寝ぼけてたので、何かおかしなところがあったらご指摘願います。
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橘君は、顔や性格に似合わずとても優しい人だ。いや、私に対しては特別優しいのだと思うけど、他の人にもそんな一面を見せることもある。優しくて、多分これからもずっとそばにいてくれる。私が他の人と結婚したとしても、そばにいてくれる気がする。
でも、一つだけ不安なのは、本当の私を受け入れてくれるかどうか…。橘君がどんな出生かは知った。今度は私の番だと思う。
私は決意した。包み隠さず話そうと。
ー翌日 朝ー
「おはよう、橘君」
「よう」
軽い挨拶をし、アキラが歩き始めた時、ギンガはアキラを呼び止めた。
「待って!!」
「ん?」
「あの…今日の仕事終わったあとに………空いてないかな…?」
アキラは少し驚いた表情を浮かべていたが、頷いた。
ー陸士108部隊 オフィスー
今日の朝、急にギンガさんが俺に夜空いてないかと、尋ねられた。一人暮らしだし、帰りが遅くなっても心配する奴はいないから構わないんだが。
しかし、一体なんの用なんだろうか。………俺の勝手な護衛はもういらないと言われるのだろうか……。正直、それだけは嫌だ。ギンガさんのためにここまで来たんだ。それだけは……。それに、あの人との約束もある。
にしても……………。
「ギンガ陸曹、この書類確認お願いします」
「……」
「ギンガ陸曹?」
「え!?」
「あの…書類…」
「あ、はい。見ておきます」
今日のギンガさんは何か変だ。ぼーっとしてるし。何か言っても何かと上の空だ。
◆◆◆◆◆◆◆
―夜 公園―
ギンガはアキラを連れて、夜の公園に来ていた。アキラをベンチに座らせ、ギンガは飲み物を買ってくると言い、自販機の前で決意を固めていた。
「言う…ちゃんと言う…絶対逃げない…」
言って、きっとアキラは受け入れてくれるとギンガは信じていた。でも…もし拒まれたら?今度こそ自分はどうなってしまうかわからない。もし仮に、本当にもしもの話、拒絶されても…私もアキラ君の秘密知っちゃったから、おあいこだよね?そんなことを言い訳に勇気をつけている。
「とにかく…言わなきゃなにも始まらない…!」
ギンガは買ったお茶を手に、アキラの元に戻った。
「おまたせっ!」
「おう…やたら遅かったが…なんかあったのか?」
「ううん…」
「そうか…」
そこから、少しだけ沈黙だった。
「…で、話ってなんだ?」
「うん…あのね?」
拳をぎゅっと握り、「逃げるな!」と自分に言い聞かした。逃げても何もならない、自分の中にモヤモヤが残るだけだと。
「あの…実は私…」
「…」
「その…普通の人とは違うんだ…」
「違う?」
「せ…戦闘機人っていってね?人と機械を融合させて戦闘能力とかを格段に上げる…私は…そういう存在なの…」
「…」
話してる途中でアキラの顔がまともに見れなくなり、下を向いてしまったので今アキラがどんな顔をしているか分からなかった。さっきよりも重い空気が二人の間を流れた。
「そうか…」
アキラはゆっくり頷いた。頷いた時の表情が心なしか微笑んでる気がした。
「嫌いに…なった?」
「んなわけあるかよ」
その言葉にギンガの気持ちはとても明るくなった。
「本当?」
泣きそうになりながら、ギンガはなんとか涙を押さえて聞いた。
「お前が…ギンガさんがどんな身体であろうと関係無い。俺は、俺がギンガさんを守りたいから守るんだ」
「橘君…!」
ギンガはアキラに抱きついた。
「うわわ!」
我慢していた涙がギンガの頬を伝った。
「ありがとう…優しくて…」
「ん…あ…ああ」
アキラは柄にもなく照れてる様だった。
(ようやくわかった…あの時なんで護衛を断れなかったのか…私は…この人の事が好きなんだ…)
自分の想いに気付き、少しの不安と喜びに浸っていると、アキラが口を開く。
「あの…ギンガさん…」
「ん?」
「そろそろ離れてくれないと…その…周りの視線が流石に気になるってか…」
「…」
気付けば、周りには大量のギャラリー。
「か、帰ろ!橘君!」
ギンガは顔を赤くしながらアキラの手を引っ張った。アキラには見せてなかったが…ギンガは笑顔だった。
ー翌日 朝ー
ギンガは早起きして台所でなにかしていた。
「~♪」
「ふぁ~…ん?ギンガ、なにやってんだ?」
そこに珍しく早く起きたゲンヤがやって来てしまい、ギンガは慌てて何かを隠す。
「と、父さん!今朝は…早いのね…いつもは、もっと遅いのに…」
「ああ、なんか起きちまってな。で、なにしてんだ?」
ギンガはうまくごまかそうとしたが、ゲンヤにはごまかしきれなかった。渋々とギンガは隠していた物をゲンヤに見せる。
「弁当?何で急に」
「あ、私のじゃないの……」
反射的に返してしまったその返事をギンガは深く後悔した。何となくとか曖昧に答えればいいものを、ど正直に答えてしまい、思いっきり地雷を踏んでしまったのだ。
「じゃあ、誰のだ?俺か?」
「……君の…」
「ん?」
「橘君の…」
「は?何で弁当なんだ?食堂があるだろ?」
「なんでか知らないけど、橘君食堂にいてもコンビニとかで買ってきたパン食べてるから…食堂のご飯が嫌いなのかわからないけど、手作り弁当なら健康にもいいかなって…」
ギンガの話を全部聞くと、ゲンヤは深く頷く。
「やっぱよくわかんねぇなぁ、あいつは…まぁいいや。とりあえず一つ聞きたい」
「はい…」
「いつから付き合ってんだ?」
ギンガの予想を斜め上を行く質問にギンガは驚く。
「ち、違っ!!!違うよ!付き合ってるとかじゃなくて、いつものお礼とか…この間、橘君に嫌な思いさせちゃったから…」
「そうか、優しいな、お前は」
そう言ってゲンヤはギンガの頭を撫でたが、内心は複雑だった。いつギンガがアキラに持っていかれるか。
―昼休み―
昼休みになるとアキラはいつも通り昼飯を買うべく、コンビニに向かおうとした。
隊舎から出たところでギンガに止められる。
「橘君、待って!」
「あ?」
「お昼買いにいくの?」
「そうだが?…ああ、安心しろ、発信器もあるしポッドも見てる」
「あ、そうじゃなくて…その…これ…」
ギンガはアキラに丁寧に風呂敷で包んだお弁当を渡す。アキラはそのお弁当を物珍しげに見た。
「なんだこれ」
「なんだこれって、お弁当だよ。お弁当」
「弁当…どうして急に」
「ほら、橘君いつもパンとかばっかりだから…たまには、ちゃんとしたもの食べないと…ね?」
「…」
アキラが黙ってるのが、段々不安になって来たのかギンガは恐る恐るアキラに尋ねる。
「あの…ごめん、迷惑だったかな…嫌なら…」
ギンガが最後まで言い切る前に、アキラはギンガの頭をくしゃくしゃとなでてやった。アキラのお思いがけない行動にギンガは慌てる。
「あ、ちょっ…や、やめっ…髪がくしゃくしゃになっちゃうから〜!」
「ありがとうな」
「え?」
くしゃくしゃになってしまった髪を直しながら、アキラの顔を見ると、ギンガは驚いた表情を浮かべた。アキラは、若干だが微笑んでいる。
「こんな俺を心配してくれてよ…ありがとうな」
アキラはお弁当を持ち、近くのベンチに向かった。ギンガもついて行こうとしたが、アキラがさっきまで立っていた場所に何かの封筒が落ちてることに、気づいた。ギンガは誰のものだろうと思い、拾って中身を確認する。中身はセロハンテープで無理矢理繋げられ、二つ折りにされた紙が一枚。紙を開くとそこには「保護責任者契約書類 保護責任者 橘信造 保護受信者 橘アキラ」と書かれていた。
ギンガはアキラを管理局に誘った時の事を思い出す。
「ついでに保護者もいねぇから、管理局に入ろうとしても無理だ」アキラは確かにあの時そう言った筈。なのになぜアキラはこのような書類を持っているのか、ギンガが困惑しているとその書類を誰かが取り上げた。アキラだ。
「橘君…」
「悪い、俺のだ」
アキラはベンチに戻ろうとしたが、ギンガがアキラの腕を掴む。振りほどかれないように力強く。そして、アキラを問い詰める。
「どういうこと?橘君!」
「何がだ?」
「今の書類、橘君…保護者がいないって言ってたよね?なのに…どうして!?」
「…はぁ、座れよ。それと離してくれ」
手を離したギンガがベンチに座るとアキラも座り、お弁当を膝に乗せた。
「俺がセシルを殺してしまった日。その日の内に葬式は開かれた。葬式が終わってから俺は自殺でもしようと葬式場を出たら…セシルの両親に止められた。ああ、金持ちの一人娘を殺したから誰にも知られずにこの家に殺されるんだと思った。けど、そのセシルの両親はなんて言ったと思う?」
ギンガは首を振る。
「娘の…セシルの分まで生きてくれってさ…。正直、そんな気になれなかったが…俺が後追ったってセシルが喜ぶか…それを望むかって考えたらなんだか死にづらくなってな…。だったらせめて自分が置かれた状況を辛くしようと思った。俺がやってた傭兵会社の社長…いや、橘の家の義親父はそういう状況なら仕方ないって言って本当はクビになるところを助けてくれた。だが俺は辞表を出して傭兵を辞めて、橘の家と縁を切って一人で生きようとした。保護責任者契約書類を破り捨てて夜中に家を出ようとしたら義親父に止められて…これを渡された」
アキラは書類を折り畳んで封筒に入れ、管理局制服のポケットにしまった。
「捨てようとも思ったがどうにもな…」
「そうだったんだ…ご、ごめんね?疑っちゃって?」
「気にするな。なにも話さない俺が悪いんだ」
アキラはそう言ってお弁当を開く。ギンガはまた失敗してしまったと思った。辛い過去があるせいかアキラはギンガの前で一回も笑ったことがない。アキラが勝手に言ったとはいえ、守ってもらってるんだからせめて恩返しがしたいとギンガは思っていた。
そのことを忘れて変な質問をしたせいで、またアキラに暗い顔をさせてしまった事をギンガは後悔した。そして、考えた。今アキラに出来る最善のこと…。
「お弁当、美味しい?アキラ君」
アキラは目を丸くした。
「あんた、俺のこと名前で呼んだことあったか?」
「ダメだったかな?」
「いや、呼び方くらい好きにしていいが…なんで急に…」
「アキラ君は橘の家と縁を切ってるんでしょ?だから苗字で呼ぶより名前で呼んだ方が気が楽かなって」
ギンガが軽く微笑んで見せるとアキラは少し赤らめる。
「…あ、アキラ君」
「ん?」
ギンガはアキラにぐぐっと顔を近づけた。アキラは無表情を貫こうとするが、急なことだったので少し顔が赤くなっている。そして、アキラの頬を指でなぞった。
「ご飯粒ついてる♪」
ご飯粒をとり、くすくすと可憐に笑う少女を見てアキラはまた思う。セシルに似ていると。そしてギンガも気づく、アキラは自分を見ているんじゃない。自分を通して誰かを見ていると。
ー翌日 陸士108部隊 食堂ー
「はぁ…」
「おやおや〜。珍しいですね〜ギンガ陸曹が食堂で一人なんて〜」
「あ…メグ…」
ギンガが食堂で一人でいると、ギンガの同僚が話しかけて来た。
「ちなみに私は第二話で新人歓迎会でギンガと話してた面食いで、ギンガの同期、ヴァルチ・メグで〜す!!!」
「誰に言ってるのよ。誰に」
◆◆◆事情説明◆◆◆
「あっはっはっは!!じゃあ何!結局好きになっちゃったわけ!あっはっはっは!」
「ちょっ!メグ!声が大きい!」
ギンガが悩み事を話すと、メグは腹を抱えて笑った。悩み事とはアキラに恋をしてしまったこと。アキラが全く持って振り向いてくれないこと。
「でも、振り向いてくれないったって、あんたなりに頑張ってるわけ?」
「もちろんよ。でも………」
ー回想ー
朝、アキラ君が迎えに来た時なんだけど…。
「アキラ君〜おはよ〜」
走っていくふりをして、わざとこけて…その…下着を見せてアキラをドキドキさせるという作戦だったんだけど…。
「キャッ」
「おっと!大丈夫か?」
「…うん」
ー回想終了ー
「見事に助けられてしまいまして…」
「ダメだね〜。あんた、こういうことについての知識ゼロだからねぇ〜。美人で、性格もいいし、まぁ胸は多少あれだけどスタイルだっていいのに………もったいないねぇ〜」
メグは食堂で買った定食を食べながらいう。
「本当よね…」
「ところでその橘陸曹は?」
「お弁当作ったんだけど…今忙しいから後でいい、食堂で待っててくれだって」
ギンガはまた、ため息をついた。メグは食事を一気に終わらせると急に立ち上がる。
「?」
「しょうがないな、あんたは全く。このメグさんが一肌脱いであげよう!」
「え?」
ギンガが頭に「?」を浮かべていると、メグはギンガの後ろに回り、肩をガシッと掴んだ。そして、そのまま肩をゆっくりゆっくり揉み、肩のこりをとって行く。
「あ…ん…気持ちいい………」
ギンガが完全に油断したのを狙って、急にメグは揉む場所を肩から胸に変えた。
「キャア!?」
「相手を色目で惹きつけるんならスタイルを良くするのが第一!特に胸でしょ?」
「それはそうかもしれないけどぉ!ん…」
ギンガは必死に手を引き剥がそうとするがメグは手をあちこち動かし、捕まらないようにしている。
「ああっ」
「それそれ〜!大きくなぁれぇぇ!」
メグは調子に乗ってると、ギンガはかなりギリギリな感じで反論した。ギンガはあまり使いたくなかったが、馬鹿力でメグの素早い手首を掴んで無理矢理自分の胸から引き剥がす。
「痛たたたた!ごめんごめん!」
「まったく…」
ギンガは仕方なしにメグの手首を離した。メグは手首をさすりながらギンガに言う。
「しょうがない、こうなったらこのメグさんが橘陸曹に聞いてきてあげよう」
「何を?」
メグは笑顔でギンガに敬礼した。
「橘陸曹の好きな人♪」
「えっ!ちょっ!メグ!!待って!!」
メグは一気に走り去り、アキラの元に行く。
―陸士108部隊 オフィス―
アキラはオフィスで仕事をこなしていた。そこにメグがやって来る。
アキラは一瞬メグを見たが、すぐにデスクワークに戻った。
「ねぇねぇ、橘陸曹~」
「誰だ?」
アキラは何故かとても不機嫌そう。
「橘陸曹って…好きな女性とかいる~?」
初対面なのにいきなりそんなことを聞いてくるなんて、なに考えてんだと思いながらアキラはふてぶてしく答える。
「……いねぇよ」
「あら、いが~い!本当にいないの?」
「いねぇよ…俺は…もう好きって感情を抱かないことにしたからな…」
アキラはメグを全く見ずにデスクワークをしながら答えた。メグがさらに追求しようと顔を近づける。
「それって……なんで?」
「好きなんて感情抱いたら…きっと俺は弱くなるし、俺が好きだと思った物はみんななくなった。だから………もう好きなんて考えない」
アキラが言うと、メグも少し思うところがあったのか黙る。それと同時にアキラに通信が来た。
「はい」
[アキラか。事件が起こった。捜査協力の依頼が来てるから昼食ってすぐにギンガと部隊長室まで来てくれ]
「了解。残念だが、お話はここまでだ。それと俺に二度と近づくな」
アキラはメグを軽くあしらう様にし、上着をとって部隊長室に向おうとした。
「んもう、連れないのね」
「アキラくーん!あ、アキラ君いた!アキラ君、父さ……じゃなかった。部隊長からの命令聞いてない?」
「いや、聞いた。すぐに行く」
そう言ってアキラはギンガの方に振り向く。
「あ、お昼ご飯は?」
ギンガに言われ、アキラは自分の空腹感を思い出す。
「そういや……まだだったな」
「じゃあ、中庭のベンチにいて?お弁当持っていくから」
「ああ…」
ー中庭ー
アキラが中庭で待っているとギンガが五段重ねのお弁当を持って現れた。
「はい、お弁当」
「前回に増してデカイなオイ」
「あはは……つい張り切っちゃって。ま、まぁ食べて!?」
ギンガに言われた通りアキラは箸を取り、お弁当を食べ始める。時間もないので少し急ぎ足でアキラはギンガの手作り弁当を完食した。
「ふぅ。ごちそうさま」
「お粗末さまでした。行こうか」
ギンガは思い切ってアキラの手を掴み、手を引いて部隊長室に向かった。アキラは少し照れながらも、ギンガに手を引かれていった。
◆◆◆◆◆◆◆
ー事件現場ー
ゲンヤから仕事を受け取った二人は事件現場に来ている。事件の内容は、なんでも物資を輸送していた輸送機が襲われたとのこと。事件か事故かの判断が難しいため、ギンガ達が応援に呼ばれたのだ。
「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹です」
「同じく、橘アキラだ。手伝いに来た」
まずは現場の確認から始まった。ヒントは、運転手によるとトラックの下が爆発したという証言があると言うことだけだ。
「運んでいたのは缶詰めやペットボトル…爆発しそうな物はありませんが…」
アキラは荷物を少し漁る。ちょっと前は現場維持などお構いなしに荷物を蹴り飛ばしたアキラだったが、少しは仕事のやり方を覚えたようだ。
「無理矢理爆発を起こさせたわけでもなさそうだ…第一荷物の大半は無事だしな。」
「それから変な物も見つかったんですよ」
調査員が指差す先には…ガジェットのⅠ型の残骸。それとへんな形のポッド。アキラは残骸に近寄り色んな角度からみる。
「ガジェットだな、間違いない。それにこれは……残留魔力?」
アキラが一人で確信していると、ギンガに呼ばれた。
「アキラ君、ちょっと来て」
ギンガが見ているのはへんな形のポッド。アキラにはこれに見覚えがあった。幼い頃、何度も見て、何度も入れられた…生体ポッド。アキラにとってはあまり見たくない代物だった。しかし、今の自分はただの生体兵器ではない。市民の平和を守る管理局員だ、と自分に言い聞かせるが、やはり少し引っかかる部分がある。
そんな事を考えていると、ギンガに腕を引っ張られる。
「なにボーッとしてるの?呼んだらすぐに来て!アキラ君に勝てることは多分ほとんどないけど、現場じゃ一応私が先輩なんだからね?」
「あ、ああ。すまねぇ」
アキラはギンガを見てさっきまでの余計な考えをすべて振り切った。
(昔の事にいちいち囚われるな!今の俺は…今を生きればいいんだ!)
「これ…何だか分かる?」
ギンガはアキラを連れて来ると、生体ポッドを見せて質問してくる。アキラは正直見るのも嫌だったが、しょうがなく答えた。
「生体ポッドだ。それと…ギンガさん。これ…何か引きずった跡じゃないか?」
生体ポッドから出ている一本の何かを引きずった跡。ため息をついているアキラをよそにギンガは引きずった後を調べてる。
「この跡に添って先に行ってみよう。この先に何があるか知らないと手のうち用がないし」
「………………そうだな」
◆◆◆◆◆◆◆
「結構歩いたが…」
謎の跡を追ってかれこれ一時間は歩いたが、アキラ達は未だにその正体を掴めていない。さらに奥へ進もうとした時、ギンガが先日機動六課から渡された「ブリッツギャリバー」に通信が入った。
「あ、ゴメンアキラ君。通信が入ったから……一回外に出るね。アキラ君は引き続きここの調査お願い」
「分かった」
ギンガは表に向かった。
「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹です。…はい…今こちらで追ってる事件と関係あるかも知れません。ご同行してよろしいでしょうか?あ、アキラ陸曹も一緒です」
ギンガは一度外にでて機動六課のはやてと通信をとる。そして、機動六課との合同調査を依頼した。その申し出をはやては快く受け入れた。
[分かった。じゃあギンガは地下でスバル達と合流。あとでそっちの案件も教えてな]
「はい」
通信を切り、ギンガはアキラのもとに戻る。
「アキラ君お待たせ。あの跡の正体と思われる物が見つかったって。正体は恐らくあのポッドに入っていた少女、それからその子が引きずっていた……レリックの入った箱」
「レリック?」
「私も詳しく知ってる訳じゃないんだけど、これは機動六課が追ってるロストロギア。これを今から探すから機動六課と合同任務になったの。大丈夫?」
「了解した。ギンガさん、気をつけろよ」
「ありがとう」
そしてギンガとアキラはFW部隊に合流するために地下水路を走った。その間、ギンガがティアナと通信をとる。
「あなたが現場指揮官よね?指示をお願い」
[はい、じゃあまず南西のF94区画に向かって下さい。そこで合流しましょう]
「南西F94…はい!」
ギンガはアキラに今の通信を聞いていたかアイコンタクトを取ると、アキラは頷く。
[ギンガさん、デバイスの装着で全体位置把握と独立通信ができます。準備いいですか?]
「うん、ブリッツギャリバー、お願いね」
『Yes、Sir』
ブリッツギャリバーは威勢良く返事をしたが、次の瞬間にアキラはブリッツギャリバーに思いっきり顔を近づけ、睨んだ。
「てめぇにギンガの命預けるんだからな?ギンガに傷一つつけんじゃねぇぞ」
『O、OK』
ブリッツギャリバーは心なしか怯えているようだ。相変わらずのアキラの態度に、ギンガは軽くため息をついたがギンガ自身そろそろ慣れてきたらしい。ギンガとアキラは一回通信を切ると、BJを装備する。BJを着けるとまたはやてと通信をとった。
そして、今回の108で発見した事件の説明を始める。六課の方で発見したものと擦り合わせると、確かに二つの事件は重なっているようだ。
◆◆◆◆◆◆◆
「こっちであってんのか?」
「うん!その筈…」
「!!」
合流地点に向かって走っていると突然、魔力弾がギンガに向かって飛んできた。それをアキラの刀が防ぐ。アキラが魔力弾が飛んできた方を睨むと、そこにはガジェットドローンの部隊。それも30体はいるであろう数。
「くっ……こんな時に…大丈夫かな…」
「安心しろ…俺が守り抜いてやる」
「そうだったね」
そう言ってギンガはクスリと笑う
「さぁ…いくぞ!」
二人はガジェット部隊に突っ込んでいく。ガジェットの数が多いせいで戦場は少し混乱状態であるが二人は立ち止まらずに進んでいく。実態攻撃がメインの二人にはAMFは無力。ギンガに飛んで来る魔力弾をアキラが弾き、撃った機体をギンガが潰すという戦法で突き進んだ。
それを繰り返していると、いつのまにか残るは二機だけになる。
「あいつらで最後だ」
「このまま突っきる!アキラ君、行こう!」
「おお!!」
ギンガは左手に、アキラは刀に魔力を込め、ガジェットに向かう。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
二人の一撃でガジェットは先の通路の壁に叩きつけられる。二人の勢いは止まらず、すでに動かなくなったガジェットをさらに叩き潰し、壁を貫いた。
「よし…この先はいなさそうだな。」
「ギン姉!!」
「ギンガさん!」
壁を抜けた瞬間、いきなり聞こえる聞いた覚えのある声。その声の主は…
「スバル!」
スバルと言うか、無事にFW部隊と合流できたようだった。ギンガは妹と妹の親友との再開に喜ぶ。そんなギンガの笑顔を眺めていたアキラにも、誰かが声をかけた。
「アキラさん!」
エリオとキャロだ。アキラは一瞬誰だこいつと思ったが、少しすると思い出す。
「よう。元気か?」
「はい!」
エリオは前より自信を持った顔をし、キャロは前のような不安な表情は消えている。あれから訓練も重ね、少し大人になったようだ。そして、一通り挨拶が終わると、皆冷静な顔になる。
「いい感じに集まったし…いくか…」
気がつくとアキラ達はガジェット部隊に囲まれていた。
「俺が先陣を切る。着いてこい」
「はいっ!」
アキラはガジェット部隊を駆逐するため、刀を振り上げ立ち向かっていった。
ー地下水路 奥部ー
FW部隊と合流し、ガジェットを殲滅したアキラ達はレリックの捜索を開始した。そのなかでキャロとギンガがレリックを発見し、拾った時だった。
「ありましたー!」
キャロとギンガが見つけると同時に変な音がする。まるで壁を鉄で叩いているような。
「何の音?」
アキラとエリオはいち早く察して、キャロとギンガの元へいく。二人でキャロとギンガに迫る刃を止めたが無傷とはいかないようだった。
「ぐっ…」
エリオは肩から出血。目の前に現れたのは召喚獣らしき戦士。アキラは三人を庇うようにして数歩下がった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
スバルが蹴りを入れるが交わされる。しかしギンガの追い打ちで召喚獣は軽く押された。召喚獣の反撃がくる前にアキラはギンガの前に出て召喚獣を威嚇する。
全員が召喚獣に気を取られてると、エリオ達と同い年くらいの子がレリックを拾い、去って行こうとした。
「ね、ねぇ君…」
キャロが去っていく少女を止めようとしたが
「邪魔」
少女は突然何の躊躇もなしに、キャロに攻撃を仕掛ける。
「きゃあ!」
エリオとキャロは少女の出した攻撃を防ぐものの、耐えきれず吹っ飛ばされた。アキラは召喚獣に攻撃をする。
「くそっ…邪魔だぁぁ!!」
アキラが出す剣撃をすべて防ぐ…と言うよりいなしている。刀だけでは無理だと悟ったアキラは一瞬ECディバイダーを構えかける。
(駄目だ…)
「ゴメンね乱暴で。でもね、それほんっとうに危険なんだ。」
その頃、ティアナは少女を止めていた。ティアナはあえて戦闘に参加せず、確実にレリックを確保しようと動いていたのだ。だが少女が目をつぶった瞬間に、突如、目眩ましと思われる火炎弾が飛んできた。目眩ましで隙ができたところを狙われ、アキラはティアナのほうに飛ばされる。
「がっ!」
「うわ」
ティアナを巻き添えにして奥まで飛ばされた。
「大丈夫か!?」
「大丈夫です…それより…!」
ティアナはデバイスを構え、少女を狙い撃つ。しかしそれすらも召喚獣に防がれた。相当優秀な召喚獣のようだ。
「くぅ…」
するとそこに少女達の元に小さな小悪魔のような者が飛んでくる。なにか話している様子だった。その小さい奴が花火を数回ちらした後、こちらをむいて手を出す。アキラも刀を構えた。
「ルールーの邪魔はさせないよ!あたしが相手になってやる…………さぁ!かかってきな!!」
「ふんっ……上等だぁぁぁぁ!」
続く