とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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コミケやらなんやらで、忙しく、気づいたら十九日でしたねw今回短いです。すいませんm(_ _)m次回はまた十日以内に投稿します

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第二十六話 恋愛

ーナカジマ家 浴室ー

 

 

「はぁ…」

 

アキラはナカジマ家の風呂を借り、一日の疲れを汗と一緒に流していた。いつもはシャワーだけなので、湯船に浸かるのは橘家にいた時以来だ。

 

(いつも、ここでギンガが風呂に……)

 

湯で顔を洗った。自分らしい考えではないと思ったのだ。自分は変わった。大切な人を目の前で二度も失い、その償いすら出来てないのに。ギンガと出会い、たくさんの人間と触れ合ってきた。

 

アキラはこの身を剣に、ずっと戦って行く筈だった。振り返らず、ただ進んで行く。それが自分の道だと思っている。いや、思っていた。我が道を突き進んで行く中で、ギンガがアキラの腕を止め、本当にいるべき道へと導いてくれた。

 

「どうして…俺はこんなにあったかいとこにいていいのか……なぁ、クイントさん…セシル……」

 

小さくつぶやくと、誰かがいきなり風呂場のドアを開ける。

 

「!?」

 

「お、お邪魔するね」

 

入ってきたのはタオルを身体に巻き、少し照れた顔をしたギンガだった。

 

「あ、ああわりぃ!長風呂が過ぎたか!すぐに出るから、ちょっと待ってくれ!あ、まだ体とか洗って…」

 

「あ、いや、違うの!背中流してあげようと思って…」

 

ギンガはアキラと目を合わせられず、顔を真っ赤にして言い、アキラは困惑の表情を浮かべている。

 

「いや、いいよ。わざわざやってもらわなくても。自分で出来る」

 

アキラはそう言って、ギンガを見ないようにしてシャワーの水を頭から浴びた。しかしギンガは簡単には引き下がらなかった。アキラの肩を掴み、半ば無理やり風呂場の小さな椅子に座らせる。

 

「いいから、さ、座って」

 

「うおっ」

 

そして、アキラの背中に触れた。古傷だらけで、見るのも痛々しい背中だった。今まで、戦い続け、護り続けてきて出来た傷だ。アキラのエクリプスウィルスは不完全で、傷の治りは遅く、治っても跡が付いてしまっていた。

 

その中に比較的新しい傷跡がある。数ヶ月前、アキラがギンガを庇って出来た傷だ。ギンガはそんな背中を見ながら、垢擦りに石鹸を纏わせ、アキラの背中を洗い始めた。

 

「なんでも、他人にやってもらうと気持ちいいよ。いつものお礼って考えたら気が楽かな?」

 

「………礼をしなきゃなのは、俺の方だ」

 

「え?」

 

ギンガは手を止めた。

 

「…………俺は、弱い。大切な人も満足に護れない。クイントさんが死んだ時、強くなりたいと思った。セシルが死んだ時、俺は無力だと思った。ギンガと出会い、もう一度大切な人を護ろうと思った時、正直不安だった。でも、誰かを守る事に執着すれば、罪の意識を紛らわせると同時に思ってた。けれどギンガはたくさんの人と俺を結びつけてくれた………メグから始まって、ゲンヤさん、スバル、六課のみんな。俺は自然と罪の意識をただ背負い、後ろを向くだけじゃなくそれを持って前に進む様になった。以前の俺ならこんな風には考えなかったろう………だから、ありがとう。俺を沢山の人と結びつけてくれて。それから、俺を許してくれて」

 

話を聴いてから、ギンガはアキラを優しく抱きしめる。アキラは少し慌てたのか、ギンガの腕を外そうとするがギンガは離さなかった。しばらくしてから、ギンガは小さい声で言った。

 

「………ごめんなさい……」

 

「あ?」

 

「ごめんなさい………実は私まだ、心の何処かでアキラ君を許せてない……」

 

思わぬ言葉だった。アキラは一瞬硬直する。

 

「アキラ君が真実を思い出した日、実はその少し前からある人に教えられてたの…アキラ君がいたから、母さんは死んだってって聞いてたんだ」

 

「⁉それは……誰にだ?アレを知ってるのは…俺以外にいない筈……」

 

「私にもわからない。白髪で、全体的に白の甲冑着てて、大きなマントをした………」

 

「あいつが!?」

 

「アキラ君知ってるの?」

 

アキラは当然知っていた。色々手助けしてくれるが、怪しくもある。なぜあそこまでの力を持っていて、ギンガをアキラに守らせるのかよくわからなかった。何を企んでいるのか、何がしたいのか、怪しい男だった。

 

アキラも流石にこの事実まで知っているとは思わなかった。

 

「ああ、俺の前にも何回か現れた。最近は現れねぇけどな。なんかされなかった?大丈夫か?」

 

「うん……一応」

 

「そうか………」

 

少し沈黙が流れ、ギンガはキュッとアキラの背中に置いた手を握ってから話を戻す。

 

「それで、最初は、アキラ君を許せない気持ちになった……アキラ君がいなかったらなんて、そんなことまで考えた………でもアキラ君がいなかったら、今の私はたぶんいないし、よくわかんなくなった時にその男が、平行世界(パラレルワールド)世界の私達を見せてくれた……そこはアキラ君はいない世界で……それでも母さんは死んでた…そこで初めてアキラ君を許そうって思って…」

 

「そうだったのか…」

 

ギンガは決めた。この想いを今伝えるべきだと。ギンガが許した、真の理由を。

 

「でも…それだけじゃない……。むしろさっきのは言い訳」

 

「え?」

 

「私は、アキラ君を恨もうとしても、恨めなかった!だって!だって…………」

 

言葉を詰まらせる。急に黙ったギンガが気になり、アキラは後ろを振り向く。ギンガは震えながら俯いていた。アキラがギンガに触れようとした時、ギンガは顔を上げた。

 

「だって私はアキラ君のことが!好きだから!同じ職場の仲間とかじゃなく、友達でもない………ただ純粋に……恋人として………」

 

「…………………っ!!!」

 

アキラは急に立ち上がり、ギンガも半ば無理やり立ち上がらせる。そして壁に押し付け、ギンガの顔の高さの壁に両手を叩きつける。いわゆる、「壁ドン」なるものの状態だ。

 

その状態でアキラは鋭い目つきでギンガを問い詰める。

 

「………いいのかよ……俺は単なる人殺しだぞ?お前があの男に何を見せられたかは知らんが、俺がこの世界でクイントさんの死を招いたのは事実だ!わかってんのか!?」

 

ギンガはアキラの行動と言葉に少し驚かされていたが、少し微笑んだ後にアキラを優しく抱きしめた。

 

「いいよ……例え、誰がアキラ君を否定しても、世界が敵に回ったってアキラ君が好き」

 

「……………ぐ………だったら!」

 

アキラは歯ぎしりをした後、ギンガの唇を奪った。ギンガは目を丸くするが、すぐにそれを受け入れる。少ししてからアキラは口を離した。

 

「急にこんなことする奴を、お前は…」

 

「好きだよ………ねぇどうして嫌われようとしてるの?あの時言ったじゃない。一緒に幸せになるって……」

 

「確かにそう言ったが………俺は…」

 

「アキラ君は、私のこと嫌い?」

 

今度はアキラから抱きしめる。

 

「好きだ……大好きだ!!いや、好きだった!ずっと前から…大好きだったんだ!でも幸せになるのが怖くて…本当に幸せになっていいのかって……俺みたいなろくでなし、本当は死んだ方が……いいじゃないかって、そんなことばっか考えて…でもギンガが好きな気持ちに変わりなかったから………」

 

気づくとアキラは瞳から涙を零していた。ギンガは抱きしめられた状態でアキラの頭を撫でてやる。撫でられたアキラは、その時今まで抑えていた感情が溢れ出し子供のように泣きじゃくった。

 

子供をあやす様にギンガは抱きしめる。

 

「よしよし、もう、後ろを向いて過去に囚われるのはお終い。一緒に楽しい未来を作ってこう…?」

 

「………うん」

 

「良かった」

 

ギンガはホッとため息をつくと、アキラの右手を掴み自らの胸に持って行った。自分が触らせられた物が何か気づくと、アキラは声に鳴らない声をあげる。

 

「〜〜〜〜〜〜!!?!!!?」

 

「ねぇ…これから……」

 

ギンガはもう「行為」に移る気だった。アキラは困惑する。ギンガの行動にも困惑はしていたが、それより何よりアキラ自身が「行為」についての知識を持ち合わせていなかったのだ。

 

しかし今アキラは気づいていないが、知らず知らずのうちにアキラはギンガとの行為を拒んでいなかったのだ。

 

ギンガの目は本気。アキラは息を飲む。いつまでもこんな空気でいるわけにもいかない。アキラは覚悟した………その時……っ!

 

「アキラくーん!!いつまで入ってるの〜!そろそろ入りたいんだけど〜」

 

スバルだ。

 

「ああ、すまない。すぐに出るから居間にでも行っててくれ」

 

「………早くね〜」

 

アキラはギンガを抱きしめ、撫でる。

 

「ごめん、まだこういうのは……」

 

「うん、こちらこそごめんね、急過ぎたみたい……じゃあ、居間でお茶でも淹れて待ってるから」

 

ギンガはスバルがいないことを確認すると服を着て、そそくさと自室に戻って行った。アキラはシャワーを頭から浴びる。鏡で自分の顔を見る……何か変わった気がした。

 

瞳に、光が戻った気がする。表情がつけやすくなったのか……。

 

「ギンガ………」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー居間ー

 

 

スバルが風呂に入り、居間にはアキラとギンガの二人だけ。妙に変な空気が流れる。何を話すでもなく、見つめ合うだけでもなく、同じソファーに座っているだけだった。

 

「……」

 

「…………」

 

(どうしよう…告白出来たのはいいけど……それからのこと考えてなかったよ〜〜!どうしたらいいんだろう…何か話題………今日はいい天気だね?今は夜!!………ん?夜?)

 

ギンガは急に立ち上がりアキラの手を取った。

 

「ん?」

 

「外に行こう!星がうちの庭からよく見えるんだ!」

 

 

ーナカジマ家 庭ー

 

 

なんとか話題が見つけたくて外に連れ出し、星を見ようと思ったギンガだったが空は見事にギンガを裏切り、曇りであった。ギンガが唖然としているさなか、アキラはその横で黙っている。

 

流石にどうしようもなくなったギンガがアキラを連れて家に戻ろうとした時、

 

「懐かしいな」

 

「え?」

 

「昔さ、クイントさんがお前と同じこと言って外に連れてかれたが、今日と同じで曇りだったんだ。なんかそれ思い出して………」

 

ギンガは庭にあるベンチに座った。夜風は冷たいが、外にいたい気分になったのだ。

 

「……となり、いいか」

 

「寄り添ってくれるなら」

 

アキラはギンガの隣に座り、寄り添う。ギンガはアキラの腕に抱きつき、頭をアキラの肩に預ける。アキラはそっとギンガの手に自分の手を重ねる。

 

「ねぇ、一緒に…暮さない?」

 

「あ?」

 

「アキラ君のこと、もっと知りたいし、一緒にいたい。ずっと一人だったんでしょ?もう、一人でいる理由なんかないじゃない……。アキラ君は、嫌?」

 

アキラは少し考え、ギンガの頭を撫でた。

 

「ごめん、ちょっと考えさせてくれ」

 

すぐに帰ってくると思った返事は意外なものだった。ギンガは少し落ち込んだが、それはすぐにどうでもよくなった。今は何より、アキラがそばにいてくれることが幸せだった。

 

 

続く

 

 


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