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ーある日ー
私、ギンガ・ナカジマの朝は早いです。今はいない母さんの代わりに早く起きて、朝ごはんの準備をして、ねぼすけの父さんを起こします。父さんは、魔法は使えないけどとっても優しい人で、母さんが亡くなってからもずっと私たちを見守ってくれました。でも、私だって長女です。一生懸命頑張って今では、掃除洗濯炊事、家事なら何でもゴザレです♪
私はずっとこの家で、こんな風に母さんの代わりとしているものだと思っていました。実は私は母さんの本当の娘ではなく、母さんのDNAを元に作られた戦闘機人という存在です。私はこの身体に悪い意味でのコンプレックスを抱き、無意識に人を僅かに避けていました。
恋をしても、その人がこの身体を嫌うんじゃないじゃないかって。それでも私を好きになってくれる人は沢山いましたが、愛の告白は大体断っていました。ですが、断っても断っても…何度もアタックしてきた人がいました。私は彼の熱意に負け、付き合う事になりましたが、真実を知った途端いなくなってしまいました。
それからと言うものの、私は恋をしないと決めたのですが…今の夢はお嫁さんです♪何故なら、現れたからです…私の身体を理解しながらも、それでも離れずずっと一緒にいてくれた人…橘アキラ君が。
―とある山の中―
俺、橘アキラの朝は早い。大切な人を護るため、常に肉体の強化はしなければならない。昨晩は23時に寝たが、今朝は4時30分に起床。それからトレーニングを始める。今はとある事故で左腕がないので、そこまで無理があるトレーニングはできない。だから、ここ最近は軽いトレーニングしか出来ない。だが、トレーニングしなかった分、家庭菜園をやる時間に回せる。
無愛想で無関心、冷酷だのなんだの言われる俺だが、好きでこんな態度とってる訳じゃない………。俺には、妙に感情と言う物が少ない。よっぽどのことがないと、強く感情が表に出ない。
だが、最近俺にも表情が豊かになってきたらしい。俺には、大切な人が出来た。自分の命を差し出してでも護りたい人が、いや、護らなければならない人が。
「ふぅ……そろそろ行くか」
俺は今日も、彼女を迎えに行く。
ー陸士108部隊ー
「やっほー!元気ぃ!?」
「ひゃあ!」
突如、ギンガの背後から誰かが飛びついた。ギンガの親友であるメグ・ヴァルチだ。
「何だ、またお前か」
「おうおう、相変わらずアキラ陸曹はお恐いですねぇ」
メグがギンガに飛びかかる直前、アキラはメグの首に刀を突きつけた。しかし、彼女はそれを小銭一枚でそれを防いだ。なにも不思議ではない。彼女はかつて一つの世界を牛耳った男が率いる部隊の隊長だった者だ。
「ちょっとギンガに用があってね。借りるよ」
「じゃあ俺も…」
「ダメよ。ガールズトークなんだから」
「俺はギンガから離r」
「隙あり!」
メグがアキラの頭にビニールを被せ一瞬視界を遮る。アキラが慌ててビニール外した時にはメグはそこにはいなかった。
「あんのやろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
アキラは走り出す。
ー屋上ー
「はぁ、びっくりしたぁ…」
「あはは、ゴメンね」
「その身体には慣れた?」
メグは頷く。先程も言ったが、メグは過去に生きていた人間だ。彼女の魂はジーンリンカーコアに封じられ。本当だったら別の身体に宿っていた筈だった。この事実は、JS事件が終わってからしばらく経ってから明かされたが、それはまた別のお話。
「ねぇ、ギンガ。アキラあのニブチンも退院したけど、どう?なんか進展あった?」
ギンガは首を横に振る。その瞬間、メグの顔から表情が消えた。
「あんたねぇ……あいつのこと、本当に好きなわけ?」
「好きよ!でも、物事には順序ってものが……」
「順序もなにも、あんたら順序以上のことをやってんじゃないの!互いに命懸けで助けるなんて、普通のカップルはやんないわよ!」
「まだカップルじゃ………」
「うぅるさい!あんたらもうカップルみたいなもんよ!」
予想もしないメグの激怒っぷりにギンガはすっかり縮こまってしまう。そんなギンガを見て、メグは大きなため息をついた。そして、ギンガの肩を叩く。
「全くしょうがない。このままじゃあんたらは友達以上恋人以下の関係のまま。もうスカリエッティは捕まったんだし、しばらく事件もないし、ここは大きく出るチャンスよ!一気に恋人になっちゃいなさい!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ギンガは顔を真っ赤にして驚く。と同時に屋上の扉が勢い良く開いた……というか吹っ飛ばされた。
「見つけたぜぇ……覚悟しやがれこの野郎」
「おお、思ったよりも速かったなぁ………えいっ」
メグは自身の魔法、「コネクト」でアキラの足元に結界を繋げ、手をアキラの足に引っ掛けた。アキラは思いっきり転ぶ。
ギンガは顔を真っ青にし、場の空気は凍りつく。アキラは怒りが頂点に達したのか、ゆらりと怪しげに立ち上がり、刀を抜いた。メグはギンガに耳打ちで「ナンバーズの更生終わったら三階東トイレに来なさい」と言った後、アキラの刀が振り落とされる前にその場を去った。
「あの野郎………」
「まぁまぁ、メグだって悪気があったわけじゃないんだし……」
「ギンガ…」
アキラは軽いため息をついてからギンガを抱きしめる。まさかの展開にギンガは顔を真っ赤にさせたまま硬直する。
「ごめんな、いきなり頼りなくて…俺もっと強くなって誰からもギンガを守れるようになるから」
「う……うん…」
(なんか、アキラ君急に大胆………)
少ししてからアキラはギンガを離し、屋上の出口に向かった。
「行こうぜ、そろそろ更生の時間だ。昼飯はあっちで食うか?……………ギンガ?」
「え?ああっ、うん!」
ギンガは惚けていて返事が遅れ、急いでアキラを追いかけ、アキラのバイクに二人で乗って海上留置場に向かう。
◆◆◆◆◆◆◆
ー更生授業後ー
ギンガはメグに指示された通り、三階東トイレに行った。女子トイレなので、もちろんアキラは入れない。少しあたりを見渡すと、一番奥の個室でメグが手招きをしているのが見えた。
ギンガは手招きに従い、個室に二人で入る。
「どうしたの?こんなところにまで誘って」
「さっきはアキラの邪魔が入っちゃったからね。さて、さっきの話の続きだけど……準備はいい?」
ギンガは頷く。
「あのニブチンを、あんたの家に泊まらせなさい!」
「え……」
メグが言葉を放った後、しばらく時間が経ってからギンガがようやく返事をした。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?いやその、なんで!?」
「深い関係になるためのステップよ。相手を家に誘って、手料理でもご馳走すれば、案外落としやすくなるものよ。あとは夜中、相手の布団に入って、誘う…あのニブチンでもそこまでやれば本気にするでしょ。それでも気づかれないんだったら、襲いなさい!」
「無理よぉ………」
「まぁ確かに、さっきのはいいすぎかも。でも、本当に好きなら、これからは本腰いれてかなきゃ。これ以上、「友達以上恋人以下」なんて関係はあんたも嫌でしょ?」
「うぅ……」
ギンガはあまり乗る気ではなかったが、理論的にはメグのいう通りだ。ギンガは少ししてから決意を固め、上を向いた。
「分かった!私、やって見る!!」
「そうこなくっちゃ!」
ー帰路ー
「ゲンヤさんは?」
「今日は残業だって。深夜には帰ってくるんじゃないかな」
「そうか」
いつも通り、アキラと二人でギンガは自宅に向かっていた。その間、特にこれと言った会話はなく、ちょっとした話題で少し話しては沈黙が生まれ、また話題が上がっても少しすれば沈黙の繰り返しだった。ギンガはいつ、家に誘う話を切り出そうかずっと考えているが、うまくいかない。
そして、ギンガの自宅が近くまで迫った時、ギンガは意を決して並んで歩いていたアキラの前に出てアキラを止めた。
「アキラ君!」
「おおう、どうした?」
急に前に出られたアキラは少し驚きながらも立ち止まる。ギンガは今にも心臓が破裂しそうなほど緊張しながらアキラに尋ねた。
「ねぇ、お夕飯、まだだよね」
「ん、ああ。なんだ、どっかで食ってくか?」
「あの…さ、私の家で、食べてかない?」
アキラは固まった。驚いているのか、考えているのか、相変わらず無表情のアキラは、考えが読み取りずらかった。
「……………」
「いや、もちろんアキラ君が良かったらだよ!?そんな、もし、嫌だったら、それで全然いいし………」
ーナカジマ家ー
「ただいま〜」
「お邪魔…します」
アキラは返事はしなかった。だが、黙ったまま頷いた。もちろんアキラは誘ってもらって嬉しかった…しかしアキラ自身、クイントのことがあってまだ若干ギンガに対する申し訳なさがあり、ギンガになにかしてもらうのは抵抗がある。
だが今回は彼女自身が誘ってきて譲らなそうだった(勝手な考えだが)ので、きてみたのだ。
(この家に来るのも…十一年くらいか…変わってねぇな………なに一つ)
「さ、上がって上がって、居間に椅子とソファーがあるから好きな方に座って待っててね」
「ああ…」
アキラは居間に上がり込み、無意識に台所から離れたソファーに座る。ギンガは上着を脱ぐと、すぐにエプロンを着て冷蔵庫を開けた…が、そこで大問題が起きた。おかずを作れそうな物が、ほとんどなかったのだ。
(そーだった!今日帰りにお買い物行こうと思ってたんだぁぁぁぁ!!!!)
そう、ギンガは今日の買い物の予定を、アキラのことですっかり忘れてたのだ。
(どうしよう、せっかくだから美味しい手料理アキラ君に食べさせてあげたいし、でも今から買いに行くって言っても、それじゃ遅くなっちゃうし……アキラ君きっとお腹空いてるよね……)
アキラはそんなことはなかった。いつも昼以外は質素な生活をしているので、そんなに空腹は感じない身体なのである。だが、ギンガはそれを知る由も無い。
「何かないかな………」
必死に探すが、つまみくらいしか作れそうになかった。ギンガは深くため息をつき、アキラに説明しようとすると急にインターフォンが鳴った。
「誰だろう………」
ギンガが玄関に向かい、鍵を開けた瞬間、外にいた物がギンガに飛びつく。
「きゃあ!?」
ギンガの悲鳴を聴いた瞬間アキラが刀を抜いて居間から飛び出した。
「どうした!って………スバル?」
「あはは、ただいま〜」
ギンガに抱きついているのはスバルだった。ギンガは驚きながらもスバルを撫でる。
「もぉ、驚いたじゃない。どうしたの?」
「機動六課にお休みが与えられたんだ〜だから帰ってきたの。ところでなんでアキラ君がいるの?」
ギンガは少し照れながら説明しようとした時、スバルはギンガの表情と、玄関にゲンヤの靴がないのを見ると、急ににやける。
「あれ〜もしかして私、お邪魔だった?」
「そんなことないわよ、久しぶりなんだからゆっくり………スバル、それは?」
スバルの手にはなにかが入ったビニール袋が握られていた。ギンガが中身を確認すると中身は、数々の野菜と、夕方だからか20%オフの肉。
「どうしたのこれ」
「久しぶりにギン姉の作った野菜炒め食べたくて、色々材料揃えたんだ〜。思い出すね〜、母さんが亡くなってから忙しい父さんに変わって家事と料理頑張って、何回も味付け失敗した野菜炒め試食させられたっけ」
「ち、ちょっと!スバル!!」
スバルはしみじみと思い出を語るが、ギンガにとっては恥ずかしい過去なので、顔を赤くしてスバルの口を塞ぐ。好きな人の手前、恥ずかしい過去は知られたくなかったのだ。
そんな時、二人の後ろから小さな笑い声が聞こえる。
振り返ると、アキラが…笑っていた。
「クッ…クク…」
「わ…笑った?」
「ん、ああ、すまん。あんまりにも顔が赤くなってんのg」
「アキラ君が笑ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
最初に叫んで歓喜したのはスバルだった。そして、すぐにギンガもそれに便乗する。アキラは一体自分が笑ったことのどこが彼女たちにとって嬉しいのかわからず頭に「?」を浮かべる。
「な、なんなんだよ」
ギンガは笑顔でアキラをからかうように
「クスクス…内緒、さ、じゃあ腕によりをかけて作るからね!」
「あ、ああ………」
◆◆◆◆◆◆◆
「はい、完成よ!」
山盛りの野菜炒めが食卓に置かれる。そして、山盛りの白米がドンッ!と置かれた。
「さぁ!召し上がれ!」
「おう…」
アキラは箸を使い、野菜炒めを少し掴み、口に運んだ。その様子をギンガは不安そうに見ている。それはもう瞳孔の開き具合、咀嚼している口の動き、顔の筋肉の動き、両腕に至るまで。
「どう………かな?おいしい?」
「ああ、いつもの弁当とは違って、やっぱり出来たては美味いな」
それを聞いた瞬間、ギンガの顔がパァっと明るくなった。ギンガは胸を撫で下ろし、スバルと共に食事を始めた。
(やっぱ、うまいよな……誰かと食べる飯は)
ー食後ー
「じゃあ、俺はこれで」
食事を済ませたアキラは帰ろうとしたが、最終的な目的はアキラを泊まらせることなので、ギンガが引きとめようとする。しかし、ギンガよりも先にスバルがアキラを引き止めた。
「え〜?帰っちゃうの?泊まって行きなよ〜」
「あ?別にいい。これ以上いても迷惑だろ?」
「いいじゃん!アキラ君だってギン姉の近くにいた方が守りやすいし、ギン姉だってアキラ君が近くにいてくれた方がいいもんね〜」
スバルはギンガのことをからかうような目で見る。ギンガは照れながらも頷く。
「………じゃあその……いいってんなら…でも俺、着替えとか持ってねぇけど」
「ああ、それなら大丈夫。家の洗濯機でアキラ君がお風呂に入ってる間にパパっと洗って乾かしちゃうし、パジャマは父さんのでいいかな」
「おう……」
続く