とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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日付的にまだ五月だから大丈夫!←アウト
長いこと休載しててごめんなさい……。これから飛ばして行きますよ!イノセントもちょっとずつ書き進めて行ってます!ここ一週間いないにイノセントを出したいですね。次回更新は六月10日となっております( ´ ▽ ` )ノ


第四十話 捜査

ー武装隊隊長室ー

 

 

「ここを自由に使って良いと?」

 

「ああ。俺ぁあんま使わねぇし、他にいい部屋もねぇしな」

 

アキラは、ルネッサに作業場として自身のために用意された部屋を提供した。この部屋はアキラが武装隊隊長になった時に前隊長から譲ってもらった部屋だが、アキラはギンガの隣にいられるオフィスのデスクが好きだったので何か理由がなければ使わない部屋となっていたのだ。

 

「ありがとうございます」

 

「困ったことがあったらなんでも言ってね」

 

「はい、ありがとうございますナカジマ捜査官、橘捜査官」

 

ルネッサが深々と頭を下げる。

 

「そんな固苦しくしなくていいわよ」

 

「ですが……」

 

「そうだな、俺はアキラで、ギンガはギンガって呼んでくれ」

 

二人が笑うと、ルネッサは少し戸惑った様子を見せながらも言われた通りにした。

 

「は、はい…アキラ捜査官、ギンガ捜査官」

 

「おう」

 

「うん」

 

二人がアキラの部屋を後にし、オフィスに向かって歩いていると前方からピンクの髪をなびかせた少女がこちらに歩いてくるのが確認出来た。元ナンバーズ7の、セッテだ。

 

「セッテ」

 

「あ、アキラ隊長。ギンガ准陸曹」

 

どうやら二人を探していたらしく、こちらに駆け寄ってきた。

 

「どうしたの?」

 

「メグ陸曹長がケーキを買ってきたから休憩がてら一緒にお茶にしようと……それで、お二方を呼んできて欲しいと頼まれたので」

 

「そっか、ありがとな」

 

「いえ………」

 

アキラが礼をいうと、セッテは少し頬を赤らめる。アキラに感情というものを与えられてから、彼に何かされると、感情が高ぶるのセッテ。本人は理解してないが、セッテはアキラが好きなのだ。自分に戦闘兵器としてじゃない、ちゃんとした第二の人生を与えてくれた彼のことが。

 

「セッテ」

 

「あ、はい」

 

ギンガがセッテに何か不満げな顔をしながら言う。

 

「お客さんの前とか、部隊員の前じゃそれでもいいけど、他に誰もいなかったら普通に呼んでって言ったでしょ?それに、敬語も気になるし……」

 

「ですが………」

 

「ほら、呼んで見て。ギン姉って」

 

それは自分が呼んで欲しいだけなんじゃ………という言葉がアキラの脳内に浮かんだが、すぐに沈ませる。セッテはしばらく赤面して口をパクパクさせたあと、うつむいてしまった。

 

「そ、その辺は、ギ……ギンガ姉とかで…妥協してください………」

 

「むぅ………まぁ、しょうがないわね。慣れてきたら、ギン姉って呼んで欲しいな」

 

「考えておきます………」

 

ギンガは軽く笑いを零す。セッテは顔を赤くしたまま先に行ってしまう。

 

「早くきて下さい。でないと、お二人の分まで私がケーキを食べます。いいですね?……………ギンガ姉」

 

そういうと、恥ずかしくなったのかさっさと駆け出して行ってしまった。アキラとギンガは顔を見合わせると、共に微笑んだ。

 

「丸くなったね」

 

「そーだな」

 

 

ーロビーー

 

 

アキラとギンガの二人がロビーに着くと、セッテとメグ、それからアキラにはメイド姿の女性がいた。その女性にギンガは見覚えがあった。

 

「あなた、もしかしてアーシア!?」

 

「はい、お久しぶりです。ギンガさん」

 

アーシアとはメグの使い魔だ。JS事件の際、自身の体を一時的に魔力の結晶に変換することでFWとギンガの命を救ったのだ。復活の為の魔力蓄積時間が長かったため、中々元に戻らなかったが最近ようやく身体を取り戻したのだ。まだ魔法は使えないが、家事全般はできるようになったんだそうだ。

 

「あの時はありがとう。あなたがいなかったら、アキラ君は救えなかったから…………」

 

「いえ、メグ様の御命令でしたので」

 

「メグも、あり」

 

ギンガが礼を続けようとしたが、メグが遮る。

 

「あーはいはい。いいっていいってもうそんな昔の話。それよりほら、紅茶も冷めるし、セッテがあんたたちのケーキ食べちゃうわよ?」

 

「じゃあいただくかな」

 

アキラが先に席に座り、紅茶を手に取る。その隣にギンガが座った。

 

「お客さん来てんでしょ?その分も買ってきてるからあとで渡しといて」

 

「りょーかい」

 

アキラはフォークを手に取り、ケーキを刺したつもりだったが、フォークはその皿に当たる。紅茶はともかく、ケーキは皿とほとんど同化して見えるのだ。

 

「あ……」

 

「しょうがないな、食べさせてあげる。はい、あーん」

 

「あーん」

 

人前であるにも関わらず、二人はいちゃつき始めた。いや、必要なことではあるのだが。

 

「相変わらずお熱い中で………」

 

「本当に………そうですね」

 

「……ねぇ、あんたさ」

 

「はい?」

 

メグは紅茶を飲んでいるセッテに耳打ちする。メグというギンガの親友がいることは知っていたが、彼女の性格や人柄については知らなかったので、一体何を聞いてくるのかと思った。(ギンガとアキラの関係でも聞きたいのだろうか)そんなことを考えていると、とんでもない質問が飛んできた。

 

「あんたは…………アキラのこと好きなの」

 

「ブッ!!!!?????」

 

セッテは口につけていた紅茶を噴き出してしまう。結構派手にむせていると、アキラとギンガとアーシアが駆け寄ってきた。メグは一人で爆笑してた。

 

「だ、大丈夫かセッテ!!」

 

「げほっ!ごほ!だ、ごほっ大丈夫です……少しむせただけで……げほっ」

 

「ちょっとメグ、あなたセッテになに言ったの?」

 

「さぁ?ナニカシラネー」

 

しらをきるメグ。アキラはセッテの背中をさすり、介抱をする。

 

「大丈夫か?」

 

「はい…なんとか…」

 

それからしばらくは楽しいお茶会だったが、アキラに急に通信が入った。

 

『すみません、アキラ捜査官。すこしよろしいでしょうか』

 

「ん?どうした?」

 

『先ほど、ランスター執務官から現場の視察に行くので私にもきて欲しいと言われたのですが、移動手段がなかったのでランスター執務官にそれを言ったらアキラ捜査官に相談するといいと……』

 

六課時代、ティアナも含め、いろんな人物に優しくしたのが裏目に出たのか、アキラはずいぶん頼りにされているようだった。要するにティアナはアキラならきっとルネッサを運んでくれると思ったのだろう。

 

「………分かった俺の車出してやるからちょっと待ってろ」

 

『はい、ありがとうございます』

 

アキラは深くため息をついてから席を立ち上がる。

 

「ギンガ、捜査だ。いくぞ。俺は一旦バイクで家に戻って、車持ってくる。いい加減目は直していいか?不便にもほどがある」

 

「うーん………しょうがないな………メグ、ケーキありがとね。美味しかった」

 

ギンガも立ち上がる。

 

「いいえ〜」

 

「あ、そうだ」

 

ギンガはふと視界に映ったセッテをみてなにか思ったようだ。

 

「セッテも現場きて見る?」

 

「私が……?」

 

「捜査のこと色々知ってた方がいいでしょ?」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

アキラの運んできた車で、ギンガ、ルネッサ、セッテを乗せて現場に到着した。焦げ付いた瓦礫を抜けた先に、ティアナが待っていた。

 

「アキラ捜査官、パシリみたいなことをさせてしまって申し訳ございません」

 

ティアナが申し訳なさそうな顔をするが、アキラは気にせず現場の奥へと進む。

 

「捜査中だからな。お互いの肩を持ちつ持たれつ協力しようぜ、執務官殿」

 

「すいません」

 

さっさと奥に進むアキラを三人が追いかけるが、セッテは入口付近で止まっていた。

 

もうしばらくと嗅いでいない、戦場の香り。まる一年程、暖かい家庭の中で、静かに暮らしていた。だからこそ再びここに、戦場に足を踏み入れるのが怖いような、どこか煩わしいような気がしていた。

 

急がなければギンガとアキラに怒られてしまうかもしれないとわかっていながら前に進めず、足元ばかり見ていると、その視界に手が差し出される。

 

顔を上げると、アキラが少し微笑みながら手を差し出していた。

 

「行こうぜ」

 

自分の思いを察してくれたのかはわからないが、セッテはその手を取り、勇気よ振り絞って一歩踏み出す。その瞬間、アキラがセッテを優しく抱きしめた。そして、耳元で囁く。

 

「大丈夫だ。例え、戦場に立ち入ろうと俺たちがいる限りお前の新しい日常は壊れないし、壊させない」

 

「…ありがとうございます」

 

五人は事件の起こった現場に入っていく。突入の為に破壊された扉の先には、異様な光景が広がっていた。壁に書かれた大きな文字、その下には被害者がいたであろうすでに固まってしまっている血だまり。

 

「うっ!」

 

ギンガがその光景を見て少し引くレベルだ。アキラはすかさずギンガを優しく抱き込む。

 

「ありゃあ血か?趣味のワリィ…」

 

「これは、古代ベルカ文字でしょうか…?すぐに解析に………」

 

ルネッサがそこまで言った時、ティアナが口を開いた。

 

「詩篇の6………かくして王の帰還はなされることなく………」

 

「すごい、読めるんですね……」

 

ルネッサがティアナが古代ベルカ文字を読めたことに驚き、何かを聞こうとした時だ。アキラが急に頭を押さえてその場に跪く。

 

「アキラ君!?」

 

「アキラさん!?」

 

アキラのそばにセッテとギンガが駆け寄る。

 

「ぐっ……あぁぁぁ………っ!」

 

『マリアージュ…………もうやめよう?』

 

アキラの脳内に、アキラに対してではない誰かの声が聞こえた。

 

(今の…………声は……)

 

「イクス………」

 

アキラは自然に声を漏らす。それを言った後、急に頭への負担は解消され、ゆっくり顔を上げる。そして、自分を心配そうに見ている仲間を見て少し驚いた顔をする。

 

「アキラ捜査官、イクスというのは……」

 

なぜかルネッサが興味を抱いた瞳でアキラに訪ねたが、アキラはキョトンとした。

 

「イクス………?そんなこと言ったのか?俺は」

 

「覚えてないの?」

 

「ああ………」

 

立ち上がろうとした時、アキラは壁に書かれた古代ベルカ文字を見て、急にしゃべり出す。

 

「大いなる王とその下僕達は闇の狭間で眠りについた………逃げ延びた下部は王とその軍勢を探し、彷徨い歩く………」

 

「アキラ君?」

 

ギンガは、少し前にアキラと共に六課の残した遺留品の整理をしているときのことを思い出す。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「…おーいギンガー」

 

「なにー?」

 

「何かの書物が出てきたんだが古代ベルカ文字でな、読めるか?」

 

「あら、意外ね。アキラ君博学だから、それくらい読めると思ったけど」

 

「何か知らんけど、身体が嫌うんだよ。古代ベルカってもんを」

 

「はいはい、言い訳はいいから」

 

「言い訳じゃなくて、何か……その、妙な嫌悪感がな……」

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

アキラはあの時確かに古代ベルカ文字を読めなかったし、よくわからない理由で嫌っていた。あれからアキラが古代ベルカ文字を勉強している素振りも何も見ていない。ギンガはそんなアキラが普通に文字を読んだことを驚いていた。そして、彼自身も。

 

「なぜ俺は古代ベルカ文字何か読める………?それに、イクスって……」

 

「体調が悪いようですし、戻ってお休みになられた方が……」

 

「いや、大丈夫だ………。俺に変なことが起こるのはよくあるんだ。捜査を始めるぞ」

 

アキラとティアナの指揮のもと、捜査が開始された。

 

 

アキラはそこらを歩きながら、考え事をしていた。一瞬見えた、妙な記憶……。

 

「あれは………」

 

 

 

ー夜ー

 

アキラ達は陸士108部隊に戻り、収集してきたものや情報をまとめた。そしてだいたい帰る準備ができたところで、ルネッサはまとめた情報を連絡していた。

 

「こちらでの進展は以上です」

 

『ありがと、ルネ』

 

「自分は108隊に拠点をおかせてもらいます。そして、引き続き捜査指揮にあたります」

 

『うん、こっちはこっちで、犯人の足取りを追いかけるから』

 

「了解しました。それでは、今日のところはもう執務官はお休みになってください。一昨日からほとんど休まれておりません」

 

『もう、そういう変なところは見てなくていいのよ?』

 

「捜査に支障をきたしてもいけません。お友達のところで、少し休息されるのも仕事のうちということで」

 

『はい、りょーかい。あなたも休める時にしっかり休んでね』

 

「はい、では明日は朝7時に」

 

『了解』

 

通信を終わらせてルネッサの背後から声がした。

 

「ティアナのやつもずいぶん優秀な部下持ったなぁ……」

 

「そうね〜……。スバルの代わりに誰かが立ってくれてちょっと安心」

 

賞賛の言葉の筈だが、ルネッサの表情には不満が混じっている。振り返ったルネッサは思い切って言って見ることに。

 

「確かに先ほど現場でお休みになられた方が良いのではと言いましたが……少しリラックスしすぎではないでしょうか?アキラ捜査官」

 

アキラはギンガに膝枕をされ、耳かきのおまけもついた状態で完全にリラックスしていた。確かに勤務態度としてはおかしいが、割と108では日常的な光景だ。

 

「ギンガ、ありがとな。よっと」

 

アキラはギンガに耳かきを止めるように指示すると、勢いをつけて起き上がる。そして、ルネッサの前に立ち、肩に手を置いた。

 

「生真面目なのは結構なことだが、少しくらい肩の力を抜けよ。あんま気張ってると大事な時に力はいんなくなるぞ?」

 

「…………そうかも知れませんが…」

 

「お前ももう今日は休め。ギンガ、帰ろうぜ」

 

「うん」

 

ルネッサのとなりを通り過ぎる直前、アキラはルネッサの耳元で囁いた。

 

「…俺の部屋のPCのセキュリティは簡単に破れねぇからな」

 

ルネッサの背筋がぞくっとする。全身から冷や汗が吹き出るかと思った。瞳孔の開いた目でアキラお見ようとすると、アキラは肩を二回ほど叩く。

 

「見られたらまずいデータばっかだからな。間違っても見んじゃねぇぞ」

 

軽く笑いながらギンガと共にオフィスに歩いて行った。ルネッサはしばらくそこから動けなかった。

 

(勘付かれている………?いや、まさか………)

 

 

 

続く

 


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