とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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お待たせしました。次回は月末です。

感想、評価、お気に入り、随時募集中です!



第二十三話 理由

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

 

アキラとギンガは互いにバイクの上から魔力攻撃で神威の表面に穴を開け、侵入をしようとしていたが、全力全開で技を放っても神威の表面にはかすり傷一つついていなかった。魔力が無効化されている訳でもない。それなのに傷が全くついていないのだ。

 

アキラとギンガは一旦近くのビルに着地する。

 

「ここまできて………………なんて硬さだ」

 

「どうしよう、30分後にはあの主砲が……」

 

「くそっ!どうしたらいい!あの壁を破るには…………」

 

アキラはメグのジーンリンカーコアを強く握る。その時、アキラは何かに気づく。アキラは慌ててディバイダーを出して、リアクトした。ディバイダーは大剣に姿を変える。

 

「アキラ君、どうしたの?」

 

「俺のリアクト状態のディバイダーにはリボルバーのシリンダー(回転式弾倉)みたいのがついてんだが、でかいクセして弾丸を装填する穴の深さは全然なくて、ピンポン球いれるのがやっとのたこ焼き機みたいなものでな。一体なんなんだと思ってたんだが多分この穴は…ジーンリンカーコアをいれてそっから魔力供給を得る為のもんだ。まぁ、推論だがな」

 

「へぇ…」

 

アキラは自分の推論を信じて弾倉にジーンリンカーコアをセットした。すると、ディバイダーの各部に入っている溝が光だし、魔力のフォトンを放ち始めた。ディバイダーからメグの魔力が大量に伝わって来るのをアキラは感じる。残された時間は僅か。全てを救う為の戦いへ望む心構えをもう一度正した。

 

「よし、いける……。メグ、ちょっとだけ力貸してくれよな。ギンガ!次に賭ける!一気に行くぞ!」

 

「うん!」

 

アキラは再びバイクにエンジンをかけ、フルスロットルでウィングロードの上を爆走した。そして、さっきから何度も攻撃を当てている場所に正面から突っ込んで行く。

 

「リボルバァァァァァァァァ………」

 

「フロスト…………………」

 

「「バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」」

 

ギンガとアキラは技を放つタイミングを合わせ、神威の表面に魔力を可能な限り一箇所に集中させ、外壁の破壊を試みた。魔力が途切れた時、確かに外壁にヒビが入ってるのを確認したアキラはそのままバイクを走らせる。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

アキラは自身とギンガ、それとバイクに魔力の膜をまとわりつかせ衝突の衝撃に備える。アキラ達は壁に衝突した瞬間、神威の壁を破り、中に侵入することに成功した。

 

しかし、突入の衝撃に耐えきれず二人はバイクから放り出され、バイクはもうもうと煙を上げている。

 

「いてて…ギンガ、大丈夫か?」

 

「うん、なんとか」

 

二人はほぼ無傷で立ち上がると、バイクの状態を見て軽いため息をつく。アキラはリアクトを解除し、刀を抜いた。

 

「しょうがねぇさそれにもうここは敵の手の中だ……贅沢はっ………………」

 

アキラは歩き出そうとすると、急にフラついてしゃがみ込んだ。倒れかけたところで刀を杖代わりに立ち上がる。アーベルが使った魔力が多すぎた為、アキラも既に限界が近かった。

 

ギンガは何も言わず、アキラに肩を貸す。

 

「かたじけねぇな…」

 

「いいよ…二人で頑張ろう?さっきも、私の方に多く魔力の膜を張ってくれたんでしょ?ごめんなさい」

 

「謝るな。俺がやりたくてやってるだけだ………………。しかし…」

 

アキラは神威の内部を見渡す。神威の内部構造はゆりかごとは全く違い、まるで城の中にいる様だった。壁は白石の様な材質、廊下には赤いカーペットまで敷かれている。

 

これではまるで、戦闘用とは呼べない様な構造もあった。食堂や風呂場、寝室、ダンスホールの様な場所もあった。しかし、そこに人の気配は一ミリもない。一体何のためにこんな物があるのか、疑問に思いながらも二人は歩を進めた。

 

しばらく歩いていると、誰かが倒れているのが見えた。メグだ。

 

「メグ!」

 

「待て!」

 

ギンガがすぐに駆け寄ろうとするがアキラはそれを制止する。まだアーベルがいるかもしれないからだ。アキラはゆっくりと近づいて行く。

 

『ご安心下さい。その方は既に抜け殻ですから』

 

「!」

 

突如二人の前にモニターが現れ、そこにウーノが映し出される。

 

「テメェは……………」

 

『アーベルならこの先です。この扉の先……』

 

それだけ言うと、ウーノは消えてしまった。他にも何か言いたそうな顔だったが、アキラにはそれに気づく余裕はなかった。

 

その後、メグを少し離れた所に寝かせ、二人は再び扉の前に立つ。いよいよ最終決戦だ。二人はそれぞれの武器を構え、一気に突入した。中は暗く、二人は扉を破ったあと、すぐ背中合わせになってどこからの攻撃にでも対応出来るように構える。

 

「よく来たな……橘アキラ、ギンガ・ナカジマ」

 

しゃべりからしてアーベルが話しているのはわかったが、聞こえてきたのは少女の声であった。

 

「アーベルか」

 

「ああ、俺だ歓迎するぞ……」

 

部屋の明かりが灯され、周りがよく見えるようになる。声のした方を向いた時、アキラは目を疑った。現れたのは、ルーテシアだった。

 

「驚いたか?この身体は、レリックを身体に大量に使用することで一時的にDNAを俺と同じにさせたのさ。ついさっきまで玉座に俺の代わりに座らせていたから、ちょうどいい。アーシアの身体はどうも馴染まなかったからな………身体への負担が大きいから、そう長くは持たないがな。しかし、記憶を探ってみると面白いな。前にこの娘は、お前に助けられているな。橘アキラ」

 

「なに?」

 

アキラにはそんな記憶はなかったが当然だ。アキラがかつて森の中で助けた少女がルーテシアでアキラはそれに気づいていなかったからだ。アーベルはその反応に対し、「まぁいい」と言うと、自身の魔力を使って魔力弾を数十個生成する。

 

アキラとギンガは構える。

 

「これで全てを終わらし、我が悲願を達成させる!」

 

アーベルはそう叫んだと同時に魔力弾を一斉に放った。二人は肩を並べ、合体魔法のシールドを張って魔法弾を防いだ。

 

「よりにもよってガキに融合しやがって…これじゃあ攻撃できねぇ…」

 

「うまく隙を見てジーンリンカーコアだけ取るしかないね………」

 

「………………ギンガ、悪いが下がっててくれ。ここは……俺がやる」

 

「いつまでそんなものに隠れている!」

 

魔力弾がガードの目の前で急に軌道を変え、アキラ達の真後ろに回り込む。アキラは急いでギンガの後ろに立ち、シールドを張るのが間に合わないと悟ると魔力弾を背中で受けた。

 

「アキラ君!」

 

「バカ野郎!魔力を集中させろ!」

 

アキラが叫んだが遅かった。一瞬集中を切らせたギンガのシールドは、アーベルの魔力弾で簡単に砕かれる。アーベル自身の魔力が桁外れなのだ。

 

魔力弾は止まらない。アキラはギンガを自らのバリアジャケットのコートの内側に包み込む様に隠し、抱きかかえて衝撃に備えた。アキラは全身に魔力弾をもろに食らう。

 

「ほう?ずいぶん必死に守るじゃないか」

 

アーベルがあざ笑うように言うと、アキラはギンガを離しながら立ち上がる。

 

「アキラ君……」

 

「ギンガ、さっきも言ったが下がっててくれ」

 

「そんな……大丈夫よ!今度は上手くやる!だから…」

 

ギンガは、自分が役立たずだからこんなことを言われたのかと思ったが違った。アキラにとってもこれは、苦渋の決断だったのだ。

 

「そういうことで言ってんじゃねぇ………俺は、あんたに「殺人」の十字架を背負わせたくねぇだけだ。わかってくれ」

 

「アキ…………ラ君……まさか…」

 

「もしジーンリンカーコアだけを取れなかったら、俺は、あの子を……殺す」

 

ギンガは目を丸くした。そして、この場で何も言えずにいる自分に怒りを持った。だが、ギンガももう決意はしてあった。対象は突入前まではメグだったが、それがルーテシアに変わっただけ。

 

ギンガは立ち上がり、アキラの横に立つ。

 

「おい……」

 

「そんな簡単に諦めるなんてアキラ君らしくないよ。考えよう?あの子を助ける方法……もしダメだったら……………私も一緒に罪を被るから」

 

「…………ギンガ……ダメだ…あんたは下がってろ」

 

アキラが再びギンガを下がらせようとした時、アーベルが魔力砲を放った。アキラとギンガはそれに反射的に気づき、魔力砲を避ける。アキラは一回舌打ちをし、刀を構えて体勢を整えた。

 

そしてルーテシアに斬りかかる。

 

「オォォォォォォ!!!!」

 

アーベルはルーテシアの召喚魔法を応用させ、何処かにあるアーベルがかつて使っていた剣を召喚させた。アーベルはアキラの剣を受け止める。魔力同士が衝突し、周囲に強力な魔力波動が発生した。

 

衝突した後すぐに二人は距離を取る。アキラは素早く動いてアーベルのジーンリンカーコアを取ろうとするが、アーベルはルーテシアの小柄な身体を利用して軽快にアキラの攻撃を避け、一定の距離を保ち続けた。アキラの体力を奪う作戦だろうか。

 

「クソが…ちょこまかちょこまかと…………」

 

「フンッ…消えろ」

 

アーベルは剣に大量に魔力を注ぎ、剣を振った。アーベルの剣からは刃の形の魔力が飛ばされた方向はアキラではない。ギンガだ。アキラは急いでギンガの前に立ち攻撃を防いだ。

 

「ぐう…キサマ……っ!」

 

「アキラ君大丈夫?」

 

先ほどの攻撃を放った後、アーベルは急に手を止める。

 

「……?」

 

「橘アキラ、お前がギンガ・ナカジマを守るように、俺も何にも変えられない悲願があるのだ!!これ以上邪魔をするなら…俺は容赦はしない」

 

「…………アーベル、お前の悲願だかなんだかってのは一体なんなんだ?」

 

「俺の悲願は…妻であったレイナに………死んでしまったレイナにもう一度会うこと……生き返らなくても良い。せめてもう一度だけ声を聴きたいのだ……………俺は生前、死人を生き返らせる方法を考えた。もう一度、レイナに会うために………そして、可能性は僅かだが見つけたのだ…………死人に会える方法を……だから、もう一度レイナに会うまでは…俺は止まれないんだ!」

 

「馬k」

 

「バカ!!!!!」

 

アキラが叫ぶよりも先にギンガが叫んだ。そのことに、アキラもアーベルも驚いた。

 

「私も、大切な人を失った…その悲しみは分かる……でも、こんなことして良い訳がない!!!そのレイナさんだってきっと望んでない!」

 

「知った口を聞くな!小娘が!!」

 

アーベルは怒り狂った様に魔力を振りまく。そして、魔力砲をそこら中に展開した魔法陣から一気にギンガ目掛けて放った。アキラはギンガを抱え、数発は避ける。しかし、すぐに避けきれなくなった。

 

アキラは途中で立ち止まり、刀で砲撃をはじき返す。しばらくはそれで時間を稼いだが、一瞬の隙を見て砲撃の間から抜け出した。

 

「はぁ、はぁ…………」

 

「…………ギンガ、下がってろ」

 

「ナンバーズとの戦いで既にアキラ君から感じられる魔力も僅かだし…一緒に戦うよ。大丈夫、足手纏いにはならないよ」

 

アキラは再び説得を試みたが、一回ため息をついたかと思うと刀を一旦鞘に収め、ディバイダーを出した。

 

「アンタ…こういうトコ本当に頑固だよな……なんかよく覚えてねぇけど懐かしい感じだ」

 

「………そう?」

 

アキラが言ったのは恐らく封じられてるクイントの記憶が少し、ほんの僅かだが残っているせいだろう。

 

「ぜってぇあんたは俺が守る。ジーンリンカーコアを頼むぜ。リアクトオン!」

 

ア殺す覚悟を、命懸けで守る覚悟に変えたアキラはリアクト状態になり、ディバイダーを構える。ギンガもリボルバーナックルを構えた。アーベルは部屋の中に大量の魔力弾を展開する。

 

最後の決戦だ。

 

「ギンガ、俺のリアクトはもうすぐ解ける。大体五分くらいだ。それで決める」

 

「わかった…」

 

二人は互いに頷きあうと一気にアーベルに突っ込んだ。アーベルが手をあげると魔力弾が一斉にアキラ達を襲う。アキラとギンガは華麗なステップで警戒にかわして行く。そして一気にアーベルに接近した。

 

アーベルは自らの剣を振って魔力圧を飛ばす。二人はアーベルの攻撃をたまにくらいながらも前に進み続ける。アキラが先に先行し、アーベルに切りかかった。アーベルはそれを受け止めるのではなく、魔力を多めに込めた剣ではじき返した。

 

アキラは吹っ飛ばされたが、間髪いれずにギンガが殴りかかった。アーベルは反応しきれず、薄いシールドを張ることしか出来ず、ギンガに殴り飛ばされ、壁に叩きつけられる。ギンガは追撃しようとするが、アーベルはすぐに体勢を直し、魔力弾を連射した。ギンガはシールドを張ろうとするが、その必要はなかった。ギンガの前にアキラが飛び出し、魔力弾を全て分断する。

 

二人は再び接近を試みる。アーベルは着弾時爆発型の魔力弾をアキラ達の足元に打ち込んだ。アーベルの目論見通りアキラの魔力では分断されず、

爆発が起きる。アーベルは爆煙で何も見えない場所に魔力砲を打ちまくった。

 

しかし、当然二人はやられていなかった。爆煙の中からアーベルの左右に二人は飛び出してくる。だがそれもアーベルの計算内。アーベルは360度に魔力波を放ち、二人を吹っ飛ばし、アキラに斬りかかった。アキラはアーベルの剣をぎりぎりで受け止める。だが無駄だった。アーベルは剣の幅と同じ量の魔力を大量にアキラに向けて放つ。

 

アキラはそのままさらに吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。それでもアキラは倒れなかった。何度吹っ飛ばされてもアキラはディバイダーを持って立ち上がる。アーベルはそんなアキラに少し苛立ちを感じ始めていた。

 

アキラは体力の限界を感じつつも立ち上がる。ふと腕を見るとリアクト時に付く腕の鎧が少しずつかけ始めていた。

 

(リアクト限界………いや、俺の魔力そのものが限界か………体力も…)

 

アキラは瓦礫を退かし、立ち上がろうとした時、一瞬倒れかけた。

 

(やべっ………視界が霞んできやがった…………これ以上戦うのは危険か…)

 

「でもな…まだだ………まだ持ってくれ…………これが最期になる覚悟はとっくに出来てんだ……だから」

 

アキラはディバイダーを振り上げて飛びかかる。ギンガもリボルバーナックルで殴りかかった。アーベルは舌打ちをしてから両腕に魔力を込めた。

 

「いい加減…消し飛べ」

 

「ぐぅ……っ!」

 

アキラは巨大な魔力砲を撃たれ、ギンガは魔力の触手に捕まった、アキラは持てる魔力を全て使ってシールドを張り、必死に魔力砲を防ぐ。しかし、魔力も力も足りず、一気に壁まで下がらされた。

 

アキラが防いでいる間、当然魔力は削られ、意識も混濁し始める。

 

(もう…………ここまでかよ?)

 

「橘アキラ!聞こえるだろう!……もう貴様が立ち上がれぬよう…………今からこの女を殺す。もう俺の邪魔をしないと言えば許してやる…」

 

「アキラ君、言っちゃダメ!!!」

 

ギンガはそう言うが、既にアキラにはしゃべる気力すら残っていなかった。今は魔力砲を支えるのでいっぱいいっぱいなのだ。意識はもうあるのかないのか、ただ頭にあるのは

 

「守りたい……もっと…力を………」

 

これだけだった。

 

その時、アキラの右目が急に痛み出す。あまりの痛みで意識が逆にはっきりする。

 

「なんっだこれ………っ!」

 

アキラの意識は何処かへ飛ばされ、一瞬身体が動かなくなったかと思うと、アキラは急に顔を上げた。そのアキラは、驚くほど冷たい表情をし、見えない筈の右目が黄色く光っている。

 

「……………」

 

アキラはなにかの呪文詠唱をしたかと思うと、アキラを押していた魔力砲を吹っ飛ばした。

 

「なに!?」

 

「……………アキラ君…じゃない?」

 

(何者だこいつ……)

 

 

続く

 


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