とあるギンガのPartiality   作:瑠和

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おそくなりました。テストで体力を使い果たしました………。

ちょっと短いですがお楽しみください。

評価、コメント、投票、随時募集中です。



第八話 不安

ー聖王医療院ー

 

今回の事件で保護され少女は聖王医療院に運ばれたが、まだ目覚めていなかった。熱が下がったアキラはギンガに連れられ、身体に異常がないか診た後に少女の様子を見に来ていた。

 

部屋に入ろうとすると、同じく少女に会おうとしていたなのはとばったり出会う。

 

「なのはさん」

 

「あんたは……高町隊長だったか」

 

「ギンガ、それに…橘陸曹だっけ?名前で呼んでいいかな?」

 

「好きにしてくれ」

 

軽い挨拶を済ませた三人は少女の病室に入った。少女はやはり目覚めていない。爆発事故、運んでいたレリック、生体ポッド、やたらと多かったガジェット。これらすべてにこの少女が関わっていると、アキラは何となく思っていた。

 

「この子は……なんなんだろうな」

 

「え?」

 

「あんな重いレリックのケース持ってどこに行きたかったんだろうかって思ってな」

 

アキラの言葉にギンガもなのはも何も返せない。当然だが。

 

少し沈黙が流れると、少女が少し動き口を開いた。

 

「ママ……」

 

「ん?」

 

一瞬全員が起きたのかと思い、少女を見たがどうやら寝言だったみたいだ。しかしその一言でアキラは何となく居心地が悪くなる。その少女の姿にセシルと昔の自分の姿が重なったのだ。

 

アキラを引き取った家には母親がおらず、セシルの母親はセシルがまだ幼い頃に亡くなった。後にセシルの父親は再婚したが、セシルは新しい母に慣れず、よく寝ている時に「お母様」と呟いていたのをアキラは少女と重ねる。そんなアキラの心情を察したのかギンガは「私たちはこれで失礼します」と言って病室を出た。

 

「大丈夫?アキラ君。何だか顔色が悪いけど…やっぱり薬とかもらっていった方が…」

 

「いや、いい……」

 

ギンガはアキラが体調が悪くて顔色が悪いとは思っていない。アキラに…アキラの心情に何があったのか、話して欲しかったのだ。仕事でもパートナーとしても、友人(?)としても。

 

 

ー翌日ー

 

ギンガがトイレで手を洗っていると、突然後ろから胸を鷲掴みにされた。

 

「ひゃん!?」

 

いきなりなことに、思わず変な声をあげてしまう。

 

「あら?なによ〜。こないだとほとんど変わってないじゃない」

 

「メ、メグ…!」

 

犯人はメグだった。メグはギンガの胸をまさぐりまくる。さらにさっきのギンガの悲鳴が聞こえたアキラが女子トイレに飛び込んで来た。

 

「ギンガさん!?」

 

「だ、大丈夫だよ!アキラ君!」

 

ギンガが言うとアキラは「そうか…」と安堵のため息をついて出て行く。

 

「どうしたの〜?こんなんじゃ彼を惹けないよ〜」

 

「いいから……離して!」

 

ギンガはメグに肘打ちをお見舞いした。それはメグの鳩尾にクリーンヒットする。

 

「いたた…どうしたのよ〜。こないだはせぇっかくアドバイスしてあげたのに〜。

 

「どうしたのってそんな急成長はしないし……」

 

「自分で揉んでないの〜?てかあんた…一人でしたことある?」

 

「そ、そんな……」

 

ギンガは顔を真っ赤にする。ギンガはあまりこういったことに詳しくない。幼い頃から家庭に目をやりながら育ち、まともな青春も過ごしていないのだ。管理局に入ってからはよく告白されたが、戦闘機人という事実がギンガを抑え、付き合うことは一回しかなかった。

 

そしてその男もギンガを必死に口説いた癖に戦闘機人という事実を知った瞬間に消えた。それが完全にトラウマになり、もう恋愛感情は受け入れていなかったせいで17歳でもそういう類のことはほとんど知らない。

 

「はぁ…あんたそんなんじゃいつまで経っても二人の溝は埋まらないよ〜」

 

「それはわかってるけど…」

 

「わかってんなら、さっさとしなさい」

 

メグの言葉にギンガは軽く頷き、トイレを出た。

 

「随分遅かったな」

 

「うん、メグと話し込んじゃって……さ、帰ろう?」

 

「ああ」

 

ギンガがいなくなった後のトイレで、メグは少し考える。アキラとギンガの距離を縮める方法を。そして、少しおかしい方向にひらめく。

 

「ん〜。ここはメグさんの魔力の見せ所かな〜」

 

 

ー玄関ー

 

 

隊舎から出ようとした時、アキラは服のあちこちを調べ始めた。

 

「ん?ん?」

 

「どうしたの?アキラ君」

 

「いや、財布と……懐刀が……ない」

 

「懐刀って……」

 

「ロッカーに忘れたのかもしれない。悪いが待っててくれ」

 

「ううん、ついてくよ」

 

二人は一度戻り、アキラのロッカーに向かう。アキラがロッカーを開くとそこにはいくつかの書類と、財布と懐刀、さらに何か手紙らしき物がある。

 

「ん?」

 

アキラは刀と財布を懐にしまい、手紙を手に取った。手紙は薄いピンク色で、ハートのシールで封がされてある。

 

そして手控えめな文字で「橘アキラ陸曹へ」と書いてある。アキラが手紙を見ながら立ち尽くしていると、ギンガが横からのぞきこんできた。

 

「どうしたの?アキ……ラ君?」

 

アキラの手に持っている物を見たギンガは硬直してしまう。そんなギンガをよそにアキラは手紙をおもむろに開き、中身を確認した。

 

「あなたに伝えたい想いがあります明日の19時、108部隊の屋上で待ってます」

 

「…………」

 

ギンガは動けずにいる。そんな二人を、柱の影から見ている者がいた。

 

「とりあえず作戦成功かな〜?」

 

メグだった。

 

メグはちょっと特殊なスキル、「コネクト」持っている。コネクト能力は特定の場所にゲートを繋げ、そこから物を取り出したり逆に物を置くことが出来る。メグはコネクトを使い、アキラの懐から懐刀と財布を取り出しアキラのロッカーに財布と懐刀とラブレターをいれたのだ。

 

すべてはギンガに少しは恋愛に関する興味を持って欲しかったから。

 

「応援するよ。あんたの恋」

 

 

ーその日の夜ー

 

 

(アキラ君はあれが何だかよくわかってなかったみたいだけど……あれは絶対ラブレターだよね)

 

私は家でベッドの中で一人悩んでいた。確かにアキラ君はまぁ…一緒にいるからわかるけど無関心なところがクールって間違われて結構みんなからかっこいいとかって言われてる。むしろ今までこういうことがなかった事がおかしかったんだと思う。

 

私もラブレターとか、呼び出されて告白されたりとかいっぱいあったけどあれで何だかわからないのは、常識を知らなすぎっていうか…。

 

でもアキラ君はどうするんだろう。告白されたら付き合うのかな…その子と。

 

私は急に不安になり、メグにメールをした。まだ起きてるかな。

 

『実は今日、アキラ君がラブレターをもらってた。アキラ君付き合っちゃうのかな』

 

「送信………。あ、返事きた」

 

『怖いの?』

 

「…………」

 

『なにが?』

 

『アキラ君がいなくなるのが…奪われるのが』

 

図星だった。

 

『まぁ…確かに』

 

『だったら手は一つでしょ』

 

『なに?』

 

『明日アキラ陸曹に時間までに告っちゃえ』

 

私の顔が赤くなったのがよくわかった。告白されたことはあるけど自ら告白したことは一回もない。でもやらなきゃダメなのかな。でも…。二律背反の考えが私の頭の中を回る。

 

『急に告白なんてそんな…恥ずかしいよ』

 

『でも取られちゃうかもよ?アキラ陸曹尽くすタイプだし、アキラ陸曹がその子の事好きになったらもうより戻せないと思うよ?』

 

「うっ……」

 

そのメールが私の戸惑いにトドメを刺した。確かにアキラ君はすごく尽くす人だ。付き合うことになったらもっと尽くす人だと思う。

 

【すまねぇギンガさん。俺はこの人の護衛になる】

 

一番想像したくないイメージが頭の中に流れた。悔しいけどメグの言うとおりだ。やるしかないのかな……アキラ君に告白して…でも、アキラ君はきっと私のことを見ていない。アキラ君は私を通して誰かを見ている…そんな感じだ。

 

『できることはやってみる』

 

そう送ったけど、メグから返事は来なかった。もう寝ちゃったかそれとも、いつまでもウジウジしてる私に飽きれてもうメールを見てくれてないのかな……。そんなことを考えていると私は自然に眠りにいざなわれていった。

 

明日どうしようか、それの答えも出ないまま。

 

ー翌日ー

 

 

「おはようアキラ君」

 

「おう」

 

結局通勤の時間まで色々考えたけど何も浮かばなかった。でもこのままじゃいけない、とにかく昨日メグに言った通りできることはやってみる。

 

「アキラ君」

 

「ん?」

 

「アキラ君は……彼女を作る気とかあるのかな?」

 

「…わかんねぇ」

 

「え?」

 

思いもよらぬ返答に私は素直に驚いた。この類の質問に「わからない」と答える人はそうそういないだろう。気になったのでその真意を聞こうと思い、アキラ君に聞く。

 

「わからないって……」

 

「正直俺もまぁ……女性に興味はある。男だしな。でも俺と付き合ってそいつが幸せかどうかを考えると気が引ける。だから……な」

 

私はホッとすると同時に心の中に不安が生まれた。今回でアキラ君が私から離れる可能性は低くなったけど……逆を言えばアキラ君と深い関係になる可能性も低くなった訳だ。

 

「ところでどうしたんだ?急にそんなこと聞いて」

 

「ううん…」

 

ついでにいうと、アキラ君は恐ろしいほど鈍感。アキラ君は優しいし、その割にクールだし、強いし…いいところがいっぱいあるから結構隊の中の女性に人気がある。でもアキラ君は自分がモテてないって思ってる。恐ろしい程の鈍感さんなのです。

 

「はぁ…」

 

あまり気乗りしないまま私は108に向けて歩を進めた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ー昼休みー

 

ギンガは一人で屋上でため息をついている。アキラの目を盗んで来たのでアキラは今頃必死になって探しているだろうか、それともちょっといなくなっただけと言って久しぶりにコンビニのパンでもかじっているのか、ギンガはそれが気になったが今はもっと悩んでいることがある。

 

今日の19時までにアキラに告白しようかどうか…。

 

「……どうしよう」

 

「なにしてんだ?」

 

「ひゃあ!?」

 

いつのまにかアキラが来ており、ギンガは驚いてベンチから飛び上がった。しかもその反動でベンチから落ちてしまう。

 

「あ、大丈夫か!?」

 

アキラは急いでギンガの元に走ったが、何かに足を引っ掛けギンガに覆いかぶさるようにしてアキラはこけた。

 

「どぅわ!?いてて…」

 

「!?…」

 

アキラはギンガの上に乗ってる事に気づくとすぐにギンガの上から離れようとした。が、ギンガがアキラの背中に手を回し、アキラの動きを止める。

 

「ギンガさん?」

 

「…………あの…アキラ君…」

 

「…」

 

ギンガは顔を赤らめ、アキラの顔を見ていられなくなり目を反らした。

 

そして決意を固めアキラに想いを打ち明けようとした時、アキラの通信機が鳴る。アキラはギンガの手を外し、ギンガを優しく起き上がらせてから通信機を出して応答した。ちなみにアキラは通常のデバイスを持っていないため、支給された通信機を持っている。

 

「はい。ゲンヤさん?」

 

『ああ。ギンガも一緒か?』

 

「ああ」

 

『事件だ。六課が担当してるからすぐに向かって六課を援護してくれ』

 

「……了解」

 

通信を切ってからアキラはギンガの方を向いた。

 

「ギンガさんさっき…」

 

「ううん。なんでもないよ。あ、アキラ君お昼は?」

 

「まだだ…ギンガさんがいつのまにかいなくなってたから…あ、今日は弁当なかったか?」

 

「あ、ごめんね?お弁当はちゃんとあるから安心して?サンドイッチだからついてからでも食べれるから」

 

「助かる」

 

ギンガは何を言おうとしたのか、アキラはそこに悩みながらギンガと共に駐車場に向かいバイクで事件現場に向かった。

 

道中にアキラは八神はやてと通信をとり、事件の現状を確認する。

 

今回の現場は森の中。ガジェットが出現したとのことでFWと隊長二名がガジェット撃墜向かった。しかし森の中でガジェットのエネルギーを感知して正しい位置を特定出来ず、人員が必要だったようだ。また前回の事件の召喚師も確認されたらしい。

 

「あの時の少女か…俺よく顔を見てないんだよな…あの融合機にばっかり構ってからな…」

 

「私も。特徴もよく覚えてないかな…」

 

 

ー事件現場ー

 

 

森の中ではルーテシアが一人、レリックを持って方足を引きずりながら歩いていた。

 

レリックを入手したのはいいものの、六課のFW部隊に邪魔をされ、逃走はできたが仲間とはぐれ足に負傷も負ってしまったのだ。早くガリューやアギトやゼストに合流出来たら良いのだが、レリックという重い荷物と足の負傷で体力は奪われて行くばかりだ。

 

「…重い」

 

ルーテシアはレリックを一度下ろし、ケースを開ける。中身のレリックは11番ではなかった。

 

「でも…役には立つ……」

 

残った魔力を振り絞り、レリックをなんとか封印してレリック単体をポケットにしまう。そしてまだ追ってがきてないのを確認すると、木に持たれかかり休憩を始めた。

 

「ふぅ…」

 

少し落ち着いた時だった。茂みから音がし、すぐさま逃げようとしたが足の痛みがそれを止める。

 

(まずい……)

 

「ん?」

 

茂みから出てきたのは…アキラだった。

 

 

 

続く


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