とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅れまして申し訳ございません………。時間掛けたのに全然目標に達っせませんでした…。

色々随時募集中です


第十九話 極地

ーアキラの精神世界ー

 

 

(何なんだこれ……俺の中に………誰かが…誰かが入ってくる!?)

 

アキラとディードの戦闘中、ディードはアキラの隙をついてボール状の何かを取り出し、アキラに押し当てた。その瞬間、ボール状の何かからドス黒い色の魔力エネルギーが溢れ出してアキラを包んだ。

 

アキラは自分に入ってくる何かに必死に抗ったが、アキラに入り込んできた者は無理やりアキラを押さえつけ、アキラの意識を乗っ取る。

 

 

ー現実世界ー

 

 

今、ディードの前でアキラは意識を失い、仰向けに倒れていた。アキラの胸には、ディードが押し当てたボール状の物がその本体の半分位が融合している。胸の周りは酷い状態で、服は破れ、皮膚にはヒビが入っていた。

 

ディードが持っていたボール状の物…それは作戦前にスカリエッティに渡されていた物だ。

 

 

ー作戦開始前ー

 

 

ディードは作戦会議が終わった後、スカリエッティに呼び出され、スカリエッティの部屋に向かった。

 

「ドクター、お話とはなんでしょう」

 

「ディード。君は今回の作戦でフィフティーンのお目付け役だ。ちょっと手を出すんだ」

 

「はい」

 

スカリエッティはディードの手の上にあのボール状の物を置く。ピンポン球程の大きさの玉に、幾つかの穴が空いており、その穴からはドス黒い色のリンカーコアが覗いていた。ディードはそれに、無意識に恐怖を感じた。

 

「もしフィフティーンが裏切るような行動をとった場合、それをフィフティーンの胸に押し当てるんだ。そしたら彼は一度気を失い、少ししたら目を覚ますだろう。目をさまし、人格が変わっていたら彼に従う様に。いいね?」

 

「わかりました……ですがドクター、これは何でしょうか?」

 

ドクターはそれを聞くと、少し驚いた表情を浮かべる。そして、パソコンを操作し、いくつかのデータをピックアップしてディードの見せた。

 

スカリエッティが出したデータは、古代ベルカのデータである。

 

「それは「ジーンリンカーコア」。かつて古代ベルカで作られたものだ。リンカーコアにも遺伝子は存在しているのを知っているかい?」

 

ディードは首を横に振る。

 

「だろうね。ジーンリンカーコアは、古代ベルカで強さに見込みがある者、かつて強戦士と謳われた老戦士などが死ぬ前に自分の身体に植え付けていたものだ。あの時代は戦が耐えなかったからね、かなり若い者も持っていたそうだ。そして、ジーンリンカーコアは、元々その中身は空で何も入ってない。だが、それを身体に付けた者が死ぬとどうなるか…………ジーンリンカーコアがその死んだ人間のリンカーコアを吸収し、保存するのだよ。そして、保存されたリンカーコアをどうするかと言うと産まれたばかりの子供、訓練を積んだ若い兵士、人口的に造られた戦士、どれかに融合させるとあら不思議、その者がかつての戦士の力を受け継ぐのだよ!まさにリサイクルというやつだ。通常なら自我を失うことはないが、一つ例外がある。それは死ぬ前にジーンリンカーコアにリンカーコアを移すこと。するとリンカーコアがその本人の意識まで持って行くのだ。そして意識入りのジーンリンカーコアを融合させられた人間は、自我を失い、身体を乗っ取られる…………………もうこれでは、まるで寄生虫のようだがね

 

 

というような説明をディードは受けていたが、正直心配だった。

 

本当に橘アキラの意識は乗っとれるのだろうか……そもそもリンカーコアを入れるだけでその戦士の力は入手出来るなどという話が本当にあるのだろうか…。そんなことを考えていると、アキラの身体がピクリと動いた。

 

ディードはツインブレイズを展開し、構える。

 

ゆっくりと起き上がるアキラ。上半身を起こしたかと思うと、手の力だけで上空に跳ね上がった。

 

「!?」

 

そして、勢い良く地面に着地する。するとアキラは自分の胸に融合している物を見た後、ディードを睨みつけた。ディードは息を飲む。明らかにさっきのアキラとは違かった。うまく説明できないが、さっきとは違う…禍々しさがあった。

 

「俺を目覚めさせたのは、お前か?」

 

「そう…だ」

 

するとアキラはディードに飛びかかり、左手でディードの頭を掴む。ディードは焦ってアキラの腕を振り払い、距離を取った。

 

敵に捕まって逃げたというより、掴まれた時に直接腕から叩き込まれた様な恐怖感が全身を駆け巡り、身体が反射的に動いたのだ。ディードは、

手が震えているのを実感していた。

 

「安心しろ。ちょいとお前の仲間の情報を見せてもらうだけだ」

 

それを聞くとディードは恐怖心を振り払い、戦闘体制に入る。

 

「仮にあなたが過去の人物だったとして、なぜ橘アキラの力を知っているのですか?」

 

「俺がこの身体で目覚めた時にこの器の記憶、能力をすべて理解したからな」

 

「あなたは…………誰ですか?」

 

アキラは魔法陣を展開させる。その魔力の色は、黒と赤を混ぜたような、とにかく黒い色だった。すると、アキラの白いトレンチコートは黒く染まり、ナンバーズスーツは赤く染まった。

 

「俺はかつてベルカの国を支配し、またこの力を振るえる日を待ってジーンリンカーコアに魂を宿した男。アーベル・ボクスベルク。ベルカの国で唯一頂点を取った男だ」

 

「アーベル・ボクスベルク………アーベルでよろしいですか?」

 

「そうだな……陛下って呼んでもらおうか」

 

「陛下?」

 

「そうだ…………俺はこの肉体を使って、もう一度世界を…次元を牛耳る。それ程の力を持つ俺に、お前如きに呼び捨てにされてたまるか」

 

「………」

 

 

ー廃高速道路ー

 

 

アキラから何かのデータを預かったギンガは最寄りの隊に向かって走っていた。その途中、背負っていたアルトが目覚める。

 

「ん………」

 

僅かにもらしたアルトの声をギンガは聞き逃さなかった。

 

「あ、アルトさん、目覚めましたか?」

 

「うん……今、どういう状況?」

 

「戦闘機人達を逮捕する為にみんな一対一で戦ってます。アキラ君も裏切ったフリをしてただけで、今は戦闘機人と戦ってます」

 

「そっか……ギンガ、もう大丈夫。降ろして。あとは自分で行くから」

 

そう言ってアルトはギンガから離れようとする。みんなを運ぶのは自分の役目なのに、運ばれてる自分を恥じたのだろう。そして、きっとギンガはみんなと戦いたいと思ってるのだろうと考えたのだ。しかし、ギンガは止まろうとも、アルトを降ろそうともしなかった。

 

「アルトさんのことですから、私が戦いに参加出来てないことを悔やんでるって思ってるんでしょうけど……今私が走ってるのはただアルトさんを管理局に運ぶために走ってる訳じゃありません」

 

「へ?」

 

図星だったアルトは驚き、今ギンガが自分を背負って走ってる理由が自分を運ぶだけでないことに更に驚いた。

 

「これ……アキラ君から預かりました。多分敵に関するデータです。これをどこかの隊を通して機動六課に届けるのが今の私の仕事です………それが終わったらすぐにでも戦いに参加します!戦わなきゃ、何のために鍛えてきたかわかりませんから」

 

「でも、アキラ君は敵側にいたんじゃ……私たちのヘリもアキラ君に落とされたんだし………」

 

「アキラ君は、そんな簡単に悪に屈しません。あれは裏切ったフリだったんです。アルトさんを助けたのはアキラ君何ですよ?」

 

「そうだったんだ………」

 

少しの沈黙の後だった。ギンガ達の後ろから魔力砲が迫ってる事をブリッツギャリバーがいち早く察する。

 

『後方より魔力砲接近!回避してください!』

 

「魔力砲!?」

 

ギンガとアルトが振り向くと、赤と黒の魔力砲がすでに完全回避出来ない距離まで迫っていた。サイズはなのはのディバインバスター並、当然あと僅かな距離で回避出来る訳はない。ギンガは少しでもダメージを減らそうと、魔力を全開で走る速度を上げ、背負ってるアルトの後ろにバリアを貼った。

 

魔力砲はギンガの足元に着弾し、ギンガが予想してたのより大きな爆発を起こす。

 

「きゃああ!」

 

「ぐう………っ!」

 

ギンガとアルトは別々に吹っ飛ばされた。アルトは近くの瓦礫にぶつかり、ギンガは身体のあちこちをぶつけながら転がり、ギンガは瓦礫にぶつかってようやく止まった。

 

「なるほど……なかなか使える銃じゃねぇか」

 

爆煙の中から、二人分の足音がギンガ達に近づく。

 

「…………アキラ君…?」

 

ギンガの前に現れたのは、解放前のディバイダーを持ったアキラ……いや、アーベル、そしてディードだった。

 

そこにいるだけで感じ取れる程の禍々しい魔力を感じ、ギンガはすぐにアキラではないと気付く。吹っ飛ばされて所々打撲した身体をギンガは、無理矢理動かし距離をとる。

 

「違う!…あなたは………誰!?」

 

「……ほう?すぐにこの身体の持ち主ではないと気づいたか…俺は」

 

「アーベル・ボクスベルク。かつて古代ベルカを牛耳った男……ジーンリンカーコアで生き延びてるって話は本当だったのね」

 

どこからともなく足音と声がした。ギンガとアーベルが音がした方を見る。こちらに歩いて来たのは、バリアジャケットを装備したメグだった。

 

「メグ……どうしてここに……」

 

「記憶検索………メグ・ヴァルチ…陸士108部隊陸曹………ギンガ・ナカジマの親友…………検索完了。メグ・ヴァルチ、何用だ。ここにいれば貴様も消すぞ。今すぐ失せろ。少しでも長生きしたかったらな」

 

アーベルはあざ笑うように言う。それを聞くと、メグはため息をついた。

 

「はぁ?あたしはこれからももっと恋愛して、本当の恋人見つけて幸せをな生活送るのよ。こんな所で死ぬ訳ないでしょー」

 

メグはいつものノリで言った。ギンガは念話で話そうとしたが、メグはギンガが念話をしてくる前に口を開く。

 

「ギンガ、今あんたが考えてること言い当ててあげようか」

 

「え?」

 

「あんたは自分がここに残って、あたしにそこのパイロットさんとデータ運んで欲しいって思ってるんでしょう?」

 

ギンガは考えてたことを言い当てられ、唖然とした。

 

「どうして……」

 

「どうして……じゃないわよ。あんたの考えることなんて大体わかるわよ。あんたはアキラから託された物とパイロットさんを運びたいけど、この男との決着もつけたい。そう思ってるんでしょ?けど…一人じゃこいつを押さえられないくらいあんたにもわかんでしょ」

 

「メグ……」

 

「そこのパイロットさん。悪いけどこっから先は自分の足で行って。ここはあたしとギンガで食い止める」

 

「ちょっと待ってよメグ!」

 

勝手に状況の判断をし、行動に移そうとするメグをギンガは止めようとする。だが、ギンガこの時すでに少しわかっていた。この判断は正しいと。しかし、ギンガはやりたいこと……というか勝手に自分が使命に変えてることがあった。

 

「悪いわね。あんたのことだから、アキラがこうなったのは自分の責任だから自分が責任とって戦おうとも思ってるんでしょうけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないのよ」

 

いつもはふわふわしてるというか、適当というか、そんな感じのメグが今日だけは違う。いつものメグからは感じ取れないような、妙な感じが漂っていた。

 

その感じを悟ったアルトは、ギンガからデータを受け取り、走り出す。それを止めようとディードが動こうとしたが、アーベルがそれを止めた。

 

「メグ・ヴァルチ。良い判断だと言いたいが、正解ではない。10点減点」

 

「何ですって?」

 

「どうせ逃がすならギンガ・ナカジマの方が良かっただろう。そうすれば少しでも先へデータを運べただろうに。お前が間違えた点は、俺の力を…」

 

アーベルはそこまで言うと、メグ達の視界から消える。そして、一瞬でギンガの真横に移動した。

 

「俺の力を甘く見たことだ」

 

ギンガがアーベルの存在に気づき、距離を取ろうとしたが遅かった。アーベルに頭を左手で掴まれ、壁に叩きつけられる。この間、10秒かかっていない。ギンガはその一発で意識を失い、アーベルが手を離すと瓦礫に倒れこんだ。メグは驚きを隠せない表情で立ち尽くしている。

 

(今…確かに左手が勝手に動いた…………まだこの器が抗ってるってことか)

 

「ギンガ……………よくも………………アァァァァァァァァァベルゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

 

メグは急に表情を険しくし、トンファー状のデバイス、「アカツキ」を出現させた。デバイスを持つ手の握力はどんどん強くなり、構えを取ったかと思うとアーベルに飛びかかる。アーベルはディバイダーを取り出し、メグの一撃を受け止めた。

 

メグは一旦距離をとり、再び飛びかかる。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「感情に流される人間は戦場で長生きは出来ない……………バスター」

 

アーベルはディバイダーの銃口をメグ向け、引き金を引いた。赤と黒の魔力砲が発射される。確実に命中したな…そう思った瞬間、アーベルの真横にメグが現れる。

 

アーベルはその瞬間、反射的にガードを出した。

 

「!?」

 

「はぁぁぁ!」

 

メグの一撃はシールドで防がれたが、貫通した衝撃がアーベルを少し吹っ飛ばす。アーベルは上手く衝撃を受け流しながら止まった。そして、不思議そうにシールドを出した手を見たあと、メグを見る。

 

「………俺のシールドを、貫いた?」

 

「当たり前でしょ?今のにかなりの魔力を込めたんだから………アーベル。あんただけはあたしが倒す」

 

「そういえばお前、俺の正体を知ってたな。………お前まさか」

 

メグはアーベルが真相にたどり着く前にトンファーを構えて突っ込んだ。アーベルはディバイダーでメグの一撃を受け止める。

 

「アカツキ!ロードカートリッジ!」

 

『Set Up』

 

メグの掛け声と共にカートリッジが二つアカツキから飛ばされ、アカツキの打撃部分から稲妻が発生した。メグがその雷属性を付与した攻撃を繰り出す。攻撃が当たる前にアーベルは後ろに飛んでそれを避けた。

 

アーベルはディバイダーを構え、再びバスターを放つ。メグはそれにまっすぐ突っ込んで行く。

 

「スキル、発動」

 

そう呟くと同時に、メグの身体が一瞬青く光り、その場にメグの残像を残し、メグは超高速移動始める。そして、さっきと同じように超高速移動でアーベルの横に表れた。

 

まだアーベルがこの仕掛けに気づく前にアキラの身体からアーベルを引き剥がそうとするが、そう上手くは行かなかった。メグがもう一撃入れようとアカツキで殴りかかったが、紙一重でかわされる。アーベルは魔力を込めた蹴りをメグの横腹に食らわした。

 

「!」

 

「ぐ……………捕まえ…………った!」

 

メグはアーベルの蹴りをあえて食らい、足を掴んで逃げられない様にしている。そして、メグはアカツキの後方が前を向くように持ち方を変えた。アカツキは、トンファーであると同時に、銃の役割も果たすデバイスだった。

 

「アカツキ、モード2!ライフル!」

 

メグはアカツキの銃口をアーベルのジーンリンカーコアに押し付ける。

 

すると、アーベルは急に焦り、メグに掴まれてる足に魔力を込めて連発で蹴りを放った。メグはそれに耐えながら引き金に手をかける。それと同時に魔力カートリッジが三つ飛ばされた。

 

「シェル・キャノン!!!」

 

引き金が引かれると同時に、半径数メートルに渡って爆発が起きた。爆炎が巻き起こり、その中からメグが片足を引きずって出てきた。数歩歩くと跪く。

 

「はぁ………はぁ……………かはっ……」

 

(ジーンリンカーコアの取り外しにはその付近での強力な魔力ダメージが必要………今のはあたしも危なかったけど……これでなんとか…)

 

「なるほど、お前の魔力波長、どこかで感じたことがあると思ったら、そうか……そう言うことか……」

 

爆炎の中から、未だにジーンリンカーコアに支配されてるアキラが出てきた。

 

「そんな……………くっ!モード3!ロッド!」

 

メグは独自にデバイスを改造して作った第三段階目、二つのトンファーの銃口を連結させたロッドモードでメグはアーベルに突っ込んだ。しかし、

その直後だった。

 

「!?」

 

妙な感覚に包まれ、メグは足を止める。メグだけでなく、FWとナンバーズも全員違和感を感じていた。

 

「なんなの………この違和感…………」

 

「来たか………」

 

アーベルがそう呟き、手を上げた。それと同時に、空に次元の裂け目が出現し、裂け目から巨大な次元戦艦が姿を現す。

 

「…………殲滅用次元戦艦………神威……」

 

 

続く

 


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