とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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遅くなりました。コミケに行ってきました。楽しかったです。自分の小説もいつかコミケに並ぶ時がくるかもしれません。次回は今月中にまた上げます。今回はタイトルに悩むほど進展がありません。
もう少しかきたいのですが疲れたので次回のお楽しみということで


第五話 安否

かつて管理局において危惧された闇の書と言われるロストギア。現在はプログラム内容が変更され、夜天の書と名を変えて八神はやてが主となっているロストギアの一つ。

しかし、その闇の書と呼ばれたロストギア以上のロストギア、『黙示録の書』。その史上最悪のロストギアの封印が破られ、クラウドと名乗る人物の手に渡ってしまった。不安と暗雲が渦巻くミッドの中でアキラは家族を守る為に今回の事件に関しては消極的な姿勢を取る事にし、事件解決まで極力外出を控えることにした。そして、その期間中の必要最低限な生活物資の買い出しをナカジマ家に養子入りをし、アキラの義妹となったノーヴェに頼んだ。ノーヴェは渋々アキラの頼みを聞き、新たな姉となったスバルと共にアキラから頼まれた買い出しへと出かけた。その最中、ノーヴェとスバルはゼロ・サードと名乗る人物に襲われる。サードの目的は自分とスバルの二人‥戦闘機人だった。スバルは果敢にサードへ挑むが敗北し、ノーヴェ自身も重傷を負ってしまう。ノーヴェとスバルの襲撃の報告を受けて108部隊は現場に急行し、その報告を受けたアキラも現場へと向かう。

そして現場にアキラ達108部隊の局員らが来てサードの確保を試みるも失敗。更にサードの仲間と思しきゼロ・シックス、自称ロクと名乗る人物も参戦し、事態はアキラ達にとって不利な状況となった。やがて、サードとロクの二人はスバルを攫いその場から去って行った。

そしてその戦闘が行われた現場にてアキラが保護した昔のギンガそっくりの謎の少女‥‥。サードにシックス(自称:ロク)と名乗るスカリエッティが生み出した戦闘機人とは別の戦闘機人達‥‥。今回の市街地での戦闘とスバルの誘拐は黙示碌の書を巡る事件の序章にしか過ぎなかった。

 

 

「いったい!!!‥‥もっと優しくやってよ!!」

 

シックスとの戦闘で負傷したメグも無事に救助されて現在手当てを受けている。しかし、あれだけ大きな声を出せるのであれば大丈夫だろう。

そしてサードとの戦いで負傷したノーヴェも今は救護車の中で応急手当てを受けている。

 

そしてアキラは、自身が守ったギンガによく似た少女に質問をしに行っていた。アキラは子供が生まれ、幸せな生活を送ってきたおかげか、とても柔らかい笑顔を浮かべる事ができるようになっていた。少女に、怪しさを感じさせないとても親切な笑顔を浮かべ、少女に話を聞く。アキラはそっとしゃがみ、少女と目線を合わせた。

 

「こんにちは、素敵なお嬢さん。怪我はないかい?」

 

「………………」

 

少女は小さく頷いた。それにしてもギンガによく似ている。正確には、小さいころのギンガだが。

 

「お母さんとお父さんは?」

 

「わかんない………」

 

(わからない?…………どこにいるかわからないってことか?)

 

少女の返答に少しおかしいと思ったがアキラは深くは追求しなかった。

 

「お家の場所、わかるかい?」

 

「わかんない……」

 

「そうか…………じゃあお母さんとお父さんが見つかるまでお兄さんたちと一緒にいような。お名前は?」

 

「フランシス………………」

 

「フランシス………苗字は?」

 

「苗字………?」

 

まだまだ幼い子供だ。苗字というものを知らないのかもしれないと考え、また、上手い聞き方も思いつかなかったのでとりあえずそれで良しとした。フランシスということだけわかれば、親を探すには十分だろう。それに親だって探していると考えそれ以上は必要ないと思ったのだ。

 

「オッケー。ありがとな」

 

(しっかし、ギンガにこんなに似てるっていうのは、何なのかね)

 

「うわっと!」

 

アキラが疑問を抱きつつも立ち上がると、フランシスとの会話が終わるまで待っていたノーヴェとぶつかった。ノーヴェはアキラにぶつかっただけです尻餅をつく。

 

「おっと………ノーヴェ、大丈夫か?動き回るのはちゃんと病院で検査してから…」

 

「それどころじゃないんだ…アキラ、さっき言い忘れたんだが、あたしたちを襲った奴らの姉妹が、お前の家にもいってるかもしれないんだ!あいつがそう言ってた!」

 

「なに!?」

 

予想外の緊急事態にさすがのアキラも焦る。フランシスのことを書いた端末を近くにいた管理局員に押し付け、バイクに飛び乗った。

 

「あとのことは頼んだぞ!隊長代理!」

 

「アラホラサッサー」

 

メグはめんどくさそうに答えた。

 

だいぶ周りの人間に事後処理などを無理やり押し付けたが家族の危機が迫っていると言うのだからアキラの行動は当然と言えば当然なのだろう。というかそもそも休暇中の身であるから本来アキラのやるべき子でないのだが。

 

アキラは物凄いスピードで家に戻って行った。その様子を、フランシスはじっと見つめていた。

 

 

 

 

ーナカジマ宅(ゲンヤ宅)ー

 

ウーノは一人ぼっちで留守番をしていた。彼女は悩む。これからの人生を。自分のすべてはスカリエッティにあった。あった筈だった。アキラに言われた一言で、それがすこし変わり、最終的に平和な日常で過ごす道を選んだ。

 

チンク達もそうだったらしい。アキラと死闘を演じた末、彼の説得に応じた。チンクはもともと温厚な性格だったからそうでも不思議はなかった。だがしかし、その説得の現場にノーヴェもいたからこそ驚いている。

 

「結局私は何を求めてここにいるのでしょう」

 

そして、今何よりも悩んでいるのがスバルのおいて行ったクッキーの処分についてである。

 

スバル自身は大食いで、ノーヴェの分、ウーノの分とあったのだが二人は出かけてしまった。しかも全然戻ってこない。そろそろ戻ってきてもいい時間なのだが…。だがこれ以上待つのは問題がいろいろある。まずクッキーが湿気てしまう。そして量が量なのでウーノ的に夕食に影響が出てくる。

 

「………………さっき連絡がありましたし、ギンガのところに差し入れに行きますか」

 

(それにしても、さっきの連絡………二人に何かあったのでしょうか?)

 

 

 

ーナカジマ宅(アキラ宅)ー

 

 

 

ギンガがアキラの安否を気にしながらアリスと共に帰りを待っているとインターフォンが鳴る。

 

「?。誰だろう」

 

インターフォン前のカメラが移したのはウーノだ。

 

「あら、ウーノ」

 

「こんにちは。スバルが焼いたクッキー、おすそ分けに持ってきたのだけれどいかがかしら?」

 

ウーノはなれない笑顔を浮かべながら。持ってきたクッキーを見せる。ウーノは実はギンガに会うのは少し後ろめたさがあった。彼女は心が広く、優しいのはわかっている。だが、影でどう思われているか、少し怖かったのだ。

 

「ちょっとまってて今行くわ」

 

ギンガは訪ねてきたウーノに対し、笑顔で受け入れた。彼女の何者も否定しないような明るいその声を聞けただけでもウーノの肩の荷は少し軽くなった。

 

少しするとギンガが玄関から出て来る。

 

「わざわざありがとう。ウーノ。良かったらお茶でも飲んで行く?」

 

「…………いいの?」

 

普通に受け入れられ、今まで誘われたことのないようなことを言われ、ウーノは少し戸惑う。

 

「……………ウーノ」

 

少しウーノがどうしようかと迷っていた時に、ギンガが何かを尋ねるトーンでウーノの名前を呼んだ。

 

「?」

 

「そっちにいるのは知り合い?」

 

「え?」

 

ウーノはギンガの視線の先を見る。そこにはウーノの持っているクッキーの入った箱をもの珍しげな目で見ている銀髪ロングの少女が一人。

 

「……………」

 

「あの……」

 

困った顔でウーノはやっと声を出した。するとそれに反応して少女も声を出す。

 

「ねぇ、これなに!?」

 

「えっと…………クッキー………ですが」

 

ウーノもわからない状況にギンガは見守ることしかできない。ウーノは少し笑顔を作り、箱から小分けにしてあったクッキーを一袋取り出した。

 

「差し上げましょうか?」

 

「くれるの!?本当!?」

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとー!!!」

 

少女はクッキーをもらうと嬉々として何処かへ走って行った。

 

「何だったんだろう、今の子」

 

「さぁ……」

 

 

 

ーアキラ宅付近ー

 

 

アキラは家に向けてバイクを飛ばしていた。途中、マイティギャリバーでギンガに連絡を取ろうとするが、返事はない。

 

「くそっ!もう襲撃されてるのか!?」

 

アキラはバイクをフルスロットルにして自宅に向かった。ちなみにこの時、ギンガはウーノを玄関まで迎えに行っていてブリッツギャリバーを置いてきてしまったのだ。

 

「ギンガっ!……」

 

もうすぐ自宅に着こうというところで、アキラのバイクは、一人の少女とすれ違った。ほんの一瞬、一秒にも満たないすれ違いにアキラはなにか嫌な予感を感じる。一瞬振り返り、少女を見た。銀髪の少女は嬉しそうに何かの小包を持って走って行く。

 

「…………?」

 

しかし、この時はなにも気にしなかった。それよりもギンガが大事だったからだ。

 

 

ーナカジマ宅(アキラ宅)ー

 

 

 

 

家についたアキラは急いで家に飛び込み、居間に突っ込んだ。

 

「ギンガ!アリス!!!!」

 

「アキラ君!?」

 

居間にはギンガ、ウーノ、アリスがいた。全員飛び込んできたアキラに驚いている。ウーノに抱きかかえられていたアリスはアキラの声に驚き、泣き出してしまった。

 

「ああ、アリスさん、泣かないで…」

 

「良かった…………無事か…。ギンガ、大丈夫か?変なやつがきてないか?何かおかしなことは起きてないか?」

 

アキラはギンガの全身を触り、質問をしまくる。全然状況が読み込めないギンガは戸惑いながらもアキラの質問に答えるしかない。一通り調べ尽くすと、アキラは大きなため息をついてギンガの胸に顔を埋めた。

 

「……………良かった。ギンガだけでも無事で」

 

「私だけでもって………いったいなにがあったの?」

 

ギンガは疲れた顔をしているアキラを抱きしめ、頭を撫でてやる。

 

「あの、なにが起きているかわかりませんが、とりあえずアリスさんをなだめていただけません?」

 

ウーノのあやし方で悪いのか、人見知りなのかアリスは全然泣き止んでいなかった。ギンガとアキラは二人でアリスを受け取り、あやし始める。

 

「あぁ………アリスも無事で良かった。ほら、お父さん帰ってきたぞ。だからもう泣くな」

 

「ごめんね〜。よしよし、泣かないで」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

アリスはしばらくしてようやく泣き止み、ベビーベッドの上で寝ていた。アリスをなだめた後、アキラは現場でなにが起きたのかを二人に説明した。スバルが拐われたという事実に、ギンガは驚きを隠せなかった。

 

「そんな………スバルが……」

 

「やつがなんなのか…なぜスバルを狙ったのかはわからない。スバルとノーヴェそのものに用事があったのか、はたまた戦闘機人に用事があったのか………わからんがとにかくスバルは取り返すさ」

 

ギンガはアキラの顔をみる。また、思いつめている顔だ。

 

「…………ありがとう、アキラ君」

 

「え?」

 

「それでもちゃんと小さな命は守ったんでしょ?スバルだって、自分よりもその子を守ったことを褒めてくれると思うわ」

 

「…………ああ」

 

アキラの内心はまた気を使わせてしまってすまないと思ったが、口には出さない。そんなことは表情で既に伝わるからだ。以心伝心、というやつだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

ー陸士108部隊ー

 

 

 

一方、こちらでは今回の戦闘の最中で保護された少女、フランシスについて騒ぎになっていた。ギンガと似ている点、指紋照合やDNA検査においてギンガと9割方一致した点、最初は子どもなので親や家がわからないと言っていたと思われたが実際は記憶を失い、本当に何もわかってなかった点。

 

「どうですか?アテンザ技士」

 

「うん、身体の方もこっちの想像通り。筋肉は強化筋肉で、骨格には機械が使われてる。……………戦闘機人だね」

 

「もしかして、スバルやギンガと同じ?」

 

「そうね。きっと…ギンガちゃんたちがいた施設の………」

 

 

 

ー時空管理局本局ー

 

 

本局では緊急会議が執り行われていた。スバルが誘拐された日と同時に、起きた事件についての会議だ。招集されたのは、なのは、フェイト、はやて、ティアナの四人。全員が集まったのを確認すると小此木が口を開いた。

 

「今回は、黙示録が盗まれたことよりも重大な事件が起きたこと、そして君たちに黙示録をちゃんと知ってもらうために来てもらった。正直のところ、今事態は最悪の方向に向かっている」

 

「…………なにがあったんですか」

 

「まず今日事件が起きて、まだほぼどこの部署にも行ってない情報だ。ジェイル・スカリエッティが脱獄した」

 

部屋の中が一瞬ざわつく。黙示録事件担当本部の人間合わせても全員で8人だが、それでもそんな風な雰囲気に包まれた。

 

「どうやって、いつ、脱獄したのかは不明だ。囚われていたナンバーズ二人も共に姿を消している」

 

「…………」

 

「今のところ言えるのはそれだけだ。まぁとりあえず黙示録について知って置いてくれ。今回の黙示録とスカリエッティの脱獄が関係あるかどうかは不明だ。それから、スバル防災士長が誘拐されたこと。これらがすべて無関係なのかどうなのか。とにかく面倒なことになりそうだ」

 

 

 

 

続く

 


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