とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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おひさです〜。中々上げれず、SSXの続きもかけず申し訳ないと思う今日この頃です………。そういえば今日の15時になのセントのガラケサービスが終わりますね。ガラケ使っている私としては残念ですが、まぁiPadもあるしいっか。

次回の予定は今月末です


第四十四話 接続

「…………」

 

アキラの帰りが遅く心配になったギンガは、十六夜シノブを連れてアキラの反応がある廃市街地に向かっていた。ギンガは詳しいことは言わなかったが、事情を何となく察したのかついてきてくれた。

 

「ねぇ、シノブちゃん」

 

「はい?」

 

「シノブちゃんはどうしてウチにきたの?前に資料をみたら、あなた空戦Aプラスだったからずっと気になってたの」

 

「………沈黙による気まずい空気を解消するための会話は感謝しますが、急いだ方がよろしいかと」

 

「え?」

 

シノブをみると、彼女は廃市街地の反応があった地図を見ている。ギンガもみると、さっきまで映っていた筈のアキラの通信機の反応が消されていた。

 

「え……」

 

「恐らく通信機を破壊されたのかと。アキラ隊長はいつも通信機を左腰につけていますので、攻撃などで吹っ飛んだ時の影響かと思われますが」

 

「っ!」

 

ギンガは真夜中で車が少ないのをいいことに規定違反のスピードで走り出した。まぁ、事件に向かっている管理局の車なので問題は少ないが、個人的に飛び出してきているので少し微妙である。

 

 

 

 

ー廃市街地ー

 

 

 

「おらぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「ああああ!!!!」

 

ジョーの振るった斧を、アキラは刀と鞘でなんとか抑える。

 

「はっ!どうしたんだよ!リアクトしねぇのか!?」

 

「テメェらごときに……………リアクトするほど俺は弱くねぇ!」

 

持てる力を最大限に使ってアキラはジョーの斧を弾き返した。そして、一旦距離を取って腕を休める。自分でケリを付けるとは言ったものの、リアクト無しで感染者二人を倒す自身は、アキラの中で薄れつつあった。ちなみにリサはアキラの弱さに呆れ、ジョーに任せて彼女は高みの見物をしていた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「やれやれ、「阿修羅」の名が聞いて呆れるな」

 

「阿修羅?」

 

ジョーの言葉にアキラは疑問を持つ。

 

「ん?おまえ自分の二つ名しらねぇのかい?「管理局の阿修羅」。手段を選ばない守り神の意味さ。裏の世界じゃ結構そう呼ばれてる。有名人だぜ?」

 

「ああそうかい……そんな風に有名になってもちっとも嬉しくはねぇが、何となく踏ん切りがついた」

 

「あ?」

 

アキラは刀を捨て、ディバイダーの刃を自分の腕に押し付ける。その行動をみると、リサは急にジョーの横に来た。

 

「手段を選ばないことで有名なら、お前ら…………食われても化けて出んなよ……………。リアクトオン!!!!!」

 

アキラの腕に鎧が装着されディバイダーは形状を変え、巨大な剣となった。

 

(……リアクトしても、すぐに意識は無くならない…だが、心が吠えてる……「食え」と。「眼前にあるのは、餌だ」と。他の犠牲者を出す前に………こいつらを!!!!)

 

「はぁぁぁ!!!!!」

 

アキラはディバイダーを構え、二人に飛びかかった。

 

 

 

 

―ビル入り口付近―

 

 

 

 

「これは…」

 

廃市街地についてしまったギンガ達が最初に見たのは傷だらけで倒れているブラックレイランサーを装備したアキラのバイク、そしてそこから点々と続く血の道だった。

 

「何者かに襲撃されたと見るのが妥当でしょうか。いま話題のマリアージュですかね?」

 

「いいえ、多分それはないと思うわ。マリアージュがアキラ君を狙う理由が無いもの。今まで古代ベルカ関係の人間ばかり襲っていたマリアージュとは考えづらい」

 

「ですが…アキラ隊長のデータが見つかったのでしょう?古代ベルカ関連の情報から」

 

機動六課メンバーくらいしか知らない情報を口に出したシノブに対し、ギンガは驚いた。何故知っているのかと問いかけようとした時、目の前に人が落ちてくる。

 

「!!」

 

「ひっ、人!?」

 

落ちてきた人物がまだ息があり、怪我をしているのを確認すると、ギンガは駆け寄った。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「ぐ………ん?」

 

その人物はジョーだった。ジョーはアキラ捕獲の命令を受けた時にギンガの情報も貰っていたのでギンガだとすぐにわかった。自分を一般人と思っていそうなギンガを、ジョーはうまく利用できるような気がした。

 

「たっ、助けてくれ!茶髪の男が急に襲ってきて!」

 

「え?」

 

その瞬間、三人の少し手前にアキラが飛び降りて来た。リアクトしてからかなり激しく戦ったのか、全身ボロボロだ。アキラはジョーの近くにギンガがいることに驚く。

 

「ギンガ!?何でここに…………」

 

「アキラ君……」

 

「ギンガ、そいつから離れろ」

 

「え……でも…」

 

アキラの言葉に戸惑った一瞬の隙をついてジョーはギンガの背後に回り、首の骨を折る態勢に入った。

 

「ギンガ!」

 

「こいつの首をへし折られたくなかったr」

 

ジョーが小物並みの行動に出た瞬間、しっかりホールドしていた筈の腕が簡単に外され、ジョーは空中に放り出されていた。何が起こったか理解できてないジョーの顔面に、鞘をつけたままのシノブの「蒼月」がクリーンヒットし、そのままコンクリートの瓦礫に突っ込む。無駄に息の合った連携プレイだ。

 

「!?」

 

「アキラ君の敵は私の敵よ。覚えておくことね」

 

ギンガの見せた一瞬の戸惑いの表情は嘘であった。アキラが「離れろ」と忠告していた時から、ギンガはジョーに対しての警戒心はMAXだったのだ。

 

「ぐ……舐めやがって…」

 

「なに小物みたいなことやってるの?ジョー」

 

「リサ!テメェなんでさっきから高みの見物なんだ!お前も戦え!」

 

「アキラがリアクトした時に手を出すなと言ったのはあなたよ」

 

何やら内輪揉めを始めた二人の隙をついてアキラはギンガとシノブとともに建物の影に隠れた。

 

「アキラ君大丈夫?またそんなにボロボロで……」

 

「服がボロボロなだけだ。傷はもう治ってる。そんなことよりなんで来た?」

 

「こんなところで通信機の反応が消えたら誰だって心配になって来るよ。大丈夫。ティアナ達くらいにしか伝えてない」

 

「………。まぁいい。詳しい経緯はまたあとで話す。お前らは帰れ」

 

こんな状態で何を言っているのかとギンガは驚愕する。

 

「何言ってるの!?一緒に逃げようよ!逃げるのがダメなら、私も、シノブも一緒に戦う!」

 

「ダメだ!お前らのかなう相手じゃない!」

 

一方、ジョー達は言い争いながらもリサは降りてきた。

 

「まぁ?敵も増えたし戦ってあげなくもない」

 

そういいながら、リサはディバイダーの刃を腕に突き刺してリアクトする。ショットガン型のディバイダーは巨大な弓に姿を変えた。ただの弓ではない。どちらかというと、弓の形をした七連装砲と言ったところだ。

 

セットする矢はなく、弓本体の中心に巨大な砲門があり、その上下四門ずつ小型の砲門がついている。

 

「いぶり出すくらいはしてあげる」

 

弓を適当な建物に向け、弦を引っ張ると七門の砲門にエネルギーが溜まり、弦を離した瞬間それが一気に解放される。光の矢が広い範囲に大量に放たれ、そこらの建物の影になりそうな場所を一気に削っていく。

 

「ヒュー、リサさん、こりゃーあいつら殺しちゃんじゃねーの?今撃ったのビームだろ?」

 

「………大丈夫」

 

リサの言う通り、アキラが攻撃によって起きた粉塵の中からリサに飛びかかった。

 

「おっと!」

 

アキラのディバイダーをジョーの斧が防ぐ。

 

「ぜぇ………はぁ………」

 

飛びかかってきたアキラの状態を見てジョーは少し冷や汗を流す。

 

「マジで化け物かよ……」

 

リサの攻撃からギンガとシノブを安全な場所に投げ飛ばすことが精一杯だったアキラは、コンクリートも簡単に貫通する質量兵器の光の矢を全身に食らって穴だらけだった。エクリプスの力で再生は始まっているが出血が多すぎたため、貧血で気を失い、アキラはその場に倒れた。

 

「………最後まで、勇敢だったとだけ言ってあげる。さ、連れて帰りましょ」

 

「ああ」

 

「させません」

 

ジョーがアキラの腕を掴んで持ち上げた瞬間、目にも止まらぬ速さで建物の影から何かが飛び出してくる。シノブだ。彼女は自らの武器「蒼月」抜き、ジョーの腕に斬りかかったが斧で防がれる。リサは動こうともしない。

 

「威勢のいい嬢ちゃんだねぇ!ディバイダーもないのに感染者に挑むなんて、石ころで戦艦倒すようなもんだぜ!?」

 

シノブの目は変わらない。

 

「別にあなたを倒す必要はありません」

 

そう言ったのと同時に別の建物の屋上からブリッツギャリバーAを纏ったギンガが拳を振りあげながらジョーに向かって突っ込んできた。シノブは囮だ。

 

「はぁぁぁぁ!!!!!」

 

「リサ、今はいい」

 

一瞬リサが動きかけたが、ジョーに止められ、弓を下ろす。そして、ギンガの正拳突きをジョーは自らの身体で受け止めた。かなり本気だったのにもかかわらず、ジョーは吹っ飛ぼうともしない。多少足腰を踏ん張らせただけだ。

 

「ウソ……」

 

「ふんっ!」

 

ジョーはそのままギンガの拳を握り締めて投げ飛ばす。それと同時にシノブも蹴り飛ばした。

 

「きゃあ!!」

 

「ぐっ…」

 

「だから言ったろ?石ころで戦艦壊すようなもんだってよ」

 

そう言った瞬間、ジョーの腕に激痛が走る。見ると、ジョーの腕の肘から先が切り飛ばされていた。

 

「!!?」

 

気絶していた筈のアキラが吹っ飛ばされる直前にシノブの託した「蒼月」を使ってジョーの腕を切り飛ばしたのだ。その瞬間、リサが弓を構えたがアキラはすぐに動いて蒼月で矢の射出口をずらして躱す。

 

「!」

 

「ストライクナックル!!!」

 

「絶断!!!!」

 

すかさずギンガとシノブが追い打ちにかかり、リサとジョーは数メートル先の壁に叩きつけられた。ギンガ達はアキラを抱えると一旦その場を離脱した。

 

 

 

ー廃ビルー

 

 

 

 

「ふぅ、作戦成功ですね」

 

「ああ、刀返すぜ。にしてもよく切れる刀だな」

 

「ええ、我が家の自慢の刀です」

 

アキラを床に横たわらせ、ギンガは自分のハンカチで撃ち抜かれた一番ひどい部分を応急手当しようとしたが、数カ所あった傷は全て治っていた。

 

「……もう…全部治ってる」

 

「さっき…一瞬だがリアクトした」

 

これは嘘だ。エクリプスの進行が進んでいるとギンガに知られたら、また心配かけさせてしまうからだ。

 

「それよりも…血が足りねぇ………さっきからクラクラしやがる」

 

「大丈夫?ここには血なんてないし…どうしよう……」

 

「とにかく、現状を打開して病院に行くべきですかね?この再生能力だったらすぐに血も作られそうですが」

 

「うーん、でも一応病院には…」

 

二人の話をアキラは朦朧としながら聞いていた。そして、ボヤける視界で、二人の首や頬、腕、太もも、皮膚が出ている場所を繰り返し見ていた。まるで、獲物を狙う獣のような視線で。

 

「でも…ん?アキラ君、どうしたの」

 

「………ギンガ…シノブ、……逃げろ」

 

「え?」

 

そう言った後、アキラは急に両手でギンガの肩を掴み、首筋に向かって大きく口を開く。刹那、シノブがアキラの四肢をバインドで床に固定し、首を折る体勢で彼の首を絞め、押さえつけた。

 

「がっ……」

 

「このまま首の骨を折っても再生するんですかね」

 

「ちょ、ちょっと!!!」

 

「いや…」

 

「アキラ君!?」

 

アキラは首を絞められた状態で答える。自我はまだあるようだった。

 

「やれ、シノブ………流石に折られりゃしばらく俺も動けねぇだろ。そのうちにお前らは逃げろ!」

 

「そんなこと!!」

 

また討論が始まろうとした時、アキラたちのいるビルの窓際に誰かが降り立つ。

 

「苦しんでいるようだな。橘アキラ」

 

「!」

 

ギンガは即座に戦闘体制に入った。入ってきたのは、右目に眼帯をした、褐色肌の刀を持った女性だ。

 

「何者ですか」

 

「まぁそう怖い顔をするな。私の名前はサイファー。橘アキラや、お前たちが戦っている奴らと同類で………今だけは橘アキラの味方だ」

 

そういうと、サイファーは首の左側のエクリプスの模様を見せた。

 

「サイファー?」

 

「今だけっていうのはどういうことですか?」

 

ギンガが聴くと、サイファーが笑った。

 

「残念ながら細かい話は出来ないのでな。だが、とりあえず味方だと言っている。警戒するな」

 

サイファーは自身の刀を置き、両手をあげる。

 

「診せてみろ。きっと役に立つ」

 

「…………じゃあ来てください」

 

ギンガは戦闘体制を解き、再びアキラの隣に座る。戦闘体制を解いたものの、ギンガの警戒心はMAXであった。サイファーはそれをわかりながらもアキラの側に座った。

 

「ふむ……病化の一歩手前…と言ったところか。一番苦しい時だな。橘アキラ、今お前は食おうとしていたな。なぜだ」

 

「わからない………ただ、身体が求めるんだ!人の肉を……食えって…」

 

サイファーは腕を組んで少し首を傾げる。

 

「ふむ、妙だな。普通エクリプス感染者は、殺人衝動に駆られる筈だが……やはり試作品は違うのか」

 

「試作品?それに…殺人衝動って………」

 

アキラもギンガも知りたがった。自分でもよく知らないエクリプスウィルスについてを。だが、いろいろとサイファーは話せない理由があった。本人は話してもいいと思っているが、身内が主にうるさいのだ。

 

「まぁ詳しい話は後だ。早いうちに手を打たないと、死ぬぞ」

 

「え……?」

 

「殺人衝動に駆られた感染者もそうだが、無理やり抑え込むと自己再生能力が暴走し、身体が耐えられなくなって死に至る。「自己対滅」と言うのだがな。これは私の勝手な推論だが、お前のエクリプスは自己対滅を防ぐために他の肉……まぁエネルギーを口から摂取することで抑えようとしているのだと思う。私を食わせてもいいが、別のエクリプスを摂取すれば余計に悪化するかもしれん」

 

「つまり、食べれば良くなる?」

 

「ああ。人間をな」

 

そういうと、サイファーは立ち上がった。そして、後ろを見る。

 

「どっちでもいい。少し食わせるだけでも違うと思うぞ。私が時間を稼いでやる」

 

「え?」

 

サイファーの見ている先をみると、ジョーとリサが向かいのビルからこちらを見ていた。何時の間にか場所を突き止められていたのだ。サイファーは刀を拾い上げ、鞘から抜いた。

 

「私も奴らに聞きたいことがあるからな!」

 

最後にそう言い残し、サイファーは向かいのビルに飛び込んで行った。残された三人は少しの沈黙のあと、シノブが口を開いた。

 

「このまま黙っていても拉致が飽きません。アキラ隊長。とりあえず私の腕の肉を噛みちぎってみてください」

 

「待って!」

 

ギンガがシノブの行動を押さえた。そして右腕のストライクナックルを外してアキラに二の腕を差し出す。

 

「ギンガ!やめろ!!!」

 

「いいから!食べなきゃ、アキラ君死んじゃうんでしょ!?そっちの方がもっと嫌だから!!」

 

「お前の体に傷なんかつけられるか!やめろ!」

 

「でも!」

 

「もが!」

 

二人の言い争いの途中、アキラの口にシノブが自分の腕を突っ込んだ。

 

「さっさと食べてください。口論を続けても意味がないです。ギンガさんの気持ちもわかりますが、今はこの場を打開するのが大切です。さぁ、食べてください」

 

アキラはシノブに感謝し、ギンガが止めるのを聞かずに彼女の腕の肉を少しだけ、前歯だけでかじる形で噛みちぎった。

 

 

 

 

続く。


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