とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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ギンガのデッキ(仮)が完成しました〜!うれしやうれしや。

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第五話 橘彪

「機動六課から客?」

 

ある日の朝、ギンガを迎えに来たアキラは、ギンガと一緒に出てきたゲンヤにそれを伝えられた。

 

「ああ、捜査協力の依頼だと思うがな」

 

「それで私が六課に出向することになると思うんだけど…橘君はどうs」

 

「ついてく」

 

質問を全部聞く前にアキラは答える。

 

「だって」

 

「ほいほい…じゃあ八神のやつに頼んどくわ…ところでよ、アキラ」

 

「あ?」

 

普段あまり話さないゲンヤに声をかけられ、アキラは少し驚く。

 

「お前さん、ギンガの護衛だとか言ってるが…ギンガが家にいる時は当然だがお前さんの姿は見かけない。もしギンガが家にいる時になんかあったらどうすんだ?」

 

その突然の質問に驚いたのはギンガだった。

 

「ちょっと、父さん!」

 

「もしもの話だ。もしもの。ただ、本当に守りたいって考えてんなら…なんか対策してんだろうな?」

 

アキラは顔色一つ変えずに答える。

 

「当然だ」

 

そう言うとアキラは右腕につけていたデジタル腕時計の様なものを操作し始める。

 

「全機集合」

 

腕時計に向かって指令を出すと、ナカジマ家から、数機のロボットが出てきた。

 

「…」

 

「なんだ…こいつら」

 

「監視用のカメラ付きポッド。緊急事態になったら俺のこの時計に連絡がくる。侵入者がいたなら俺の家から「408 チェイタック」あ……まぁ狙撃銃で狙い撃つ。撃っても防ぎきれなかったらこのポッドが緊急事態を知らせてギンガを逃がす」

 

ゲンヤとギンガはぽかんとしている。それはそうだろう。守らせてくれと言われ、大体二週間。それだけでここまでやるアキラに驚いていたのだ。そこまでするかと。

 

「なるほど、だがなアキラ」

 

「なんだ」

 

「それ使って覗きとかしたらただじゃおかねぇからな?」

 

「しねぇよ」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

―陸士108部隊―

 

「ギンガー!!」

 

「リイン曹長!!」

 

昼下がり、ギンガさんにお茶を淹れてくれと頼まれ、本格的な茶を淹れてるとあのちっこい曹長が、俺達の所に来た。

 

「お久しぶりです~」

 

「はい、お久しぶりです」

 

あのちっこい曹長とギンガさんは知り合いだったらしく、二人が楽しそうに話している。そこにお茶をお盆にのせた俺が現れると、ちっこい曹長は満面の笑みを見せた。…特に好かれてる訳じゃないと思ったんだがな…。

 

「久しぶりだな」

 

「あ、橘陸曹!この間はお疲れさまです~」

 

「ああ、疲れたぜ?どっかの使えない新人達のお守りは」

 

「つ、使えない訳じゃないです!!みんなまだ才能をうまく発揮できてないだけです!!」

 

「どっちにせよ今現在発揮できなきゃ使えないのと一緒だ」

 

人に好かれるのは嫌いじゃないが、俺の近くにいるとあまりいいことはない。だから俺は冷たく言い放つが、俺の言い方が気にくわなかったのかギンガさんが俺に注意した。

 

「橘君、その言い方はいくらなんでもひどいよ」

 

「フンッ。ほら、お茶」

 

「…ありがとう」

 

ギンガさんは茶を受け取り、部隊長同士が話している部屋に入る。俺とちっこい曹長も一緒に部屋に入った。

 

「入ります」

 

「あ、ギンガ!」

 

「八神部隊長お久しぶりです!」

 

部屋にはウチの部隊長と六課の部隊長…と呼ぶには若すぎる奴がいた。なんかタヌキ見てぇ。

 

「どう?元気?」

 

「はい、おかげさまで。あ、どうぞ、お茶です。このお茶この橘陸曹が淹れたんです」

 

「ほぉ、ちょっといただきます。…美味しい!」

 

「そうでしょう?お茶とかコーヒー淹れるの上手なんですよ」

 

「ふぅーん、男子は見かけによらんからなぁ。右目だけ前髪で隠すなんて、いかついことしてる割に家庭的なんやなぁ………隙あり!!」

 

六課部隊長がギンガさんの隙をみて、なにかしようとした。俺はなんの躊躇もなく刀を六課部隊長の首すれすれに当てる。

 

「え…」

 

六課部隊長は冷や汗流しながらその場に止まってた。

 

「ギンガさんに手をだすな」

 

「あ…は、はい…すんまへん…」

 

六課部隊長はとぼとぼと席に戻った。ウチの部隊長とギンガさんはなぜかため息をついている。俺、なんか間違ったことしたのだろうか?

 

「じゃあ私たちはこれで」

 

ギンガさんはお茶を置くとそそくさと俺を連れて部屋をでる。そして、部屋を出るといきなりギンガさんに叱られた。

 

「ちょっと橘君!どういうつもり!?」

 

「なにがだ?」

 

「部隊長さんにあんなことするなんて!はやてさんだったからよかったものの!!」

 

「あんなこと?ああ、言っただろ?俺はあんたを必ず守るって」

 

「いくらなんでもやりすぎだよ!今朝だって…家にあんなにガジェット置いてるなんて…私を守りたい気持ちはわかる。けど、橘君…あなたは限度って物を知らなすぎ!」

 

「………………ギンガさん、さっきからなんでそんなに怒ってんだ?」

 

俺が尋ねるとギンガさんが俺にビンタを食らわせた。

 

頬がじんじんと痛むのがわかる。

 

「…」

 

「…少しは常識ってものをしらないの!?」

 

ギンガさんは俺を少し睨むとスタスタとどこかへいってしまう。

 

「ちょっと!ギンガー!!」

 

ちっこい曹長は後を追いかけて行った。

 

正直、なぜ俺が今叩かれたのか全くわからない。俺はギンガさんを守りたい。ただそれだけなのに…。でも、わかることは一つだけある。それは…ギンガさんが怒ったのは俺にはわからないけどギンガさんにとって怒る程の行いをしてしまったってことだ。それだけわかれば充分だ。やることはたった一つだけだ。

 

 

―陸士108部隊入り口―

 

 

「ちょっとギンガ、どこに行くですか~!これから会議があるですよ!」

 

「すぐに戻ります!」

 

本当に信じられない。確かにちょっと不思議な人だと思ってたけどあそこまで常識知らずとは…。目上の人に失礼なことをしたのに謝まるどころか失礼なことをしたのを自覚してないなんて…。

 

「ギンガ~」

 

「…リイン曹長、すぐ戻りますからついてこないでください」

 

「ダメです」

 

リイン曹長は強気な顔をしながら私の周りをフワフワ飛んでる。多分私がちゃんと戻るまで見張ってるつもりだろう。

 

はぁ、とため息を出したそんな時、地下道への入口を見つけた。

 

「…」

 

私はなんとなく地下道へ入る。

 

「ギンガ…こんなとこになんの用があるですか?」

 

「いえ…なにかあるわけでは…」

 

しばらく進むと見覚えがある場所に着いた。

 

刀の傷跡がある曲がり角。これは橘君を私が尾行してた時に橘君が私に刀を突きつけた時に出来た傷。…意外と108の隊舎から近かったんだな…。

 

「…」

 

「橘君…」

 

(言っただろ?俺はあんたを必ず守るって)

 

さっきの橘君の言葉を思い出した。

 

「あの…ギンガ…」

 

「はい?」

 

リイン曹長がおずおずと私に尋ねてくる。

 

「その…個人情報なのであまり人に言ってはならないのですが…」

 

「はぁ…」

 

「橘陸曹のことです…」

 

 

ー応接室ー

 

 

応接室では、はやてとゲンヤが今後の事件の捜査について話し合っている最中だった。ゲンヤはちょうど良い話の切れ目で、アキラのことをはやてに話した。

 

「あのよ、ウチの捜査官の副官にギンガともう一人追加してそいつも一緒に機動六課に出向させたいんだが…構わねぇか?」

 

「ええ、いいですよその人、誰ですか?」

 

「それが…さっきお前さんに刀を向けた橘アキラ陸曹なんだが…」

 

「…構いまへんよ、元々そのつもりでしたから」

 

「あん?元々そのつもりって一体どういうことだ?」

 

はやてはお茶を一気に飲み干してからゲンヤに説明する。

 

「ウチの…いえ、機動六課はちょっと特殊な事情持ちの子も、心のケアを兼ねて部隊に誘ったんです。機動六課ができる前にアキラ陸曹も六課の候補に入ってました。今までに類を見ない程の新人エースでもありましたし…特殊な事情ももってましたから…」

 

「ああ、あいつに俺は細かくは知らんがあいつに何か事情があるのは知ってる。なんせあいつは…クイントが保護した子だからな…」

 

「そうやったんですか…ほんなら細かく、教えましょうか?」

 

「できたら頼む」

 

はやては頷くと、あるデータを取り出し、自分とゲンヤの前に出現させた。そこには何人かの幼い子供達とどこかの研究施設の画像がある。

 

「彼はAtoZ計画という計画で造られた人造魔導師です。このAtoZ計画っていうのはAからZの計26の人造魔導師を様々な分野で改造し、戦争や大規模なテロに使える様に仕立て上げるって内容なんですが…ある日その研究施設で不可解な事件が起きたんです」

 

「不可解な事件?」

 

「そこにいた研究員436人とAtoZ計画の少年少女24が様々な死体で見つかったんです」

 

「その…様々な死体ってのは例えば?」

 

はやてが少しキーボードを操作するとゲンヤの前に追加の画像が何枚か出現した。

 

すべて、死体の画像。

 

「凍結死体、焼死体、感電死体、斬殺死体…その画像もほんの一部です。もっとたくさんいろんな殺され方で…特に斬殺死体なんかは原型がとどまってないものも…」

 

「…なるほどな」

 

「ちなみに生き残ったのは、A、S、この二人だけ。この研究所はAtoZ計画以外にもキメラみたいな化物作ったりしてた上に、管理局が違法施設だと聞いて来た時にはその化物も全部逃げてましたから、そいつら化物の仕業ってことでこの事件は終わってます」

 

「…」

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

その頃、ギンガもリインから同じ事を聞いていた。もちろんクイントが関わっている事をリインは知らないのでその事はギンガは聞いてない。

 

「そう…だったんですか…」

 

「橘陸曹は保護されて、引き取られたのはいいんですが、傭兵会社でずっと訓練の毎日だったから常識的知識が足りないのはしょうがなくもあるのですよ…元々戦うためだけの戦闘兵器なんですから…結構人間不信なところもありますし…」

 

「…」

 

ギンガと似たような境遇ではあるが、心情的な部分に違いがある。

 

「…橘君」

 

「あとはやてちゃんが…胸を揉むって知らないのもあると思うです…」

 

「はい…」

 

ギンガが落ち込んでる時、ギンガの身体を触手が捕まえた。

 

「きゃあ!」

 

「ギンガ⁉…ガジェット…」

 

ギンガを捕まえたのはガジェットドローン等合計四機。

 

「くぅ…」

 

「ギンガを離すで」

 

「はぁ!!」

 

リインが動こうとした瞬間、リインの真横を誰かが目も止まらぬ速さで抜け、ギンガを縛る触手を斬り落としてギンガを脱出した。

 

「無事か!?」

 

「橘君…」

 

「橘陸曹!」

 

ギンガを助けたのは、いつのまにか地下道に来ていたアキラだった。

 

「何で…」

 

ギンガが尋ねるとアキラは相変わらずの無表情で答える。

 

「俺がいない時のためにポッドを常に一機、あんたを見守らせているからな」

 

「そうなんだ……………ありがとう」

 

アキラはギンガを降ろすと刀を構え直し、ガジェットドローンに向けた。そして足元に魔法陣を展開する。

 

「ギンガさんに手を出した罪、しっかり償ってもらうぜ」

 

アキラの身体にバリアジャケットが装備され、その上に白いコートを装着し、ガジェットドローンに突っ込む。刀に青紫の魔力がまとわり、その周りの気温が下がった。

 

「はぁぁぁ…氷刀一閃!」

 

触手をかわしつつ、ガジェットドローンの前まで来ると氷結属性の魔力が付与された刀の一撃でガジェットドローンを撃破した。

 

「ふぅ…」

 

「すごいですぅ〜!」

 

アキラはバリアジャケットを解除し、ギンガに近づく。さっきの自分の態度を申し訳なく思ってるギンガは自然と顔をそらしてしまう。ギンガは何か言われるのではないかと思い緊張していると、アキラは予想外の行動をとった。

 

「ギンガさん、すまなかった‼俺が常識知らずなばっかりに…あんたに迷惑かけちまった…本当にすまない!どうか…許してくれ…」

 

アキラは必死に頭を下げ、謝っている。ギンガが事情を聞いたことを言おうとするとリインに念話で止められた。

 

(ギンガ、一応個人情報なので…あのことは…)

 

(わかりました)

 

ギンガは頭を下げているアキラに言う。

 

「もういいよ、橘君。次から気をつけてくれれば」

 

「そうか…すまなかった」

 

アキラは安心した顔をした。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

その後、アキラ達は108の隊舎に戻り、捜査主任のラッド・カルタスと会議し、機動六課に頼まれた捜査について話した。それが終わると、はやてとゲンヤにつれられ、食事をしに行った。

 

「いやぁ、さっきはすまんかったなぁ。まさかアキラ陸曹とギンガが付き合ってるなんて知らんかったから」

 

その言葉にアキラは飲んでいた味噌汁を吹き出してしまう。

 

「いきなり何言い出すんだあんたは!?」

 

アキラの慌てぶりにはやてはキョトンとしている。

 

「さっき私が殺されかけたのってそれが理由なんちゃうの?」

 

「当たり前だ!」

 

いつも無表情のアキラが慌てているのを見て、ギンガはクスクスと笑った。そして、それと同時に気づく。アキラは今まで一度も自分の前で笑ったことがないと。

 

続く


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