とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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一昨日あたりからスラスラと進む。しかし次回は恐らく再来週です。お楽しみに。

来年当たりから同人誌活動始めようかなと考えていたり


第九話 意地

ーショッピングモール付近ー

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!!!」

 

フェイトは次々出現する鎧騎士を蹴散らしていた。鎧騎士は一体一体は特に強いわけでもなく、ただ数が多いだけだ。ザンバーの一振りで数体は片付けられる。

 

「ほら、まだまだいるよ」

 

ナインスが指を揺らすと新たに魔法陣からさらに鎧騎士が出現する。それをフェイトは再びなぎ倒す。

 

「くっ!やはり…………根元を絶つ!!!」

 

フェイトは鎧騎士の頭を踏みつけ、ナインスに向かって跳ね上がった。しかし、フェイトを狙ってビルの屋上に構えていた弓を持った鎧騎士が矢を射った。フェイトはそれを得意の高速移動で躱し、ナインスの後ろに一気に回り込んだ。

 

「あら」

 

「はぁ!」

 

「セカンド」

 

ナインスの身体に刃が触れる直前、フェイトの頭上に魔法陣が展開され、フェイトがさっきまで相手をしていた鎧騎士とは少し違った鎧をまとった騎士が出現してザンバーからナインスを守った。

 

「!!」

 

「どーも、おつかれ」

 

「…………」

 

騎士はフェイトの一撃をいなすと、ナインスを抱えてジークから飛び降り、ビルの屋上に着地した。

 

「そろそろ頃合いかなーっと」

 

「でぇぇぇぇい!」

 

「………」

 

フェイトが追い打ちをかけに行くが、それを今現れた鎧騎士に妨げられる。薙ぎ倒して進もうとしたが、フェイトの太刀筋は完全に見切られ、仕掛けた攻撃は簡単にいなされる。

 

再び切りつけたが、鎧騎士が腰に携えてた剣でそれを防いだ。すぐに切り返し、ザンバーを振るがそれは躱される。それなりに距離をとった鎧騎士はビルの屋上の床が崩れるくらいの踏ん張りで地面を蹴り、飛び上がった勢いで剣を振り下ろす。フェイトはシールドを張ったが、剣をが少しずつシールドの中に入り込んで来るのを視認するとすぐに後ろに跳ねて避けた。

 

シールドはフェイトが離れると消滅し剣は地面に突き刺さる。

 

(この騎士………明らかに他とは違う……………胸があるところを見ると…女性?)

 

「……………その騎士は…何者ですか?」

 

「さぁ?まぁこいつらのボス?」

 

惚ける姿に隙を見たフェイトは一気に勝負をつけに行く。一瞬でソニックフォームに姿を変え、鎧騎士も反応できない速度で間合いを詰める。

 

(この一撃で………っ!)

 

フェイトが完全に死角を獲ったと思ったその刹那、ナインスはフェイトの方にぐるりと首を回した。そして手に持っていた黒い球をフェイトに向けた。

 

「もーらい」

 

「!?」

 

すぐに避けようと思ったが、その背後に新たに召喚された鎧騎士が現れ、フェイトを拘束する。先ほどの騎士ような戦闘力は持たないが、一瞬だけフェイトを抑えるのには十分だ。

 

鎧騎士に邪魔され、高速で移動出来なかったフェイトの胸に球が押し付けられる。それと同時にフェイトの全身に電流が走った。

 

「っ……………!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

結界の中にフェイトの悲鳴が響き渡った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー別地点ー

 

「…………はぁ、はぁ…………」

 

寒さと身体の痛みに耐えながら、メグは立っていた。善戦はしているものの、やはり少し押され気味だ。街はメグから見える範囲全てが凍っており、連れてきた仲間は不意打ちによって倒されていた。

 

フォースは吹雪の中に身を隠し、メグを混乱させながら攻撃をしてくる。厄介な相手だった。フォースの攻撃はギリギリ幻影回避で避けられるが、もう結構な回数を使っている。

 

(攻撃に対して反射的に反撃はできるものの、やっぱりそれじゃあ威力が低い…幻影回避もあと使えて2、3回………思いっきりの一発で、決める!)

 

そう思った瞬間、メグの背後からフォースが仕掛けてくる。メグはフォースの蹴りを無理に受けた。

 

「うっ!!!」

 

「あれ、流石に限界的な?」

 

もろに攻撃を受けたメグを見て、フォースは一瞬の油断を見せた。メグはそのままフォースの足を掴み、勝負にでた。暁をガンモードにして銃口をフォースに当てた。

 

「!」

 

「カートリッジロード…………爆裂(エクスプロージョン)!」

 

「なっ!」

 

フォースはゼロ距離で爆裂弾を撃ち込まれ、メグ諸共爆発の中に呑み込まれた。強烈な爆裂で辺りの氷は少し溶ける。爆煙の中からフォースはバックステップで飛び出した。先程までは余裕の表情だったが、流石にこの戦法には驚いたのか、困惑を隠せないでいる。

 

「なに!?いまの意味不明な行動!」

 

「意味不明で悪かったわね!」

 

フォースが出てすぐにメグも爆煙の中から飛び出してきた。暁はトンファーモードになっており、それでフォースに殴り掛かる。フォースは自身の武器の杖を出現させ、暁よりもリーチが長い杖で攻撃する。

 

「幻影回避!」

 

メグは幻影回避で一気にフォースの背後に回り込む。

 

「くっ!」

 

「幻影連撃(ファントム・マシンガンブロー)!!!!」

 

メグの得意な幻影回避(ファントムステップ)はその場に質量をもった幻影を残し、回避する技だ。質量を持つ意味は、相手のデバイスが狙いを付けた時は一つだった対象が一気に二つになることで、命中精度を鈍らせることにある。メグの全身分の幻影を作るとその分質量は薄くなる。

 

しかし、メグは幻影回避の域を広げることも狭めることも可能だ。域を狭めれば狭める程に幻影の質量は高くなる。そこに目を付けたメグは幻影回避の発展技、幻影連撃を編み出した。攻撃の際に自身の武器の命中場所に幻影回避一回分の魔力を送り、瞬間的に武器の分身を作る。命中面積が狭いほど作れる分身は増え、増えた分だけ一回の命中で与えるダメージは増える。

 

今回作れた分身は五個。フォースは背中にメグのトンファーの本体と分身を合わせた六回分の打撃を食らった。

 

「かはっ!」

 

フォースがは吹っ飛んだが、メグはさらに追い打ちをかける。ガンモードに変えた暁から先程放った爆裂弾を撃った。その玉にも幻影連撃の能力を付与させる。放たれた弾丸は一気に十三個くらいに分身した。

 

「幻影爆裂連撃弾(ファントムマシンガンエクスプロージョン)」

 

弾丸はフォースに命中すると爆裂し、幻影の弾に誘爆し、それが重なり大爆発を起こした。爆裂を確認すると、メグは片膝をついた。

 

「はぁ!………はぁ!……はぁ……もう、魔力がきついわね……カートリッジもほとんど使い切ったし………これ以上は…」

 

「………」

 

爆炎の中から、フォースは歩いてきた。身体の所々から血を流しているが、致命傷にはいってない。

 

「これで本気?」

 

「あらら、こりゃちょっと頑張らなきゃかしら…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「…………」

 

「他愛のない……」

 

シノブの率いる部隊はシノブを残して全滅していた。シノブの周りには首と胴が離れた遺体が転がっている。迫り来る恐怖心を押し殺し、シノブは長刀を構えてロクに相対していた。

 

「…………お主ももう楽になれ。死んだことにすら気づかない程に綺麗に、そして素早くその首を狩ってやる」

 

「………今、あなたを自由にさせる訳にはいきません!…………私が下がる訳にはいかないんです!」

 

シノブは勇気を振り絞り前に出た。恐怖で体が震えていることを誤魔化す為に、叫びながら。

 

「……………脱力…………」

 

ロクはその場で目を瞑り、脱力の姿勢を取った。そしてゆっくりと、横においてある盾の内側に納刀されている剣に手を置く。向かってくる少女の首を狙い、剣を握り、足に力を込める。

 

「ラケーテン」

 

ロクは静かに呟くと、目を見開き、右足を前に出して左足に力を込める。そして足の動作がはじまるとほぼ同時に剣を引き抜いた。

 

「!!!!!!」

 

ロクの右足が地面に着いたと同時に剣を振り切っていたが、シノブは健在だ。

 

「はぁ………はぁ…………」

 

「抜刀の速度と……タイミング。完全ではないとはいえ、見切ったか」

 

「痛………」

 

シノブはギリギリのタイミングで後ろに跳ねた。それが功をなし、首ではなく腹部が横一直線に浅く切られた程度で済んだ。シノブは腹部を押さえながら、刀を構え直す。

 

(バリアジャケットをこうも軽々と切り裂くって………一体どれだけの切れ味を持っているのか………」

 

「この剣はな、切ることに特化した剣だ。細胞が、切られたことに気づかないくらいの切れ味だ。魔力で織り成した防具など、力を入れずとも切れる」

 

ロクは近くに倒れていた武装隊員のバリアジャケットを剥ぐとそれを空中に投げた。落下してくる位置に剣を向けるとバリアジャケットはただ落ちてきて剣の上に乗っただけなのに関わらず、真っ二つに切れる。

 

「…………」

 

「………今ならまだ、見逃してやっても」

 

「…………う……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

シノブのヤケの特攻。ロクは「そうか」と呟くと剣でシノブが刀を持っている右手の手首から肘までを切り裂く。

 

痛みで手から刀を離してしまったが、すぐに左手でキャッチしてロクを斬ろうとした。だが、ロクはすぐさま盾を持ち上げ、シノブの剣撃をいなした。

 

そして、盾の内側に仕込まれてるパイルバンカーをシノブの左肩に撃ち込んだ。金属製の杭がシノブの肩を貫通し、幹部から血が溢れ出す。それでも諦めようとしないシノブは前に出ようとする。ロクは剣をシノブの右足に突き刺し、横に切り裂いた。そして同じことを左足にもした。

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

今すぐにでも叫びそうになった悲鳴をシノブは必死に堪え、そこに跪いた。

 

「…………そこまでされれば、自然と首も垂れるだろう?」

 

「………諦めない……」

 

シノブは無理やり顔をあげる。

 

「……」

 

「隊長に………任されたんだ…………だから…負けない……………諦めない…」

 

「そうか、では最期まで任務を全うし散るがいい!!」

 

ロクが剣を振り上げ、シノブの首を目掛けて剣を振り下ろした。

 

 

 

ーショッピングモール付近ー

 

 

「さ、これであなたは用済み。後は騎士に任せて帰るとしますか」

 

「待ちなさい………」

 

フェイトは黒い何かを胸に押し当てられ、軽い走馬灯を見ながら倒れた。身体が思うように動かせず、地面に伏せながらもナインスを止めようとする。

 

「待たない。さ、鎧騎士。片付けちゃって」

 

「くっ!」

 

再び大量に召喚された鎧騎士はフェイトに一斉に襲いかかった。フェイトは自らの体に電流を流し、その場から飛び出した。

 

「だぁぁぁ!」

 

「おお、無理やり動いたか………まぁ、長くは保たないでしょう。あ、言い忘れたけどさっきよりも鎧騎士のレベルはあげといたから、そう簡単にはいかないよ。ジーク!」

 

ナインスは機械龍を呼び、目の前に降り立ったジークの背中に乗った。

 

「………」

 

「ランサー!はぁ!」

 

フェイトは迫ってくる鎧騎士を相手になんとか撃退はしているものの、倒すまでには至っていない。そんな姿を先程召喚された戦闘能力の高い女鎧騎士が見つめていた。

 

「…………」

 

「くぅ!」

 

フェイトはとうとう保たなくなり、鎧騎士に押し倒された。

 

「もうおしまいね…いくわよ!」

 

ナインスは女鎧騎士を呼んだ。その声に従い、女鎧騎士がジークの方に歩み寄ろうとした瞬間、何者かの気配を察知し、足を止める。

 

 

「…………」

 

「?」

 

 

ーメグ部隊ー

 

 

「はぁ………はぁ………」

 

メグは吹雪を凌ぐために建物の中に入って廊下を駆けていた。今も外からフォースが狙ってきていている。壁を貫通させてメグに命中させようとしてきている。

 

「危なっ!」

 

メグは壁を貫通させて飛んできた氷属性の魔法弾を回避する。

 

「舐めんじゃないわよ…………」

 

(…………とは言え、魔力はほとんど使い果たしてるし、カードリッジは左右合わせて一本ずつ…捨て身の一発………お見舞いすることしかできないわね)

 

例え、それで相手が倒れなくとも、今のメグにはやるしかないことはわかっている。ここで自分が倒れても、時間稼ぎにしかならなくても、準備を整えた管理局がなんとかしてくれるだろうと信じて。

 

「…………結婚くらいはしたかったわね」

 

メグは立て籠もっていたビルの窓が多いオフィスに入った。メグが窓の近くに立つと外からフォースがこちらを見た。

 

「鬼ごっこはおしまいかしら?」

 

「ええ………この戦いも、私の勝利という美しいエンドで終わらせてあげるわ」

 

「へぇ、面白いじゃん!」

 

氷の弾丸を多量に精製し、フォースはオフィス全体に行き届くように撃ち込んだ。

 

「はぁ!」

 

メグは前に進みながらトンファーで氷の弾丸を打ち砕くも、対応が追いつかない弾を何発か身体に食らった。しかし、立ち止まらずに進み、窓から飛び出す。そしてフォースの目の前まで飛んだ。

 

「!」

 

「カードリッジ、オーバーロード!全制御システム解除!バースト!」

 

メグが両手に持っているトンファーがカードリッジを使用し、魔力を貯めるとトンファーから大量の魔力が溢れ出しそれが炎となり、メグの腕まで包む。

 

「ブレイク!」

 

「くっ!」

 

メグはトンファーをフォースの鳩尾に当て、腕とトンファーを包む炎を殴った衝撃ごとぶつけた。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!!」

 

フォースは吹っ飛び、ビルに激突した。メグは完全な魔力切れとなり、バリアジャケットも維持できなくなり管理局制服姿に戻って地面に向かって落ちた。

 

「……あぁ……………もう無理かぁ…」

 

地面までの距離は10m近くある。頭から真っ逆さまに落ちたとなると死ぬ確立は高い。メグは生きることはほとんどあきらめていた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ーショッピングモール付近ー

 

 

金属と金属が擦れ合う音と共に、フェイトの目の前にいた鎧騎士数体が切り裂かれた。

 

「え……………」

 

「無事ですかい?執務官殿」

 

フェイトの目の前に、白髪の男性が降り立った。パーカーにジーンズというラフな格好だが、刀を持っている。

 

「あなたは?」

 

「通りすがりの…………」

 

そこまで言うと、鎧騎士が襲いかかってきた。男は鎧騎士の剣をほぼ見ずに回避し、カウンターで一気に5体の鎧騎士を切り伏せた。

 

「正義の味方だ」

 

偶然にもフェイトを助けにきたのは、アキラの義兄であるレイだった。

 

 

ーメグ部隊ー

 

 

「ご苦労だったな。ヴァルチ陸曹長」

 

メグを誰かが空中で受け止めた。メグが少し目を開けると、そこにはピンクの綺麗な髪が映る。それをみてすこしメグはアンドした。

 

「あれ…………?あ………シグナムさん…」

 

「よく頑張ってくれた。後は任せておけ」

 

偶然近くにいたシグナムが応援に駆けつけたのだ。

 

 

ーシノブ部隊ー

 

 

シノブの首を跳ねる筈の刃は空中に舞った。

 

「……………」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

何が起きたか判断できていないロクの顔面に拳がめり込んだ。ロクはそのまま吹っ飛んで行った。シノブは自分の横に誰かが立っていることに気づき、少しずつ視線を横に向けた。

 

そこには、アキラが立っていた。

 

「そんなんなるまでよく頑張ってくれた。後は俺がやる。救援部隊ももうじき到着するから、あと少し耐えてくれ」

 

「………………隊長…っ!」

 

信頼できる隊長を目の前にし、シノブは安堵と共に涙を流す。

 

「泣くな。さ、あとちょいの辛抱だからな」

 

アキラはせめての応急処置として制限時間が終えれば回答される時限式の魔法でシノブのけがの箇所からあふれる血を凍らして止血させる。

 

「……………さぁ…………俺の部下を可愛がってくれた礼はさせてもらうぜ」

 

「…アキラ…ナカジマ!!!!!」

 

 

続く

 


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