とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅れまして申し訳ありません。二話くらいの長さがあります。お気をつけください。

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第二十二話 突入

「助けてアキラ君!!!!!!!!」

 

『Engage Konig PT React』

 

「ディバイド」

 

刹那、ギンガを吹っ飛ばす筈だったその光は何かに遮られ、ギンガ傷一つ追わなかった。砲撃の音が消えるのと同時にギンガはゆっくり目を開ける。

 

「悪りぃ、遅れた」

 

「…………………………アキラ君…」

 

ギンガの前には、バリアジャケットが元に戻り、いつもの表情をしたリアクト状態のアキラが立っていた。ギンガは動けない身体を無理矢理立たせようとしたが、途中でやはり倒れかける。それをアキラが支えてくれた。

 

「ギンガ…ありがとな。俺の為にこんなになるまで戦ってくれて……。さっきも言ったが、ここからは俺が全員を守ってやる。お前は安心してろ。スバル!ギンガを頼む」

 

アキラが叫ぶと、仲間の介抱をしていたスバルがすぐに駆けつけ、ギンガを抱き抱える。

 

「ギン姉!大丈夫!?それに、アキラ君も……」

 

「うん………」

 

「スバル、俺はもう大丈夫だ。迷惑かけてすまなかったな…………迷惑ついでにもう一ついいか?」

 

スバルはさっきまでアーベルだったアキラに少し警戒しながらも頷く。アキラは懐から、いつか訓練の時にギンガが手に怪我をした際にアキラが塗った塗り薬だった。

 

「これじゃあまり役に立たないと思うがもってけ。………五分以内に全員捕まえとくからそれまでギンガと他の奴頼んだぜ

 

スバルは小さく頷き、薬を手にFWを寝かしてある場所に戻って行った。

 

「ほぅ、ずいぶん余裕だな」

 

アキラが声のした方を見ると、さっきに比べナンバーズがかなり近づいてきている。チンクがスティンガーを構えながら続けた。

 

「この人数相手に勝つつもりか?」

 

「お前こそいいのか?嫌なことを思い出したくなくて強がってるのが丸わかりだぞ?」

 

「っ!!」

 

チンクは急に表情を変え、スティンガーを投げる。アキラはそれを蹴りで全て叩き落とした。

 

「来るなら来い。俺がいる限り、誰一人傷つけさせやしない………」

 

「はっ!上等だぜ!!こないだの分、倍返しさせてもらうぜ!!!」

 

最初に飛び出したのはノーヴェだった。ノーヴェは素早い動きでアキラの周りを高速で動き回り、翻弄を繰り返した後にアキラの背後に回り込んで蹴りを放つ。しかし、アキラはそれを紙一重で避け、鞘のついたままの刀でノーヴェをぶん殴った。

 

ノーヴェはすぐに体勢をなおすことができず、シールドも張れないまま吹っ飛ばされる。

 

「ぐぁっ……」

 

吹っ飛ばされ、まだ空中にいるノーヴェの飛ばされる先にアキラは高速で移動し、追撃の構えを取った。が、その瞬間アキラの前に突然ディードが現れ、アキラに斬りかかる。アキラは鞘から数センチ刀身を抜いてそれを防いだ。そしてそのままディードを押し返し、柄頭でディードと飛ばされてくるノーヴェを一緒に吹っ飛ばす。それと同時に刀を抜いた。

 

アキラの背後に回り込んだチンクとウェンディがスティンガーと魔力弾を放つ。アキラは振り向きざまに刀でそれらを全て弾いた。

 

「んな………」

 

「IS、レイストーム!」

 

オットーがアキラに追撃をかけようとするが、アキラはその攻撃に正面から突っ込み、攻撃を時に紙一重で避け、時に刀を少し当て、攻撃を反らしながら一気に近づく。オットーが移動しなければと本能的に考えるより先に、アキラはオットーの目の前まで迫った。

 

「っ!」

 

「顔は勘弁してやる」

 

小さく呟き、アキラはオットーの鳩尾に肘で強力な一発を食らわす。オットーは気絶し、アキラにぐったりともたれ掛かる。オットーを適当な場所に運ぼうとすると、四方にガジェットが現れアキラを包囲した。

 

「………」

 

ガジェットは触手でアキラに襲いかかる。しかし、アキラは焦ることなく刀をガジェットに向けた。

 

「失せろ………雑魚どもが」

 

刀を構え、触手の動きを見切り、アキラはガジェットに切りかかる。シールドやガードを張らせる暇を与えず、人間とは思えない動きでアキラは、十数機いたガジェットを全滅させた。

 

 

「すごい……………」

 

スバルとギンガは、アキラの戦いっぷりに感心していた。アキラの戦闘力は前から知ってはいたが、今回何が一番すごいかと言うと、ガジェットとナンバーズ五人を相手に、魔法を使わずに相手を圧倒している点だ。魔力砲も、斬撃も、一本の刀と四肢だけを使ってナンバーズを圧倒している。

 

アキラの勝利を祈ってギンガはアキラからもらっていたお守りを握りしめた……その瞬間、スバルがFWをとギンガを運んできた廃ビルの一室の入り口に誰かが来た。敵が来たのかと、唯一動けるスバルが構える。

 

「失礼します」

 

「あなたは………っ!」

 

「ギン姉、知ってるの!?」

 

来たのは敵ではなく、メグの使い魔であるアーシアであった。ギンガは一応姿だけは見ていたので記憶にはあるが、服装が違うことに多少の違和感を覚えていた。

 

「うん…知ってるていうか…見たことがあるっていうか………」

 

「ギンガ様とは一度お会いしてますが自己紹介がまだでしたね。あの時は管理局員の制服を着ていましたが、あれはただの変装です。私はメグ・ヴァルチ様の使い魔です」

 

「使い魔……………」

 

アーシアは自己紹介のみを終えると、FWの前にしゃがみこむ。

 

「この度はメグ様の最期の命を受けここに来ました。メグ様は、「アキラとギンガの為になる最大限の支援をして欲しい」と。私は医療魔法を得意としておりますので、今からこの方達の完全回復を試みさせていたただきます」

 

そう言ってアーシアは治療魔法の準備を始める。

 

「最期って!どういうこと!?まさかメグ……が………死ん…」

 

アーシアは手を止め、少し黙ったままでいたが、口を開いた。

 

「肉体は生きています。傷はありますが、命に関わる心配はありません。ですが、メグ様の魂が抜けている状態です」

 

「それって…どういうこと?」

 

アーシアはその問いに一拍置いてから答える。

 

「…………今までギンガ様のご親友として、陸士108部隊仲間としてアキラ様たちと一緒にいたメグ様の人格は、あの身体のものではありません」

 

「………まさか」

 

「メグ様の人格は、あのアーベルと同じく、ジーンリンカーコアに収納されていた過去の人物です。メグ様の本当の名前は………アーシア・ベーリック。アーベル・ボクスベルクが持っていた兵隊の隊長を務めていた人物です」

 

ギンガもスバルも、驚きを隠せない表情だった。無理はない、今までずっと自分の隣で笑ってた、今までずっと共に戦ってきた仲間が、親友が、本当はずっと昔の時代を生きた人間だったのだ。急には気持ちの整理もできまい。

 

「そんな………メグさんが………」

 

「私が知ってるのはこれだけです。治療を始めさせていただきます。一回で全員を回復させられるかわりに私自身は魔力が回復するまで、小さな無機物に変わります…もしギンガ様がご迷惑でなければ、私を持っていてもらえますか?」

 

「それは全然構わないけど…最後に一つ聞かせて?」

 

「何でしょう」

 

「メグは…私たちの知ってるメグは帰って来るの?」

 

「アーベルに奪われてしまった、ジーンリンカーコアを取り戻せれば………」

 

その言葉を最後にアーシアは魔法陣から溢れ出す光に包まれその光と共に動けないFWとギンガの身体を包んだ。魔法陣から光が途切れるとアーシアの立っていた場所に小さな緑色の宝石のようなものだけが残っていた。

 

ギンガが身体に異変はないと思った刹那、言葉に表せない程の痛みが全身を襲う。ギンガだけでない全員だ。

 

「うぐぅあっ!!!!ぐっ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

ギンガは必死に痛みを堪え、アキラのくれたお守りを握りしめていた。ぎゅうっと瞑った瞳を僅かに開け、戦ってるアキラを見る。これ以上心配かける訳にはいかないと、ギンガは必死で声を押し殺す。そして、必死にアキラの勝利を願った。

 

 

 

 

一方のアキラはオットーに加え、ウェンディも確保し、残るディード、ノーヴェ、チンクを相手に戦っている。

 

アキラは、治療が始まった際のギンガの叫び声に、一瞬気を取られる。ディードはその一瞬の隙に一気に接近した。

 

「っ!!」

 

アキラはディードのツインブレイズを避け、刀でツインブレイズを弾き飛ばす。ディードはその事態にどうするのが最良か、判断を遅らしてしまう。

 

アキラは一瞬で刀を持ち替え、右手で拳を作った。

 

「歯ぁ食いしばれ!!!!!」

 

ガラ空きになっているディードの鳩尾に右拳で力の限り殴り飛ばす。ディードは吹っ飛ばされ、廃ビルに思いっきり突っ込み、気を失った。アキラは「ふぅっ」と大きく息をつく。しかし、休む暇などなく、アキラの足元にスティンガーが飛ばされてくる。

 

アキラは爆発する前にバックステップで回避したが、その回避した先にノーヴェが襲いかかって来た。

 

「おぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「しつけぇ!」

 

アキラはノーヴェの攻撃を受け流し、空中でノーヴェを投げ飛ばす。

 

「ぐぁ!」

 

「はぁはぁ……」

 

ノーヴェはすぐに起き上がり、戦闘態勢を取る。アキラも刀を構え直した。最初は圧倒していたアキラも流石に四人相手は辛かった。その上、魔力はアーベルが身体を乗っ取っている時にかなり使われてしまっている。

 

「何だよ、もう限界か?」

 

「フンっ………」

 

二人のしばらく睨み合いが続いた。一分も経つとアキラはノーヴェに違和感を覚える。

 

なぜ動かないのか…。その理由は、アキラが自分の後方の空気の変化で気づいた。ノーヴェはオトリ、チンクがスティンガーを構えてアキラの背後に接近していたのだ。

 

アキラはそれに気づくと、すぐに振り返る。チンクは気づかれると、スティンガーを投げた。アキラはそれを避けながらチンクに突っ込む。後ろからノーヴェが魔力弾を連射してきたが、アキラは直感的に被弾箇所を予測し、数発当たりながらも進み続ける。

 

「くっ!」

 

チンクは慌ててバックステップで距離をとったが、後ろを見る暇がなかった。チンクが跳ねた先に、もう足場はなかった。

 

「っ!!」

 

「なっ………」

 

「チンク姉!!!!!」

 

チンクはビルの屋上から落ちる。さらに不幸なことに、落下先の道路はアーベルが暴れ回ったせいで道路が抜け、瓦礫が剣山のように地下通路でチンクを待ち構えていた。

 

「っっっっっっ!!!」

 

ノーヴェはすぐに助けようと走り出そうとしたが、それよりも早くアキラが何も持たず、ビルから飛び降りる。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

壁を蹴り、落下速度を上げるが、まだ腕は掴めそうにない。その時、アキラの背中を誰かが押した。アキラは一瞬振り返る、アキラの背中を押したのは白い甲冑の男だった。

 

「あいつ……」

 

いまはそんなことを気にしていられず、アキラはすぐに視線を戻す。アキラは全力で腕を伸ばし、チンクの腕を掴み、刀を壁に突き刺してブレーキをかけた。アキラとチンクの二人分の体重がかかった右手と、チンクの体重がかかった左手がもげそうな激痛に襲われるがそれでもアキラは手を離さなかい。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「…………なぜ、助けた」

 

「俺は……もう誰も殺さない。…そして、誰であろうと俺の前で誰も死なせねぇ……あぁ…腕イテェ」

 

「今この場でスティンガーをお前に投げれば簡単に殺せるんだぞ!」

 

「そうしたきゃ…そうすりゃいい。ただ、俺としてはこのまま捕まってくれた方が助かるがな………それに、そんなことして見ろ、この高さだとまだ死ねるぞ」

 

「私みたいに罪を重ねてきた人間には似合う最期だと思うがな…」

 

チンクがそう言った瞬間、アキラはチンクを掴む手により一層力を込めた。痛みが伴い、チンクは一瞬顔を歪める。

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ…お前から見えなくても、お前らの事を大切に思うやつだってたくさんいる。犯罪者でも、お前も誰かの日常の大切な一部な筈だ。世界は、そうやって繋がってるんだ…………どんな命にだって価値はある。誰だってちょっとくらい幸せを手に入れる権利はある!俺だってこんな風になれたんだ!お前だって出来る!」

 

「………だが…」

 

「罪滅ぼしに死ぬってんなら俺が命はってでも止める。生きろ。生きて罪を償え。死んで罪を償おうなんざそんなこたぁただの逃げだ。無責任にも程がある」

 

アキラはチンクを道路の上に投げ、自分も這い上がる。ちょうどそこにノーヴェが降りてきた。ノーヴェは心配そうな顔をしてチンクに寄り添うと、アキラに一言言った。

 

「礼は言わねーからな」

 

「礼なんざ結構だが…どうするんだ?まだ続けるのか?」

 

「……………」

 

チンクとノーヴェの二人は周りを見渡す。四方には復活したFWとギンガが包囲している。こちらの戦力二人に対して、全快の敵が五人、たった一人で自分たちを圧倒した敵が一人。

 

どう考えたって勝てる状態じゃない。チンクは代表してアキラの前に立ち、降参の意を見せた。

 

「私たちの負けだ。橘アキラ」

 

「午後二時二十三分、世界規模テロリズムの幇助、及び現行犯で確保する」

 

アキラはチンクとノーヴェにバインドをかけ、他の三人をおいて置いた場所まで運んだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「もうすぐ、アルトさんとヴァイスさんがヘリで到着するって」

 

「そうか…無事データは届いたみたいだな」

 

アキラ達は一箇所に固まり、ヘリが届くのを待っていた。チンク達は案外大人しくしている。それでもいつ逃げ出すかわからないので、全員で囲んで見張っていた。ギンガは一応メグの身体を運び、自分の横に寝かしておいた。

 

死んではいない。寝ているだけではあるが、目が覚める気配もなかった。しばらくすると、ギンガが気になっていた事を聞く。

 

「そういえばあのアキラ君が渡してくれたデータって何が入ってたの?」

 

「俺がスカリエッティのアジトから盗んだゆりかごのデータ。内部の見取り図とか、兵器の威力とか…役立ってればいいんだけどな」

 

他愛のない会話をしていると、チンクが口を開く。

 

「橘アキラ……」

 

「あ?」

 

「この後、私達はどうなる?やはり、その……死刑とかになるのだろうか…もしそうなら、私はいいから、妹達はせめて死刑何かにならないように…」

 

チンクがしゃべっていると、それをギンガが止めた。

 

「大丈夫、少なくともそう簡単に死刑にはならないわ。正しい教育を受けていなかった事を認めれば、更生施設に送られてそこでしばらく世の中の勉強して、しっかり社会に役立つ人間になれれば普通の人と同じ生活ができるわ」

 

「本当か?」

 

「もちろん」

 

あんなひどい事をした相手なのに、優しく微笑んでくれるギンガに、チンクは心底感動する。礼を言おうとチンクはギンガの名を呼ぼうとするが、

つい癖が出てしまう。

 

「タイプゼr」

 

チンクがその名を口にした瞬間、アキラはチンクに思いっきりゲンコツを食らわせた。チンクは痛みに耐えながら、やや涙目でアキラに訴える。

 

「なにするんだいきなり!!」

 

「ギンガはギンガだ!タイプゼロなんて名前じゃねぇ!!」

 

「ア、アキラ君!」

 

互いの怒りを持ちながら、しばらく二人は睨み合いを続けていた。しかしその直後、事態は一変した。

 

アキラの背後からおぞましいほどの重い魔力が発生したのがわかったからだ。アキラは素早く振り向いて刀を構える。だが、そこには何もいない。一瞬アキラは自分の思い違いかと思ったが、アキラ以外の者も全員この魔力を感じていた。

 

警戒しながら構えていると、また魔力を感じた。まるで、心臓のようなテンポで魔力は一回ごとに間を開けて伝わって来る。

 

「何なの…これ」

 

「わかんねぇが今は警戒態勢を解くな。いつどこからなにが来るかわかんねぇからな」

 

アキラがそう言った刹那、ビルの下から何か飛び出す。

 

「!?」

 

「あれは…ジーンリンカーコア⁉」

 

ビルの下から飛び出したジーンリンカーコアはギンガが付けた傷から魔力を放出し、禍々しい魔力を帯びていた。そして、そのジーンリンカーコアは宙を漂いながらアキラ達の脳に直接話しかけた。

 

「まだだ…………まだ終われん………」

 

「たくっしつけぇ野郎だ」

 

「まだ、我が悲願を達成されていない………こんなところでは、終われんのだ!!!!」

 

ジーンリンカーコアはメグの身体に向かって急加速し、メグの手のひらの部分に融合した。

 

「しまった!」

 

「メグ!」

 

アーベルはメグの身体を乗っ取り、立ち上がる。しかし、まだ乗っ取ったばかりの身体を動かすのは困難だったのか、アーベルは足元をフラつかせる。

 

「くっ……まだ安定しないかっ!」

 

「メグの身体を………っ!」

 

「返しやがれ!!!」

 

すぐさまアキラとギンガが、まだ身体に溶け込んでいないジーンリンカーコアを取ろうと突っ込んだが、アーベルは片手を二人の前にかざし、強力な魔力波を放った。

 

「ぐお!」

 

「うぅ!」

 

「この身体、今しばらく借りるぞ………」

 

アーベルがそう言うと、アーベルの真上に戦艦神威がゆっくりと移動して来る。そして戦艦腹部から光が照射されると、アーベルは光に包まれ、戦艦の中に吸収されて行った。

 

「メグゥ!!!」

 

ギンガが叫ぶが、その声は空に響いただけで何もなさない。その後、アキラがポツリと呟いた。

 

「……………マズイな」

 

「え?」

 

「指揮官がいない間は、ただの鉄の塊だったが、指揮官であるアーベルが戦艦に戻ったってことは…」

 

「攻撃が…」

 

全員がそのことに気づいた時、戦艦神威の「永久追尾砲」の発射口、計72門が光り始めた。全員が回避しようとするが、捕らえたままの動けないナンバーズがいることを思い出す。

 

動こうにも動けない状況の中、アキラが全員の前に立つ。

 

「俺がリアクトして、ディバイドで全部あの魔力砲を分断する。お前ら下がっとけ」

 

「そんな、無茶だよ!」

 

「いいから下がっとけ、避けるに避けきれねぇ…」

 

アキラの言葉が終わる前に、神威から魔力砲72発がアキラ達目掛けて放たれた。

 

「ちっ!とにかく、そっから動くんじゃねぇぞ!リアクト、オン!!!」

 

左手に刻まれたECの刻印が全身に広がり、両手に鎧が装着される。そして、大剣銃に変わったディバイダーをアキラは自分の前に出し、魔力分断「ディバイド」を発動させる。

 

「来るなら来い!」

 

アキラの身体よりも大きな魔力弾がアキラにぶつかる直前、ディバイドによってかき消された。反動もない、これなら行けるとアキラは確信し、残る71発を受ける姿勢に入った。

 

残る71発は、雨の様に降り注ぎ、それらはすべて魔力分解され、消滅して行く。一発消すごとに、アキラの体力は少しずつ奪われて行ったが、アドレナリンがその感覚を鈍らせた。ギンガ達は、一人頑張るアキラの無事を願うことしか出来なかった。

 

数秒後、攻撃は止んだと同時にアキラはディバイダーを杖にしてしゃがみこむ。

 

「はぁ、はぁ、……どうだ…この野郎………」

 

「アキラ君!」

 

FW達がアキラの元に駆けつける。

 

「心配ねぇよ……ちょっと魔力使いすぎただけだ…それから、まだ油断するな………」

 

アキラは神威を睨んだ。全員も神威を見たが、素人の目から見ても、強力な主砲のエネルギーのチャージが始まってるのが目に見えた。もうアキラには頼れない。

 

どうすればいいかわからないこの状態の中、誰かが脳内に話しかけてきた。

 

『みんな、諦めないで!』

 

「え?」

 

「この声…………メグ?」

 

声の主に気づいた瞬間、アキラはバリアジャケットの上着のポケットを漁る。ポケットに入っていたのは、ジーンリンカーコアだ。それが僅かに光を放っている。

 

『これを打たせちゃだめ!あれが発射されたら、この廃市街地どころか、ミッドまで焼け野原よ!チャージまでにはあと30分あるそのうちにアーベルを………」

 

メグの念話はそこで途切れたと同時にジーンリンカーコアの光も消える。

 

「……………あいつ…」

 

アキラがジーンリンカーコアを強く握りしめ、決意を固めた顔で顔を上げた。その時、ヘリの音が鳴り響いて来る。アルトとヴァイスが乗ったヘリが到着したのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「これからなのはさん達を助けに!?」

 

FW部隊に与えられた任務、それはなのは達の救出だった。もちろん、行きたいのは山々だが、今はそれよりも危険な物が目の前にある。人々を守る管理局員としてこれは見逃せない。

 

だが、ゆりかごも危険ではある。今やコントロールを失ったゆりかごだが、中から出られないというのであれば助けにいかなければならない。30分後には吹き飛ぶであろうミッドに住む人間達の命、ゆりかごにいる数人の命。天秤にかけるまでもなく、価値はわかっていた。全員が二律背反で動けなくなっているところにアキラが声をかけた。

 

「行って来い」

 

「え?」

 

「行って、今までの恩返して来い。こっちは俺たちがやる」

 

「うん」

 

ギンガも頷く。

 

「そんな、二人だけなんて危険です!」

 

「安心しろ、ギンガは俺が必ず守る。アーベルの野郎ぶっ飛ばして、あれを止めてやる………」

 

「でも、アキラ君が危険だよ!」

 

「………ただ守るため、誰かのためのこの力。だれかの使い尽くせるんならそれで俺は満足だ」

 

アキラはスバルの前に立ち、方をポンポンと叩く。

 

「とっとと行ってすぐ戻って来い。俺が初めてお前を見たときのお前らは、初心者そのものだったが、瑞分立派になった。お前らが強くなったとこ、隊長に見せて、すぐ戻って来い。んで、俺が心配なら俺らを助けてくれよ」

 

「アキラ君…………………わかった!絶対戻ってくるから!待ってて!みんな、行こう!」

 

スバルはヘリに乗り込む。他のFWもそれに連れられ、ヘリに乗り込んで行く。アキラとギンガはアキラが乗ってきたバイクに乗り、ウィングロードで突入の準備を整えた。

 

「ラストミッション、スタートっ!」

 

 

 

続く

 

 

 

 

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