とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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ちょっと微妙な終わり方をしてしまいました。サウンドステージ04?くらいだった気がします。今回はあんまりオリジナル要素は入ってませんがこの先につながる為の大切な回でもあります。こんごもよろしくお願いします。



第三十九話 新人

ー港湾警備隊ー

 

事件のあった日の翌日。警防のオフィスにアキラは椅子に座って微動だにせず佇んでいる。そんなアキラの後ろからギンガが声をかけた。

 

「アキラ君」

 

「ん…ギンガか」

 

アキラは椅子から立ち上がり振り向いたが、その方向にギンガはいない。ギンガは肩を叩く。

 

「ほら、こっち」

 

「ああ。悪い。ところでどうした?」

 

「本局の方から執務官が来てるから行こう?」

 

「ん、わかった」

 

アキラは椅子にかけてあった杖を持って歩き出す。まだアキラの方目には包帯が巻いてある。右目じゃほとんどなにも見えないので白杖代わりとしてと、距離感が掴めず躓きやすいので転倒防止用だ。ギンガはあの後アキラのサポートとして常にアキラと一緒にいる。

 

これから、事件協力にきた執務官に会いに行くところだ。アキラはギンガと腕を組み、応接間まで歩いた。

 

「片目がないだけでずいぶんと不便だな。なぁ、リアクトしてちゃっちゃっと直したらダメか?」

 

「ダメだよ。それは本当に困った時だけ。今回は運良く目蓋が切れただけなんだから、普通の人らしく自然に回復するのを待たなきゃダメだよ?私は、普通の人間としてのアキラ君が好きなんだから」

 

「はいはい」

 

アキラはギンガにリアクトを禁止されていた。腕やら脚やら目やらそう簡単にポンポン生やしていたら人間らしくないと言ったのだ。ギンガはアキラに人間らしくいて欲しいのを望んだ。

 

さて、もうすぐ応接間に着くというところでギンガが突然止まる。

 

「ん?どうしたギンガ」

 

「ご、ごめんアキラ君。待ってて」

 

ギンガはトイレに駆け込もうとした。アキラはそれを止める。

 

「なんだトイレか?」

 

「うん、まぁ………」

 

「じゃあ俺包帯変えたいからさ、予備のくれ」

 

「ああ、うん。はい」

 

ギンガから包帯を受け取ったアキラは、おぼつかない足取りで男子トイレに入った。

 

男子トイレの鏡の前でアキラは包帯を外す。鏡に写った彼の顔に、もう傷はなかった。とっくに瞳の傷は治っていたのだ。今は目蓋が切れたとギンガや、周りの人間に言っているがそれは嘘だ。本当は瞳の奥まで切られていたのだ。エクリプスウィルスが確実な活性化を始めている。アキラは顔を洗って切られた方の目を押さえた。

 

「……………ギンガ……」

 

 

 

ー女子トイレー

 

 

ギンガはトイレの便器にひざまずく形でしゃがみこんでいた。ひどく気分が悪くなったのだ。

 

「これ………やっぱり……」

 

この事件が始まる前、ギンガは個人的な事件に遭遇していた。生理が来なくなったのだ。一日二日遅れたくらいじゃ気にしなかったが、一週間経つと流石に無視出来るようなものではなくなった。すぐに誰かに相談すべきだったが、誰に相談したら良いかわからず、また、今ようやく立派に独立し、しっかり頑張っているアキラに気負いさせたくなかったのでずっと黙っていたのだ。

 

なんだかんだでもう二ヶ月。そろそろ相談したい時期だが、今は事件の真っ只中。それどころではなかった。

 

「これが終わったら………相談しよう……」

 

ギンガは小さく呟いた。

 

 

ー応接間ー

 

 

気分を崩したギンガはそれを体調不良とは伝えず、少し遅れると捜査協力に来ていた執務官に連絡を入れる。アキラたちが遅れる間、防災司令のヴォルツ・スターンが応接間に入ってきていた。

 

「ん、なんだナカジマと橘まだか」

 

防災指令が突然部屋に入ってきて驚いたのは、今回、この事件に協力することになった本局からの執務官、ティアナ・ランスターだ。一瞬慌てたティアナだったがすぐに冷静になる。

 

「あ、はい。先程少し遅れるとの連絡がありました」

 

「たくっ、あいつら二人してなにやってんだか。ああ、すまない港湾警備隊防災司令のヴォルツ・スターンだ」

 

「はじめまして。ティアナ・ランスター執務官です。で、こっちが私の副官の……」

 

「ルネッサ・マグナス執務官補です」

 

互いに自己紹介をする。するとヴォルツは少し笑ってティアナを見た。

 

「執務官殿の話は伺ってるよ。若いのにご活躍だそうで」

 

「いえ、まだまだ若輩です」

 

他愛もない世間話に移行しようとしたところで、ギンガが慌てて部屋に駆け込んでくる。そしてそのギンガにほとんど引きずられて行くような感じでアキラも入ってきた。

 

「すみません、遅くなりましたぁ!」

 

「いててて、引っ張んなって」

 

慌ててきて髪の乱れているギンガをみてヴォルツがため息をつく。

 

「おう、おせーぞナカジマ姉、それからナカジマ義兄」

 

「す、すみません」

 

「誰が義兄だ」

 

ヴォルツは軽いジョークをアキラに向けて放ったが、アキラは冷静に流す。

 

「あ、ランスター執務官、お久しぶりです」

 

「お久しぶりです。ナカジマ捜査官。橘捜査官も」

 

「ん?ああ。久しぶりだな」

 

既に面識のある三人が挨拶し終わると、ヴォルツはアキラ達の入ってきたドアに足を向ける。

 

「で、悪いが捜査会議には同席できねーんだが、警ら隊員の動員に関してはこっちの橘に権限を渡してある。事件捜査は四人で話して、いいようにやってくれ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「情報と経過、何かあった時の報告だけは忘れずもらえるとありがたいね」

 

「あ、はいそれは間違いなく」

 

「今朝の時点までのデータは、司令のデスクに既に送ってあります」

 

「おう、あとでみとく。迅速な解決を期待してるぜ。執務官殿」

 

「はい!」

 

「ナカジマ姉と橘もしっかりな」

 

「はいっ!」

 

「ん」

 

そこまでいうとヴォルツは応接間を後にした。

 

その瞬間だった。さっきまで部屋の中に流れていた重苦しい仕事場と言った感じの空気は完全に変わり、日常的で、何かふわふわしたような空気に変わる。例えるなら、放課後の教室であろうか。司令がいた手前再開を喜べなかったティアナとギンガは思う存分再開を喜び合った。

 

「ティアナ、久しぶり!」

 

「はい、お久しぶりです、ギンガさん!」

 

訳二年かそこらぶりだろうか。最後にあったのは、以前スバルが保護してきた少年、トーマの引き取り先の相談に乗ってくれた時だ。また一段と立派になったティアナをみて、我が子の成長を見たような気分のギンガだった。

 

「黒い制服の着こなし、板に付いてきたんじゃない?」

 

「いえ、まだまだ駆け出しですから……」

 

「本当に立派になっちゃって……私も嬉しいな」

 

「ありがとうございます…」

 

再開の邪魔になっちゃ悪いだろうと、アキラは窓際に寄りかかってボヤけている視界で二人を眺めた。すると、ティアナがアキラの手前まで駆け寄ってくる。

 

「アキラさんも、お久しぶりです!」

 

「ん………立派になった…と言いたいが、残念ながら目が見えてないんでな。これと言って言葉がでねぇ」

 

「いえ、いつも通りで安心しました。目を怪我されたって聞いて本当に心配しました……大丈夫ですか?犯人と直接交戦したとか…」

 

ティアナに心配されたのが正直予想外だったアキラ。しかし、表情はそのままで心の中だけで照れた。アキラはそれよりも気になっていることが一つあった。ギンガには見えていたが、アキラには見えていない、この部屋にいるもう一人の存在だ。

 

「ところでこの部屋にもう一人いるんじゃないか?よく見えねぇけど…気配は感じる」

 

「あ、紹介します。私の副官の子です。ルネ、こちら、陸士108部隊武装隊隊長の橘アキラ二等陸尉と、ギンガ・ナカジマ准陸曹」

 

ティアナがアキラとギンガを紹介すると、ルネッサはアキラに向かって自己紹介する。

 

「はじめましてルネッサ・マグナス執務官補です」

 

「橘アキラ陸尉だ。武装隊の隊長だが、一応捜査官もやってる。よろしくな」

 

「はじめまして、ギンガ・ナカジマ捜査官です。あ、二人とも座って?今お茶用意させるから。アキラ君」

 

「ん」

 

アキラは近くの机の上においてあった道具を使ってお茶を淹れる。目は見えてないが、お茶を入れる動きそのものは機械並みに動けるので特に問題はなかった。が、アキラがお茶を淹れる光景にルネッサが驚いたようだ。

 

「橘隊長がいれるのですか?」

 

「ん?なんかおかしいか?」

 

アキラは入隊当初からこんな仕事ばかりだった上に、彼の淹れるお茶は外部の客からも内部の人にも好評なので、もはや108部隊ではお馴染みの光景だった。

 

「ああ、心配しないで大丈夫よ?アキラく………アキラ隊長の淹れるお茶はとってもおいしいから」

 

「はぁ……」

 

 

アキラがお茶を入れている間、ギンガとティアナは軽い話を始める。

 

「それにしても、ギンガさんが捜査担当になっていてくれて良かったです」

 

「こっちこそ………ティアナの指揮で動くのは、三年前の事件以来だもの」

 

「ですね…」

 

そこに、お茶をいれ終わったアキラが声を掛ける。

 

「ギンガ、茶ァ運ぶの手伝ってくれ。茶は淹れられるが流石に運ぶのは無理だ」

 

「あ、では私が」

 

「ああ、大丈夫だから座ってて。お客さんなんだから」

 

ルネッサが自ら運ぼうとしたのを、ギンガが止める。そして、ギンガがお茶を運び、全員にお茶が行き回ったところでようやく事件についての会議になる。

 

「さて、じゃあまず、情報のすり合わせと、捜査方針決定をしちゃいましょうそのあとで、警らの責任者を紹介するから」

 

「はい。お願いします」

 

「お願いします」

 

「ズズズ……」

 

アキラ一人だけお茶をすすっているが、これまたいつものことなのでルネッサ以外誰も気にしなかった。

 

「手早く済ませて、現場は現場で動きます。執務官殿は、状況を見据えた指示をお願いしますね?」

 

「頑張ります」

 

「ギンガに怪我させるような指示すんなよ」

 

さっきまでお茶をすすっていたアキラが鋭い目つきでティアナをみる。

 

「あ、はい…肝に命じておきます」

 

「あ、ティアナ、気しなくていいのよ?」

 

ティアナが苦笑いで答えた瞬間だった。どこからから子供達の歓声が湧き上がった。全員の視線が、歓声が上がった方向、窓の外に集中する。

 

「ん?」

 

「?」

 

「あ?」

 

「あら?」

 

見ると、社会見学に来ていた子供達の前で、迫力のあるダッシュを披露している青髪の少女………ギンガの妹、スバルがいた。アキラとギンガはその姿を見て、スバルが防災系の社会見学や、イベントで人気…というか子供受けがいいので引っ張りだこというか話を聞いたのを思い出した。そんなスバルをみたティアナが呟く。

 

「あの子、あんなこともやるんですね…」

 

「まぁ、あいつは子供受けも人柄もいいからな」

 

「言ってたわ。この手のイベントじゃ引っ張りだこだって」

 

変わらない姿を見て、ティアナは微笑む。

 

「あの子らしいというか……何というか」

 

「お若い救助隊員ですが……お知り合いですか?」

 

全員がスバルのことを知っている中で唯一ルネッサだけが話についていけていない。すかさずギンガがフォローに回った。

 

「私の妹で、ティアナの親友♪」

 

「あたしの一つ下だから、ルネと同い年よ?」

 

「そうですか」

 

楽しそうに友人のことを話すティアナを見てルネッサは微笑ましいと思いながら頷く。最後にギンガが思い出したようにティアナに提案した。

 

「ティアナ、会議終わったら会いに行ってあげて?あの子あなたに会いたがってたから」

 

「はい」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ー陸士108部隊ー

 

アキラとギンガ、ルネッサは108部隊に場所を移して捜査を始める。

 

「じゃあ、資料用意するわね」

 

「お願いします」

 

ティアナとは違い、結構冷静であまり感情を表に出さないタイプだなと、アキラは思った。だが、ノーヴェやウーノのように、からかったら面白いんだろうと思ったが流石に失礼なのでやめておくことにした。

 

「マグナス執務官補は………ティアナとどれくらい?」

 

「もうすぐ二ヶ月です」

 

「二ヶ月………この事件の途中からか」

 

「最初の二件で、自分が検死を担当していまして…その縁で」

 

「あーそっかぁ。もしかして、普段は検死官?」

 

「検死や鑑識。裏方です」

 

「そう…」

 

流石はギンガ。他愛もない世間話が上手い。アキラも口を挟もうとするが、相手の表情が読めないといろいろめんどくさいので大人しく黙ることに。

 

「ところで、お二人はどのような関係で?私の勘違いだったら申し訳ございませんが、とても普通の上司と部下という感じには見えないのですが………」

 

「ん?まぁ、普通の関係じゃねぇな。いわゆる恋人ってやつだ」

 

「あはは、まぁね」

 

「そうでしたか。同じ職場だったのが由来で?」

 

やはり女子なのか、二人の関係に興味を抱いたらしい。

 

「ん………まぁ、ちょっと特殊な事情があってな」

 

「特殊な………?」

 

アキラは自分とギンガの出会いを軽く説明した。別に隠すようなことではなかったが、アキラは昔の自分に触れられるのは少し嫌ったので本当に軽い、触りの部分だけだ。

 

「そうだったんですね」

 

「まぁ、今度時間があったらもっと詳しく話してやるよ」

 

すると、背後からギンガがアキラの後頭部をコツンと小突いた。

 

「もう、アキラ君の惚気話はいつも長いんだからやめておいて」

 

ちょっとむすっとした態度でギンガがアキラに注意すると、何かに気づいたルネッサが少し笑ってギンガを見た。

 

「いつもの呼び方はアキラ君なんですね」

 

「えぁ………う………」

 

何時の間にか素に戻っていつも通りに話してしまったことに、ギンガは顔を赤くして目を逸らす。アキラはそんなギンガを可愛いと思いながら頭を撫でた。

 

「ほら、これが捜査資料だ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

続く

 

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