とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅くなって本当に申し訳ありません。年度末はなんやかんや忙しかった物で………四月からはちゃんと活動して行きます!勢いで新しい艦これの小説も始めました。良かったらそちらもよろしくお願いします。

お気に入り、感想、評価、随時募集中です!



第二十話 希望

「殲滅用次元戦艦神威………なんであれが動いている!?あれは、あんたの血筋を持った人間が玉座にいなきゃ………動かない筈だ!」

 

「ああ、確かにな。だが、俺はスカリエッティと契約した。スカリエッティの技術があれば、一時的にだが俺の代わりが作れるらしい。俺はあれを別次元からスカリエッティに持って来させる事を条件に俺はあいつに協力する。まぁ、あれとゆりかごが全て消す前に俺が楽しみたいだけだがな」

 

メグは目の前の現実に絶望した。人質を取られ、本気で戦えない状況。それだけなら、まだ知恵を凝らせばアキラを救出した上でアーベルを倒せたかもしれない。

 

だが、最も恐れていた状況。アーベルがかつて世界を牛耳る為に使った兵器、ゆりかごの試作型で、アーベルが自ら改造、改良した「神威」が出てきてしまった。魔力砲口は、小型の「永久追尾砲()」が左右合わせて48門、腹部に24門、主砲の「超電磁圧縮砲()」が正面に1門。十分過ぎる火力。もはや鬼に金棒。

 

「さぁ、どうする?まだ戦うか?メグ」

 

「もう……しょうがないわ」

 

「何がだ?」

 

「刺し違えてでもあんたを殺す!!その肉体ごとね!」

 

メグは決意を固めた表情でロッドモードのアカツキを構えた。

 

「この器を殺すと言うことか?いいのか?あの女にとっては大切な存在なんだろう?」

 

あざ笑うようにアーベルは言う。しかし、メグは決意を変えなかった。

 

「橘アキラの死は、もう仕方が無いわ。あんたに乗っ取られた時点で見捨てるべきだった」

 

「ほう………流石は元俺の騎士団の団長だ」

 

メグがアカツキを構える。アーベルも刀とディバイダーを構えた。

 

少しの静寂、先に動いたのはメグだった。低い姿勢で素早く、まっすぐ突っ込んだ。アーベルはディバイダーで魔力砲を放つ。メグはまたスキルを発動させ、砲撃を残像を残しながら横に避けた。が、そのメグの目の前にまた砲撃が迫っている。再びスキルを発動させて避ける、だが更にもう一発、魔力砲が飛んできた。メグの高速移動のスキルは連続運用は二回までだったため、シールドで防御する。

 

しかし、魔力砲の威力はメグのシールドを簡単に打ち砕いた。メグは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。メグはすぐに体勢を立て直す。

 

そして、カートリッジを二つ飛ばしてアーベルに殴りかかった。アーベルはそれを紙一重で交わし、メグの鳩尾にバリアジャケットを貫通させるほどのパンチを食らわせた。メグはこの一撃でぐったりとアーベルにもたれかかって気を失う。

 

「くぅ……」

 

「チェーンバインド」

 

アーベルはメグを適当な瓦礫に縛り付けると、メグの胸の前に手をかざした。

 

「摘出」

 

「あぐ……あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

アーベルが手をかざしているとメグの体内から何かが摘出され、アーベルはそれを持ち去る。メグはそのまま放置し、ギンガを掴んでディードと共に何処かへ向かった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「はぁ、はぁ………」

 

スバルはノーヴェとの激しい戦闘の最中、一旦距離を取って体力を回復させていた。まだゆりかごに突入したり、仲間を助けに行く可能性も否めない。そのため、スバルは体力を温存させながら戦っていた。

 

だが、敵を少し侮っていた。一対一の戦いは思ったよりも辛く、下手したら刺し違える可能性もある。早急にケリを付けようとスバルが立ち上がると、自分の真上に影が現れた。

 

「見つけたぜハチマキィ!!!」

 

「くっ!」

 

ノーヴェが上空から蹴りかかって来たのだ。

 

スバルはそれをバックステップで回避し、別のビルの屋上に飛び移った。それと同タイミングでティアナ、キャロ、エリオも同じビルに集まった。四人は背中合わせになりながら念話で作戦会議を始める。

 

「ティア、どうしよう」

 

「結構一対一で戦うと強いわね、どうにか一人一人分断させて全員で叩く?それもさせてくれそうにないけど………」

 

作戦会議をしていると、スバルに向かって魔力砲が飛んできた。それにスバルよりも先にティアナが気づく。

 

「スバル!」

 

「え?」

 

スバルが気づいた頃にはもう魔力砲はスバルの目の前まで迫っていた。ティアナは意を決し、スバルを押し飛ばして身代わりになった。ティアナは魔力砲を直接くらい、吹っ飛ばされる。

 

「ティア!!!」

 

「ティアさん!」

 

スバルはティアナを抱きかかえ、砲撃が飛んできた方向を睨む。魔力砲が飛んできたのはスバル達がいたビルよりも少し大きいビルの屋上だった。そこに立っていた人物は、アーベルに身体を乗っ取られたアキラ。事情を知らないスバル達は、驚愕する。

 

「そんな…っ!」

 

「アキラさん………さっき、殺さないって言ったじゃないですか!私があのまま直撃してたら、死んでたかもしれないんですよ!?」

 

全員の反応が思ったより面白く、アーベルは橘アキラのふりをしてFW達をからかうことにした。アーベルは指でナンバーズに(動くな)と指示をした。

 

「なんで?決まってんだろ。世界を手に入れることが出来る。それは、支配とも取れるが世界中の人間を守ることとも取れる…だが、お前らがそれを邪魔するっていうなら容赦はしない。だがお前達がこれ以上俺の邪魔をするってなんなら…これとおんなじ風にするぜ?」

 

アーベルは横に寝かして置いたギンガの髪を掴んで持ち上げた。ボロボロのギンガを見た瞬間、スバルの目の色が変わる。

 

心の底から怒りが込み上げてくる。そしてその怒りを右拳に込め、スバルは走り出した。

 

「ギン姉を…………離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」

 

「スバル!待ちなさい!」

 

ウィングロードがスバルの足元からアーベルがいるビルの屋上まで伸び、その上を戦闘機人モードのスバルがティアナの制止を無視し、リボルバーナックルを構えながら全力疾走する。

 

アーベルの目の前まで来たスバルは全力で右拳をアキラの顔面に放った。しかし、その攻撃は空振りに終わる。

 

「遅い」

 

アーベルは何時の間にかスバルの後ろに回り、スバルは頭を掴まれていた。スバルが気づくよりも早くアーベルはスバルの頭を壁に叩きつける。アーベルはスバルを壁に押し付けたまま左手にディバイダーを出現させた。

 

スバルは壁に右拳を押し当て、リボルバーキャノンをゼロ距離で放つ。押し当てられてた壁は崩壊し、アーベルの手からスバルは脱出する。アーベルはスバルが手から離れたのを察知すると、すぐ目の前に魔力砲を放った。スバルに命中したかを確認しようと歩き出すと、アーベルの手足にバインドがかけられる。キャロの物だ。

 

そして、アーベルがバインドを砕くより先に、瓦礫を吹っ飛ばして脱出したスバルがアーベルの前に立ち、更にアーベルの後ろにはティアナが現れる。それぞれが魔力を貯めた。

 

「ディバイィィィン………バスタァァァァァァァァ!!!!」

 

「クロスファイアァァァァ…シュゥゥゥゥト!!!!」

 

「…」

 

アーベルはディバインバスターにはお得意の魔力砲を放ち相殺させ、クロスファイアーシュートの魔力弾を刀で全て斬り墜とした。ティアナは一瞬にして魔力弾が落とされた事に驚き、次の行動を取るのに少しのロスがあった。アーベルはそのロスの一瞬でティアナの後ろに回り、至近距離で魔力砲を放つ。

 

ティアナは魔力砲に飲まれ、三つほどビルを貫きながら吹っ飛ばされた。

 

「ティア!」

 

「これで…………一人」

 

「………っ!」

 

スバルはこの時、目の前にいる人物は自分の知っている橘アキラではないと何となく察する。無愛想で性格はひん曲がっているが、本当は優しい心の持ち主。しかし、そこにギンガが関わると常識がなくなる。姿は確かに同じなのに、一緒にいて気分が悪くなる。そんな感じがする。

 

アーベルはスバルに向かって歩を進めた。スバルは何だかよくわからない恐怖心に囚われ、身体が硬直していた。

 

「次はお前だ………スバル」

 

(笑ってる………?)

 

アーベルはアキラのふりをしていたが、ついつい笑顔を溢してしまう。スバルは必死に身体を動かそうとするが、一度恐怖に囚われた身体はそう簡単に動かせる物ではなかった。アーベルはディバイダーの銃口をスバルに向け、トリガーに指をかけた刹那、巨大な拳がアーベルを襲う。

 

キャロがヴォルテールを召喚したのだ。しかし、ヴォルテールの拳をアーベルは片手で出したシールド一つで防いでしまう。

 

「ほう、珍しいな。たしかアルザスとか言う土地の大地の守護者とかって言われてる龍だったか」

 

ヴォルテールに何の恐怖も感じず立っているアーベルの後方に高速でエリオが飛んできた。アーベルは振り返らずエリオの槍をディバイダーで受け止める。

 

「教えてやろう。おれの前ではいかなる竜と言えども、俺の前では無力、そして、俺に従う事を!」

 

アーベルはエリオを蹴り飛ばし、ヴォルテールの腕に乗った。そして一気にヴォルテールの顔の前まで飛んだ。ヴォルテールは咆哮で威嚇する。

 

「グオォォォォォォ!!!!」

 

アーベルはそれに動じず左手をヴォルテールにかざす。

 

「………大地の守護者ヴォルテールよ…賢い貴様ならわかるだろう?誰の力が最も強いのか…」

 

「……………」

 

ヴォルテールは止まってしまった。

 

「ヴォルテール!動いて!!」

 

「無駄だ」

 

アーベルはフリードに乗っているキャロに向けて魔力砲を放った。フリードも火炎弾で対抗しようとしたが、威力が足りずに火炎弾は魔力砲に飲み込まれる。キャロとフリードは魔力砲をくらい、撃墜された。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

アーベルの後ろから再びエリオが突っ込んできたが、刀でその一撃は防がれる。

 

「墜ちろ蚊トンボ」

 

アーベルはエリオのデバイス、ストラーダを弾き飛ばし、魔力を込めた刀でエリオを斬った。エリオを切り裂くつもりで刀を振ったが、バリアジャケットが予想以上に硬くエリオはそのまま吹っ飛ばされ、ビルの壁に叩きつけられる。エロオは何とか起き上がろうとしたが、すぐに目の前が真っ暗になって倒れた。

 

スバルはまだ動けなかった。それどころか、身体を押さえつけてる恐怖心がより増大している。アーベルがスバルを見た。それだけでスバルは怯え、手の震えが起きている。

 

「さぁ、お前で最後だ。すぐ仲間のところに送ってやる」

 

「くっ……………………負けない……絶対に負けない!あの日から…強くなるためにトレーニングしてきたんだ!私は、あなたと戦う!」

 

スバルは勇気を振り絞って言った。何とか立ち上がり、手の震えを止めるようにギュッと拳を握りしめる。

 

「自己暗示など無意味だ。例えお前が人間を超えた力を持っていたとしても。どんなに強くなった気でいても、俺に勝てない事実は変わりはしない。ここでお前は俺に倒されて……ゲームセットだ」

 

 

ーアキラの精神世界ー

 

 

「どうだ?自分の身体で仲間を傷つけられてくのは?絶望したか?自分で見ているのに何も出来ない自分が」

 

アーベルは拘束されているアキラの前に立ち、あざ笑った。

 

「ああ、その通りかもな………でもな、俺はまだ諦めてねぇ。俺はさっきから動いてないが、諦めた訳じゃねぇ。希望を託して信じて待っているだけだ」

 

「あ?」

 

「もうすぐにわかるさ」

 

 

ー現実世界ー

 

 

「…………」

 

アーベルは足を止める。スバルは急に止まったアーベルに疑問を持ちながらも、グッと構えたまま動かなかった。その時、アーベルは考えていた、アキラの言葉の意味を。確かにアキラは今動いていない。だが、アーベルが身体を奪った後に一度だけ抵抗している。ギンガを倒す際に、勝手に動かす手が右手から左手に変わった。……アキラの左手の能力。

 

そこから導き出される答え………

 

「まさか………」

 

「?」

 

「まさか………っ!」

 

アーベルは突然、どこから攻撃が来ても良いように防御の構えを取った。その瞬間、誰かがアーベルを蹴り飛ばした。アーベルはギリギリでガードしたが、防ぎきれずに吹っ飛ばされた。

 

アーベルを蹴り飛ばした人物を見て、絶望しかなかったスバルの表情に希望が溢れる。

 

「ギン姉………」

 

「ごめんねスバル。待たせちゃって。でも、もう大丈夫だから」

 

「でも…どうして?」

 

ギンガは笑顔で答えた。

 

「アキラ君がね、チャンスを残してくれたの。私の意識を10分間だけ飛ばして、10分経って目を覚ましたら10分間だけ脳のリミッターが少しだけ解除される。身体の負担を考えての10分らしいわ」

 

「そう…だったんだ」

 

「スバル、悪いんだけど、みんなの救援に行ってあげて?元災害担当突入部隊の実力、見せて?ね?10分以内に終わらせてくるから」

 

「………うんっ!」

 

スバルは、ここまで姉が頼りに思えた日は久しぶりだった。スバルは、昔ギンガが言っていた言葉を思い出した。誰かを傷つけたり傷つけられたりするのを嫌っていた時の自分にギンガは(スバルはあんまり強くならなくてもいいのかな…だって私が守るもん!)と言ってくれた。

 

 

一方吹っ飛ばされたアーベル。

 

「うらぁ!」

 

アーベルは瓦礫から這い出てくる。その周りにはナンバーズ達が集まっていた。

 

「大丈夫ですか?手を貸しましょうか?」

 

ディードの発言にアーベルは苛立ちを見せながら答える。

 

「うるせぇ!いいからテメェ等は黙って見てろ!機械人形共が!!」

 

アーベルはそう言って飛んで行く。アーベルの発言に、ノーヴェは少ししかめ面を浮かべていたことに気づかず。アーベルがギンガを探してビルからビルへと移動していると、右側に気配を感じた。

 

右側を見るとギンガは風に髪をたなびかせながらたたずんでいる。

 

「さっきはよくもやってくれたなぁ、色々返しに来たぜ?」

 

「…………返してもらうわ…………私の、大切な人を!!!!」

 

 

 

続く


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