち倒した後の世界に住む場所と財産を与え、その後は一切の干渉をしない………。アキラはこの誘いをずっと迷っている。襲撃から三日後に目覚め、それから丸二日悩んでいた。

 

今日も変わらず、アキラは寝ても覚めても悩んでいる。

 

そして、お昼になるとセッテが昼食を運んで来た。あまり動けないアキラの世話はウーノとトーレ、そしてセッテが行っている。これはセッテ自身が望んだ事だった。

 

セッテだけでは心配なので、セッテをよく知るトーレと家庭的なウーノがアキラの世話をやることになったのだ。

 

「昼食です」

 

「………ああ」

 

アキラはあまり動けない身体をゆっくり起こし、箸を取る。

 

「食べれますか?」

 

「ああ、昨日よりか動く………」

 

ゆっくりだがアキラは食事を進めた。この時も考えていたのは例の案件のこと。確かにその提案を飲めば、少なくともギンガの身の保証は約束される。だが、それだけだ。

 

確かにギンガを守るアキラからしたら最高の条件だ。しかし、それだけである。ギンガ以外はどうなる?もし殺されたとして、その後、自分だけ生き残った世界をギンガは望むか?

 

きっと望まないだろう。それに橘家の教えなら、「護衛対象の心」も護らなければ本当に守ったことにはならない。だが、拒否した場合の処遇はまだ聞かされてない。それに、アキラにはもう一つ悩みの種がある。

 

「あの………」

 

「ん?」

 

考えながらゆっくり食事をしていると、セッテが声をかけてきた。

 

「まだドクターからの提案を、決めないのですか?」

 

「…………お前のISは読心術か?」

 

「?………違いますが。あなたにとっては最高の条件ではないのですか?」

 

セッテは、アキラの無償の護衛という物に興味を持っていた。なぜ無償で自分の身を顧みず、誰かのために尽くせるのか。そしてアキラはギンガさえ守れれば良いものだと考えている。だからなぜ簡単に条件を飲まないのか知りたかったのだ。

 

「…そんな訳ねぇだろ」

 

「なぜですか?」

 

「あんな条件、俺はともかくギンガが望むはずねぇ。でも……俺はもう大切な人を失いたくない………」

 

セッテは首を傾げる。

 

「……あなたは一体なぜそこまでタイプゼロの彼女にこだわるのですか?人の恋愛感情はわかりませんが、もっと綺麗な方なら沢山いるのでは?」

 

アキラはため息を漏らした。

 

一応ウーノから自分の世話係の内一人、セッテがどういう人物かは聞いていたがここまでとは思ってなかったのだ。感情のない人間というのにはなりたくないなぁと、アキラは少し思う。

 

「お前も恋をすれば分かる」

 

「………無理です」

 

キッパリと言い切るその表情に迷いはない。アキラは再びため息をついた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー同時刻 ギンガの病室ー

 

ギンガの怪我はもうほとんど治り、あとは一日経過を見て退院ということになっている。そんなギンガは今、昼食を必死にかきこんでいた。

 

無限書庫から見つかったアキラのデータ。それはとりあえず放っておくことにした。今はアキラの行方を追い、救出することが最優先であり、それが自分がすべきこと。そう考えたギンガは一刻も早く傷を治すべく、沢山食べて元気になろうとしていた。

 

「いつもよりよく食べんねぇ〜。その細い身体のどこに入るんだか」

 

いつも通りのテンションのメグが言う。

 

「ほっといて。身体を良くするには食事から、地球の漢字っていう文化の食べるって字は人を良くするって書くんだから」

 

「へぇ、物知りねぇ。確かにそうかもしれないけど、食い過ぎは身体に毒よ?あんたの言うことも間違っちゃないけど、病人は適度に食べんのが一番よ?」

 

「平気」

 

ギンガは一人分の病院食と、メグに買ってきてもらった大量の弁当の昼食を終えた後にすぐベッドから出た。少しだがトレーニングすることは医者から許可をもらっている。ギンガはトレーニングに向かう道中、スバルに会った。スバルは何か考え事をしてる様で、ギンガが真っ正面から歩いて来てるのに全く気づいてない様子。

 

「スバル」

 

「あ、ギン姉」

 

ギンガが声を掛けるとスバルはようやくギンガの存在に気づいた様で、驚いた表情を浮かべた。

 

「どうしたの?何か悩んでたみたいだけど………相談、乗ろうか?」

 

「うん…まぁ……大丈夫。ギン姉はまたトレーニング?」

 

「そう」

 

ギンガの言葉を聞くと、スバルは表情を曇らせる。

 

「ギン姉、少しは休んでた方がいいよ!この間まで寝てたんだし……」

 

「私は大丈夫。もう足は引っ張らないから」

 

ギンガは、もしアキラが拐われたのなら…助け出したいと思っていた。いや、自分の取る行動はそれ以外にないと思っている。リハビリ用の部屋の一部を借り、ギンガはSAのトレーニングを始めた。

 

 

ー二十分後ー

 

 

 

(待ってて、アキラ君………絶対助けるから…)

 

「あっ……」

 

意気込んで高く足を上げた瞬間、ギンガは身体の重心が傾き、倒れかける。その瞬間、ギンガを誰かが支えた。

 

「わっと…すいません………って、フェイトさん」

 

ギンガを助けたのはフェイトだった。

 

「大丈夫?ギンガ」

 

「………………ご心配してくれて、ありがとうございます。私は大丈夫です」

 

自分を助けたフェイトに礼だけ言い、ギンガは練習に戻ろうとする。

 

「ちょっと………休憩しない?」

 

「大丈夫ですって」

 

「休むことも大切だよ?まだ怪我だって完治した訳じゃないんだから」

 

「………………」

 

ギンガはフェイトの提案を渋々受け入た。ギンガはフェイトに連れられ、病院内にある庭園のベンチに座る。フェイトはそこに着くとギンガに「ちょっと待ってて」と言い、何処かへ行ってしまった。

 

一人残されたギンガは、庭園を見渡す。ずっとピリピリしてた自分の精神状態とは正反対の穏やかな風景だった。それを見ていると、ギンガの心も自然と安らいで行く様で、ギンガは「ふぅっ」とため息をつく。

 

「おまたせ、ギンガ」

 

フェイトは缶ココアを両手に持って来た。ココアをギンガに渡し、自分もギンガの隣に座るとココアを飲んで一息つく。

 

「うん、美味しい」

 

「……この病院こんなところがあったんですね」

 

「うん。それよりギンガ?」

 

「はい?」

 

「しばらく、トレーニングはやめた方がいいんじゃない?」

 

ギンガはその言葉に少し怒りを覚えた。トレーニングしたところで、前回役立たずだった自分は所詮「戦力外」と言われたような気がしたのだ。

 

「誰かに守られてばかりの自分じゃ、戦力不足ってことですか………?」

 

「え?」

 

そんな気は全くなかったフェイトは急に違った理解をされたことに驚く。ギンガは立ち上がってフェイトに抗議した。

 

「確かに前回はほとんど私の独断で戦闘を続け、結果的にアキラ君に……六課のみんなに迷惑かけてしまいました………でも!私、アキラ君を助けたいんです!それしか償う方法が……」

 

「待って!落ち着いて、ギンガ!誰もギンガのことを戦闘不足だなんて思ってないから!」

 

「じゃあなんで………」

 

「とりあえず一回落ち着こう?」

 

フェイトはギンガを座らせ、ギンガは一回ココアを飲んで冷静にさせる。

 

「ごめんね、急に変なこと言って。そんなつもりで言ったんじゃないんだ」

 

「私こそごめんなさい………勝手に勘違いして」

 

「あのね、今のギンガはすごく焦ってるみたいに見えるんだ。ギンガはアキラ君が拐われたことに責任を感じて、周りが見えなくなってる。そう私は感じるんだ」

 

「周りが……………」

 

考えてみれば確かに見えてなかったのかもしれないと、ギンガは少し反省した。メグもスバルも、自分の身体を心配して止めてくれたのに自分は気を急いてそれを無視した。

 

下手すれば自分の身体どころか友情関係や家族関係も壊しかねない。まぁ、メグもスバルもその程度では関係が壊れないと思うが……。

 

「すいません……フェイトさん」

 

「ううん、わかってもらえて良かった」

 

それからはしばらく、ガールズトークが続いた。ガールズトークと言ってもギンガが一方的にアキラの話をしていただけではあったのだが、フェイトは一言も文句を言わず聞いている。どうやらフェイトは聞き上手のようだ。

 

……………そして、トークが始まってからしばらくしてフェイトは席を立つ。

 

「ごめんね、これから仕事があるから」

 

「あ、フェイトさん……今日は…………ありがとうございました」

 

ギンガは頭を下げた。

 

「お礼なら、メグちゃんとあの……白い甲冑の人に言って?」

 

「え?」

 

「実はメグちゃんとギンガの知り合いだって言う人が、ギンガのことが心配だから落ち着かせる様に言ってくれってお願いされたんだ。だからお礼なら二人に………ね?」

 

「はい…………」

 

フェイトはそのまま去って行ってしまう。庭園に一人残されたギンガは、ベンチに座って考える。

 

フェイトが言った人物………それは恐らく、この間世界の時間を止めて自分の前に現れたあのバイザーの男だろうとギンガは考えた。だがまぁそんなことはどうでもいい。ギンガは気にしないことにした。それよりも自分はやらなければならないことがある。

 

過去の自分を反省し、今の自分を強くすること……肉体だけでなく、精神的にも。その上で、必ずアキラを助けると。

 

そう心に決意したギンガの様子を、あの男が見ていた。

 

「…………こっちは問題なさそうだな」

 

 

ースカリエッティ研究所ー

 

 

アキラが寝ている隣では、ウーノが何やらデータの整理をしている。その様子をアキラはじっと見ていた。

 

「……………何ですか?」

 

ウーノはアキラの方を見ないで尋ねる。

 

「なぁ……もしこの話を断ったら……俺はどうなるんだ?処分されんのか?」

 

「あなたは使える戦力ではありますが、それと同時に……貴重な研究材料でもあります。戦力として使えないならせめて資料の充実に貢献してもらう……少なくとも解剖はするでしょうね。もしくは洗脳してでもこちらについてもらうか………最終判断はドクターが下しますが、私が知ってるのはこの程度ですかね」

 

ウーノの言葉にアキラは少しも動じなかった。アキラの予想範囲内だったからだ。ここに連れ去られた理由……元々対象はギンガだったのが自分に変わった理由を、アキラはこの二日間考えていた。

 

そしてたどり着く答えは一つしかない。戦力以外でアキラの評価出来る点は身体。正しくは身体の中にある初期型の戦闘機人システムと「ジーンリンカーコア」だ。

 

「なるほどな…………」

 

「で、これを聞いて答えは出ましたか?できればそろそろ決めて欲しいのですが。あなたが加わるか加わらないかで作戦が大きく変わりますので」

 

アキラは起き上がり、怪しい笑顔を浮かべる。

 

「いいぜ。お前らが提示したあの条件、飲んでやるよ」

 

ウーノは少し驚いた顔をしたがすぐにいつものクールな表情に戻った。そして、席を立ち上がり出口に向かって行き、部屋を出る直前に、ウーノは振り向く。

 

「では、そのようにドクターにお伝えしておきます。あなたを信用し、出入りを自由にしますがくれぐれも怪しい行動は避けるようにしてください」

 

「ああ」

 

ウーノは部屋から出て行った。アキラはため息をつく。それと同時に、部屋白い甲冑の謎の男が現れた。

 

ドアから入ってきた訳でもなく、突然現れた男を見てもアキラは特に驚く様子もなく対応しようとするが、男は突然アキラの首に刀を当てる。

 

「おお?」

 

「どういうつもりだ。ギンガがあんな条件で喜ぶとでも思ったか?」

 

「そんな訳ねぇだろ。まぁ、俺に任せておけ。少なくとも…………スカリエッティの好きにはさせねぇよ」

 

「…………………」

 

少しの間、男はアキラを睨んでいたが、ため息をついて刀を納めた。

 

「そう言うのであれば………今はお前の言葉を信じてやろう。だが、もしギンガを悲しませる運命にしたのであれば…………」

 

「俺を殺すか?」

 

「当然だ」

 

終始表情を変えなかった男はそれだけ言うと、何処かへ消えた。

 

 

ー翌日ー

 

 

この日、研究所の大広間にナンバーズ(ドゥーエを除く)全員が集められた。

 

「やぁ、よく集まってくれたね。これからゆりかご起動時に君たちと一緒に戦ってくれるメンバーが増えたから紹介する。入ってきてくれたまえ」

 

大広間の奥の扉が開くと、オットーと酷似したナンバーズスーツに身を包み、上からバリアジャケットの一部である白いトレンチコートを着たアキラが入ってきた。

 

「タイプゼロより前に製造された半戦闘機人の橘アキラ君だ」

 

「橘アキラだ………最初に言っておくが、別にお前らに協力する訳じゃねぇ。それだけは覚えとけ」

 

 

 

ゆりかご起動まで、あと一日。

 

続く

 

 


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