ライダーネタがあるほうを読んでいた人もライダーネタを消して、一、ニ話をくっつけて編集しました。多少の変化はあります。
第一話 出会
ー新暦ー0073年ー
JS事件が起こる二年前。
ある日、森の方にテロリストがマシナリー(戦闘用自動攻撃マシン)を使った事件が確認されたので陸士108部隊が駆逐しに向かった。これはギンガ・ナカジマ(15)の初任務だった。ずっと重ねてきた鍛練の成果がようやく試せると、ギンガは張り切っていた。
「お前達はあっちを、俺とギンガはこの先をやってくる!」
「了解!!」
ギンガの小隊の隊長が指示をだし、それに従った部下が速やかに行動する。隊長と二人きりになったギンガは気を引き締め直す。かつて管理局だった母の後を追い、入隊した管理局。いままで大きな事件もなくずっと渋らせていた拳を、使える。そう考えるとギンガは気分が高揚した。
「ギンガ、やっと任務につけてもらったからってあんまり先走んなよ?」
「はいっ」
ギンガは威勢の良い返事をする。二人は山の奥の方に入っていった。しばらく進むとギンガの視界に三機ほどのマシナリーが写った。しかも背を向けている。不意打ちをかければ一気に制圧出来るだろう。
ギンガは手柄を、自分の力を認めてもらうこれ以上のチャンスはないと思った。
(最初に左側を潰して、それから一気に真ん中を叩けば……)
「いいか、ギンガ。もう少し様子を伺って…」
「ウィングロード!」
「!?。ギンガ待て!」
隊長の話を聞かず、地面にウィングロードを敷き、ギンガはそのまま突っ込んだ。今まで鍛えてきた自身と自尊心を持ちながら。いきなりギンガが飛び出したことに隊長が驚いた。隊長はギンガを止めようとして飛び出したが、近くに潜んでいたマシナリーに捕まってしまう。
「うぐっ!!」
「隊長!?キャア!!」
ギンガは隊長を助けようとしたが、横から同じ大型のマシナリーが出現し、ギンガを拘束した。しかしギンガは一応戦闘機人。一度力を解放させれば、底なしの力を出せる。ギンガは隊長を助ける事を最優先にし、全身に力を込める。だが大型マシナリーは一機ではなかった。
更に二機、三機目と現れ、それらすべてに拘束される。さすがのギンガでもこれは抜け出せない。そして今、ギンガの頭を狙ったエネルギー砲が発射されようとしていた。
「くっ…外れて…外れて…!」
ギンガも必死に抵抗したが、もう遅い。銃口から魔力弾が発射された瞬間だった。刹那、一筋の刃の光がギンガを拘束していた触手を叩き切り、大型マシナリー三機を真っ二つにした。解放されたギンガは地面に尻餅をつき、何が起きたか確認する。
「間一髪ってとこか…」
一瞬何が起きたか理解してなかったギンガが瞳に映った瞳の青年に声をかける。
「あ…なたは?」
ギンガを助けたのは自分と同い年くらいの少年。白いトレンチコートのようなバリアジャケットを着て、右手には日本刀を一本。
左肩には気絶した隊長が担がれている。
「無事か?あんた」
少年は優しく手を差し伸べてくれた。
「あ…うん…」
ギンガは少年の手を握った。その瞬間、ギンガは感じた。少年のまるで怨み、悲しみを重ねたような、大きな殺意の様なものを。ギンガはそれを感じた瞬間つい少年の手を離してしまった。そして尻餅をついた状態で後ずさりをする。少年は驚いた表情を浮かべた。ギンガはその表情を見てから自分がなんてひどいことをしたのかと思い、謝罪しようとする。
「あ…ごめんなさい…その…」
ギンガがなにか言おうとした時、魔力砲が少年の頬をかすめた。
「チッ…こっちの始末がさきか…」
攻撃してきたのはさっきのマシナリーだった。さっきよりも数が増え、十数機まで増えている。小型のマシナリーとはいえ一人で戦うのは危険だ。肩に担がれた隊長を地面に置き、少年は一人でマシナリー向かっていく。ギンガは少年を引き止めた。
「ちょっと、一人じゃ…」
「黙ってろ」
ギンガに冷たく言い放つと、少年は姿勢を低くしてマシナリーの群に突っ込む。少年は刀一本でマシナリーを次々と切り倒していった。素早い身のこなしで攻撃を避け、避けきれない攻撃は刀で弾いて確実にマシナリーに近づいて叩き切っている。
だがいくらなんでも数が多すぎた。
「危ない!!」
後ろから狙われてたのを、ギンガが防いだ。
「下がってください!民間の方に戦わせるわけには…!」
「管理局のあんたらがだらしねぇから俺が戦ってるんだ……ECディバイダー!」
少年が叫ぶと少年の左手に一瞬で剣のついた銃が出現する。それを構えると少年の足下に魔方陣が出現した。
「俺から10メートルは離れろ!!!!一撃で決める!!」
「え!?あ、うん!」
ギンガは慌ててウィングロードを出して、隊長を抱え、上空10メートル地点にいく。ちょうど上空に避難できた直後、森の一部が、青く光った。
「フロストバスタァァァァァァァァEC!!!!」
一撃。
本当に一撃だった。少年のデバイスの魔力砲は一撃でマシナリーを全て撃破した。いや、撃破したというか全て氷つき、砕けたのだ。少年の周りの気温は氷点下以下に下がり、森のあちこちも凍ってる。
「ふぅ…こんなもんか………ブレードオフ」
そう言って少年は刀を鞘に戻し、デバイスを消して立ち去ろうとした。
「待って、どこいくんですか!?」
「……………知ってどうする?」
そう言われると何も言えない。ギンガは質問を変えた。
「あ…じ…じゃあ…名前は?」
「……橘アキラだ…覚え無くていい」
「えっと…私は…ギンガ・ナカジマ。ありがとう橘君。あと…さっきはごめんなさい…悪気があった訳じゃ…」
「…」
「あ…」
アキラは無言のまま立ち去ってしまった。
◆◆◆◆◆◆◆
ー夜 ナカジマ家ー
その夜、ギンガはPCに向かっていた。
「橘アキラっと」
PCでアキラの事を調べていた。前科者、時空管理局職員。色々なルートで調べたが、出てこない。まぁ当然と言えば当然だ。しかしあの身のこなし、魔力、強さから見て管理局員ではなくても何処かしらに所属しているのではないかと思ったのだ。
「やっぱりでないか…」
(…なんか気になるのよね…あの人)
ギンガが気になってる理由はなんとなく気になるだけではない。あの戦闘技術、それから、なんの関係もない自分を助けたこと。それに何だか昔に会った様な……。
[只今、現場は張り積めた空気で犯人の要求は…]
「ん?」
偶然つけていたテレビのニュースで立て籠り事件がやっていた。犯人は銃を持ち、人質をとって警察にベランダから要求を叫んでいる。
[おい、なんだよあれ…]
突然、現場がどよめく。観衆の視線は犯人……ではなく、そのもう少し上の屋上だった。カメラが犯人のいるマンションの屋上を撮す。そこにいたのは、白いコートに刀を持った少年。そう、屋上には確かにあの橘アキラが立っていた。
そしてそこから飛び降り、犯人がいるベランダに飛び込んだと思うと刀で銃を叩き切り、刀の峰で犯人の首の後ろを叩いて気絶させる。カメラがアキラを映した後の数秒のことだった。
[と…突撃ーー!!]
しばらくアキラに呆気をとられていた警察がようやく動いた。
「すごい…」
しかし、アキラは誰に何を言うのでもなく、またそのまま何処かへ姿を眩ましてしまう。その後、事件の中継は終わり、彼のことについて何ものかという話がされたが、すぐ別のニュースに戻ってしまった。
◆◆◆◆◆◆◆
「犯人確保ー!!」
さて、また違う日。ギンガ達はある事件に駆り出されていた。とあるテロリストの隠れ家を見つけたのでそこの制圧という初任務に比べれば全然楽な任務だった。
「すいませんね。呼んでしまって。あなた…まだ新人でしょう?良いスジしてますね」
「ありがとうございます!とりあえず、怪我人を出さずに犯人を確保できてよかったです」
ギンガ達が犯人から離れてる間、確保されたテロリストが怪しい動きをしていた。しかしギンガ達はまだ気づいてない。そして、隙を見つけたテロリスト達が動き出す。
「今だ!」
声が現場全体に響き渡る前に、テロリストの二人が隠し持っていた特殊な道具で拘束具を破壊して逃げ出した。逃げ足が速く、犯人達は捕まることなく出口に近づく。
「速いっ!?」
しかし出口は誰かが道を塞いでいた。それが誰なのか、ギンガにはなんとなく分かった。きっとまた「彼」だと。
ギンガの予想は大当り。出口に立っていたのはアキラだった。変わらぬ無表情で出口の前に立ちはだかり、犯人達が勝手に近づいて来るのを待っていた。
「オラッそこどけ!!」
「……」
「へぶっ!?」
アキラは無言で逃げ出したテロリストの一人の顎を思いっきり蹴りあげ、鞘が付いたままの刀でもう一人の後頭部を叩く。この速業で二人とも気絶してしまった。
「確保だ!!犯人確保!!」
テロリストは再逮捕された。そして今まで通り、アキラは誰にも気付かれないように、その場を去っていく。しかし、ギンガには見られていた。今すぐ追い掛けたかったギンガは、近くにいた仲間に訪ねる。
「すいません」
「はい、なんですか?」
「すいません、所用で…すぐ戻りますので!」
「え、あ、はい…。でももう戻られて大丈夫だと思いますが…」
ギンガはお辞儀をし、走り出した。
―地下道―
(地下の道か…こんな裏道があるなんて…。この先に橘君の住み処かなにか…あるのかな………まさかね。どんなところに住んでるんだろう)
ギンガは帰ると見せかけ、アキラを尾行していた。どうしても彼が気になるのだ。アキラが途中で止まり、後ろをみる。ギンガはあわてて隠れた。少しするとアキラはまた前を向き、角を曲がって歩いていく。
(危なかった……あ、いけない見失っちゃう…)
そう思い少し急いで追いかけ、アキラが曲がった角を曲がろうとした瞬間、曲がり角から刀が飛び出してきた。ギンガは驚いて尻餅をつきそうになりながらも体制を整える。
「きゃあ!!」
アキラは尾行の存在にとっくに気づいていた。曲がり角からは姿を見せず、刀を突き出したままでアキラは尋ねた。
「誰だ…」
「えっと…私ですギンガです」
「あん?はぁ……………なんだ…またあんたか」
ギンガが名乗ると、アキラは刀を納め、角から出てきてくれた。
「なんの用だ?」
地下道ではアキラとギンガが二人で向き合っている状態。ここまで来たならもう、引き下がる道理はない。ギンガは思い切ってアキラに尋ねる事にする。今まで気になっていた事を全部。
「うん…用っていうか…」
「…特に用がないなら近づくな。あまり人と関わりたくない」
ボソボソと言うアキラの声がギンガには妙に悲しそうに見えた。こんな風なアキラだからこそ、ギンガは放っておけなかったのだ。とりあえずまずはアキラの行動の真意を確認したがったギンガは遠回しに尋ねる。
「いや、ちゃんと用事はあるっていうか……その…心配なんだ…」
「………心配?」
意外な答えだったのかアキラは驚いていた。ギンガは続ける。
「うん…事件現場にあなたが現れても特に何も言わず帰っちゃうよね?なんで?私が見ただけでも三件、手伝いをしたんならそれなりの謝礼が管理局から出されるし…」
「…………俺はやりたいことをやってるだけだ。謝礼なんかいらねぇ。何度もいうが俺に関わるな。テメェみたいな人間の哀れみが俺は一番嫌いなんだ」
アキラはあえて嫌われるよう、ウザく思われる様に言葉を選ぶ。全ては他人を巻き込まない様にする工夫だった。もちろんこの言葉は嘘だが、今まで大抵こんな感じであしらってきた。
心配してくれるのは嬉しいが、上辺だけの気持ちなんかいらなかったから。しかし、ギンガは違った。
「……それは…嘘だよね?あなたは、そんな人じゃない…そんな気がするんだ。あ、いや…ただの勘だよ!?なんとなく…」
慌てながらギンガが優しく微笑む。
「嘘なんかじゃねぇよ!」
「………じゃあ。なんでそんなに悲しそうなの?」
アキラは驚いた。その言葉はすごく懐かしかったから。第一、自分を心配してくれる人もこの一年久しぶりだ。しかし、簡単には信用出来ない。信用出来ないはずなのに…なぜこんなにも懐かしさを感じるのであろうか。アキラはわからなかった。
「ねぇ…君はきっと、何かを隠してる……」
ギンガじゃなくてもそんなことはわかりきったことだった。危険も承知で誰かを無償で助ける行為なんて何かしら理由がないとできないからだ。だがアキラは今まで聞かれることがなかった。だからこそ聞かれたことでギンガが少し特別に思えたのだ。
ギンガがアキラの手を握る。アキラは振りほどこうとしたが、手の包まれ方がとても心地よかった。これもまた懐かしさを感じる。信用はできないが、少なくとも何かを話さないと帰ってくれそうになかった。だから少しだけ話すことにした。
「…俺は…人から恩賞をもらう権利がない…」
「え?」
「あんたには隠し事できそうにないしな。話すよ…全部話す」
そう言うとアキラは、その場に座り込み、少しうつ向いた。
「………俺はな…昔、人を…いや、ある少女を殺した」
「え…」
アキラは口を挟まれる前に全部言っておく事にした。いや、言っておきたかった。
「そう、殺しちまったんだ。殺したとはいっても事故だがな。まだ未来のある9歳の少女を……俺のミスで殺しちまった。俺は罪を償う為に、せめて…あの子が許してくれる時なんか無いと思う。だけどせめて…あの子を守れなかった分まで人を守ろうって思っただけだ」
アキラにとって始めて昔の話をした相手。どんな反応をするかと思ってたが、ギンガは黙ってる。アキラはため息をついた。少しでもギンガを信じた事を軽く後悔したのだ。
(まぁどうせ嘘かなんかの冗談だと思われて、そのままおしまいだろうな…こんな話…)
「そう…だったんだ…」
何やら暗い声。
アキラは呆れられたのかと思った。それが当然だと思ってたから。アキラは軽く顔をあげる。ギンガはどう慰めたらわからないと言うような顔をしていた。だが、心配そうな目を見ると、本気で信じてる様だ。
こんな話をされて、一体どう思ったのかアキラは真意を確かめる為に立ち上がった。
「…お前、つぅ!…が…」
アキラが突然右肩を押さえ、倒れかける。
「橘君!?大丈夫!?」
「問題ない…よくあることだ」
「問題無くないよ!ほら見せて…」
アキラは渋々と肩をギンガに見せた。服を少しずらすと、そこには傷跡がある。
「この傷痕…」
「古傷だ…気にすんな」
ギンガが見るとアキラの体には所々傷がある。傷痕や新しい傷、アキラは傷の自然回復を待つだけだった。もちろん病院にも行ってない。そのことを察したギンガは、アキラの肩を軽くおさえながらアキラに尋ねた。
「えっと、その…か、管理局に…来てみない?」
「…………は?」
「あのさ…なんていうか…今の橘君のやり方は今は良くてもいずれ支障が出ると思うんだ。傷だってちゃんと治療しなきゃだし…」
遠慮を見せながらギンガは喋る。
「……無理だ。管理局じゃやれる事に限りがある。ついでに保護者もいねぇから、管理局に入ろうとしても無理だ。保護施設がいいとこだろうよ」
ギンガは顔をアキラに向ける。強気な顔だ。ギンガはアキラの目をしっかりと見ながら話す。
「じゃあ、保護責任者は私がなんとかする。君の力はきっと管理局で役に立つ!もっといい形で人を助けられる!」
さっきまでのギンガの遠慮深さはどこに行ったのか、引き下がろうとしない。次第にアキラは疲れてきた。
「はぁ………わかった…考えておく…」
「本当!?」
「…ああ。考えてといてやるからこれ以上はついて来んな」
アキラは冷たく言い放つと、右肩を押さえながら立ち上がり、去ろうとする。ギンガは最後にアキラに言った。
「ちゃんと病院にいかなきゃダメだよ~!」
「はぁ…へいへい」
アキラはどうにも彼女、ギンガがセシルに似ていると思っていた。
◆◆◆◆◆◆◆
1ヶ月後のギンガの帰路。
「よぉ…」
「橘君!?」
「…」
相変わらずの無表情で、暗闇から出てくるからちょっと怖いとギンガは思った。だが、こうしてまた自分の前に現れたと言うことは少しは考えて来てくれたのだろうかとギンガはすこし期待する。
「保護責任者はなんとかなったか?」
「え…ああ!うん!もし、管理局に来るなら、お父さんが引き受けてくれるらしい…の」
恐る恐るギンガが答える。保護責任者のことは聞いてきたが、まだ管理局に入るとはいってない。
「随分すんなり受け付けたな…」
「え?」
「いや、なんでもない。そうか…わかった」
そう言ったかと思うと、刀袋に手を入れた。
「えっ!?」
刀袋からは刀…ではなく紙が出てきた。それを広げてギンガに向ける。
「この入局書はこんな感じでいいのか?」
「…」
「…どうした?おい?」
正直ギンガは驚いた。きっと駄目だと思った。アキラは管理局にはこない。そう思っていた。アキラはギンガの言葉に答えてくれた。それがなにより嬉しかった。
だが、それ以外にも感情があることに少しギンガは気づき始めた。
「……い…おい!!」
「ふえ!?」
ギンガは嬉しさのあまりしばらく呆けていた。その内にアキラはかなり顔を近づけている。
「う…うん。大体こんなのでいいよ」
「顔赤いぞ?大丈夫か?」
「え!?あ、うん」
「…まぁいい。じゃあな」
アキラはまた暗闇に消えようとしたがまたギンガが引き止めた。
「橘君!!」
「なんだよ?」
「また…会える?」
「…知らねぇ」
その日から3日後、アキラ君は時空管理局に入局した。
◆◆◆◆◆◆◆
そんな事があってから…アキラが入局してから一年半。今、刀を携えた男が…アキラが、陸士108部隊の隊舎入り口の前にいた。桜が舞い散る隊舎の入り口に向かって歩き出す。
「やっとついた…」
そう呟いて前に進む。
「ようやく会えるぜ…ギンガさん…」
続く