とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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10日間って早い。これから事態が急展開を迎えて行きます。お楽しみに!次回は五日後!23日です!

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第二十八話 会敵

「ぐうぅ…」

 

「あ…アキラ君!!」

 

連続辻斬り事件の犯人からメグを守るためにアキラは自らの左腕を盾に、相手の刀を防いだ。マリエルが、守る為の腕にしてくれた為アキラの腕に刀が軽く刺さっただけで重症にはならなかったが、やはり痛みはある。アキラはその痛みに耐えながらメグを抱えて敵と距離をとる。

 

ギンガは立ち尽くしていた。突然目の前に例の事件の犯人が飛び込んできて襲いかかってきたのに驚いたのもあるが、何よりも、その相手が……子供だということだ。見た目、九歳か十歳くらいだろうか。薄汚れたフード付きのマントを羽織り、バイザーで目の部分を隠している。マントが全身を隠しているので、性別はわからないが恐らく男の子だろう。

 

「てめぇか!!ここ最近の辻斬り事件の犯人は!」

 

返事はない。アキラは刀を抜き、構えた。

 

「ギンガ、バイクの運転は?」

 

「えっと、一応免許は持ってるけど……」

 

「じゃあ、メグ連れて逃げろ」

 

アキラはバイクの鍵を投げる。ギンガはそれを受け取り、メグの手をとって部屋から飛び出した。

 

「ちょっと!部屋の物は壊さないでよ〜!!」

 

メグは最後まで何か言っていたが、アキラは目の前の敵に集中していた。いや、戸惑っていた。犯人はどうせ、妙なことを考えてるイカレた科学者だとか何かのテロ集団かと思っていたが、こんな子供とは…。スカリエッティは自分は動かず戦闘機人を使ったが、戦闘機人もそこそこ成長していて子供とは言えなかった。

 

だが、ここまで子供だと裏に犯人がいるのかもわかり辛くなる。自分の様に、子供の頃から人並み以上の戦闘力を持ち、普通の人間を恨んでいる子供もいる。

 

「お前の目的はなんだ!なぜこんな事をする!!!」

 

「………」

 

少年は刀で衝撃波をいきなり飛ばしてきた。アキラは慌ててガードを張る。

 

「!!」

 

その衝撃波は予想を大きく上回っていた。アキラはガードを破られ、壁に叩きつけられる。その隙に少年は窓から飛び出し、ギンガ達を追いかけた。

 

「くっ!逃がすかよ!!」

 

 

ー駐車場ー

 

 

ギンガはアキラから受け取った鍵をバイクに射し、エンジンをかけた直後だった。少年がメグの部屋から飛び降りてきた。ギンガは慌ててバイクから離れる。魔力の力で着地の衝撃を和らげ、少年はメグに近寄る。

 

「………回収させてもらう」

 

「……ブリッツギャリバー!」

 

ギンガはバリアジャケットを纏い、メグの前に立つ。それと同時にアキラもメグの部屋から飛び降りてきた。アキラは刀の切っ先を少年に向けて行った。

 

「ガキを斬ると寝覚めが悪い。さっさと武器を捨てて投降しろ。悪いようにはしねぇよ」

 

「…………」

 

少年がしばらく動かないでいるかと思いきや、突然少年の姿が消える。まるで、空気に溶けるように。アキラとギンガは慌てて構えた………が、もう遅かった。アキラの右膝と右手首が切り裂かれる。アキラが痛みに気づいたのは血が吹き出してからだった。

 

「ぐっ!?」

 

アキラは跪く。

 

「アキr」

 

次の瞬間、ギンガは蹴り飛ばされ、メグを巻き添えに吹っ飛んだ。吹っ飛んだ二人に少年は少しずつ近づいていく。アキラは溢れ出る腕の血を押さえながらECディバイダーを取り出した。そして、リアクトをして傷の痛みを誤魔化しつつディバイダーを持って少年に斬りかかった。足が切られているので、左足の力だけでひとっ飛びに。

 

「おおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「……………」

 

アキラの一撃を少年は左手で出現させた強力なシールドで防ぐ。アキラは目を疑った。

 

その少年の片手には指のまたにジーンリンカーコアを挟み、計4つのジーンリンカーコアから発せられる魔力で作ったシールドで防いでいたのだ。通常、ジーンリンカーコアは魂のない身体を動かす程の魔力を持つもの。ジーンリンカーコアの中に過去の人間の魂が無くても、大の大人が一つ制御するのが限界のはず。

 

それを彼は四つも同時にコントロールしているのだ。普通だったら使いきれてない魔力が身体に溜まり、空気の溜まった風船が割れる様に、気を失う等何か症状が出ておかしくない筈だ。

 

(やはり、こいつただの人間じゃ………)

 

アキラが一旦離れようとした時、少年は一瞬でアキラの懐に左腕をぶつけた。アキラはそれを食らった瞬間気を失い、倒れた。

 

「アキラ君!!」

 

ギンガが立ち上がろうとすると、ギンガの首に刀が向けられる。

 

「そこを退け。回収の邪魔だ」

 

「…………っ!」

 

ギンガはすこしうろたえるがすぐに強気な顔になり、メグを抱き抱えて走り出す。

 

「…余計なマネを」

 

少年はジーンリンカーコアをより強く輝かせ、魔力放出量を上げた。そして、ギンガのブリッツギャリバーの倍以上のスピードでギンガを追い越し、目の前に立ちはだかる。

 

ギンガは慌てて構え直し、戦闘体制に入るが遅い。ギンガは気づかぬ内に背後を取られ、左肩に刃が迫っていた。痛みを少しでも軽減させようと、ギンガは体を無理に捻らせ、歯を食いしばった。…が、痛みはない。

 

「…あれ?」

 

見ると、少年の刀はギンガの肩のギリギリで寸止めされていた。少年はバイザー越しに困惑の表情を浮かべたつもりだが、表情は変わってない。その後、二回刀を振るがいずれも寸止めで終わった。

 

「何故だ…」

 

ギンガもなにが起こっているかわからず、すこしの間動けなかった。だが、すぐにメグを守る使命を思いだしてメグの手を掴んでバイクに向かって走りだす。

 

それを少年が追いかけようとしたが、少年の耳についている通信機に連絡が入った。

 

『追撃は無用だ。それに、彼女は守りが固いからまた今度にしよう』

 

少年は命令に従い、なにも言わずその場から消えた。

 

 

―とある研究所―

 

 

 

「……魂は違えど肉体は同じ…目を通して見てきた記憶が、身体に焼き付いたか?」

 

男は興味深そうに呟いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「……………うん?」

 

暖かな感触と、優しい匂い。自分の頭を撫でててくれる手。僅かに聞こえる人の話し声と自分の近くにいる人のため息の声。アキラはそれらの感覚で目を覚ました。

 

「ギンガ………?」

 

「アキラ君!目覚めた!?」

 

アキラが声をかけると、ギンガは今にも泣きそうな顔でアキラを抱きしめた。

 

「ホッとした………良かった」

 

「……ごめんな、心配かけて………あいつは?」

 

「アキラ君が倒れてから必死に逃げてたら何時の間にかいなくなってた。ごめんね、気を失ってたアキラ君置いて行っちゃって……」

 

ギンガは申し訳なさそうに謝罪する。アキラは少し微笑んでギンガの頭を撫でた。

 

「メグは守れたんだろ?ならそれで十分だ。…それよりここは?」

 

アキラは自分がいる場所に見覚えはなかった。病院の天井なら嫌になるくらい見たが、ここは初めて見る景色だ。窓がなく、天井から床まで一面コンクリート。部屋の大きさは四畳半と言ったところか。

 

「ジーンリンカーコアを宿した人の避難場所の一部屋。お医者さんもいたから、アキラ君診てもらったの。気を失ってるだけで大したことないって。傷ももうほとんど治ってるって」

 

「そうか…」

 

 

ー機動六課ー

 

 

アキラはその後、機動六課に出向いて報告会を始めた。ギンガももちろんついてくる。久々に会う面々に再開の言葉をかける前に会議は始まる。アキラは全員の前で立ち、ブリッツギャリバーが戦闘中に撮影してくれていたあの少年の画像をプロジェクターで表示しながら詳しく状況を説明した。

 

「以上が俺の体験した先程の状況です。人並み以上の運動神経、魔力、これらのことから彼は誰かの作った人口魔導師だと思われます」

 

アキラは一通り説明を終えると、一拍開けてから言う。

 

「彼はジーンリンカーコアを持っている。とても危険な存在です。もし遭遇した場合は、決して一人で倒そうとは思わず、万が一戦闘が開始されたとしても、無理はしないでください。そして……見つけた場合は、すぐに俺に連絡を」

 

一瞬周囲が騒ついたが、アキラは何も言わず会議室を出て行った。ギンガはすぐに追いかける。

 

「アキラ君、今のは何?報告書に書いてなかったよ?」

 

「単なる俺の予想ではあるが……念のためだ」

 

アキラは小さく呟く。その表情は、どこか怒りを感じるような表情だった。

 

 

ー海上留置場ー

 

 

アキラとギンガは六課とのミーティングを終えると昼食をとって、自分たちの本来の仕事に戻った。今日はセッテを連れて街に行く日だった。社会見学のような物で、ナンバーズの上から順にやって行っている。先週はセイン、先々週はチンクでさらにその前はウーノだった。

 

意外とナンバーズの反応は可愛らしい物で始めて見るものに関しては目を輝かせていた。特にチンクは見た目のこともあってとても可愛らしかった。

 

だが、セッテは感情表現がうまくできないのか、常に無口、無表情でいる。何を見せても興味を示しているのかいないのか、よくわからなかった。

 

「本当に感情が少ないんだな」

 

セッテはそれを特にコンプレックスとして感じている訳でもなく、無感情に対応する。

 

「そういう風に作られましたから」

 

だが、表情に出ていないだけで、実はこの社会見学を楽しんでいた。アキラもギンガも、それを何となく感じ取ってはいた。次に向かう場所は映画館。セッテが一番気になっていたところだ。ありがちな恋愛映画だが、セッテは恋愛という感情に最も興味を持っていた。これだけは他人に聞いてもよくわからないからだ。

 

そして、映画館目指してとある交差点を歩いていた時、アキラは誰かと肩をぶつけた。

 

「あっとごめんよ」

 

「あ、すみませ…」

 

ぶつかった人物の顔を見た瞬間、アキラは立ち止まる。

 

横断歩道のど真ん中にいきなり立ち止まったアキラを見て、ギンガは変に思い、セッテを先にいかせてアキラの手を取った。

 

「アキラ君どうし……」

 

その瞬間、アキラの手を通して…いや、手を通さなくても魔力のオーラでわかった。アキラは強い殺気を放っている。アキラは一点を見つめながら黙っていた。ギンガは一度この殺気を感じたことがあった。始めて、あの森で出会った時に纏っていた憎悪の感情とよく似ている。そんなアキラに恐れを感じていると、アキラは小さな声でいった。

 

「てよ………」

 

「アキラ君?」

 

 

「待てよこのクソ野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

その場にいる人間が全員止まるような声。アキラが叫ぶと、先程のぶつかった、メガネを掛けた男が振り返る。

 

「待てと言うのは、僕のことかい?」

 

「……………」

 

アキラは懐に手を入れ、手榴弾を出した。ギンガは驚く。

 

「アキラ君!?」

 

一般人もいるのに、アキラは躊躇なく手榴弾の栓を抜き、レバーを外して手榴弾を投げた。ギンガは急すぎて動かせなかった身体のかわりに全力で叫んだ。

 

「伏せて!!!!!!」

 

声が響いたのと同時に、手榴弾が爆発する。手榴弾からは煙幕が広範囲に渡って広がった。手榴弾を投げられた男は特に焦る様子もない。

 

「おやおや、派手にやるねぇ」

 

その刹那、男の死角からアキラが刀を振りかざして飛び出した。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

男はアキラの攻撃を躱し、アキラの腕を蹴り上げる。刀がアキラの腕から吹っ飛び、アキラの後方にの地面に突き刺さる。

 

「ダメだよぉ、アキラ君。殺したいならもっと潜まなきゃ。にしてもまだ怒ってたんだねぇ……まぁだいたい予想通りだけど、一般じ」

 

話が終わる前にアキラは懐刀を取り出して男の首に斬りかかった。男はアキラの手首を掴んで軌道を逸らす。そしてアキラの鳩尾に膝蹴りを入れた。アキラは二三歩下がり、しゃがみ込む。

 

「ふぅ、冷静さの欠けた攻撃は対処が簡単で助かるよ」

 

「てめぇ………」

 

「アキラ君!」

 

ちょうどアキラが再び立ち上がった時、ギンガとセッテが煙幕の中からアキラを見つけてアキラを支える。

 

「どうしたの急に!」

 

「お前はこんなことをする人間では無いだろう!こいつを殺す気か!?」

 

セッテが聞くと、アキラは……何と頷いた。ギンガは驚きを隠せなかった。

 

「こいつだけは許さねぇ………」

 

「……よせ」

 

セッテがアキラを抑える。説得しても無駄な確率は高いと見たセッテはアキラの落とした刀を掴んで地面から抜いた。そして、アキラの前に立つ。デバイスが無くても戦闘出来る自信がセッテにはあった。

 

「お前は人殺しをするのはダメだ。お前が檻に入ったらまだ教えて欲しいことが教われなくなる。だから………もし、どうしても殺さなければならないのなら……もうしないと決めたが…………私が殺る」

 

セッテは自由を奪われる覚悟を持って刀を握った。しかしアキラがその刀をひったくる。

 

「待てと言っている」

 

「ダメなんだよお前じゃ……お前が殺しても意味ないんだよ」

 

「え………?」

 

あまり言いたくなかったが、アキラは話ことにした。この男のことを。歯を食いしばり、笑顔で三人を見守っている男の方を向いてアキラは口を開く。

 

「こいつは、俺を作り、セシルを誘拐した張本人…………ウィード・スタリウ」

 

 

 

 

続く

 

 


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