次回ウィード事件編最終回!そして、多分その次からはサウンドステージXから!おそらく!
お楽しみに!!
1月1日……元旦。アキラとギンガが屋上で寄り添いながら日の出を待っていた。隊舎に戻っていたその他メンバーもぞろぞろと集まってくる。アキラは途中、ギンガの膝に頭を倒した。その事にギンガは何も言わず、アキラの頭を撫でてやる。ギンガがふと空を見ると、少しずつ朝焼けが広がっていくのが見えた。
じきに夜明けだ。
「……こんな風に朝を迎えんのも悪かねぇな」
「そうだね」
アキラが正直な感想を述べていると、スバル等FWが屋上にやってくる。ギンガとアキラをみると、笑顔でこちらに駆けてきた。が、途中で転んでしまう。
「きゃっ!」
「あぁ」
「もぉ〜、慣れない服で走るからよ」
ギンガがアキラの頭を一旦降ろし、立ち上がってスバルのもとへ向かった。そして、笑顔で手を差し伸べる。スバルは照れ笑いを浮かべながらギンガの顔を見る。
「あはは、ごめんギンね……ぇ?」
「………?。どうしたの?」
スバルはギンガを見て驚いている様だった。ギンガは顔に何かついているかと思うが、スバルの態度はそんなのではない。
「ギン姉、なんかいつもより綺麗な気がする………」
「あら?着物の所為かしら?」
「まぁそれもそうなんだけど、さっき見た時よりも……なんていうか、大人っぽいっていうか、色っぽいっていうか……」
「……………クスっ、そうかしら?もしかしたら、アキラ君のお陰かもね」
いたずらっぽく笑ったギンガは、スバルを起き上がらせてから可憐に振り返り、アキラの寝ているベンチに戻った。FW達はギンガの言った意味を理解出来ず、ぽかんとしている。ギンガは再びアキラの頭を膝に乗せてやっているのを眺めながら念話で話し始めた。
(なんか………ギンガさん変わったわよね…。昔初めてあった時よりも全然……アキラさんも)
(そうだね…)
(アキラさんはともかく……昔はどんなだったんですか?ギンガさんは)
(頼れる優しいお姉ちゃんって感じだったんだけど………)
(今は?)
(頼れて優しいのは変わらないんだけど……凛々しくて、可憐で、色気がある………お姉ちゃんっていうか……お姉様?)
「アキラ君飴食べる?」
「おう」
「あーん♪」
「あ〜んぐ………美味い」
「ふふっ」
「………なんか、熱いね」
「そうね……」
初めてあった時に比べ、まるで別人のようになった二人。去年一年間の出会いと闘いが二人を変え、未来を変えた。二人だけでなく周りの人間たちの運命と未来も。時間が経つと、水平線の向こうから太陽が上る。アキラは立ち上がり、屋上の柵に手を置いた。そして、太陽を見ながらそっと祈る。
(今年が俺たち……みんなにとって、何もない年に……なりますように)
「みんな〜!日の出は楽しんだ〜?」
下から声が響いてきた。アキラが視線を下に向けると、訓練場の前にはやてとシグナムとヴィータが臼と杵を用意して手を振っている。そう、餅つきの準備だ。
「降りといで〜!朝ごはんにするよ〜!」
まるでお母さんのような口調ではやてが呼んだ。数ヶ月前まで命をかけた戦いをしていた部隊とは思えないほど平和な状態だ。公務員がこんなんでいいのかとアキラはふと思ったが、ギンガの笑顔がそこにあるならそれでいいことにした。
そのためにアキラは命をかけて戦い、この世界を守ったのだから。
「アキラ君、行こっ」
ギンガが手を差し伸べる。アキラはその手を取り屋上を後にした。
◆◆◆◆◆◆◆
「ごめんな〜、餅米炊いておくの忘れとったわ〜」
「しっかりしろよ部隊長」
メンバーが集まったので、餅つきをしようかという時に餅米が炊けていないことにはやてが今さっき気づいたのだ。アキラは軽く飽きれながら近くのベンチに腰掛ける。ギンガもその隣に座った。
「ふ〜。ん?」
アキラが座ったあと、なのはがヴィヴィオをアキラの隣に座らせる。どうやら眠い様だ。
「ん〜……」
「あ?」
ヴィヴィオがアキラにもたれ掛かりながら眠ってしまう。アキラが明らかに嫌そうな顔でなのはを見ると、なのははニコニコと笑いながら佇んでいる。
「………動けねぇんだけど」
「餅米が炊けるまでよろしくね〜」
「何で俺だよ」
「だってヴィヴィオがそこがいいっていうから…」
アキラはヴィヴィオに視線を移す。ヴィヴィオはアキラの腕に寄りかかって眠りについた。
「お兄ちゃん………」
ヴィヴィオとアキラは以前一緒に昼寝をしたことがある。なのはがいなくてギンガと二人でお守りをやっていた時だ。恐らくそれで懐かれたのだろう。アキラを選んだのは、あんまりなのはに手間をかけさせたくないという子供なりの配慮だろうか。
「しょうがねぇな……」
アキラはため息をつくと、自分が着ていた上着を脱いでヴィヴィオにかけてやる。そして後ろからヴィヴィオの肩に手を回して自分の方に抱き寄せた。別に本人はかっこつけているわけではない。一番効率のいい温め方を選んだだけである。
だが、ギンガにとってそれは軽く嫉妬心に触れた様だ。
「むぅ………」
「ん?どうした」
ギンガは身体をすり寄せる。アキラは寒いのかと思ったが、少しヴィヴィオを見てギンガの気持ちを察した。アキラはもう片方の手をギンガ肩に回してヴィヴィオと同じように自分に抱き寄せる。
「あったかい……」
「たくっ可愛い奴め」
アキラは笑いながらギンガのおでこにキスをした。
「……君、ほんまにアキラ君?」
「そうだが?」
ー30分後ー
そうこうしているうちにもち米は炊け、早朝の餅つきは開始となる。中でも張り切っているのはヴィータだ。はやてが近くに座り、水を準備する。アキラも杵を持たされ、ヴィヴィオをギンガに預けて臼の前に立った。
「アキラ君、あんまり張り切って臼壊したらアカンよ〜?」
「そんくれーの加減は出来る。さ、いくぜ」
ヴィータとアキラが交互につき、途中はやてが水をつけた手で調整する。
◆◆◆◆◆◆◆
流石、二人でやってただけあって一気に餅はつきあがった。が、まだまだ餅米はある。アキラは餅米を運んできたシグナムに尋ねた。
「なんでこんなに……」
「まぁ、大食らいがこう何人もいてはただ一度の餅つきで出来る餅の量では足りないのは明確だからな。疲れたのならば交代してやろうか?」
「ああ、けどいいのか?せっかくのキモノ姿なのによ」
「なに、最近食べてばかりだったしな。こうイベントが続くと身体が鈍るからな。それに、あまり動かないで着飾っていても私らしくないだろう?」
シグナムが笑いながら言うと、アキラは特に深く考えないで答える。
「そんなこたぁねぇよ。副隊長のその感じ、俺は好きだぜ?」
アキラは軽く笑顔を浮かべてギンガのもとへ戻った。シグナムが動かないのを見てヴィータが声をかける。
「おい、シグナム。なにしてんだ始めるぞ?」
「あ、ああ。悪い」
「……………?なんか顔赤いぞ?」
「そ、そうか?まぁ、早く始めるぞ!」
「おう……………」
アキラがギンガのもとへ戻るとギンガが先ほどアキラのついた餅を持って待っててくれていた。ギンガはきな粉がかかった餅を箸で取り、アキラに向ける。
「はい、あーん」
「ありがとな、あーん」
「さぁ、次のお餅が突き上がったぞ!」
「アキラ君、私少しお手洗いに行ってくるね」
ギンガが席を立つ。アキラは餅を食いながら頷く。ギンガは隊舎に戻り、アキラは海を見ながら餅を食らい続けた。
「なのはママ、あーん」
「あーん」
ヴィヴィオがなのはに餅を差し出し、なのはは笑顔でそれを食べる。フェイトにも同じことをした。そんな景色を見てアキラは自然と笑顔になった。すると、
「アキラさん、あーん」
「あ?」
ヴィヴィオが餅をアキラに向けてきた。アキラは少し照れながらそれを貰う。
「いやぁ、アキラさんモテモテだねぇ」
スバルがにやけながら茶化す。
「うるせぇな。まぁ、誰から好かれようと俺はギンガしか愛さねぇよ」
「………一途だなお前も」
さっきまでギンガの座っていた場所にシグナムが座った。アキラは横目でみてまた餅を食べ始める。シグナムは少し笑ってアキラの頬についた餡を指で取った。
「………おう、ありがとな」
「いや………」
何だかいい感じになっている二人の背後に僅かな殺気が感じられた。二人が振り返ると笑顔だが、何か怒ってるギンガが静かに立っていた。
「ギンガ………」
「ギンガ、戻ったのか」
アキラはなにも感じてないのかまた前を向く。
「シグナム副隊長?そこ、どいていただけますか?」
「すまなかったな。空いていたものだからついな……」
「アキラ君と何をお話しなされてたんですか?」
「ふふっなんだろうな。油断大敵だぞギンガ」
「え?」
(お前には話が流れて来ないだろうが、アキラは意外と周りにモテ始めているからな。いつ誰かに取られてもおかしくないからな)
シグナムは軽い警告を促すと、その場を去った。ギンガはすぐさまアキラの横に座り込み腕に抱きつく。アキラは驚いて餅を落としそうになるが、ギリギリでキャッチする。
「ど、どうした?」
「アキラ君、浮気はダメだよ?」
「……おう?」
◆◆◆◆◆◆◆
それから、聖王教会に初詣がわりに行ったり、おせち料理を食べたりと色々なことをしているうちに夜を迎えた。風呂に入ったあと、アキラはギンガの部屋のベランダで海を見て佇んでいる。少し前に合鍵を渡されたので出入りは自由になった。たまに用事もなく来ては、ギンガと話をしているだけだが、その時間が今のアキラにとって幸せなのだ。
そこに、風呂から上がったギンガがやってきた。アキラがいたのに驚いたが、合鍵を渡したのは自分なので特に突っ込まないで、そのままギンガはアキラの隣に立った。
「海………見てるの?」
「ああ」
「アキラ君………なにかんがえてたのかな?」
「………ギンガ」
「?」
「俺は今年、もっと強くなる。強くなって……俺の大切なもの全部守れるようにする。それと……もっと優しくなる」
「…………いいんじゃないかな」
「ありがとう」
「それから………その………お前と……その、今年ではないけど………いつか……け…け…」
ギンガはアキラの口に指を当てる。
「それから先は、指輪と一緒に持ってきて。ね?」
「そうだな」
アキラはギンガにしか見せない、特別な笑顔で笑った。