Fate/Grand Order 絆の力おかりします!という新作小説を出しました。そちらも合わせて読んでいただけると幸いです。皆さんのコメントが割りとやる気に繋がります。これからも応援よろしくお願いします。
「なん………だと?」
止まった時間の中で、リュウセイに伝えられた事実は衝撃的すぎた。世界の破滅とも言える「黙示録」シリーズの最も強力な「書」の封印が解かれた。
「サラも重傷を負わされた。いいか、命をかけてギンガを守れ」
「…………」
「なんだ?」
アキラはリュウセイに拳銃を向けた。
「前々から聞きたいと思ってた……………お前は一体なんだ?ずっと俺やギンガ、その他の人間の周りに現れる?何が目的だ?」
「……前にも言ったろう?俺はこの世界の管理人。この世界が正しい方向に進むために調整するのが目的だ」
「調整?」
「ああ。そうだ。俺はお前たちを歩むべき道に連れて行く。それが仕事だ」
アキラは銃の引き金を引いた銃口から弾丸が飛び出すが、リュウセイの目の前で止まった。リュウセイは弾丸を指でつまみ、そのままつぶして捨てた。
「正しい方向だと?お前のいう正しい方向が本当に正しいかもわからないのに?」
「ごもっともだが、心配するな。別にお前たちを悪用しようというわけではない。だからおとなしくいうことを聞け」
アキラは目にも止まらぬ早さで刀を掴み一気にリュウセイに切りかかった。リュウセイはそれを躱し、後方に下がった。
「なんだ?」
「そう簡単に信じられるかよ。そんなこと。そもそもファーストコンタクトの時からお前は不審者だったからな。いい加減何者で何が目的なのかしゃべってもらうぜ。世界の管理云々ではなく。俺らをどこへ導きたいのか」
アキラは刀を構え、戦闘体制に入る。リュウセイは軽いため息をついた。
「エクリプスも冥王の鎧も失ったお前が勝てるとでも?」
「だいぶスパルタな師匠ができたもんでね。自信はあるぜ」
「…………まぁ、たまには遊んでやろう」
リュウセイが軽く手を振ると、火炎が発生しその火炎のなかからレヴァンティンによく似た剣を出現させた。アキラはそれをみて驚くと同時に戦闘体勢に入った。
「…………………テメェ、その剣をどこで手に入れた」
「さぁ、どこだろうな。少しは自分の腕に自信がついたんだろ?俺を倒して力尽くで聞いて見たらどうだ?」
「…………それでいいならそうさせてもらうぜ!!」
アキラは刀を高速で振った。その攻撃はリュウセイのレヴァンティンに防がれたがアキラの攻撃はそれだけで終わらなかった。第一撃が防がれた瞬間にアキラは刀から手を離し、刀を握っていた手をリュウセイの首に運んでいた。さらに握っていなかった手で腰に装備していたナイフを掴みリュウセイに突き刺そうとした。
リュウセイは何も持っていない方の手からクロスミラージュに酷似した銃を出現させ、アキラの腹に突きつけた。一発強力な弾丸を喰らい、アキラは吹っ飛ばされた。だが空中で回転し、安全に着地する。
「痛ぅ…………クロスミラージュまで…」
「こんなのもあるぞ?」
リュウセイは魔法陣を通して今度はバルディッシュとストラーダを出現させる。
「………そうか、お前は武器を創り出しているんだな?それらを元々の持ち主から奪いとったのではなく……」
「どうだろうな、もしかしたら持ち主はもう死んでるかもしれんぞ?次元移動と時間停止能力を持つ俺なら今の一瞬で持ち主を殺して武器を奪還することなんざ余裕だが?」
「テメェ!」
アキラは逆上し、刀でリュウセイに再び切りかかった。リュウセイはその攻撃をバルディッシュで受け流し、ストラーダの刃の腹でアキラの背中を押す。
「どわ!」
アキラは盛大に転んだが、それと同時にリュウセイの足元を氷結魔法で凍らした。それによりリュウセイは動けなくなる。
「む?」
「氷牙大斬刀」
その隙にアキラは刀に氷を纏わり付かせることで巨大な剣を創った。
「この氷は、俺が命令しない限りぜってぇに溶けない氷で出来た刃「エターナルアイスソード」ってとこか」
アキラの「氷牙大斬刀」はいままで発動、及び刃の生成に時間がかかる技だったのであまり使うことはなかったし、アキラの創り出す氷そのものが熱や時間によって溶けてしまうことがあった。しかし、アキラの義兄の修行によってそれが強化され、耐久性と沸点と生成時間が上がり、運用しやすい武器になったのだ。
「ほぉ………まぁ、伊達に修行してた訳ではないみたいだな」
「氷刀、一閃!!!!」
一ミリのズレも無くアキラの刃は男に当たったと思われた。しかし、男はすでにその場から消え去りアキラの背後に立っていた。しかも、氷の剣は砕けている。
「!!!!」
「少し強くなったくらいでのぼせ上がるな。いいか、お前に必要なのはより過酷なトレーニングと、エクリプスだ。………おっと長話が過ぎたな。さっさとギンガの元に行け。いいか、この時間停止魔法が解けると同時にギンガが襲われる。魔法が解けるのは二分後だ」
リュウセイはそう言い残すと姿を消した。
「おい待て!………くそ!あの野郎!あとに二分だと……?だったら!」
アキラはすぐに氷の壁をギンガとアキラの義兄であるレイの四方に出現させた。アキラは上から氷の壁の中に入り、ギンガを抱きしめた。
「あと十秒…………」
十秒後、世界が動き始める。それとほぼ同じタイミングで、ギンガの座っている場所に魔力ホールが出現する。
「え………」
小さな悲鳴と同時にギンガはホールへ落ち始めた。アキラも一緒に落ちるかと思ったが、ギンガは抱いていたアリスをアキラに押し付けてホールへと落ちた。彼女は一瞬で何が起きたかを察し、アリスをアキラに渡したのだ。
「ギ」
「アキラはここにいろ」
その言葉がアキラに届き切る前にレイがホールに飛び込んだ。レイの両手にはワイヤーガンが握られており、片方をギンガにもう片方を入ってきた場所に向けた。
「二人とも受け止めろよ!」
レイはワイヤーガンのワイヤーを発射した。ギンガもアキラもワイヤーの先端を掴み、アキラが全力で踏ん張ることでレイとギンガはホール内の空間で止まった。
「あ、ありがとうございます」
「ああ」
「ギンガ、無事か!?」
「うん、大丈夫ー!」
「わかった、引き上げる!」
アキラはワイヤーを一気に引き上げ、ホールの罠から二人を脱出させた。そっとギンガを抱きしめ、無事を確認するとアキラは氷の壁を解除した。
「あ、危なかった………」
「良かった………無事で……」
「思ったより人間らしいのだな橘………いや、アキラナカジマ」
安堵に浸っていられたのは本当につかの間だった。アキラはギンガの無事を確認すると同時に、背後から悪意に満ちた魔力と声を感じ無意識に刀を拾い上げ、振り向くと、そこには少女が立っている。クラウドだ。
アキラは一瞬誰かと思ったが、クラウドの手に抱えられた禍々しい魔力を放つ魔術書でだいたい誰かは想像がついた。想像は出来るが、念のために聞いた。
「お前………誰だ?その本はなんだ?」
アキラの質問にクラウドは少し驚いた顔をする。だがすぐに笑みを見せた。
「…………クックク…クハハハハハハハハ!!!」
「何なのあの子…」
急に笑い出したクラウドに対し、ギンガはまだ彼女の脅威には気づかずそんなことが言えた。だがアキラとレイは違う。直感が、自分の魔力が、クラウドを大いなる脅威と感じている。一瞬の油断も許さない、全身の筋肉が強張り、全身から汗が噴き出してくるようだ。
「ククク………私……いや、この書を目の前にして「お前は誰だ…」とな。てっきり襲いかかってくるかと思っていたがあまりに拍子抜けだったものでな。そうか、お前たちはあくまで説明を求めるか。まぁ、説明を求めるのは余裕からではなく目の前の受け入れ難い現実から目を背けたいがためだろう。私に聞いて自分が思っているのと違う返答が来てくれないかという願望からの問答……。それ程までにこの書はお前達の深層心理に深く恐怖を刻みつけているとみた………。まぁいい。誰だと聞いたな?この書は何だと聞いたな?では答えよう。我が名はクラウド・・オーガス。そしてこの書は黙示録の書だ」
刹那、アキラは懐から拳銃を取り出し、クラウドに向けてトリガーを引いた。銃口から飛び出した弾はまっすぐにクラウドの腕に向かって飛んで行く。発射から着弾まで約0.01秒。だが、弾丸はクラウドに当たる前に何かによって弾かれた。
「!?」
「まぁ、そう焦るな。私は今戦いにきたのではない。あくまで今回は挨拶だ」
「挨拶?」
「ああ。私は今戦力を集めてる。戦力が整い次第、この世界………ミッドチルダに宣戦布告を行う。お前は危険人物だからな。先に挨拶させてもらった」
「ふざ」
アキラは再び拳銃をクラウドに向けたがその瞬間、黙示録の書から伸びた一本の刃がアリスの喉元に向けられた。アキラは引き金を弾こうとしていた指を停止させる。
「……っ!」
「焦るなと言っただろう?それにそんなおもちゃじゃ私は倒せん」
クラウドは次元転移魔法を使って何処かへ消えた。
「せいぜい世界の終わりまであがいて見せろアキラ・ナカジマ」
最後に、その言葉を残し……。
続く