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(…なぜ俺はこんなところにいるのだろうか)
気づけばアキラは機動六課のヘリの中。作戦の内容をリイン曹長から聞いている。今一通り説明は終わったがアキラはほとんど聞いてなかった。
「………と言う訳でなにか質問はあるですか?」
「リイン曹長、質問だ」
アキラはゆっくり手をあげた。
「はい、なんです?」
「な、ん、で、俺が機動六課の初任務のお守りしなきゃなんねぇんだ」
「リインはちょっと分からないです…」
リィンは苦笑いを浮かべる。
「チッ!」
アキラは舌打ちをしてふんぞり返った。その様子にFW達は軽く怖がってる。スバルやティアナはともかく、アキラの横に座っているキャロは完全に固まってしまっている。
(たくっ…なんでこんな事に…)
アキラはついさっきアラートがなった際に、茶髪のサイドテール…噂のエースオブエースの高町なのはに引き止められ、この任務に同行してくれないかと頼まれた。もちろんアキラは最初は断った。だがなのはの威圧感と柔軟な手管により、今に至る訳である。ちなみになのはには出撃すると言われ、逃げられた。
アキラは今すぐ帰ってギンガの側にいたいというのに。
さて、アキラがそんなこと考えている内にいつの間にかスバルとティアナは出撃していた。次はエリオとキャロだが、二人仲良く緊張している。特にキャロはエリオより緊張している。
「……たくっ」
アキラは頭を掻きながら二人の方にいく。
「よう」
「あ…えっと橘アキラ陸曹ですよね?」
キャロはアキラの事を少し怯えた目で見た。アキラはキャロと目線が合うようにしゃがむ。
「…大丈夫か」
「はい…ただ上手くやれるかどうか…不安で。私まだフリードをうまく扱えるかどうか……みんなの足引っ張っちゃうんじゃないかって……」
新人で一番多いのはきちんと結果を残せるか不安に思ってるやつだとアキラは知っている。訓練校時代のアキラのパートナーもよく結果が残せるか不安とぼやいていたからだ。キャロはその典型例だった。
「はぁ…別に俺は機動六課の上司でもなんでも無いけどよ……ただ一つ言っとくな。満点取れとは誰も言ってねぇ。取りあえず今は自己ベストを取れ。満点なんてそんなん先の話でいいんだよ。な?これでもしお前の教官に文句言われたんなら俺に言え。ぶっ飛ばしてやるよ」
「いや、そこまでしてもらわなくても……多分、私の教官は文句なんて言わないと思いますし……でも、ありがとうございます!ちょっと自信がつきました!」
キャロが少し元気を取り戻した様子。エリオと仲良く一緒に飛び降りて行った。
「あー…六課の手伝い、橘アキラ、出る」
面倒くさそうにアキラも飛び降りて行く。
◆◆◆◆◆◆◆
(ねぇなのは、なんであの子を任務に誘ったの?)
戦闘中、フェイトはなのはに念話で話しかける。なのはがしたことに疑問を抱いていたからだ。
(ほら、あの子、六課候補でしょ?だから実力知っておきたいし…)
「頑張ってるけどまだFW部隊も心配だしね」
そう言ってなのはは車両を見つめる。
◆◆◆◆◆◆◆
「じゃあ行くか」
アキラは車両の屋根に立つと、刀で屋根の一部を八等分にして車両内に侵入する。車両内にはガジェットがうじゃうじゃいた。ガジェットはアキラに気づくと触手を伸ばして攻撃を仕掛けて来る。アキラは少しため息をついて刀を構える。
「こいつらが…ガジェットか…はあぁぁぁぁ!!!!!!」
伸ばされた触手を切り落とし、アキラは追加で伸びてきた触手は持ち前の運動神経で回避し、ガジェットとの間合いを詰めて一気に三機まとめて真っ二つにした。
少しすると、リインからアキラに連絡が入った。
[橘陸曹!いい忘れましたがガジェットにはAMFという魔力を無力化するフィールドが…ってあれ?ガジェットは…]
「俺の足下で鉄屑になってるが?」
ガジェットは意外と鈍感な動きである。アキラは一機また一機と倒して行き、射撃の攻撃も見え見えで楽にかわせたので一車両終わらせるのに10分かからなかった。
ちなみに簡単に終わらせた理由の一つとしては、アキラが使っている武器がただの刀という点もある。魔力に頼らない戦力であれば、ガジェット相手ならむしろ有利だ。
「ふぅ…次」
アキラはドアを蹴り飛ばし、次の車両に入る。
アキラが車両に入った瞬間、魔力砲がアキラに向けて一斉に放たれた。
「おっと」
アキラはそれを華麗にかわし、刀を構える。すぐに触手がアキラを襲ったが、さっきと同じように、焦らず叩き切って対処する。そしてさっきよりも素早い動きでガジェットを破壊して行った。
「俺をとっとと帰らせろぉ!!!」
刀を振るい、ガジェットを切り刻みながらやけくそに進んでいくと壁にぶつかった。
「いて!!」
どうやらちょうど中心の車両、保管庫に到達したようだ。つまり、今回の確保目標の「レリック」が保管されてる場所に。アキラがいる場所からは入れないので一度上に出てからまた反対から入らなければいけないのだが…。
「めんどくせぇな…」
アキラは刀を壁に触れるか触れないかのところに構え、刀に魔力を送った。アキラの足元に魔法陣が展開され、魔力周りの温度が少しずつ下がって行く。
「氷刀…………一閃!!!!!!」
アキラは刀に氷結属性を付与した一撃で壁を見事なまでに粉々に砕き、保管庫に穴を開けた。保管庫にはそこそこ大きいケースがいくつも保管されている。アキラはなんとなく聞いてた作戦の中でみた、今回の捕獲対象のケースを手に取る。
「これか…」
レリック入りのケースを確保したアキラはリインに通信をとった。
「リイン曹長、目的の物を確保した」
[橘陸曹!わかりました!でもそこから先に行っちゃダメですよ!?]
「あ?」
[アキラ陸曹がどうやって保管庫に入ったかは知りませんがレリックが保管されてた車両の入り口に…新型のガジェットが二機います!!新人には荷が重す]
アキラは途中で通信を切り、保管庫の本当の入り口に向かおうとすると、後ろから声がした。ガジェットIII型を倒したエリオとキャロだ。
「橘陸曹!」
「ん?ああ、お前らか」
―保管庫入り口前―
「くっ…新型が二機同時になんて…っ!」
ガジェットⅢ型が突如スバル、ティアナ、リインの前に現れ、行く手を阻んでいる。正直ほっといても良いのだが敵戦力を減らすことは必要だ。ガジェット全滅が任務の一部でもある。
「どうしよう…」
その時、保管庫の中から声が聞こえた。
「IS、ハッキングハンド!!」
すると、厳重な電子ロックがされていた筈の保管庫の扉が開き、中からレリックのケースを持ったアキラが出てきた。
「アキラ陸曹!?」
「…なるほど、確かにお前らならいい相手になりそうだ。さっきから溜まってる俺のストレス…発散させてもらう!!」
アキラは刀を抜き、ケースを上に投げる。ガジェットはそれを捕獲しようと触手を伸ばすが、瞬時に触手は切り落とされた。ガジェットが切り落としたアキラを見ようとした瞬間にはアキラはさっきいた場所にはいない。
「わっと!」
「キャロ、ナイスキャッチ!!」
投げられたケースをキャッチしたのはキャロだった。
「離すなよ」
ガジェットの目の前まで迫ったアキラがつぶやく。アキラに向かって別の触手が伸ばされたがアキラはスライディングで触手から逃れ、触手を根本から切り落とし、二機の内一機に刀を突き刺す。
「ECディバイダー!!」
左手に銃剣を出現させ、もう一機に銃剣の刃を突き刺し、引き金に指を置く。
「AMFだかなんだか知らねぇが、零距離なら発動出来ねぇだろ?」
そう言ってアキラは引き金を引き、魔力弾を連射し、刀と銃剣を同時に引き抜くと二機のⅢ型は爆裂四散した。刀を鞘に納めたアキラはキャロの持ってるケースに異常がないか確認すると、その場から立ち去る。
「任務完了ってな」
その後レリックは六課により無事に確保され、封印処置をうけた。
◆◆◆◆◆◆◆
機動六課の任務を手伝い、そのあと何故か報告書までまとめさせられた(もとい、アキラのお人好しにより)ので帰りは22時になってしまった。
アキラは夜道を猛ダッシュしている。理由はギンガを家まで送るため…とは言ってもきっと一人で帰っているだろう。だが、もしかしたら…と言う小さな希望にアキラは賭けていた。
―陸士108部隊入り口―
「ギンガさん…」
「あ、お帰り橘君」
22時を回ったのにギンガは入り口で待っていた。
「なんで…」
「なんでって…今日も送って行ってくれるんでしょ?」
ギンガは微笑みながら手を差し出す。
「あ…」
その仕草が、アキラの視界でセシルと重なった。アキラは顔を赤くしながら差し出されたギンガの手を取り、顔を見られないようにギンガの手を引っ張る。
「と…当然だ!あんたは俺が絶対守る…」
「ありがとう。やっぱり橘君はやさしいね」
「し…知るか…」
(耳まで真っ赤…可愛い)
ギンガはそんな事を思いながら、アキラに引っ張られていく。
―ナカジマ家―
アキラに送られたギンガは一人部屋で悩んでいた。
(やっぱり言うべきなのかな…)
「ギンガ?」
「!。父さん…」
「お前…大丈夫か?今日は帰り遅かったし…」
「大丈夫です…私の私情だから…」
ギンガは布団に入ろうとしたがゲンヤの一言がギンガを止めた。
「またあのアキラとかいうやつか?」
「!」
ギンガはゲンヤを見ずに言った。
「だったら…なに?」
「いや別に…ただ…深い関係になる前に伝えるべきことは先に伝えとけよ。また面倒な事にならない内にな…」
「私は別に…」
「別に俺はあいつを否定する訳じゃねぇ。あいつは強いし仕事もできる、コーヒーもうまい。ま、無愛想なのが欠点だがな。そんなやつとお前が深い関係になるのは構わねぇ。だが…真実を伝えて離れないような人間かは…見分けとけよ?…前のやつみたいにならないようにな」
前のやつとは…ギンガが昔付き合ってた男の事だ。ギンガが自分が戦闘機人だと打ち明けた瞬間にいなくなった男。ショックのせいでギンガは一度自殺しようとした。自分がどんな存在か、理解した上での事だ、余計にショックだったのだ。信じていた人に裏切られるのが。ギンガは…アキラを信じていながら、心のどこかで不安に感じている。まだ恋人でもないが…自分を大切にしてくれる以上、自分を慕ってくれる以上、速くとも遅くとも打ち明かさないといけないことだ。
返事をしないギンガをすこし見つめて扉を閉めようとする。
「父さん、待って!」
「うん?」
「ひとつ…聞いていい?」
「なんだ?」
「どうして…橘君の保護責任者を引き受けたの?」
ゲンヤはため息をしてから答える。
「少ししたら話す」
ギンガの部屋の扉が閉められた。
「…」
(気のせいかな…あんな顔の父さん初めて見た気がする…)
◆◆◆◆◆◆◆
その日の夜、アキラ達の活躍は、ニュースで報道されていた。そのニュースを見ている一人の男。男はただニュースを眺めているだけだったが、映像にアキラが出た瞬間、椅子から急に立ち上がった。
「………良かったまだ生きてたんだね?アキラ君……」
続く